NINAGAWA十二夜(考察:安藤英竹について)【博多座】
2005年7月、好評を博した歌舞伎座初演からの再演となる今博多座公演。 再演にあたり新たに手が加わった部分も所々にあり、上演時間をトータルすると多少短くなっているようです。
私は初演の舞台は映像でしか観ていないので、画面に映っている部分でしか比較が出来ないのですが…「なるほど、あそこはカットしても充分通じる♪」とか「コレを加えて解り易くなった☆」とか「こう変えてきたか~」「ん…前の方が好きかも?」というような発見も楽しく、今観劇のポイントのひとつ。
冒頭の船が遭難する部分のスペクタクル度UPと、洞院と庵五郎が、獅子丸と英竹をたきつけて決闘をけしかける…二人のへっぴり腰っぷり(特に動揺してすっかり女の子になっている獅子丸)にお笑い度が高くなっていて、ここは改訂GJ
ほぼ初演時の役者陣の再登板!という中にあって、右大弁安藤英竹が松緑さん→翫雀さんへ。 初演時には「あのような道化役を松緑さんが!」という意外性も手伝って、大変好評だっただけに、この度の配役には…私、翫雀ファンとしてはまさかのキャスティングに“めちゃくちゃビックリ&多いに不安”でありました。 …というのは元来、愛嬌ある道化役…というのは翫雀さんのハマる所とするだけに、松緑さんに感じた意外性には欠けるし、この座組とのコンビネーションの程が推量できない~。 そこへ初演をご覧になっている方からは「翫雀さんの英竹はどう作ってくるのか?」という注目度はどうしても高くなる訳で…。
…な、訳で以下は翫雀さん@右大弁安藤英竹の感想のみ! どうしても贔屓目が激しく入ってしまっているので、それを差し引いて…宜しくです
作りは…いかにも娯楽と快楽、オシャレにふけり、自分を恋の達人色男と激しい勘違いをしているナルシス阿呆公家風情。 松緑さんほど道化っぽく作っている訳ではなく、一応キレイなお公家さんで、首元にはラメ入りのスカーフを巻き、髪にはメッシュを入れている…という“かぶき者”。 仏国?の言葉が得意との設定故か(洞院のセリフより)所々に“フランス語っぽいセリフまわし”の、見事なまでの空振りのキザっぷり。
故に前半は洞院と麻阿からもバカにされている…という印象は薄く、三人が悪巧み遊び仲間、という感じにも取れて道化ぶりが薄く感じるので、物足りナイような。 “織笛姫、好き!好き!”という感じが弱いので、後半、姫を巡って獅子丸に決闘を申し込む下りが唐突に思えるような気がしました
後半、庵五郎が登場してからは、洞院+麻阿とこの三人からも弄ばれている様が強くなり、初演の英竹のスタンスへ。
獅子丸にたたきつける果たし状の文面は初演のままなれど、自分の書いた素晴らしく勇ましい文章に酔いしれているナルシスっぷりはひどく滑稽で笑える~。
決闘を挑む拵えの重装備っぷりに、その臆病の様が伺えて面白いっ! 装備が重過ぎてか?体型からか?(失礼!ファンです)息切れ具合も激しくて、コメディ度UP
これからも舞台を重ねるにつけ試行錯誤されながらどんどん進化していくのでしょうから、また千穐楽近くには違った印象になるのかもしれません(現時点では初日+9日観劇)。
思ったのは、この右大弁安藤英竹という役所はそのキャラクターを固定せずに、その時、その時に演じる役者さんの個性に合せてカスタマイズしていくタイプのお役となっていくのでは?と。
またのNEW英竹の登場も楽しみに待つ希望が持てる、今再演の成功!となりますように…。
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