第五回・浪花花形歌舞伎(第一部)【松竹座】

今年で5回目となる今公演。 私にとっては好きな役者さん大集合!なので『4月は松竹座遠征』が恒例となり毎年楽しみにしている公演のひとつ。
しかしながら~毎年ひとつは復活ものや新作をかけていたのが今公演ではなく、公演が始まった当初〈Aプロ〉〈Bプロ〉と同一演目を配役替えでやっていた試みなども、いつの間にやらフェイドアウトしてしまって…演目発表後今イチ遠征に乗り気ではなかったのですが、今回は翫雀さんのご長男・壱太郎くんが初参加!という事で、どんな新風を吹き込んでくれるのかに期待して足を運びました。
「こんなキャパで、こんなメンバーの、チャレンジ歌舞伎をこんなお財布に優しい価格で観れるなんて…うらやましいっ」とこの時ばかりは関西地区の方をホントに羨ましく思います。 しかし「さすが大阪!商売人!」と思ったのは、ロッカーに入らないコロコロ(=旅行キャリーバック)を総合カウンターに預けたら…お金を徴収された事! 他の劇場では軒並み無料で、未だかつて有料だった事がなかったのですっごく驚きました汗

 道行恋苧環
定式幕が引かれると「あれ?葵太夫さん、先月懐かしんだ“あぜ道カット”じゃナイじゃ~ん」とちょっと残念…ってチェックポイントはそこかい汗 葵太夫さんを今公演でお見かけするのは珍しいような?
壱くん赤姫
壱太郎くん@入鹿妹橘姫は、打ち掛けを取ると…「か、可愛い~っ☆」「お人形さんみた~い☆」 体は華奢なうえ顔の造作、特に横顔がまだ子供であどけなさが残ってるんだけど、こんな年相応のピチピチの赤姫って久しく観てなかった汗から見入ってしまいました~。 “こなす”のが精一杯、という感は否めませんでしたが「あの壱くんが~、壱くんがぁ、立派になって…」と親戚のおばちゃん状態で感慨深く拝見。 孝太郎さん@杉酒屋娘お三輪、扇雀さん@烏帽子折求女と居並ぶとすでに一番背が高く…けど一番顔が小ちゃいのはさすが現代っ子?! このまま背が伸びたらどっちに進むのかな? 楽しみでなりません!
“初役にチャレンジ”という方が多いのも今公演の特徴ですが、孝太郎さんが女形の大役【妹背山婦女庭訓】のお三輪へ!という事で期待に胸膨らませての観劇。 その孝太郎さん@お三輪は、求女に結んだはずの苧環の糸が切れていた事に気が付いた花道での引っ込みの「ハッ」とした表情が印象的でした。

