三月大歌舞伎・夜の部【平成中村座】

平成中村座に足を踏み入れるのは2003年以来の9年振り(そんなに経ってたなんてビックリ!) まさかこの小屋で中村屋の襲名公演が観れるとは! 小屋内もお祝いムード一色の雰囲気で「誠にめでたい!」 WOWOWの収録が入ってました。 小屋からは…ってか浅草に居ればスカイツリーってどこからでも見えるんですね♪
今回初めて二階席で観劇したのですが…腰掛け部分が浅いんですね。 観劇後は体をひねりすぎて、軽い筋肉痛でしたが、この窮屈感も“ならでは”の楽しみなんでしょうね。

傾城反魂香

私、今回は「中村座にお祝いに行く事」が大目的になってしまってた為、演目や配役を全く把握せず観劇に臨んでしまったので…花道、仁左衛門さん@浮世又平勘三郎さん@女房おとくの出で「うぁ♪豪華~☆」とテンション↑ 一球入魂で手水鉢に描いた又平の手が固まって筆を離すことが出来ないでいた所を指を一本一本外してさすってあげる女房ぶりが本当に素敵で夫婦愛がじんわり感じられ涙。 絵が抜けた様に驚く様はひどくコミカルな感じを受け戸惑いましたが、前半の悲劇から思いっきり振っての後半の喜びの様は解りやすく「良かったね…ホント良かったねぇ」と客席の誰もがニコニコと夫婦を見守る感じの空気感。 最初は厳しく突き放しながらも、最後は微笑ましく夫婦を見守る亀蔵さん@土佐将監光信は重厚さもあってイイ。 こういう大将的な、師匠的なお役って珍しいですよね。 しかし私…猿弥さん@狩野雅楽之助の記憶が一切ナイ! 部分的に気絶してた模様で情けない~。

六代目中村勘九郎襲名披露 口上

下手より…扇雀亀蔵笹野七之助勘九郎勘三郎我當進之助海老蔵仁左衛門
我當親子は中村座初お目見えらしく、また笹野さんがこの席に居並んでた事にすごく驚きました。 背景の襖は一面の桜で華やか。 平成中村座も平成12年に初公演で、12年を経て襲名披露公演を興行しているとは…小屋も嬉しいだろうなぁ~。 仁左衛門さんが今公演の【御所五郎蔵】で「勘九郎に教えたものは、先代の勘三郎さんに教えていただいたものをその孫に伝えたまでだ」というお話にジーンときました。 笹野さんの「7年振りに勘九郎が帰って来てくれた!…では、勘太郎はどこへ?」という襲名に対するごくごく一般的な疑問の挨拶に笑えました。 疑問!中村屋は兄弟と父親の裃袴の色が違うのはどういう意味が?

御所五郎蔵

両花道で観劇するのは久し振り。 それがまさか中村座で仮花道が出来るとは思わずビックリ! 長さは平場席くらいで階段がスライドで出る造りになっている工夫が面白い。 勘九郎さん@御所五郎蔵の花道の引っ込みは大迫力。 笹野高史さん@花形屋吾助の癇癪具合が可笑し味があって楽しい♪ 七之助さん@傾城逢州、と~っても綺麗ですね。 なんか…最近特に綺麗になった印象を受けてます。 御所五郎蔵に襲われた高下駄で素早く舞台奥へダッシュしたのには驚き~。 改めて五郎蔵の「逢州さん、後から逝くから堪忍して~」ってそりゃあんまりな~。 海老蔵さん@星影土右衛門が実は忍術が使える…ってな事がちょっと判りにくい演出だなぁ…と思っていたら、切口上で〆。 中村座って盆ありましたっけ? それともセット本体に車輪が付いててスライド回転(コクーン式?)なのかな?

