KABUKI NIGHT Vol.5【博多座】

2005年2月公演以来、久々の開催となりました【KABUKI NIGHT】も今回で5回目。 【「NINAGAWA十二夜」の魅力に迫る!】と題しましてゲストは前回に続いての亀治郎さん、そして初の錦之助さん。
錦之助さんのトークって、信二郎時代のず~っと以前(隼人君初舞台の時だったかな?)に歌舞伎チャンネル【芸に生きる】でくらいしか聞いた事がなくて…その時の印象は、見た目通りの“おっとり・真面目・優しい”というものでした。
でしたので~、このトークショーのゲスト出演を聞いた時「亀治郎さんがシャキシャキと仕切って、錦之助さん、殆どしゃべらないのでは~?」と勝手なイメージで危惧しておりましたが、全く違っておりましたっ!(亀ちゃんゴメン汗
多分、あの会場にいたお客さんは誰もが錦之助さんの饒舌さに驚き「錦之助さんって、面白~い♪」と思ったはず!
澤瀉屋一門に長く居た錦之助さんは、亀治郎さんがお腹の中に居る時から知っていて、初舞台も錦之助さんに抱っ子されて出て…とにかく現在に至るまでず~っと何もかも知られている弱みか? 亀治郎さん、終始錦之助さんに押されっぱなし汗 そんな様子も面白かったです。

特に興味深く聞いたのは以下2点。
青い旗歌舞伎役者が役に入るのは幕が上がる直前であり、その後は役を引きずらない
見取り狂言で1日に何役も演じる事が多い為、拵えの準備から役に入ってしまうと大変。 前の役を引きずっていると次の役への切り替えが難しくなるので、との事。
青い旗歌舞伎は、誰かが演技をしている時はそれを立てる為に周りで邪魔な演技をしてはいけない
これは言われてみて、初めて気付きました! 普通のお芝居って後ろや隅での小芝居などを発見する楽しみもありますが、そういえば歌舞伎は…ですね。 また『歌舞伎は役者を観る芝居』とも。 また勧進帳?また吉野山?…といったところで演じる役者が違うから興行として成り立つ訳。
“シェイクスピア作品を歌舞伎で”という事にはお二人とも全く戸惑いはなく、本も…そもそも和訳をされた小田島雄志さんが歌舞伎がお好き(造詣が深い)なので、登場人物のセリフが訳した段階でそのまま歌舞伎調になっているとの事。
蜷川さんの演出は役者の個性を引き出すタイプのもの。 坊太夫が偽の恋文を拾う場面での各キャラクターの動きに関しては緻密な指示が出ているとの事。

以下、各ゲスト個人について↓
番頭・錦之助さん青りんご 錦之助さん
とにかく驚き! ま、こちらが勝手にイメージしていただけなんですが、その錦之助像とあまりにも違っていて面白かった♪
その中でも一番意表を付かれたのは20才前後?の時、ディスコでDJをしていたという事!びっくり まるで旅館の番頭さんな錦之助さんを目の前に「ど、どんなファッションでDJを…」 己の想像力の限界を感じる。