 三笠山御殿
太夫さんと三味線さんの裃の家紋は…何ですか? 私の席からで判別不可だったのですが…鶴? どこの家紋か気になりました。
進之介さん@蘇我入鹿。 え~っと…第一声で椅子から転げ落ちそうになりました冷や汗 この言葉の使い方がこれほど適正に使われる事もそうそうナイかと思われるほど、まさにそうでした汗 スゴイものを観た…。 確かに役者さんとしてはチャレンジ公演の意味合いは強いですけど…お客はお金を払って観に来てる訳ですから、最低限の相応のモノはプロとして披露する必要はあると思うんですが~。 梨園に生まれる=歌舞伎役者、という宿命を受け入れてこの道に進んだからには例え不器用だとしても、もう少しなんとか~汗 進之介さん、歌舞伎好きじゃナイのかな?と思えたり。
脇では亀鶴さん@宮越玄蕃薪車さん@荒巻弥藤次がビシッ☆と締めてくれました。
愛之助さん@漁師鱶七のこしらえが私、好きなんですよね~。 あの團十郎格子の長袴ってカッコイイ! 「やっとことっちゃ~ うんとこな~」と弾んで大の字に寝るのは…全身打撲ってなくらいの豪快さに「痛そぉ~汗
楽しみにしていた翫雀さん@豆腐買おむら、下駄の音がうるさいくらい大きくて時々セリフがかき消されていたのが残念。 福々して愛らしい~♪(←多分、恐ろしく贔屓目) 笑いもバッチリ取って充分なごちそうになっていたかと☆ 「あばよ!」ラブリ~ときめき(←間違いなく贔屓目)
官女たちのお三輪ちゃんへの仕打ちは劇団四季ミュージカル【ユタと不思議な仲間たち】の冒頭のいじめシーンに匹敵するくらい、目を覆いたくなるシーン。 しかもこちらの方がネチネチと無駄に?長~いので、観ているとホント辛くなって「早く終わらないかなぁ~」と毎度思う悲しい 古典の本に沿っての演出でしょうけど、今公演くらい時流に合わせて一部はカットしても…と思ったり。 そしたらチャレンシ公演にならないのか?!
また、このいじめられっぷりは今まで拝見したどのお三輪ちゃんよりも、今公演の孝太郎さんが一番!に感じました。 健気でいじらしい感じがそう思わさせのか?表情が大きくてすごく解りやすいからか? しかし、独断場での語りが続くと…甲高い声がちょっと耳障りに聞こえてくる事が気になりました。
「糸が切れくさって~」「壊しくさって~」「盗みくさって~」って物言いに対して毎度客席に笑いが起こるのに戸惑いましたが…。 愛之助さん@金輪五郎今国刺されてからの顔は、まぶたに水色のシャドウを入れるんですね! 孝太郎さんって“目力がある”んだなぁ~と、刀が刺さったまま薄れゆく視力と意識の中でキッと見据える眼差しに惹かれました。 11日に拝見した時は三方が滑ってしまって、空手チョップで叩き割っていたのが…なんとも勇ましかったです(瀕死の状態なのに)
官女の長袴でトンボを次々と切って、愛之助さん@金輪五郎今国に切り掛かっていた方! 回転時の頭の位置がすごく低いし、袴が柵や鴨居にひっかかりそうで、観ていてすっごく怖かったです~。 特にトンボが上手い方が担当されているんでしょうけど、ドキドキしちゃいました冷や汗
この演目、お三輪ちゃんが散々頑張ったのに、ラストはなんで君がイイとこさらっていのくのさ!と毎度思わされる金輪五郎今国のラストのキメっぷりと、『爪黒の鹿の血と嫉妬の相をした女の生血を混ぜ、それを笛に注いで吹くと入鹿を倒せる』って…どんな理屈やねん!とザ・歌舞伎の「んな、馬鹿なぁ~汗」っぷりに苦笑させられる幕切れに満足させられるのは…なんでだろ?

壽 初春大歌舞伎・夜の部【松竹座】

弁慶上使

扇雀さん@おさわなんだか…ここ最近、頻繁に観ている印象(苦手な演目なのでなおさらそう思うのか?) とにかく、瀕死の娘が側に居るのに、その横で弁慶にクドキに入るおさわが嫌いなんです、この演目。 『弁慶の生涯でたった一度の恋』『弁慶の大泣き』という点が人気なんでしょうか? 『遭いはじめの遭い納め』という、悲劇性のせつなさは解るんですが。
新悟くん@腰元しのぶ・卿の君が好演。 しのぶは幸薄い儚げで可憐な腰元風情で「なんでこの娘が命を奪われなくっちゃいけないのさ!」と観客の同情を一気に引きつけるには充分。 ここで背が止まると、このまま女形へ…でしょうか? この線の細さは貴重な存在かと。