元禄花見踊

児太郎虎之介鶴松宜生国生…とお子様大集合☆ 虎ちゃんは久し振りに拝見したけど目がクリッとしてて可愛い~♪ 夜の部最後の演目にお子様ばかりの舞踏って、法律的に大丈夫?…なんでしょうね。 国生くんは…顔が何故だか錦之助さんに似てませんか?
で…終わってみて「あら?意外に…勘九郎さんの印象が残ってナイ
今回は残念ながら昼の部の観劇は叶いませんでしたが、これから続く襲名披露公演、引き続き大盛況となりますように☆

平成中村座歌舞伎公演・昼の部【平成中村座】

昨年の大阪・扇公園での平成中村座の感動を期待して、二度目の平成中村座、行って参りました! 今年は歌舞伎発祥四百年という記念の年、の上、江戸開府四百年。ということで今回は浅草一帯が テーマパークのようになっていて 平成中村座も境内の一角に建つという嬉しい趣向。 前公演ほど、役者衆が客席や小屋周辺にこしらえで出没する趣向やおふざけ(語弊が あったらご容赦、あえてそう言う)はなかったけど、やっぱり中村座の雰囲気はなん だかワクワクさせられる♪
翌日の千穐楽は小屋の裏手から岩藤浮遊の舞台裏を目撃!

加賀見山再岩藤

勘九郎さん望月弾正、鳥井又助、奥方梅の方、岩藤の亡霊…と四役を兼ねる。 加賀見山再岩藤って私自身は、猿之助さんのしか拝見した事がなかったので、串田さんの演出も含め、ことのほか楽しみに観劇。 会場に足を踏み入れると薄暗く、舞台や花道の上には動物の屍がゴロゴロと置いてあり、すでに不気味な雰囲気をかもし出していて、舞台が始まる前のワクワク感が いっそう高まった。 他の演出の中でもガラス…というか、鏡をつい立に使っての巧みな早替りの演出は面白かった。
見どころのひとつ桜満開の岩藤の亡霊の空中散歩【花の山の場】。 遠見のお子様も愛らしく下手から 上手へ…そして勘九郎さんが花道七三で振り返るとパッと華やぎ、自分の企てにウットリしながら自信満々の花道引っ込みの表情がすごく印象に残った。

浅野川々中船中の場では、舞台上設けられたプールでクロールを披露する勘九郎@又助さん。 大奮闘に客席は大喝采。 クロールって…あの時代、日本でもメジャーな泳法だった のね♪

多賀家奥殿草履打の場。 草履打ち、最大の侮辱行為だけに打つ方も、打たれる方も気迫のこもった真剣勝負の場なので、いつも気が付けば手を力いっぱい握り拳で観ているなぁ。

鳥井又助切腹の場今回の志賀市は清水大希くん。 全然知らなかったので、ビックリ嬉しい♪ 志賀市といえば琴を弾きながら歌うという難役。 それをあんなに小さかった大希くんが演じるだなんて~(親戚のおばちゃん状態)花道での苛められながらの出、もうそれだけでウルウルしてしまった。 志賀市の『妹背川』、案の定ボロボロ泣いてしまった。 公演パンフレットにも勘九 郎さんの大希くんに対するベタ褒めのコメントが載っていて、なんだか感動してしまった。
扇雀さん@花房求女。 私、今まで 今イチ扇雀さんの立役って馴染めなかったんだけど、今回、スコーンと私の中ではハマりました! 声、姿とも品良く美しかった。 今の今まで、七之助さん@おつゆと固めの杯を交わしたというのに、勘違いから態度 を豹変させるところは、「きちんと確かめろよなぁ…」と毎度の事ながら呆れながら 腹立たしい求女という男ぶりがよく出ていたと思う。
主人のために良かれと思ってした事が裏目に出てしまう哀しい男、又助。  勘九郎さんの四役の中でやはり一番ハマっていたと思う。ラストは舞台奥が開いて、クレーンに乗った岩藤の亡霊が客席上を浮遊。 まさに串田演出、という感じで あろうが「やっぱりね…」と「もっともっと」とソレ以上を望むものだなぁ…と演じる側にはちょっと残酷な気がした。

平成中村座歌舞伎公演・夜の部【平成中村座】

今回は1泊2日の遠征で、観劇予定を2日に分けていたけれど…チケットが取れず、昼&夜の通し。 夜はさすがに冷えて、貸出の毛布を借りて、腰~足をにしっかり巻き付けて観劇しました♪ 終演後は恒例の振舞い酒をいただき「来年、またこの小屋に来るわよ~」と誓って、 小屋を後にしました。

弁天娘女男白浪

個人的には七之助さん@弁天小僧菊之助は、線が細すぎてなんだかちょっと痛々し かった。 これは全く個人的な感想なのでご容赦。 お嬢様ぶりは小さな小屋で間近で見ても、と~っても美しく、綺麗♪

