初春歌舞伎公演「通し狂言・しらぬい譚」国立劇場

国立の“新春☆菊五郎劇団”の公演を観るのは久し振り♪ 館内も初春の飾りが華やかで素敵なのは『国立劇場開場50周年記念』という事で例年以上なのか? 過去公演のポスターの掲出もあって【秋の河童】や【霊験亀山鉾】があって懐かしむ。 もう“国立劇場新作歌舞伎脚本入選作品”の上演はしないのかな?
ロビーで福岡や九州お菓子が販売されていて「?」…と思ったら、演目の舞台が九州だったんですね!(いや、初めて観るから…)
くろごちゃんグッズが更に充実していたっ!(観劇数日後“PNSP”動画で話題に!)前回は館内で遭遇したのに会えなくて残念。

原作は『江戸時代初期に実際に起きた筑前黒田家のお家騒動や島原の乱を題材に、江戸末期から明治期にかけて90編が刊行』されたもので、国立劇場では1977年、河竹黙阿弥が脚色した版を76年振りに復活上演!今回はそれ以来の再演だがほぼ新たに台本を…との事。

蜘蛛の巣あり、化け猫あり、筋交い宙乗りあり!の大立廻りに加え、屋台崩などの様々な仕掛けを駆使して見所満載! 亀蔵さん@ピコ太郎が茶屋から登場して『お照とお照でAh〜!!』で客席多いに湧く。 去り際、鳥居をくぐる前にちゃんと手を合わせて低頭する様が更に笑えた!(23日にはピコ太郎ご本人が登場)
でもでも、それよりも何よりも時蔵さん@鳥山家乳母秋篠が、乳母として育てた松緑さん@鳥山秋作に「お前の子が欲しい〜!」と迫る様が相当に笑えた! 最期には自らの命と引換えに病のを秋作を救うんだけど、この救われた秋作、急にメッチャ元気になり過ぎ! そりゃ〜あの乳母のバイタリティー溢れる血が入ったのだからさも有りなん、だけど落差がこれまた笑える。 昨年6月の博多座公演以来“菊ちゃん熱”が上昇中の私。 菊之助さん@大友若菜姫七草四郎はいずれも“折り目正しい正統派な美しさ”を堪能。

派手で楽しく、カッコよく、晴れやか痛快!で初春に相応しい「あ~、楽しかった♪」と帰路につける舞台。 これ、舞台も九州だし、博多座で上演してくれないかな?

一谷嫩軍記【国立劇場】

国立劇場での観劇は久々です。 以前は毎年三月は新作ものがかかる事が多く毎年行っていたのですが…ご無沙汰でした。 館内ロビーにオリジナルキャラクター“黒衣ちゃん”が徘徊していたのにはビックリ! 久しく行ってナイとロビーの様子もちょっとづつ変っていて戸惑うこともあり~。 今年は【国立劇場開場45周年】なんですね。 今回の演目は昨年10月から続いている【歌舞伎を彩る作者たちのシリーズ】のひとつとの事。 これだけ久々の国立を楽しみにしていたのですが、え~っと…やたら気絶してました。 実は開演まで時間があったので日比谷からプラプラ歩いてみると…弱いながらも雨が斜めに降ってて、劇場に着いた頃には全身ずぶ濡れ! 開演時間ギリギリの到着で開演前に疲れてしまったのであります~(←激しい言い訳)

堀川御所

義経が命令を下す大序のこの幕はなんと!98年振りの復活上演との事。 門之助さん@俊成娘菊の前は…門之助さんの赤姫って初めて拝見したかも? 三津五郎さん@九郎判官義経はともて上品かつ希望に満ちた感じを受けました。