小さい頃はアメリカに行って石油を掘り当て大金持ちになるのが夢(ジェームス・ディーンの影響=映画【ジャイアンツ】)だった、宝くじは毎回買っており一発当てる事を狙ってる、プロレスが好き、終演後は毎夜中州通い、大篠左大臣の冒頭のセリフでは、客席に“若い美人”を見つけてその人に向かって言ってる…とか、結構なギャンブラー&軽薄っぷりに爆笑。 プレゼントコーナーの賞品=錦之助襲名グッズは「当たらなかったら博多座の売店で売ってますから」と、セールスも忘れない
ちなみに、宝くじが当たったら…『1年のうち4ヶ月ほど仕事をして、あとは悠々自適に暮らしたい』 亀治郎さんは『ミュージカルの舞台を企画・演出して自分が主演する』との事。
青りんご 亀治郎さん
対照的に至って真面目。 フランス語は小学校から習っているとの事で、先日のパリ公演の口上の一節を披露。
司会者から、しきりに「色気がある~♪」と言われた麻阿は衣装を着付けた後に一度四股を踏むそうです。 そうすると少し着崩れて色っぽくなるとの事(麻阿に限らず艶っぽいタイプのお役の時も同様)。
大河ドラマに係る期間には舞台の仕事は一切入れないはずが…NHKは過去にも沢山の歌舞伎役者を起用しているので変に?理解があるらしく、舞台の為にスケジュールの融通を効かせてくれるとの事。 なので十二夜の2ヶ月連続公演に入る前の撮影は周りがとにかくハードスケジュールだったらしい。
昼公演だけの日は本屋さん巡りが常で、夜は飲み歩かないとの事。
何かにつけて「ホント彼は頭がイイから~☆」「澤瀉屋のDNAだよ!」と錦之助さんから突っ込まれて、照れ笑いをしていたのが年相応の青年っぽくて好感♪ 賢人すぎて上から目線のイメージが強く「ホントの所はいくつなの?」と思っちゃう博学・亀治郎さんに私、苦手意識があったもので~汗 外向きにあそこまで弱味を見せている亀治郎さんってなかなか見れない貴重な機会だったのでは?(ぴあ、ゲストのキャスティングGJ☆)

冒頭の満開の桜のセット前で展開されるトークは、今まで開催されたKABUKI NIGHTの中では一番ゲストの個性を引き出してお話を伺えたような気も。
毎回ですが、プレゼントコーナーは長過ぎてダレるので…懸案。

NINAGAWA十二夜(考察:安藤英竹について)【博多座】

2005年7月、好評を博した歌舞伎座初演からの再演となる今博多座公演。 再演にあたり新たに手が加わった部分も所々にあり、上演時間をトータルすると多少短くなっているようです。
私は初演の舞台は映像でしか観ていないので、画面に映っている部分でしか比較が出来ないのですが…「なるほど、あそこはカットしても充分通じる♪」とか「コレを加えて解り易くなった☆」とか「こう変えてきたか~」「ん…前の方が好きかも?」というような発見も楽しく、今観劇のポイントのひとつ
冒頭の船が遭難する部分のスペクタクル度UPと、洞院と庵五郎が、獅子丸と英竹をたきつけて決闘をけしかける…二人のへっぴり腰っぷり(特に動揺してすっかり女の子になっている獅子丸)にお笑い度が高くなっていて、ここは改訂GJグッド
ナルシス安藤英竹ほぼ初演時の役者陣の再登板!という中にあって、右大弁安藤英竹が松緑さん→翫雀さんへ。 初演時には「あのような道化役を松緑さんが!」という意外性も手伝って、大変好評だっただけに、この度の配役には…私、翫雀ファンとしてはまさかのキャスティングに“めちゃくちゃビックリ&多いに不安”でありました。 …というのは元来、愛嬌ある道化役…というのは翫雀さんのハマる所とするだけに、松緑さんに感じた意外性には欠けるし、この座組とのコンビネーションの程が推量できない~。 そこへ初演をご覧になっている方からは「翫雀さんの英竹はどう作ってくるのか?」という注目度はどうしても高くなる訳で…。
…な、訳で以下は翫雀さん@右大弁安藤英竹の感想のみ! どうしても贔屓目が激しく入ってしまっているので、それを差し引いて…宜しくです汗
作りは…いかにも娯楽と快楽、オシャレにふけり、自分を恋の達人色男と激しい勘違いをしているナルシス阿呆公家風情。 松緑さんほど道化っぽく作っている訳ではなく、一応キレイなお公家さんで、首元にはラメ入りのスカーフを巻き、髪にはメッシュを入れている…という“かぶき者”。 仏国?の言葉が得意との設定故か(洞院のセリフより)所々に“フランス語っぽいセリフまわし”の、見事なまでの空振りのキザっぷり。
故に前半は洞院と麻阿からもバカにされている…という印象は薄く、三人が悪巧み遊び仲間、という感じにも取れて道化ぶりが薄く感じるので、物足りナイような。 “織笛姫、好き!好き!”という感じが弱いので、後半、姫を巡って獅子丸に決闘を申し込む下りが唐突に思えるような気がしました汗
重装備・安藤英竹後半、庵五郎が登場してからは、洞院+麻阿とこの三人からも弄ばれている様が強くなり、初演の英竹のスタンスへ。
獅子丸にたたきつける果たし状の文面は初演のままなれど、自分の書いた素晴らしく勇ましい文章に酔いしれているナルシスっぷりはひどく滑稽で笑える~。
決闘を挑む拵えの重装備っぷりに、その臆病の様が伺えて面白いっ! 装備が重過ぎてか?体型からか?(失礼!ファンです)息切れ具合も激しくて、コメディ度UPグッド
これからも舞台を重ねるにつけ試行錯誤されながらどんどん進化していくのでしょうから、また千穐楽近くには違った印象になるのかもしれません(現時点では初日+9日観劇)。
思ったのは、この右大弁安藤英竹という役所はそのキャラクターを固定せずに、その時、その時に演じる役者さんの個性に合せてカスタマイズしていくタイプのお役となっていくのでは?と。
またのNEW英竹の登場も楽しみに待つ希望が持てる、今再演の成功!となりますように…。