稲瀬川勢揃いの場

では、各々花道入って最 初のキメ!では花横のお席だった私の真横で五人が、私の為に見得を切ってくれたようで舞い上がってしまいました~。
何度観ても台詞回しの心地良さと歌舞伎の様式美にウットリ。 小屋が 小さい分間近で迫ってくる迫力が今までよりもあって、良かった…ホント、良かっ た~。

本朝廿四考・奥庭狐火の場

改めて、文字にしようと舞台を思い出してみると…あれ?思い出せない。 子役が演 じる小狐ちゃんがエラく可愛かった印象はあっても、福助さん@八重垣姫は…。

人情噺文七元結

坂東新悟くん@お久。 私は今回が舞台での新悟くんを初めて観たけど…変声らしく、声がヒドク聞きづらく不快。 弥十郎さんに似て、背が思いっきり高くなりそうな感じだから、もしからしたら今回は貴重な女形を見れたのかもしれない。 勘九郎さん@左官長兵衛が、七之助さん@文七の自殺を止める場面。 客席から度々笑 いも起こるけど、やっぱり胸にジーンと来るシーンだ。 「死んじゃいけねぇよ。死 ぬんじゃないぞぉ~」と、走りながらの花道の引っ込み。 文七が渡されたものが本 当のお金だと判って「親方ぁ~っ!」と絶叫するシーンはウルウル来てしまった。 そしてそして、今回特質すべきは扇雀さん@女房お兼! 今までは、どちらかというと、オロオロした気弱なお兼像しか観た事がなかった私。 ヒステリックにギャンギャンと騒ぎたてるお兼に衝撃、そして初めて観た“汚いおばちゃん役”の扇雀さんにまたまた衝撃。 上手いっ! 昼・夜の部を通して、今回は扇雀さんの新しい一面が観れた、芸域の幅を観れた舞台 だったなぁ…と思った。

夏祭浪花鑑【大阪平成中村座】

「大阪でやるんだったら絶対この芝居を!」と勘九郎さんが熱望しての上演となったそうで、その意気込みはド肝を抜いた演出と、それをあます所なく演じ切った役者陣、スタッフに熱意に現れ、観客にビンビン伝わってきて…ラストは小屋全体が揺れるようなスタンディングオベーション。  歌舞伎でこのような体験をしたのは初めてだったので、今後この演目を他の小屋で観た時に何かモノ足りなさを感じるのでは?という一抹の不安もあるような…そんな衝撃的な舞台でした。

長町裏の場

コクーン歌舞伎での演出が踏襲されているそうですが…、私は初見でしたので、蝋燭の灯りだけで照らしだされる勘九郎さん@団七久郎兵衛笹野高史さん@義平次の、この“泥場”は衝撃的でした。 本当の殺人現場を目撃しているような、固唾を飲んで見守るような…そんな感じでした。
この場では見得が13回あるそうで“殺し場の様式美”とでもいうのでしょうか?  祭りの音楽の高鳴りにつれ、髪を振り乱し、白い体には一面の刺青と真っ赤な褌。 その姿が見得を切る度に蝋燭の灯りで暗闇から切り取られ、陰惨な場面 ながらも、色彩美や型に「綺麗…」と思ってしまいます。
特筆すべきは笹野高史さん@義平次でしょう! 臭ってきそうな汚いこしらえに加え、鶏ガラのようにヤセ細った様が、目を異様にギラギラと際立たせ、地獄から這い上がってきた餓鬼…とでもいいましょうか?  笹野さん、という役者さんではなく“金の亡者”の化身が目の前に確かに居ました! スゴイ!

祭りの音楽も最高潮に達した時、舞台奥の幕がサッと降りると暗闇が一瞬にしてまばゆいばかりの明るさ! 「えっ?! 一体何が起こったの?」と目をこらすと、舞台の奥には公園がスッポンポンに見えているではあ~りませんか~~!!(中村座は扇町公園内に建設) 福島天満宮地車講社中のお囃子に合わせて、祭りの衆が舞台や小屋の外いっぱいに踊り出ての演出ド肝を抜く演出。 スゴイ~! ビックリ~!

屋根の場

義平次殺しの追っ手から逃げる勘九郎さん@団七久郎兵衛を橋之助さん@一寸徳兵衛が手助けをしながら、応戦していく立廻り。 ミニチュア版の建物が舞台狭しと並べられ、二人ともさながらガリバーのような感じで次々と見得を切っていく。 その度に黒子さんたちにより建物の配置が変えられたり、はたまた二人の人形までが飛び出して大屋根の上で立廻ったりと息をもつかせない…と、思っていたら!

