博多座文楽公演・夜の部【博多座】

心中天網島(北新地河庄の段)

観る前から『小春の人形遣いさんって動きがナイのも大変だろうなぁ』と思ってましたが…みどころが多過ぎてチェックに忙しく、小春だけには集中観劇出来ませんでした~汗 ただ主遣いさんがひたすら真正面向きで客席の遠くを見据えていたのが不思議な感じ。 主遣いさんって、人形の頭の動きであとの二人にサインを送る…と以前解説でおっしゃってましたけど、必ずしも人形が動く方向を主遣いさんが顔を向けている、という訳じゃないのでホントに不思議。
上方の世話物を観ると『女の方が大人だなぁ』と思い、男の自己中心的な身勝手さに呆れながらも笑える事が多いけど、何故だか歌舞伎で観る時よりも、治兵衛により非情さを感じて憤りを感じました。

天網島時雨炬燵より(天満紙屋内の段)

炬燵でフテ寝する夫にそっと蒲団をかけて陰で涙する妻おさんの一連の動きの細やかさと、まるで涙がホロリと見えたような佇まいに気持ちをわし掴みにされましたっ!
小春とおさん、こんなに良く出来た女性に想われるからには、治兵衛とは相応の魅力のある男なんだろうけど…なんだかなぁ。 と、やっぱり心中ものにはどうしても納得できない不条理さを感じて、苦手です。 当時の世相や価値観の違いなんでしょうけどね汗

勧進帳

歌舞伎では「また勧進帳?!」と、いくら人気演目でもそりゃかかりすぎたろ?!と近年はいささかウンザリなのですが、文楽で観るのは初めて。
大夫8名・三味線6名とズラリ居並ぶ様は圧巻で、そのうち2名の大夫さんは幕内に入ってしまう大所帯! 語りも音も重厚に層を成す様は耳に大変心地良く圧巻で大感動☆ 大夫さんたちの見台のデザインチェックも目に楽しい♪
玉女さん@弁慶と左手遣い&足遣いさんは全員顔出しでお揃いの拵えなんですね。 さすがに人形そのそものも大きく、大役である事が出だけで判ります。 そして…その動きの荒々しさ、激しさに圧倒されて遣い手の皆さんのふと見ると滝汗状態。 相当な運動量なんですねぇ~冷や汗
ただ後半の…安堵して大好きな酒を陽気に楽しむユーモラスな弁慶は、表情に負う所が大きいために「ココはやっぱり人間の方が~」と個人的には思いました。
そして、弁慶vs富樫というのは“見た目も対等(大きさ)”である事が必要かと思うのですが、人形故か富樫の方が随分大きくてビックリ☆

博多座文楽公演・昼の部【博多座】

今年で4回目となる“博多座文楽公演”。 公演期間も3日間となって2回目で『年末の博多座は文楽公演』で定着した模様…と思いきや!来年は翌月からの3ヶ月ロングラン公演【ミス・サイゴン】の仕込みの為に文楽公演はナイとの事冷や汗 そりゃあんまりじゃぞぇ~、博多座!悲しい
昼の部は昨年上演された【仮名手本忠臣蔵】の続き…という事で八、九段目がかかりました。
今回も上演前に勘十郎さんによる登場人物と演目の解説あり。 博多座公演もすでに4回目という事で、物語のとっかかりをサラッと流した感じのごくごく簡単な解説となっていました。

仮名手本忠臣蔵・八段目(道行旅路の嫁入)

文雀さん@戸無瀬簑助さん@小浪という豪華な配役! 娘のけなげさ、その娘を気遣う母親の細やかさに感涙。 一途に力弥を想い気持ちが急く乙女心が、動きの端々に見受けられて可愛くてたまらない!
そんな娘を不憫に思い気遣いながら「なんとか想いを遂げさせてやりたい」という母心が溢れていて、胸が痛くなりました。
人間国宝の主遣いさん対決の出で「おぉ~!豪華☆」と思ったのは最初の方だけで、すぐに人形しか目にはいらなくなって見入ってしまうのは…さすが!なんでしょうね。

仮名手本忠臣蔵・八段目(雪転しの段)

まず雪が深く積もった庭先で雪かきをしている描写がユーモラスで可愛い! 大きな雪玉をコロコロ転がしていく様は…なんだか綿菓子を作ってるみたい♪

仮名手本忠臣蔵・九段目(山科閑居の段)

