染模様恩愛御書【日生劇場】

日生劇場で歌舞伎公演を観るのは私、初めてです。 ちゃんと花道もあって、しかも三階席からでも七三どころか六四くらいまで見えるし…すっごく観やすいですね! 歌舞伎座がお休みになったら、日生劇場での公演も今以上に増えるかも?ですね。
平成18年10月松竹座公演を観ましたが、再演まで4年もかかったとは意外でした(好評だったのですぐに再演されるかと)。 その分、薄れつつある当時の観劇記憶の紐解きと改訂された箇所もあるであろう発見を楽しみに観劇。 今回、松竹は今公演の特設サイトまで作る力の入れよう。 宣伝写真はお名前を見てやっぱり!な劇団☆新感線公演でお馴染みの野波浩さん。 私、野波さんの作品大好きなんです♪ しかし開幕前に“段治郎さん休演→門之助さん”との発表がありガッカリ…涙。 細川越中守は予想外に懐の深い、どっしりと構えた貫禄あるお殿様で好演だったので、今好演で再会できる事をめちゃめちゃ喜んだのに~。 ダンジロさん、舞台復帰のその日を首を長~くしてお待ちしてますから! 先月、博多座公演を休演された猿弥さんは予定通りの御出演でホッ。
舞台は松竹座より奥行きがあるのでしょうか? 左右袖から階段状の櫓の基本的セットの構造は変わらずも、前回より役者の動線が豊かで場面転換もスムースな印象+バリエーションが感じられました。 シーンのイメージを補う杜若畑がカーテン越しに奥に広がりを見せ、浅草寺や赤八門はカーテンに描かれて奥に配し上手く空間を切り取って場の説明がスムースな印象。 照明デザインもまたしかり! 障子の格子のシルエットで屋内を、木々のシルエットで屋外を…等々、板の上でも花道でも情景表現に一役。 印象的だったのは、舞台(数馬):花道(友右衛門)=青:赤の照明でキッパリと分けて照らし出した所。 二人の気持ちを表していたのでしょう…ね? 鮮やかで綺麗だったなぁ~。
大詰、火事場のセットは大幅にパワーアップ☆していたのでは? セットや大音響は劇団☆新感線を彷彿とさせます! 階段落ちは…前もあったっけ? 「銀ちゃん、カッコイイ…(by蒲田行進曲)」って呟きたくなってしまった。 前回大ブーイングだった、腹かっ捌いて臓物を取り出し『肝臓、腎臓、腸…これがホントの勧進帳!』ってのはなくなり、その分、緊迫感のあるド派手な見せ場として成立していた印象

役者さんの感想は…
染五郎さん@大川友右衛門猿弥さん@横山図書吉弥さん@細川奥方照葉は殆ど印象は変わらず。 今回参加の門之助さん@細川越中守は、個人的にはなんか、人物像の捉え方?にちょっと違和感。
愛之助さん@小姓印南数馬は…愛之助さん、ちょっと太りました? なんかガタイがむっちりと良くて、染五郎さんより見た目が逞しくて…ってか、染五郎さんが華奢なのか? 今ひとつ…前回感じた「守ってあげたい」という感が薄く感じたのは…私だけでしょうか?
春猿さん@腰元あざみは、残念な事に“女のいやらしさ”が薄くなっている印象で、恋敵として友右衛門を敵視する様が弱かったのは残念。 ジリジリと嫉妬する様がすごく笑えた…と記憶してたんだけどなぁ。 自害は…今回の変更ですよね?
観劇前に全く情報がなかったのですが、芝のぶさん@横山妻いよ+大川妹きくは続投だったんですね! 嬉しい~っ♪ 特にいよは夫のDVに耐える様がなんとも不憫で不憫で「病に閉じられ…」という表現は不謹慎ですが綺麗な表現だな、と。 久々の同期共演(春猿さん、休演の段治郎さん)も観ていてなんだか嬉しい。
今回も前宣伝ではBL色を強く出していましたが、肝心のラブシーンは…苦笑、というより大爆笑の明るい客席なのがツボでした。 恋文を渡すのしかり、帯ア~レ~のしかり、シルエットロマンスしかり…クスクスって笑いじゃなくって、アッハッハ~だもんな。
さて…次の再演はあるのでしょうか?