吉野山

観劇のほんの数日前に映画【earth】で吉野山の桜の開花を観て大感動していたので、その余韻そのままに舞台セットを見ても、ブワァ~ッと桜が霞のように広がっている様がクリアにイメージ出来て、それはそれは綺麗で…久々に【吉野山】を楽しめました(いつもは「また吉野山ぁ~?!」なんですが汗
もちろん三津五郎さん@佐藤忠信実は源九郎狐藤十郎さん@静御前という豪華顔合わせだった事も大きな要因。 私、この顔合わせで拝見したのは博多座での三津五郎さん襲名公演以来でした(その時の藤太は翫雀さん)
三津五郎さん@佐藤忠信実は源九郎狐さんの踊りは、本当に観ていてスッキリと心地がイイです。 坂東流の家元、踊りの名手…なんて予備知識がナイ方でもご覧になったら「この人は踊りが上手いっ!」と絶対思うはず!の流石さ。
橋之助さん@早見藤太は、日頃の二枚目ぶりがちょっと邪魔した印象。 道化役って難しいんだなぁ…と。

封印切

翫雀さん@亀屋忠兵衛×扇雀さん@傾城梅川。 実は、この兄弟コンビでの恋人や夫婦役って、お互いの事を恋慕う様が全く感じられなくて、苦手なんです。 なんか、どっか、すごく冷めてる印象で色気がナイんよね~。 視線が噛み合ないのは大きな要因かと。
翫雀さん@忠兵衛は手堅く、安心して忠兵衛の心に沿ってどっぷりと観劇出来ました♪ ただ、今公演全体通して声の強さ(他役者とのバランス)が気になった事も確かです。
竹三郎さん@井筒屋おえんもまた素敵☆
橋之助さん@丹波屋八右衛門もイヤ~な奴ぶりも、関西弁も大健闘なのでは。
扇雀さん@傾城梅川は…可愛らしさやいじらしさが感じられず、冷たい感じがするのは何故なんだろう? 目が無表情なのかなぁ?

壽 初春大歌舞伎・昼の部【松竹座】

毎年『歌舞伎はじめは松竹座』が恒例の私。 昨年はお江戸に浮気してしまいましたが…今年は原点に?戻って。 正直…今ひとつ心惹かれる演目がなかったのですが、他劇場観劇も絡めて検討すると「やっぱり関西遠征!」に決定☆ しかしその後、続々とお江戸のお正月公演の詳細が明らかとなり「もっと早く発表してくれればお江戸にしたのに~」と悔やんだ事も事実。
2泊3日、キツキツに詰め込んだ観劇スケジュールでしたが大いに満喫してニコニコで帰福すると…殺人的スケジュールの仕事が待ち構えておりました~冷や汗 よって観劇の興奮や感動もすっかり冷めてしまった…いずれの公演もとっくに千穐楽を迎えた後での遠い記憶?を辿りながらの観劇レポートなので、かなりテンション低め~ですが、自分の観劇記録としてUP。

葛の葉

昼の部、朝イチの演目から『中村扇雀宙乗り相勤め申し候』というお年玉。 この演目で宙乗りという演出も、扇雀さん@葛の葉も私、今回初観劇。
総体的な感想は「こんなアクティブ葛の葉はじめて!」。 正体を見破られて徐々に狐テイストが現れてくるくだりで、通力で扉を開けたり、屏風を返したりする様は裏方さんとの鮮やかな連携プレーでスピーディー☆ 字が上手い事で有名な扇雀さん、曲書きでは今まで拝見したどの葛の葉よりも達筆!(って後半は判断できませんが汗) しかしこの場って、こんなに自分を慕っている我が子と別れなければならない、母親の情を断ち切らねばらならない辛さ…などを感じて涙するのが常なんですが、それが殆ど感じられないアッサリした“曲書きを見せるだけの場”に終始したのは残念。
狐へと姿を変えてすっぽんよりセリ上がると面灯りが当てられて、天井から紅葉がヒラリ~、そして宙乗りとなり信田の森へ戻って…幕。 ん? んんん?
あの~、ラストはなんだか妖怪変化ぶりが強調されて不気味で怖いんですけど汗 葛の葉を観ていつも感じる、愛する人の元を去らなければならない悲しさ、辛さを感じで胸が締めつけられる…あの余韻が全く感じられナイ。 前段の芝居は“宙乗りやります!”の助走のようでいて、全く違ったテイストにブチ切れている印象が強く「なんか…もったいない」と思ったのは私だけでしょうか?
今回、初めて知ったのは、冒頭で息子(後の安倍清明)がトンボを捕まえて持ち歩いているのは“虫の殺生=狐の血が流れている”という伏線がある、という事。
翫雀さん@安倍保名は…何度か拝見した事がありますが、このキャラにはちょ~っと声が強すぎる印象。 もう少し声も柔らかみが欲しいなぁ(以前も感じたこと)