松の廊下での刃傷が原因で、子供同士が結婚の約束を交わしていた両家の関係が難しい事になっている…という背景で緊迫したやり取りは人形でもこんなにも感じるものなのですね!
小浪親子の突然の訪問に、冷たく強固な対応をする由良助の妻お石からはビンビンとした威圧感が感じられて「コ、コワイ~」 表情ひとつ買えず(人形ですから!)でキツイ事をパシバシッと言ってのける気丈さは、由良助の妻として主人の留守宅を預かる責任故なんだろうなぁ…と感じられます。
そんなお石に必死に懇願続ける親子の哀れさと、それを見かねて割って出て命を投げ出した父親・本蔵の娘への愛情は…気迫に溢れて魅せられるものの、心情的には何度観ても(歌舞伎等で)一家総出で我を押し通す身勝手さを感じて苦手なんですよね~。
本蔵が三方台をバリバリと踏みつぶす様は豪快で印象的でした!
咲甫大夫さんの気迫溢れる語りに魅せられて感動しきり

日高川人相花王(渡し場の段)

前段の勘十郎さんの解説で『ただ川を渡るだけのお芝居です』との事でしたが…全くもってその通り!なんですが…それがこんなにも見所が多くて面白い演目になるとはホントに驚きました。
子供の時、NHK人形劇を観ていた世代なんですが、それには多くの文楽の手法が取り入れられていて“綺麗なお姫様が一瞬にして口が裂けた鬼の形相になる”ってのが強烈な印象として残っているんですが、今演目で初めてそれが元ネタの?文楽で観れた事に興奮しました!
荒々しくはためく浪布を豪快に鬼気迫る様子で大蛇に身を変えながら渡っていく様は「こ、こわぁ~」 “文楽ならでは”の見せ方を堪能。 対岸に渡って…クワッと鬼の形相と化した清姫に「誰だって逃げたくなるわな」と。 ホント、面白かった!

ミュージカル・天草四郎 【博多座】

毎年12月の博多座は【市民檜舞台の日】として様々な公演が数日単位で上演されていますが、私、文楽公演以外で足を運んだの今回初めて。 創立56年目という歴史ある劇団わらび座の公演を観るのも初めて
2日間3公演の今回は、お話の舞台である島原の観光PRも兼ねていて、入場すると鮮やかな法被姿の観光協会の?方々に出迎えられて山のような観光パンフレットと名物の“島原そうめん”の配布を受けました。 ロビーには観光ポスターが貼り巡らされていて、いつもとは違った博多座ロビーの雰囲気も面白かったです♪
開演前には島原市長自らが登壇されご挨拶が。 天草って、福岡から陸路で移動するとめちゃくちゃ遠いので「一度、天草の海で潜りたいっ!」と思いつつも、未だ実行出来ず。 一度だけ仕事で“イルカウォッチング”に訪れた事はあるのですが…これには大・大感動でしたっ!! あんなにスゴイとは思いませんで、船上で叫びっぱなしでした、私。 また行ってみたい…けど、ホント遠いんだよなぁ~。
さて、このミュージカル【天草四郎】は今年4月に天草市を皮切りに全国上演を重ねており、2年間かけて300公演行う予定との事。
『沖田総司はBカップだった』というコピーが強烈な印象だった映画【幕末純情伝(’91)】(@牧瀬里穂)や、『劉備玄徳は女だった』という斬新な設定で大ヒットしたスーパー歌舞伎【新・三国志(’99.4初演)】など、歴史上のヒーローが実は女だった!という設定の作品は今までにもありますが…今作品も『天草四郎は16歳の少女だった』という設定。「まるで天使の歌声!」と各地で絶讃という天草四郎役の碓井涼子さんの博多座初お目見えを楽しみに拝見。