平成19年・博多座船乗り込み

6月1日、六月博多座歌舞伎公演恒例行事【船乗り込み】が、5日初日を迎える【NINAGAWA十二夜】にご出演の役者陣を迎え、今年も盛大に賑やかに執り行われました
船一号船:菊五郎 船二号船:左團次&菊之助 船三号船:段四郎&亀治郎
船四号船:時蔵&錦之助 船五号船:團蔵&翫雀 船六号船:秀調&亀三郎
船七号船:権十郎&松也

以下、下船後に博多リバレイン・フェスタスクエアで執り行われました式典の各役者陣の挨拶をご紹介。

2007・博多座船乗り込み1よつばのクローバー菊五郎さん
大好きなこの博多へお招きいただきまして誠に有り難うございます。 この公演で私は狂言回しのような、ちょっとおっちょこちょいで自惚れやの丸尾坊太夫、これは世界の名優が演じておりますマルヴォーリオという役を日本風にした家老と、また道化者の捨助という役をいたします。 どうぞ宜しくご声援のほどをお願い致します。
よつばのクローバー時蔵さん
私、織笛姫というお姫様を演じさせていただきます。 シェイクスピア作の喜劇・十二夜。 菊五郎兄さんをはじめとして、歌舞伎界でもとっても意欲のあるメンバーが集まってございますので、どうぞよろしくお願い致します。
よつばのクローバー翫雀さん
このNINAGAWAマクベスというお芝居…あっ汗NINAGAWA十二夜…しょっぱなから間違っております冷や汗 NINAGAWA十二夜という芝居は再演でございますけど、実は私だけ初演で入らせていただいている状態でございます。 マクベスではございません、十二夜でございます汗 この公演、大変楽しみに私も出させていただきます。 主役で頑張っておられる菊之助さんは昨日一番の飛行機で入られたそうで、意気込んでいらっしゃいますが、私もそれに見習って頑張って行きたいと思います。 よろしくどうぞお願い致します。
よつばのクローバー亀三郎さん
沿道からの暖かいご声援有り難うございました。 役人頭嵯應覚兵衛という役をしっかり務めさせていただきますので、宜しくお願い致します。
よつばのクローバー権十郎さん
念のため申し上げます。 マクベスではございません! 十二夜でございます! 私、菊之助さんの演じる斯波主膳之助を助ける海斗鳰兵衛を演じさせていただいております。 蜷川先生というのは大変恐い、恐ろしい方だという事ですが、今のところ優しくしていただいております。 気をゆるめる事なくそのまま千穐楽まで懸命に怒られることなく務めてまいりたいと思います。 宜しくお願い致します。
よつばのクローバー團蔵さん
織笛姫の侍従比叡庵五郎を務めます。 どうぞ千穐楽までご声援よろしくお願い致します。
2007・博多座船乗り込み2よつばのクローバー左團次さん
十二夜というのはしゃべり芝居でございます。 普段、私など多いセリフでも20や30言しかない芝居に出ておりますが、突然100言もあるような芝居で驚いて…全部は覚えられません。 稽古が終わりましたら、私は多分帰っていると思いますので、お残りになった菊五郎さんをはじめ一座の方をどうぞ宜しくお願い致します。
よつばのクローバー段四郎さん