佐々木高綱

翫雀さん@おみの気がつけば私、この演目は映像も含めてどうやら初見のようでした汗(何故かすっかり観た気になってた~)
しかし、私的に特筆すべきは翫雀さん@子之介姉おみのでしょう!(吉弥さん@馬飼子之介…っていつもなら逆の配役の印象で驚き~) あの“馬のしっぽ”(って言うのかな?お冨さんみたいな髪型)のヅラ姿では初めて目にする翫雀さんに「おおっ♪」と姿勢を正して座り直した私。 胸のうちを切々と訴え、強固な意志で立ち向かう様に胸が打たれるものの、気持ちが入って声が大きくなると…翫雀さんってど~しても女形という声ではなくなってしまうのがホントに残念。 見た目ふっくらと愛らしいのに~、あんなにお父さんにソックリなのに~。 女形は見た目がソックリでもやっぱり“芸のさせる技”なんだな、とソックリ親子を観て、藤十郎さんの偉大さを今回改めて思い知らされました。 翫雀さん“兼ねる役者”の道、応援してますっ!
で他には…初見の演目というのにやたらに印象に残ったのは登場人物の足元。 新悟くん@高綱娘薄衣は鮮やかなピンクの足袋。 侍女(嶋之亟さん?)は、これまた鮮やかな水色。 我當さん@佐々木高綱進之介さん@佐々木小太郎定重の…この冬流行のブーティーのようなショートブーツ! 他の演目であまり目にしない小物の数々に注目してしまいました~。 足袋の色って、何かを現しているんでしょうか?
馬の達者な動きに客席が大いに湧いてました♪(彌十郎さん@高野の僧智山は重かったかと~)
で…、あれ? 佐々木高綱は~汗

芋掘長者

生で観るのは今公演が初めてで、と~っても楽しみにしてました。 三津五郎さんを松竹座で拝見するのも久々のような?
新悟くんは今公演、大活躍ですね。 いずれも女形での出演で、線が細く頼りなげな少女の匂いのする可憐さだったのですが…しかしやっぱり背が高いので、ひどく膝を折っており、横向きになると立ち姿のフォルムがひどく不自然で気の毒。 きっとまだ伸びるでしょうし、今後は…どう進んで行くんでしょうか?
三津五郎さん@芋掘藤五郎の愛らしい事!  扇雀さん@緑御前への想いをなんとか遂げさせてあげたいっ!と応援したくなっちゃう一生懸命の奮闘はユーモラスで楽しい、楽しい♪ 時節ネタ『そんなの関係ねぇ!』も盛り込まれていた模様。 友達治六郎は数年前の復活上演時からずっと橋之助さんでしょうか? と~っても息の合ったコンビで楽しい一幕ですね。 冠者のような二人のお着物の模様がすっごく鮮やかで凝っていて好きです。
扇雀さん@緑御前は求婚者が踊る様にもっとウキウキと“踊りが好きな様”が見てとれたら良かったなぁ~と。

沼津

我當さんのお役の中でこの雲助平作が一番好きなんです。 …ってこんな汚い拵えのお役で~とは我當さんは不本意かもしれませんが汗
藤十郎さん@呉服屋十兵衛との前半のじゃらじゃらした(←男女間でしか使わない表現?)やり取りは微笑ましく、客席歩きは大いに湧いてました。
お米秀太郎さん。 昼夜通して、今公演でのご出演はこれのみ!とは残念(夜の部【封印切】おえんはてっきり秀太郎さんだとばかり~)
平作が命がけで仇の居所を聞くだりには、毎度のことながら息を呑んで見守り心打たれ涙するのですが、今回すごく印象に残ったのは十兵衛の方。 暗闇で状況が解らないまま平作に呼びかけ…そして現状を察した驚きと悲しみと迷い。 そして決断。 鮮やかで「藤十郎さん、やっぱ上手いわ~」と人間国宝をつかまえて何様な感想ですが、ホントそう思いました。
三津五郎さん荷持安兵衛はなんとも贅沢なお年玉でした♪