あらすじ
島原と天草で家康のキリシタン弾圧に苦しんでいた農民達が一斉に蜂起し、その先頭に立つ鎧姿の美少年こそが天草四郎時貞と名を変え、男の姿になった16歳の益田志乃。 これは日本で最初の西洋画家・山田右衛門作(乱で唯一生き残る)が26年前に宣教師による予言を利用して、志乃を神の子“天草四郎”として仕立て上げ、キリシタンである一揆軍の戦いのよりどころと策したもの。 戦うしか道は無く、死に向かって突き進んでいった痛ましさと壮絶さに耐えうる心の救いは四郎の天使にも似た清らかな崇高な存在が救いだったのだ。
天草四郎一人の農民の娘が、突然神の子として祭り上げられ、しかも男として振る舞いながら民をまとめて率いる重責に戸惑い、苦しむ様。 その娘の姿に心を痛める母親。 女とは知らずに天草四郎に想い寄せて戸惑う一揆軍の中の若者頭・伊助。
休憩なし2時間弱の作品でしたが…それぞれのエピソードひとつを取ってみるとすごく膨らみそうな所を、少しずつまんべんなく入れている為、さらっと触るだけで描かれ方が浅い印象。 サブタイトルとして『四つの夢の物語』とあるのですが…どれがそれを指しているのか?という事が観劇後もさっぱり解らないのはいかがなものか? キャッチコピー『苦しみを知っている人間が一番美しい。』も然り。 天草四郎に仕立てるのが何故、農民の娘・益田志乃である必要があったのか?という事や、志乃の人となりやその苦悩を深く観てみたかったな…と思いました。
わらび座の他作品を拝見した事がナイのですが、ミュージカル作品であるなら全体的にもう少し心地良く聴ける歌唱レベルであって欲しいなぁ…と汗 メインキャスト以外がちょっと辛過ぎる上、話題の碓井涼子さん@天草四郎もこの日が不調だったのか?かなり不安定で残念! ミュージカル作品である必要性は…どうなんでしょうか? ストレートだと重すぎるんでしょうか?
舞台美術や照明、合戦シーンにおける舞台両袖での和太鼓の演奏は大変印象に残りました♪
パソコン 劇団わらび座

堀部彌兵衛・清水一角・松浦の太鼓【国立劇場】

こちらも計らずも初日観劇となりました。 昨年【元禄忠臣蔵】も初日明けて間もない観劇だった為、プロンプ入りまくりで気持ちが萎えた為「今年も珍しくかかる演目だし、きっと…」とテンション低めで観劇に臨んだのですが…。 危惧したよりは大丈夫でホッ!(昨年はセリフ量が半端じゃなかったものね) 「やっぱり12月は忠臣蔵♪」と楽しみました。
それぞれの忠臣蔵】とサブタイトルが付けられた今公演は『討つ者・討たれる者・見守る者、吉良邸討入の陰には、さまざまな人間ドラマがあった!』というリードコピーにあるように、普段よく目にする忠臣蔵とは違った視点で楽しめる面白さがありました。 大石内蔵助も、吉良上野介も出て来ない忠臣蔵の外伝物。 このような演目を揃えて客席が賑わうのは、忠臣蔵が日本人に愛されもはや“一般常識”のように知られてるからこそ!なんでしょうね~。
昭和、明治、江戸。 偶然違う時代にできた作品が揃った。 それぞれの時代にタイムスリップしていただけるようなお芝居になれば』とは吉右衛門さん。

堀部彌兵衛

宇野信夫さんが初代吉右衛門さんにあて書きした作品だそうで、今回が昭和49年以来の…4回目の久々の上演との事。
まず吉右衛門さん@彌兵衛吉之丞さん@妻たね夫婦ぶりがなんとも素敵☆ 幕開きでは各々、61歳と48歳、そして娘さちは3歳という設定らしいのですが汗 …歌舞伎で思う事は昔でその年だと、かなりのご老体になるんだろうなぁ…と(同じ宇野さん作品“ぢいさんばあさん”しかり) 彌兵衛が歌昇さん@中山安兵衛を見染め、ぜひ自分の養子に!とイライラと、ハラハラと、しかし頑固に想いを告げ、遂げる様が無邪気な感じで一途で可愛らしく、その二人を取り持つ由次郎さん@住持丈念が面白い! 『山伏が夕立に遭う』とは「(ホラ)貝かぶる」=かいかぶる、『坊主の頭に光るものあり』とか「全く結う所がナイ」=全く言う所がナイ、というような洒落たやり取りはニッコリと楽しい。
討入りの日が決まった当日、仇討本懐の前祝いと歌昇さん@安兵衛と15歳となった隼人くん@娘さちの祝言がとり行われる。 赤紫の艶やかな着物で登場した隼人くんに周囲のオペラグラスが一斉に上がる! 「誰?キレイ!可愛い…」とじわが。 兄と慕っていた安兵衛を夫とする喜びと、この婚礼が死を覚悟した仇討への見送りとなる寂しさが、儚げなヴィジュアルと憂いを含んだ表情から伺えて好演でした。 勝ち戦を祈っての膳?は…かち栗、昆布、なとり、鶏の吸い物…あと何でしたっけ?(勝負事の前膳に今でも使えますネ)
彌兵衛の隣人、桂三さん@半田判右衛門玉太郎くん@倅判平の厳しい暮らしぶりも、そのせつなさに胸を打ち、ラストの余韻が印象的に残りました。