御名残三月大歌舞伎・一部【歌舞伎座】

遠征二日目の本日は第一部を観劇。 コート不要の陽気で「暑い!」。 歌舞伎座館内は軽く冷房が入ってましたが、立見も出るほどのぎゅうぎゅうな幕見席は「蒸す」感じだったのでは?!
当初、さよなら公演記念品として“歌舞伎座記念切手シート”を買う気マンマンだったのですが…ふと冷静になって「切手シートって…買ってどうするよ?」と思い、迷いに迷って“ザ歌舞伎座”な手ぬぐいを購入。
大好きな“おめで鯛焼き”は連日賞味で食べ納め。 工事で閉館中はどこぞで営業しないのかしら? 大好きなんです、コレ。

加茂堤

何故かしら観る度に梅玉さん@桜丸×時蔵さん@八重の夫婦です。 いやこのご夫婦の組み合わせ、すっごく好きなんで嬉しいんですけど。
友右衛門さん@斎世親王×孝太郎さん@苅屋姫カップルを微笑ましく、しかもイライラとジレて「たまらん、たまらん!」と夫婦して熱に当てられて浮かれる様が毎度笑えます。 ラスト、時蔵さん@八重が牛車の牛を懸命に引っぱる様には牛とのかけあいに毎度ニッコリ♪
秀調さん@三善清行の道化ぶりも笑えるだけに、この後に起こる悲劇への落差が大きく、改めてより残酷に思えました

楼門五三桐

吉右衛門さん@石川五右衛門です! でっけぇ~! 圧倒的な存在感で、もうそこに鎮座しているだけで満足♪
歌六さん@右忠太×歌昇さん@左忠太の兄弟でチラッと出演の捕り手を…だなんて、なんて贅沢☆ 菊五郎さん@真柴久吉

女 暫

2007年の團菊祭で萬次郎さん@巴御前での観て以来の観劇。 あまりかからない演目なうえ、玉三郎さん@巴御前という事でものすっごく楽しみに観劇。 三階席からの観劇だったので、残念ながらせっかくの花道での楽しいいろいろが全く観えませんでしたが、そこは脳内変換で補う私
板の上はそれはそれは豪華で~♪ 個人的には松緑さん@轟坊震斎×菊之助さん@女鯰若菜が嬉しい。 そして個人的なサプライズは寿猿さん@根井行親! 寿猿さんがまさかこの座組に御出演とは思いもよらなかったので「ん?寿猿さんに似てるけど…?寿猿さん?!」な驚きと嬉しさがありました。
玉三郎さん@巴御前のツラネは耳に心地良い♪ 今月は覚寿を先に拝見していたので、その艶やかさも一層際立って見えました。
吉右衛門さん@舞台番辰次です! 引かれた幕内からススッと進み出るとドヨッと客席が揺れました。 六方の踏み方を戸惑いながらも習って披露し…恥ずかしがっての引っ込み。 豪華で楽しい、楽しかった♪
それでは現歌舞伎座よ、私はこれにておさらばでございます~