浪花花形歌舞伎・第三部【松竹座】

夏祭浪花鑑

初役で臨まれる方が多いので、ものすご~く楽しみに観劇! まさに“フレッシュな”という、浪花花形歌舞伎ならでは!の試みで楽しい、楽しい~♪ しかし…休憩なしのノンストップ2時間は、集中力維持が厳しかった~。
翫雀さん@三婦娑婆へ出て来る団七を迎えようと、身支度一式整えて迎えにやってくる翫雀さん@釣船三婦。 「翫雀さんが三婦さん?!」と配役を知った時、あまりの意外さに思わず声が出たほどでしたので…楽しみ半分、心配半分。 役としてのイメージは大柄でドッシリと構えていて、家内で着替えるアノ粋な昇り龍の派手な麻?の着物をバシッと着こなす体躯…という感じだったので、果たして~。 しかし、ならではの三婦さん像でこれまたイイ!(贔屓目すご~く入ってますから!) 声はすれども姿が見えず「どこじゃい?」と探す団七に「ココじゃわい♪」と床屋の暖簾から顔だけバァ~って出すのがキュートで私、壊れましたっ!
今公演唯一?持ち役としてドーンと受け止める竹三郎さん@おつぎとの夫婦ぶりも、すごく微笑ましくって、焼きもちやくおつぎさんもいつもより…若妻?
薪車さん@磯之丞は、大柄なのでナヨナヨとしたか細い線を出すのが難しそうな印象で「実はしっかり者なんじゃ…」と勘ぐりたくなる感じ。 対して千壽郎さん@琴浦は大抜擢に応える好演。 実はココまでセリフがあるお役で拝見したのは初めてで、姿の美しさについ目で追う女形さんでしたが、遊女のはんなりとした色気(しかも瑞々しい!)が漂っていて素敵でした。
そして…愛之助さん@団七九郎兵衛。 もちろん初役であり筋書きには「死ぬ気で頑張ります」との事で、体当たり全力投球の奮闘ぶり。 今公演の愛之助さん、すべての部において大役ばかりで精神的にも大変な負担があったかと思われますが、観客として拝見できるのは素直に喜ばしい事でした♪ 私、上方の役者さんがこの演目というのは観ていて説得力があり、耳にも心地良いので大好きなんです。
全編通しての好演はもちろんですが、特筆するとしたら…釈放時の親子のやり取り。 迎えにきた孝太郎さん@女房お梶松坂大地くん@倅市松とのやり取りが微笑ましくてニッコリ。 大地くん、スッキリ美形で…ちょっと愛之助さんに似てませんでしたか?
そしてやはりラストの泥場。 綺麗です。 カチッカチッと型通り、という感がいなめませんでしたが「しもた~」「悪い人でも舅は親、おやじどん許してくだんせ~」というセリフには、計らずも舅を手にかけてしまった戸惑いや後悔の念にあふれ、気が動転しての引込みに強い説得力を感じました! ぜひ是非また拝見したい素敵な団七でした♪

浪花花形歌舞伎、総括。
1日で三部通して拝見したのですが、休憩時間が少な過ぎ! ま、私のような無茶な観劇スケジュールで観る人の方が稀なんでしょうけど、それにしても食事のタイミングとか難しくなかったですか? 次回からもうすこし配慮してくれると嬉しいなぁ…。
ま、しかしやっぱり楽しい“浪花花形歌舞伎”! 私、どの公演よりも毎年の発表を楽しみにしているかも? 是非ぜひ末永く続けて欲しいものです♪