清水一角

吉良方の人物が主人公という大変珍しい演目で、今回は46年振りの上演との事! 私、もちろん初めて観るうえ、河竹黙阿弥作品とあれば自ずと期待も高まる訳で~♪ 結果、今ひとつ面白みに欠ける感じ汗 これは作品によるものなのか?(46年振りとあらば)役者陣によるものなのか?…それは謎。
歌舞伎の演目で酒に酩酊して大騒動を巻き起こす…というのは多々ありますが、この主人公・染五郎さん@清水一角も深酒が過ぎる人物。 日々こんな状態で吉良家の警護役が勤まるんかいな?と思わせておいて、夜討ちを告げる太鼓の音には鮮やかに覚醒し屋敷に駆けつける…という、ダラダラ~フニャフニャ~状態→シュタッ!キビキビ!猛ダッシュ!…の豹変ぶりが面白い。 立ち廻りをしながらの着替えは見せ場のひとつで面白いのですが…この日は袴の後ろを蹴り上げて紐キャッチ☆が逆になってしまって、裏返し状態で“着付け完了”だったので客席大爆笑でした。 討入りで女物の小袖を羽織っていたのは、姉の愛情故だったのね!と合点☆(これぞ外伝?!)
種太郎さん@弟与一郎はイイですね! 最近努めて舞台に立っていらっしゃる成果が着々と見受けられ頼もしい感じ♪(役所もダメ兄ちゃんをフォローだし)

松浦の太鼓

松浦の殿様秀山十種のひとつですが…今公演の吉右衛門さん@松浦鎮信愛らしい殿様ぶりを拝見し、見事にその芸が引き継がれているんだなぁ、と思いました。 どっしりと構えた威厳ある存在感と上品な殿様然とした様と、我がままだったり、無邪気だったり…と子供のような様が見事にミックスさせていて、観客一同ニッコリと笑みがこぼれてしまいます♪
私の中では【大石内蔵助=吉右衛門さん】なんですが、【松浦の殿様=吉右衛門さん】でもあるので…なんか不思議な感じ。
歌六さん@宝井共角がイイ! 殿の機嫌を伺いながらの心理作戦で芝雀さん@お縫の擁護を努める辺りが、表情の変化ひとつをとっても大袈裟で楽しめました☆ 人生経験も豊富で、人の世をひょいひょいと渡り歩いて来たような、どんな人物でも相応のあしらいで対処出来るような…そんな人物に見受けられました。
染五郎さん@大高源吾は…いつも思うのですが、あの討入りのくだりを語る超長セリフは…リズムで覚えるのでしょうか? 感心します~。 …が、槍に辞世の句を結びつけ討入りに臨んだほどの風流な武人には見えず、松浦の殿様の「風流はココじゃぞぉ~」と、嬉々とした様子に観客の気持ちが全部もって行かれてしまう弱さを感じてしまいました。
今回これらの外伝を拝見して、また更に【忠臣蔵】を楽しめる嬉しさを感じて嬉しくなりました♪

十二月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

他の観劇スケジュールの兼ね合いから…多分初めて?の歌舞伎座初日観劇となりました(残念ながら昼の部観劇は断念!)

寺子屋

意外にも勘三郎さん@松王丸歌舞伎座では初めてとの事。 松雪に迫力ある鷹をバーンとあしらった羽織の背刺繍は「スカジャンにしたらさぞ怖いだろうなぁ~」という迫力が汗 しかし、福助さん@千代も…ですが、心に響くのはなかったです。 泣けない。 亀蔵さん@涎くり与太郎は想定内の愛らしさ☆ 松也さん@御台園生の前の咳の仕方、上手いなぁ(かつて喘息児童だった私) 海老蔵さん@武部源蔵勘太郎さん@戸浪は「若いなぁ」という印象でしたが、勘太郎さんは健闘では。 海老蔵さんは、単体で強すぎる…周りとの調和が取れてナイかと。
いつも思うのですが捕手の方々、あの長~い時間を蹲踞しているのは辛いだろうなぁ…。

粟餅

今回初めて拝見。 立役二人が揃いの拵えで…というような舞踏は珍しいのでは? 江戸時代の風俗を垣間みれる、短いながらも歯切れの良いキビキビした舞踏。
三津五郎さん@杵造の達者な踊りはもちろん、橋之助さん@臼造もそれに続き、曲芸を混ぜながら餅をつく様が楽しい。 粟餅の色は黄金…という事から“こがねもち=小金持ち”として縁起がイイとの事。 なぁ~るほど♪

