花形若手歌舞伎【国立劇場】

『国立劇場新作歌舞伎脚本入選作品』という事で、その上演に至るまでは数々のご苦労があったんだろうなぁ…と思いながらも、観客としては初めて観る作品にワクワクしながら劇場に足を運びました♪

 💡 冬桜
あらすじ 鎌倉幕府に仕える御家人ながら所領を失い、没落した武士・佐野源左衛門常世(歌昇さん)が主人公。 妻・弥生(芝雀さん)と二人で村はずれの雪深い寂しい一軒家で慎ましく暮らす姿には、過去を忘れようとする様があり痛々しい。 ある大雪の夜、旅の僧・後に北條左近将監時頼(愛之助さん)が一夜の宿乞いに訪れた事から“自分自身と向き合う”本来の自分を取り戻す常世であった…。

失意の夫を支える芝雀さん@弥生の献身的ぶりが胸を打ちます。 真冬にも見事な桜を咲かす鉢の木(冬桜)は、夫がかつて鎌倉御家人であった事を刻みつける思い出がある為、大切に育ててきた鉢植え。 しかしこの鉢植えを売って金に変えてしまおうとする夫に、かつての御家人としての気高き夫も消えてしまうのではないかと感じ、自分の髪を切って金を工面しようとする姿に涙。 目で必死に訴える様がなんとも痛々しく“懸命に夫を支える妻”を好演。 愛之助さん@旅の僧は、そのスッキリした姿や、常世に“生き方”を語るくだりには 後に家督を継ぐ執権職となる人物、という大きさが感じられて◎
旅の僧に暖を与える為、大切な鉢植えの桜を斬って薪とする見せ場では“本来の自分”を取り戻した常世の心の移り変わりの様に、驚きながらも弥生の気持ちと一緒になって喜んでしまいました♪
二幕目は幕府執権職となった僧侶・北條左近将監時頼と常世夫婦が対面するのですが…ちょっとラストが難解でした(@_@)

 💡 秋の河童
“歌舞伎初の試み”として主人公にしか見えない河童を再現する為に“モーションキャプチャー”を採用した事で話題の舞台。 スクリーンに映し出される河童と主人公のやりとりはコミカルで、大いに客席が湧きました♪

あらすじ 愚図でのろまだか、人が好くて世話好きな飾り職人・常次(翫雀さん)が主人公。 近頃は、川で釣ってきた河童の太郎の世話をしながら仲良く暮らしている。 我がままな女房おすが(芝雀さん)は情夫・徳蔵(信二郎さん)と共謀して常次を殺そうとするが、河童の太郎が「ご恩返し!」とばかりに常次のピンチを救い、二人の悪事を暴くのであった…と、別題“河童の恩返し”といった所…かな?

筋書きに『翫雀の常次は余人を持って替えがたいピッタリの役』とありまして…ホント、翫雀さんの愛嬌ある雰囲気が常次のキャラにピッタリ~♪ 常次にしか見えない河童を表現する演出は、翫雀さんの一人芝居だったり、スクリーンに映し出される姿だったり、傘や着物が一人で宙に浮いたり…と様々な趣向で楽しめて、客席には子供も結構いましたが声を出して笑ってました! 情夫と共謀して夫を殺そうとする芝雀さん@おすがは、綺麗な顔をしているだけにその残酷さが引き立ち、冬桜とは正反対のキャラを演じわける“芝雀さんの変身ぶり”にも驚かされました。 長屋のおせっかいおばさんを演じる京蔵さんがイイ味出してました♪ お話自体はちょっと“まんが日本昔ばなし”のような感じで、ほのぼのと楽しめる作品でした。

三月大歌舞伎・昼夜【歌舞伎座】

「仁左衛門さんと玉三郎さんが【二人椀久】をする事があったら、絶対観に行く!」と長いコト待ち構えておりました! 「孝太郎さん@千鳥、今度あったら絶対観に行く!」これまた待ち構えておりました~!

昼の部

道元の月

立松和平さん書き下ろしの新作歌舞伎。 永平寺で修行を積む僧達の姿、そしてそれを見守る三津五郎さん@道元禅師の厳しく威厳のある凛とした姿に加え、山深く青々とした澄んだ空気、雪深く真っ白に洗われたような…清らかな空気感が感じられました。 とにかくセットが素晴らしかった! 橋之助さん@北条時頼は戦国の世にあって、心の平安を求めて苦しむ様を好演。 印象に残りました。

文屋

富十郎さんの舞踏は観ていて気持ちがイイ! 文屋康秀を取り囲む官女たちは、昨年12月にお三輪ちゃんを虐めていた役者陣再び!というメンバーで、そのコミカルさは健在!爆発! 大いに笑わせてもらいました。 個人的には錦弥さんの官女姿に衝撃を受けました~。

一本刀土俵入

時蔵さん@お蔦は初役との事でビックリ! 捨て鉢になって昼間から酒をあおりながらの“越中おわら節&三味線”にホロリ。 「横綱のたまごは泣きべそだねぇ…」のセリフがしんみり耳に残りました。 好きだったのは、利根の渡しの場での幸右衛門さん@老船頭芦燕さん@清大工の絶妙なコンビネーション! ほのぼのした会話のやり取りにニッコリ♪ 高麗蔵さん@若船頭の姿に衝撃! だって今まで綺麗なこしらえ姿しか拝見した事がなかったから…ね、私。