浪花花形歌舞伎・第二部【松竹座】

雨の五郎

実は…この演目もなぜだか縁がなく、映像も含めて今回が初めて観たんです。
デフォルト拵えは黒ですが、進之介さん@曽我五郎時致は白でして、この時期の明るく華やかな雰囲気に合っていてとても綺麗でした。
廓通いの優美さと荒事の勇壮さの両方が魅力の舞踏ではありますが、え~っと…そのどちらかも汗

色彩間苅豆

2001年の六月博多座大歌舞伎以来の孝太郎さん@かさね。 私、コレで孝太郎さんファンになったので(この時は一体何回博多座に通ったんだろう…汗)今公演はその再会で観劇前からものすごくテンション上がってましたっ!
かさね前半のクドキがすごく濃厚な印象で、特に妊娠を告げるくだりはゾクッとくるほど。 なんというか…愛之助さん@与右衛門じゃなくても、こんなに想いが重すぎる女はウザイと思うよなぁ~、という印象のクドキぶり。 「こんなに貴方の事を想っている私を捨てられるはずがナイわ~」と、その気迫が与右衛門にトグロを巻いて絡み付くような~。 可憐な腰元が好きな人を一途に慕ってその想いを切々と…というよりは成熟した女性が「あんたは私から逃れられないのよ」というような濃厚さ。
ですから、後半の与右衛門の残忍な仕打ちに対して「かさねちゃん、かわいそ~う!」という感じが私は薄く感じられたかも。
しかしながら、私が前回、孝太郎さん@かさねに特にハマった“鏡で己の変わり果てた顔を観て驚き嘆く”シーンは期待通りで涙。 ココで一気にかさねに気持ちが沿っていきます。
以外にも?怨霊となってからの引き戻には前半のクドキほど絡み付くような情念は感じられませんでしたが…でも、うん! やっぱり孝太郎さん@かさねは好きだわ♪
愛之助さん@与右衛門は…ニンだと思いますが印象に残らず。 もう少し色っぽい感じがあればイイなぁ、と思いました。

曽根崎心中

今公演の演目が発表になった時「また曽根崎かぁ…」というのが正直な感想でしたが、翫雀+扇雀兄弟が家の芸を継承、という事で今まで気がつかなかった事がいろいろと見えてきて面白かったです!
扇雀さん@天満屋お初。 出から…初々しい恋する乙女19歳、ってな感じがなく、大人の女がブリッ子(←古っ!)している感じで厳しい。 と、いう事で改めて藤十郎さん@お初の可愛らしさが驚異的である事を再認識。 「きゃ~っ、徳さま素敵~☆」って手をたたいて喜ぶところなんか、まさしく“恋する乙女19歳”だもんなぁ~。
ラストの道行では、すべて事情を飲み込んで意を決した女性として凛としたものがあり、扇雀さん@お初、独自の工夫を垣間みたような気がしました。
でもって、今公演で特筆したいのは、なんと言っても亀鶴さん@油屋九平次! もちろん今までもこのお役で何回か拝見していますが、「亀鶴さん、ウマイっ!」とうなったのは今公演が初めてでした。 あの底意地の悪いヤな感じが所作や表情の細部まで行き届いていて「なんでそんなに翫雀さん(←違います!徳兵衛です!)を虐めるとよ!」と、本気でムカつく悪党振り。
何様ですが…「亀鶴さん、いつの間にそんなに上手くなったんのよ~」と驚きの好演でした。
浪花花形歌舞伎という事で思った事。
鴈治郎家の芸、であるこの演目ですが…だからこそのこのような機会にもっと思いきった配役は出来なかったのかしら?と。 今配役は後々は本公演で幾度となく上演されるでしょうから、正直、いろんな方のお初&徳兵衛を観てみたいです。 「また曽根崎…」には、狂言としては面白くても、いつも配役が変わらないという事も大きな原因かと思いますから。 …と言う私は関西成駒屋(って言い方あり?)のファンなのですが汗