十二月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

今回、昼の部は【Aプロ】と【Bプロ】があり、私はBプロで、梅枝さん@阿古屋で観劇。

たぬき

私、この演目を観劇するまで【らくだ】と勘違いしていて、途中まで「ん?こんな話だったっけ?」と軽く混乱。ほら“ひらがな三文字”だし、“棺桶お笑いもの”だし〜。 「朝イチで、らくだをかけるなんて珍しいなぁ…」と、途中まで疑いもしなかった間抜けでございます〜。 おそらく初観劇の演目。

初演は昭和28年という新作歌舞伎なので、セリフ回しは現代口語に近いためか?中車さん@柏屋金兵衛の芝居がひっかかる事なく、気持ち良く観れた印象。放蕩三昧で終わった『最初の命』のダメっぷり、『二度目の命』を生きる生真面目っぷりという二面性を観れる可笑し味と悲哀の緩急が良かった! 特に成長した息子に遭遇するシーンは印象的。 彦三郎さん@太鼓持の蝶作と笑也さん@芸者のお駒のコンビも良く、また児太郎さん@妾のお染は若いながらにその器用さに驚いた。

笑って、笑って…さて、自分は?と考えさせられた。

保名
玉三郎さん@保名は今回で三度目との事で、私、初観劇。
「こんなに美しい男が気を違えるほど愛した榊の前は一体どんな女性だったんだ?!」と興味を掻き立てられて、その登場を今か今かと待機していたら…玉三郎さんのソロで終幕。 「あ゛…」 キャスト表を全くチェックしていなかった私。 玉三郎さん演出なら、そりゃそ〜なるわな、という静謐な悲しみと美しさに満たされた保名でございました。
阿古屋
私、玉三郎さん以外で拝見するのは初! 梅枝さん@阿古屋です。
児太郎さんも共に今回で二度目だそうですが、素晴らしかった! ヴィジュアルはホントに浮世絵に描かれているような美しさがあり、その線の細さに容疑をかけられた様に同情と、応援の気持ちを持って観劇する感じの阿古屋。 三味線、琴、胡弓の演奏では、特に胡弓の見事さに息を詰めて聴き入り、手がいたくなる程の拍手喝采を送った!! これからも上演を重ねていくであろうお役の厚みを見守りたいと思えた感動の演劇でした。(児太郎さんも拝見したかったなぁ〜)

十二月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

神霊矢口渡
梅枝さん@娘お舟と松緑さん@渡し守頓兵衛は共に初役との事ですが、凄くイイ! 梅枝さんさんは『一見おとなしくて控えめそうなんだけど、強い意志をもって行動に移す女性』を演じたら凄くハマる方なんだな、と認識。 歌舞伎演目でありがちな「一目惚れでそこまでするかよ!」という突っ込みを弾き飛ばす行動力は、強欲非道な父親に立ち向かっていくには充分であり、人形ぶりも見事!

本朝白雪姫譚話
実は今回の遠征【歌舞伎版“風の谷のナウシカ”】観劇が目的だったものの…チケット取れずに断念。 そこへ『玉さんが白雪姫!』という朗報を得て、やっぱり遠征となった経緯が…。

継母は児太郎さん@野分の前(25才なのに69才の母親役って!その69才が16才役って!←そこが歌舞伎だ!)は、何度も自分の美しさを梅枝さん@鏡の精に尋ね、地団駄を踏む様は滑稽で笑いを誘い、また段々と狂気を増してくる様は解りやすかった。 対して梅枝さん@鏡の精の硬質な感じもまた良き◎ 二人の掛け合いと鏡写しの舞踏は美しい☆ 

玉三郎さん@白雪姫は、ちょっとこそばゆくなるほどのポワポワとした天然の可愛らしさを振りまき、そのちょっとズレされ感じられる受け答えの様に笑いも起こる…というキャラクター設定に驚く。 白雪姫のライティングが「かぐや姫か?!」と突っ込んでしまうほどのキラキラ具合で、そこは…ちょっと…なんだろう?“美少女戦士の変身もの”を連想してしまったのは何故だろう?

七人の小人は子役さんたちが大活躍! セリフや踊りやなかなかのボリュームで、おばちゃん、大変感心させられました!

演目として、ここまでメルヘンな演出とは思わず戸惑ったものの、児太郎さんの達者振りに感嘆した観劇となりました。

四月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

仁左衛門さんが“一世一代”と銘打って演じ納め、自ら監修を務める…通し狂言【絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)】とあれば、観劇せねば! 私、初見の演目。 仁左さんが演じるのは今回が5度目だそう。 故に久し振りにイヤホンガイドを借りてみた!(久し振り過ぎてカードの期限が切れていた!泣く〜。) 昨年10月の国立劇場【霊験亀山鉾】は『再演があれば絶対遠征する!』と思って構えていたのに行けなかったから、『仁左さんの色悪演目なら今月こそ!』 しかし私、自分でもビックリな事に昨年は一度も歌舞伎座で観劇をしていなかった!