二人椀久

綺麗。 ただただ綺麗…。 玉三郎さん@松山太夫の出の立ち姿の美しい事といったら! 仁左衛門さん@椀屋久兵衛と二人が寄り添うたびに客席からは溜め息がもれ、満開の桜の艶やかな舞台に一転すると「うわぁ~っ♪」感嘆の声が上がりました! 久兵衛と一緒に夢を観ているような、それはそれは美しい舞台でした…。

夜の部

俊寛

幕が開いて、友右衛門さん@平判官康頼が千鳥を呼びに行こうとする前から、私、左後方(席=へ列中央)へ構えの体勢。 「待ってました!」の孝太郎さん@海女千鳥の“恥じらい引込み”。 「ぎゃ~っ! 可愛かぁ~♪」 それ以降、スイマセンけど…千鳥しか観てません! 純粋で、一生懸命で、情熱的な千鳥に「頑張れ!頑張れ!」って足をバタバタ、手はず~っとグーで観ていのたで、観劇後、グッタリでした。 もう…「千鳥は孝太郎さんでお願いします」
ラスト、去り行く船を見送る、幸四郎さん@俊寛僧都の静かな眼差しは、絶叫を繰り返すよりも…胸に突き刺さりました。

十六夜清心

“通し”では久々の上演との事。 「こんなに笑える面白いお話だったんだ…驚き!」というのが正直な感想です。 序幕での、川のセット(仕掛けの工夫)に感動! 勘太郎さん@恋塚求女が、仁左衛門さん@清心に殺され川に投げ込まれる場面では、舞台セリの中にドンと突き落とされて、浪後見?がササッと浪幕?を引いてセリの穴?を隠す…というのは初めて観たので、すっごく面白かった!
清心と玉三郎さん@十六夜(おさよ)の小悪党に落ちぶれる様は、その容姿やセリフ回しの変化が存分に楽しめました~! 大詰「また、こうして二人で仕事が出来るのも、ご見物衆のお陰だなぁ…」との、おさよの花道でのセリフに客席、大喝采!
あと気になったのは秀太郎さん@白連・女房お藤。 妾のおさよに嫉妬しながらも、涙もろくて情に熱くって、可愛い感じ♪ そして…いわゆる“おいしいところ”を大詰めでドカーンと持っていっちゃったのは…亀蔵さん@下男杢助(実は寺沢塔十郎)でした! 大爆笑! あ~、笑った、笑った~♪

新・三国志II【博多座】

前回のPart1は“大千穐楽”という事もあって、遠征組も多く、熾烈なチケット争奪戦のうえ、補助席、立見席…と観客も興行主も大変な騒ぎでした~。 今回は翌4~5月に新橋演舞場にて2ヶ月の凱旋公演が控えていましたので、パニックにはならなかったようですが…それでも、連日大入りのようでした。 昨年末より体調を崩されていた段四郎さんの代役で金田龍之介さんが登場。 戦う女形・武旦はこの公演よりWキャストとなりました♪
平成15年には新橋演舞場でPart3が2ヶ月間上演され、その後すぐに博多座へ登場します! なんか… スゴイぞ博多座!

一幕

新橋演舞場で5月に観ていたのですが、その後、御園座~松竹座と経て、かなり演出が変わっていて楽しめました♪ 特に初見では今イチそのキャラクターに馴染めなかった笑三郎さん@ 祝融は“恋する乙女”色が強くなって、かわいらしくなっていた事に驚きました! 寝所で孔明に拒否されて、ふくれっつらで足をブラブラさせるだなんて(*o*) 博多座公演では、祝融に対する客席の反応ってスゴク良かったと思います。 九州女と気質が似ているのでしょうか♪ 戦う女形・武旦は今公演から沙立金くんに加えて馬笑くんがWキャストとして加わりました。 シャープな沙くんと柔らかい感じの馬くん、さすがの立ち廻りで圧倒されました! !

二幕

『泣いて馬謖を斬る』にふさわしい、孔明の愛弟子・馬謖の演出になっていました♪ 功を急ぐあまりに惨敗する前は、特に目立った活躍もなく「そこまで号泣しながら斬るような武将なの?」と疑問を感じていましたがこれにて解決! 一幕でも、敵軍や戦法を孔明に進言する場面 が増え、孔明との師弟関係も解りやすくなっていました。 初めての大役を立派に果そうと、一人いきがる様子は◎だったけど、猿也さん@王平とは、ただ仲が悪いようにしか見えなかったのは残念! 処刑のシーンは特に変化はなかったけれど、処刑台に立って振り返りセリ上がって行く所の表情は◎ “星になる”にふさわしい、まるで悟りを開いた僧のような感じでした。
そして…馬謖を失った猿之助さん@孔明の心の痛み・苦しみがとても増していて、心を打たれました。

三幕

歌六さん@関平の、死を覚悟したセリフに泣けました…(T-T)  今年2月の松竹座から私の中で歌六さん、赤丸急上昇!なんです(*^-^*)  天水城での本水を使っての立ち廻りも、全身全霊の気迫がスゴクて感動しました! でも、亀治郎さん@安仁は気合いが入っている時とそうでナイ時の差が激しくて、観ていてとても残念だったな…。 孔明の命がつきる“五丈原”での夕日 ~夕暮れは「博多座が一番キレイ!」でしょう、多分!と思うほど♪ バックスクリーンに映し出されたその鮮やかな色から日の落ちる様までの色の変化がなんとも自然で美しかったです。