御名残三月大歌舞伎・三部【歌舞伎座】

菅原伝授手習鑑・道明寺

十三代目・片岡仁左衛門十七回忌】+【十四代目・守田勘弥三十七回忌】の追善狂言という事での上演。 故に玉三郎さん@覚寿という配役にテンション↑ そして仁左衛門さん@菅丞相、秀太郎さん@立田の前、我當さん@判官代輝国と兄弟そろい踏み+孝太郎さん@苅屋姫=松嶋屋ぷちオールスターズ☆
丞相と苅屋姫の親子対面をさせたいと様々に立ち回る秀太郎さん@立田の前の必死の様や、申し訳なさから流罪の原因となった娘・苅屋姫を折檻する玉三郎さん@覚寿。 どちらの気持ちもすごく良く解るだけに悲しくなってくる…と同時に、結果的には「軽卒だった」と批判される苅屋姫の恋にも同情してしまう。
苅屋姫、そして彼女を庇う立田の前と二人の娘を涙ながらに杖で打ち付ける覚寿。 悔しさと申し訳なさと…まるで自身を打ち付けているかのような苦悶の表情と絞り出す声には惹き付けられました。 玉三郎さんの老け役って最近よく拝見するようになりましたが、覚寿の気品と風格はさすがだなぁ~と。
丞相の木像って、丞相自らが彫ったものだったんですね!…という事は、何度も観ているくせに初めて知りました。 書も彫りも…って芸術的才能も豊な方なんだ。 後にこの木像を形見とし、後世まで残すもの…という芸術作品まで昇華させているんですもの。
時平から菅丞相殺害の命を受けた彌十郎さん@立田の前の夫・宿禰太郎市蔵さん@贋の迎い弥藤次。 元女房の立田の前をアッサリと殺す非道ぶりに驚く~! “鶏が水中の死骸の上で鳴く習性”って…ホントですか?! 残忍な場ですが、ここの美術の工夫が面白かった♪
序幕からひたひたと迫る幾つもの“別れ”が毎回ズシーンと胸に迫る一幕ですが、豪華配役で殊更心に響いた今観劇でした。

石 橋

鷹之資くんは、この演目で平成13年4月の歌舞伎座で初舞台(当時・中村大)を踏んだ思い出の演目でしょうし、あれから9年後、現歌舞伎座さよなら公演で上演とはこれまた大きな思い出となる事でしょうね。 一観客の私がこんな気持ちになるんですから、お父様の富十郎さんはいかばかりかと~。
能の【石橋】をベースとした舞踏劇。 しっかりと丁寧にピシッ、ピシッと踊る鷹之資くん@童子実は文珠菩薩の姿に「お稽古、相当頑張ったんだろうなぁ」と感心させられましたが、ピタッと静止する事が出来ずにグラグラ~と度々なるのはちと残念でした。 影のようにピッタリと寄り添って踊る富十郎さん@樵人実は獅子の精との“連れ舞”っていうのかな?見応えがありました。
他は松緑さん@男某錦之助さん@修験者幸四郎さん@寂昭法師
しかし…鷹之資くん、ちょっと太り過ぎじゃ~(後日、国立劇場で奮闘する橋之助さんのご子息にも同じ感想)

御名残三月大歌舞伎・二部【歌舞伎座】

来月のさよなら公演がホントの最後ではありますが、私にとっては今回の遠征で現歌舞伎座が見納め。 人の多さは予想はしていたものの…ここまで多いとは!とビックリでした(幕見席の列もスゴイ事に!) 歌舞伎座前でも、館内でも写真を撮っている方が多かったのは印象的。 私もお気に入りの場所や「新しくなったらこんな所はなくなるだろうな」な場所を幕間に撮ってまわりました。 久々、筋書きも購入したし~♪

菅原伝授手習鑑・筆法伝授

記憶を辿ると…多分、おそらく、私は初見の演目のような? 【道明寺】【寺子屋】への理解がより深まる段なんですね。 すごく面白いのに、何故あまり上演されないんだろ? “学問の神様”として祀られる菅原道真が書道の大家であり、その置かれた立場等がよく理解出来ました
東蔵さん@左中弁希世がなんともラブリー♪ こんな道化役的なお役で拝見するのは珍しいのでは? 自信家で自惚れが強く、館の腰元にも手を出す様がなんと可笑しく「こんな奴に筆法伝授は誰だってイヤだよな~」な人物。 机に縛られて折檻の様は笑える。 改めて…東蔵さん、好きだわ~☆
梅玉さん@武部源蔵芝雀さん@戸浪の夫婦(=美形な夫婦) その出からして夫婦の境遇が伺え、仁左衛門さん@菅丞相との対面は固唾を飲んで見守る…といった感じ。 希世のあからさまな嫌がらせに耐えながら、筆法伝授された嬉しさでテンション↑…かと思えば、勘当は解かれず↓…と感情の揺れが激しく男泣きに悲哀がにじむ。 「伝授は伝授、勘当は勘当」厳しいです!