仁左衛門さん@左枝大学之助は江国多賀家の御家騒動を背景に、本家横領を狙う武家人。 目障りな家臣を斬ったり、人妻を強奪や子戸を殺害…など、これ以上のナイくらいの非道ぶりに驚き、心底悪党の町人・仁左衛門さん@立場の太平次も“姑息”を絵に描いたような呆れた悪党で、二役ともに徹底した極悪非道ぶり! それを痛快に楽しそうに演じる仁左さんの表情に惹きつけられた。 “悪の華”という感じ。各幕ごとに立廻りや殺しの場面があるんだけど、今回のフル回転大奮闘の仁左さんには残念ながら、立ち廻りで“おじいちゃん”な感じが否めなかった(今まで感じた事がなかったからなおさら感じた)。実年齢からいえば相応だけど…だけど…。

時蔵さん@うんざりお松は蛇使いの女で、盗みや殺しを働く“悪婆”の原型になったキャラクターとの事。日本で“蛇使い”という職業がこの当時(現代もだけど!)あった事にビックリ。 相当なワルのくせして惚れた男には甘々な様は滑稽で井戸に放り込まれる最期でさえ、滑稽で笑える。個人的にはキリリとした姉さん風情が最もハマる(芸者さん姿がピカイチ☆)と思う時蔵さんだけど、こ〜ゆ〜“がらっぱち”な、お役はコミカルな部分が凄く際立つ印象。

鶴屋南北作、全4幕通しの上演。南北の人気作には“色悪”がよく出てきますが、いろんなものに抑圧された時代、欲望のまま自分の思うがままに世の中を立ち廻る悪党にちょっとした憧れを持った人が多かったんでしょうか?…にしても極悪非道過ぎるだろ!

劇場
歌舞伎座
日時
2018.4.12(木曜日)/16:30〜

幻想神空海(四月大歌舞伎)【歌舞伎座】

【四月大歌舞伎】夜の部、最後の演目を幕見。 遠征前に演目と配役を見て「幕見でイイかな…」 歌舞伎座が新しくなって幕見席はまだ体験してなかったし。
久々の幕見席は、すっごくシステム化されていて、ビックリしました! チケットもハンコをパンパン押して、定規でビリッと切って渡されていた頃を懐かしむほどの美しいプリントアウトのものになっていて…。 すみません!すごく今更な感想なんでしょうけど。

ここ数年、更に意欲的に作品を生み出す事にチャレンジされている印象の染之助さんの新作歌舞伎【幻想神空海(げんそうしんくうかい)】、原作は夢枕獏さん。 筋を全く頭に入れずの予備知識なしで観劇に臨んだので、物語に入り込むまで「???」
と、時間がかかってしまった失態。

唐の国で留学中の染之助さん@空海松也さん@橘逸勢が、化け猫騒動からの発端に、唐王朝の秘事に係る事件に巻き込まれ、果ては雀右衛門さん@楊貴妃に行き着き…という摩訶不思議なファンタジー演目。
舞台美術が大掛かりで、唐の国の衣装が華やか、レーザーやスモークを使った演出も目新しく派手なんだけど…幻想世界だからか、舞台全体がず〜っと暗いうえ展開が遅く感じ、睡魔が…。  ラスト壁に文字を書く演出は「teamLabか?!」音楽の中華風味は言わずもがですが、なんと染五郎さん@空海が中国琵琶を弾き語りし、生歌披露のおまけ付き。
雀右衛門さん@楊貴妃を取り合っていた友人関係?の二人は、又五郎さん@白龍歌六さん@丹翁?  やたらと「貴妃を抱いたのじゃ〜」と言い合うセリフが異質に感じて違和感が〜。

観劇後「…で?」という感想が残る不思議。

劇場
歌舞伎座
日時
2016.4.22(金曜日)/18:53〜

壽初春大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

 💡 廓三番叟
三番叟で廓?…とは“廓の情趣に仕立てた三番叟”との事。 朝イチに華やかな舞踏。 孝太郎さん@傾城千歳太夫種之助さん@新造松ヶ枝染五郎太さん@鼓持藤中

 💡 鳥居前
児太郎さん@静御前! 記憶よりも、また更に背が高くなった印象で、かなり膝を折っての奮闘ですね。 やはり女形で進まれるんでしょうか? 表現はおかしいかもしれませんが“とっても真面目な静御前”でした。 そして私的に“小忌衣が似合う男No.1”の門之さん@助源義経。 「良きに計らえ」感がすっごく似合うと思うんですよね〜。 児太郎さんとの共演は初めて拝見したので、目に新しい!  そして松江さん@逸見藤太って!こちらも初めて拝見したかも? キビッキビッと小気味良いです。 橋之助さん@佐藤忠信実は源九郎狐彌十郎さん@武蔵坊弁慶

 💡 梶原平三誉石切
私的「まぁ〜た、これかよ!演目」のひとつ。 石切梶原って、どこがそんなに人気でこんなにまでかかるのか不思議で仕方がナイのですが…座を組んだ時に、役者の配役バランスが良いでしょうか? 吉右衛門さん@梶原平三景時に何の不満もナイし、拝見すればそのひとつひとつの型に見入るのですが。 芝雀さん@梢は可憐でいながら、結構お父さんを雑に扱うのがツボ(なんとなく)。 雀右衛門を襲名されたら、もう演じないかもしれないですね? 歌六さん@六郎太夫は、歌六さんってすっかり爺役者になってしまって…もっとスッキリと男前の、あのイイ声が響くお役で久しく拝見してない。

 💡 茨木
玉三郎さん@伯母真柴実は茨木童子!! でもって鴈治郎さん@士卒運藤もご出演だったというのに…帰りの飛行機の時間の都合で、観劇叶わず。 かえすがえすも残念無念〜!