シェイクスピアと歌舞伎というのはあまり関係ナイように思えるかもしれませんが、明治時代から歌舞伎化されているものもございます(?) 今回の蜷川先生の十二夜は、先生の素晴らしい演出によりまして恋のメルヘンあり、そしてお腹がよじれるほどの笑いがございます。 皆様ぜひ「面白かった」「素晴らしかった」「お腹ががよじれるほど面白かった」と皆様にご吹聴のうえ、せいぜい大勢のお客様においで願いまして大勢様にご来場くださるよう、私たちも一生懸命頑張りますので宜しくお願い致します。
よつばのクローバー秀調さん
私事でございますが、私の家内はこの福岡県人でございます。 その福岡で私4年振りでございます、お芝居ができますこと大変喜んでおります。 また今日から山の支度(博多祇園山笠)もボチボチ始まっているようでございますが、この山笠の雰囲気に負けぬよう、一生懸命頑張りますので宜しくお願い致します。
よつばのクローバー錦之助さん
私、今年の4月に信二郎から二代目錦之助を襲名いたしまして初の博多座お目見えでございます。 役は大篠左大臣でして、信二郎時代をリセットして一から…いろんな意味で演らさせていただきたいと思います。 どうぞ宜しくお願い致します。
よつばのクローバー松也さん
私は二月に続きまして博多座は今年二度目でございます。 年に二度も来れる事は…大変嬉しく思っております。 今回は錦之助兄さんの演じる大篠左大臣の従者・久利男を務めます。 一ヶ月頑張りますのでどうぞ宜しくお願い致します。
よつばのクローバー亀治郎さん
今回は麻阿という恋の悪巧みをする侍女を演じさせていただいております。 歌舞伎の一ヶ月公演は9ヶ月振りとなります。 この劇団の仲間と一緒に芝居を出来る事を楽しみにしております。 最後まで一生懸命務めて参りますので、皆様も一生懸命応援を宜しくお願い致します。
よつばのクローバー菊之助さん
皆様沿道から温かい声援を沢山いただきまして本当に有り難うございました。 皆様ご存知でしょうか? シェイクスピアと歌舞伎、同じ400年の歴史がある事。 その同じ歴史を持つ演劇同士がぶつかり合い、博多座の再演ではどんな演目になるか? 世界、そして日本の現代演劇を牽引する蜷川先生とそして私達菊五郎劇団、時蔵の兄さん、翫雀のお兄さん…歌舞伎俳優が核融合、化学反応を起こし、ハイブリッドで21世紀の歌舞伎をお目にかけます。 皆様ご存知かと思われますが、一等席が19000円致します。 これは皆様高いと思われますでしょうか? 高いです。 ですが、19000円払って頂いて必ず損はさせません! ぜひ博多座へお越しください宜しくお願い致します。(※正しくはA席18000円。高いです!)
よつばのクローバー蜷川幸雄さん
灰皿を投げる鬼の蜷川です。 この度は博多に呼んでいただいてホントに有り難うございます。 シェイクスピアの作品を歌舞伎の力によって新しい作品に仕上がっております。 どうぞ歌舞伎の美しさ、役者の皆さんの素晴らしい演技を充分に楽しんでいただきたいと思います。 そして大勢の皆様の拍手を頂戴して「あんな楽しい芝居はない」と劇場が満杯になりますことを願っております。 灰皿は投げません! どうぞお待ちしております。
2007・博多座船乗り込み3