菅丞相を務められる…という事で1月末に太宰府参拝に来福された仁左衛門さん。 その際には地元紙に“飛梅の横でニッコリ仁左さん”な穏やかな笑みをたたえるお写真が掲載されましたが、今月の舞台にはその穏やかさは皆無で、“凛とした神々しい空気を纏う”様に目が引きつけられました。 何もセリフを語らず、佇んでいる時にはその表情や動きから菅丞相の心情が伺える…というのは凄いなぁ、と。 そして所作を含めて全てが美しい。 宮中に参内するために整えた身仕度から冠が落ちる…不吉だ。 この時まで動きが少ないだけに「ハッ」とした大きな表情の変化に惹き付けられました。 息子・管秀才を源蔵夫婦に託す様で、立場上勘当は許さないけど源蔵を信頼している様や、その心情を理解し管秀才を必死に守る夫婦に涙
それにしても時平、そして寝返った希世の奴~! ホント嫌な奴!!

弁天娘女男白浪

とにかく豪華です。 今までで観た中で一番豪華な配役です。 “歌舞伎座さよなら公演”ならではです☆
浜松屋での菊五郎さん@弁天小僧菊之助は「あ、あら~。ちょっと…かなり~」な娘ぶりで、ヴィジュアル的には予想外に相当厳し~いっ。 …ですが正体を表してからは無問題。 吉右衛門さん@南郷力丸は貫禄ありすぎやろ! 「お嬢様、お嬢様」とご機嫌を伺う様がなんだか新鮮でした。
おっちょこちょいなラブリー番頭を演じさせたらピカイチ☆な橘太郎さん@番頭・与久郎に満足、満足。 私にとって現歌舞伎座ラスト公演で橘太郎さんの番頭が拝見出来たのはすっごく嬉しかったです。
菊之助さん@浜松屋倅・宗之助團蔵さん@鳶頭の清次東蔵さん@浜松屋主人・幸兵衛…お店の中も豪華です☆
左團次さん@忠信利平梅玉さん@赤星十三郎幸四郎さん@日本駄右衛門との五人衆のつらね。 目にも耳に心地良く、セリフのひとつひとつに聞いてて首を振っちゃいそうでした。
観劇中「豪華だ…」と何度つぶやいた事か!…な一幕でした。

コルテオ【福岡千早・新ビッグトップ】

シルク・ドゥ・ソレイユの公演を観るのは2003年【キダム】、2008年【ドラリオン】に続いて3回目。 毎回その芸術的なパフォーマンスに感動や刺激を受けるので、一度母親にも観せたい!と思い、今公演の【コルテオ】に引っぱって行きました♪
イタリア語で『行列』という意味のこの公演は“道化師の世界の物語”で構成。 円形の客席のセンターを左右に分断する細長い廊下のようなステージが配され、縁者は左右(もしくは前後)に向かってパフォーマンスを展開。 客席奥からゾロゾロ登場する演者たちは行列をなしてステージに上がり、ショーの開幕。
幻想的な夢の世界を具現化してくれる圧倒的なパフォーマンスは今回も期待通り☆ …ではあったものの…個人的には以前観た作品よりも、いささか芝居かがった要素が多く、個別のパフォーマンス自体はインパクトのある目新しいものは乏しかった印象(私感ですよ!あくまでも)
しかしながら、やはり1本の芝居を観ているかのような…根底にストーリーがあって展開される構成や、衣装、ライティングなどは“日常を忘れさせてくれる空間”は『さすがシルク・ドゥ・ソレイユ!』で楽しめました。
特に印象的だったパフォーマンスは“人間空中ブランコ”的な【パライダイス】。 空を舞うパフォーマを屈強なムキムキマンがキャッチするのですが、技が決まる度に『どや!』顔でポーズをきめるのがツボでした。 そして【ボーカル・エアリアル・シルク】。 技としては以前も観たことがあるものでしたが、唄いながらなおかつパフォーマンス、ってのが驚きでした!
一度、舞浜にある常設劇場で観てみたいな。