な、なんですとぉ~! 追っ手から逃げる二人は舞台奥へダッシュすると、またまた幕が切って落され、公園がスッポンポ~ン! 舞台から飛び出した二人は小屋の裏の階段を走り降り、公園に向って一目散に走っていく~! ついに二人は観客の視界から消えました。 すると…小屋全体がやんや、やんやの大騒ぎ! 手拍子の“戻って来いコール”の嵐となりました!
観客総立ちの舞台に戻ってきた二人は…団七と徳兵衛ではなく、勘九郎さんと橋之助さんになっていました。 そこで一気に出演者一同が舞台に出てのカーテンコールへとなだれ込み。 う~ん「ニクよこの!ド根性ガエル!」って感じの演出でした。

法界坊【大阪平成中村座】

平成中村座への遠征の機会をず~っと伺っていたものの、なかなか都合が合わず悔しい思いをで見合わせておりました。 平成13年の【義経千本桜】の試演会の様子を伺っていましたので「今度、小屋が建ったら、何処の地でも遠征して試演会まで観る!」と心に決めていましたので、念願叶ったり!だったんです♪
「小屋自体は“八千代座”みたいな昔の芝居小屋の再現なんだろうなぁ…」と、イメージはできていたんですが、開演前や幕間などにも役者さんが客席や小屋の外までこしらえのまま出てきての楽しい演出には驚かされました♪ 特に【夏祭浪花鑑】なんて、小屋の外で喧嘩が始まって…それが舞台の開幕へと繋がるのでたまりません! “芝居を楽しんでもらおう”という興行側の熱い思いがひしひしと伝わってきましたが…ホントは演じるご本人達が一番楽しんでいるのではナイでしょうか~♪という感じでした。

法界坊

前回の舞台を映像で観てはいたのですが…やっぱり“ライブ”は違う! “笑い”を含めた演出はそのまま踏襲されているのですが、また笑えました。
今回はやはり“二人の怪優”に目が釘付け!  まずお一人目は…亀蔵さん@番頭正八。 前回より更にパワーアップした弾けぶりで、その様子は“エクソシスト状態”と称されていました?!
悪事をとがめられてハッ!と口を閉じるところでは両頬をリスのようにパンパンにふくらませるのですが、漫画キャラのようなお顔で大爆笑! 扇雀さん@おくみさんへの迫りぶりは、もう…常軌を逸しているとしか~。 で、その後に勘九郎さん@法界坊と熱烈な熱いキス! 舞台に上がると人格が変る…という役者さんは数多くいらっしゃるでしょうけど、亀蔵さんはその最たる部類に入るのでは?!
そして…お二人目は笹野高史さん@山崎屋勘十郎。 まずは“中途半端な白塗り”で笑いを取り、側転で身のこなしの軽さで驚かせ、そして“連続カンニングペーパーの場”?!では共演者達をも笑いに引込んで、場内は大爆笑! 毎回、どこかしら意表をついた所にカンペを仕込んでいるらしく、取り上げられても次から次へと出てくる出てくる~。
テレビではあまりコメディタッチのお役で拝見した事がなかったので、驚きでしたが…“54歳”という年齢に一番驚きました?!
あと、芝のぶさん@野分姫は、浮世離れしたおっとりした雰囲気がよく出ていて好演でした♪
法界坊名物?“日本一低い宙乗り”では、上手の一番端のお席だった私の上に勘九郎さん@法界坊&野分姫の霊が垂直に降りて来て…私、スッポリとお着物の中に入ってしまいました!
法界坊と野分姫、二人も殺されてしまうお話なのに…「あ~、笑った、笑った~」という感想で…いいのかしらん?

双面水照月

橋之助さん@甚三郎女房おさく。 私、自分の記憶によると…橋之助さんの女形って映像でも観た事がなく、今回が初見でしたので衝撃的でした!
スッポンは人力なのでカクカクカク…と上がってくる様が、なんか“ゼンマイ仕掛けの人形”をイメージさせ、より妖気を醸し出していたような印象を受けました。
今回、衣装の細部まで観る事ができましたが、霊とおくみ、松若のお着物の紋は三人が手にしている“葱籠”なんですね! 細かいなぁ…。
いつもながら小山三さんのソツのない素晴らしい後見に見入ってしまいました。