ふるあめりかに袖はぬらさじ

歌舞伎座での上演は今回が初めてとの事。 私は作品自体、初めての観劇となりました。 面白い!…けど~長い。 これ1本、単独でかけてもいボリュームですが『今月の歌舞伎座だからこそ!』の豪華配役は見逃せません。 しかし長い…。
玉さん@お園
元来、玉三郎さんのはすっぱな…仇っぽい色気のあるお役ってすごく好きなのですが、今回の芸者お園を拝見し、そのコメディジェンヌぶりに驚嘆! 大変大変失礼ながら…ホントに上手い役者さんなんだなぁ~と感動(失礼すぎ汗) いや…“玉三郎さん=神秘的な美”という事で、高尚な芸術の域となり『玉三郎さんだから凄いんだろうなぁ…』と、実は上手いのか?否か?という事がよく解らないまま、その世界観に飲まれてしまう感じが多いのですが、今回ばかりは私にもハッキリと解ります。 玉さん、上手いっ!(失礼again汗) 玉三郎さん@お園何かしゃべる度にドッカン☆ドッカン☆と客席が笑いで湧く…というのは、なんとも新鮮な体験でした。 特に亀遊と藤吉のラブシーンに「お邪魔さま~」と襖の影から割って出るのは最高に笑え、「あたしゃ、男はもう懲り懲り」と言いながらもサラッと翻ったり、『この人、ホント酒好きだよ』と思わせる様は楽しい、楽しい♪

舞台となる横浜の岩亀楼は実在した遊郭。 外国人相手の遊女“唐人口”も抱えていた為、和洋折衷の洒落た造りだったらしく、今で言う建物のバックステージツアーのようなものが当時行われていたとの事。 現存していれば…さぞ観光地として賑わったでしょうね~。
物語の発端はお園の同僚の遊女・七之助さん@亀遊と、医者を志す通訳・獅童さん@藤吉の恋模様。 このお二人が好演! 特に七之助さんは、今まで拝見した七之助さんのお役の中で“一番イイ!”と思いました。 床に伏した幸薄い遊女風情がバチッ!とハマって儚さ満点☆ なので、後にその死について攘夷派志士を煽るためのねつ造話としてでっち上げられ、それを商売に利用しようとした岩亀楼の主人に【烈女亀勇自決之間】まで拵えられる様は大変哀れで滑稽に映ります。
『一つの湯呑み茶碗を二人で回し呑みすると別れる』といういわれから、そうする時は茶碗のフチを指で弾いてから相手に渡す…という事は、私初めて知りました。 現在もそうですか?
亀遊が自ら死を選んでしまったほど屈辱だった唐人口。 【唐人お吉】で有名ですが、“らしゃめん(羅紗緬/洋妾)”とも呼ばれ、忌み嫌われていただけにお手当は日本人口の3倍もあったそうです。 私、この度イヤホンガイドの解説により羅紗緬の語源を知りました。 ビックリ…。  福助さん@マリアをはじめとする女形さんのグロテスク・ファッションショー?!は、かなり引くものがありました汗 新悟くん@ピーチの猛烈アピール(巨乳です)は、お父様・彌十郎さん@イルウスは全力で拒否していた様に笑えましたが~。
猿弥さん@幇間和中。 やっぱりあ~ゆ~拵えの猿弥さんは山城新伍にソックリ!
勘三郎さん@岩亀楼の主人は、ひょうひょうとした面白さはあるものの、もっと悪どく嘘話に加担したひとりとして小賢しい部分が見受けられた方が良かったような? 時折、お園が主人を操っているようにも見えてしまって…(実はそうなのか?!)
上演時間21時を過ぎても登場しない段治郎さんに「もしや休演か?!」とハラハラしていたら…よ~やく登場(話を知らないので役所が解ってナイ汗
尊王攘夷派の私塾・思誠塾の門下生たちがお園の嘘を見抜い詰め寄る様の緊張感は痛快! 各々のキャラクター設定も明確で楽しく、勘太郎さん@飯塚はなんともラブリー♪ 門之助さんって、現代調?のセリフの声はすっごく男前なのには驚きました~!
「私の言う事はみんな本当だよ…」「あれから5年、藤吉は今頃アメリカで何をしてるんだろう」というラストの余韻はなんとも心にしんみりと広がりました
…しかし長い汗