流しの枝

團十郎さん@薩摩守忠度の和歌が“詠み人知らず”として【千載和歌集】に編さんれる経緯を描くこの幕は37年振りの上演との事。 イヤホンガイドによると昔は『無賃乗車の事を薩摩守忠度と言った』そうです(=タダ乗り)。 義経が次の場【熊谷陣屋】でキーアイテムになる『一枝を伐らば、一指を剪るべし』と書かれた制札を直実に渡すのはこの場にて。 なるほど…こ~ゆ~経緯があっての事なのかぁ~と日頃観れない前段を経て観る熊谷陣屋は理解が深まる…。 秀調さん@菊の前の乳母林って…秀調さんの女形って初めて拝見したかも? なかなか勇ましいばあさまで、でっけぇプリティな彌十郎さん@林の倅太五平との対比が面白い! 三味線の旋律にのせて調子のイイ乗り地が耳に心地良い☆ 團十郎さん@忠度が和歌の書かれた短冊を山桜の流し枝に付け乗馬でキメ。

熊谷陣屋

東蔵さん@経盛室藤の方魁春さん@熊谷妻相模が良かった! すごく良かった! いつもはドライで「なんか気持ちが入ってない感じで苦手だなぁ」という印象が強かった魁春さんが、首実検の首が我が子のものと判ってからの感情の爆発具合が胸に染みました。  彌十郎さん@白毫の弥陀六実は 弥平兵衛宗清は緩急が秀逸。 團十郎さん@熊谷次郎直実平山見得~「十六年は一昔。夢だ、夢だ…」とつぶやく送り三味線での花道引っ込み。 武士としての力強さを強い目力に感じながらも、網代笠を深くかぶって座り込んで泣く様に父親としての人となりを感じ泣けました…。

金門五山桐 -石川五右衛門-【国立劇場】

今回の遠征は、まず劇団☆新感線のチケットありき!から他の観劇日程を組んだというもので、気が付けば偶然にも…歌舞伎座で吉右衛門さん赤坂ACTシアターで古田新太さん、そしてこの国立劇場で橋之助さん、という“三者三様の石川五右衛門”を観ることになった次第。 天下の大悪党でありながら、この三月に五右衛門を主役とした舞台が三つも開いている人気ぶりに改めて事にビックリ☆(計らずも三つ制覇する自分にもビックリ)
国立劇場前の桜はチラホラと開花してて、もう少し経てば皇居沿いの桜も満開で、舞台の五右衛門よろしく「絶景かな、絶景かなぁ~♪」だったんだろうなぁ…と、ちと残念。
国立劇場では34年振りの通し上演だそうすが、私自身は多分、初観劇(多分)。 石川五右衛門の生い立ち、その背景と目的等が初めて解って「ガッテン!」な部分もあり、人物像や物語の背景が深く解って観劇出来た収穫もあり。 しかし、通しという事で端折った部分も多いようで『○○実は○○』が、あの人もこの人も~、となるとあまりにも唐突に感じる部分も多く混乱してくる~。
総括としては「歌舞伎座さよなら公演に役者を取られたゃったかなぁ」と個々の奮闘は見えるものの座組の薄さがいかんともし難い。 彦三郎さん×亀三郎さん×亀寿さんの親子三人を同じ舞台で拝見するのは久々。 亀寿さんの女形も久々(華奢なんだけど顔が完全に男顔なんだよなぁ…) 橋之助さんの長男・国生君と三男・宣生ちゃんもご出演でしたが…昨日、歌舞伎座で久々に観て驚いた鷹之資君しかり「御曹司ども、ちょっと太り過ぎなんじゃ…」 気温なのか?湿度なのか?舞台機構なのか?ツケの音が割れ気味で、えらく大きく耳障りに感じたのは珍しい。

橋之助さん@宋蘇卿が紅い庵(←凄く色がキレイ!)で琴を弾くと掛け軸から白い鷹が抜け出て、息子・五右衛門にしたためた遺言を渡しますが、あそこまで大胆に差し金で鷹を操る様は初めて観ました! まさか一羽で花道引っ込みとは~!! 橋之助さん@石川五右衛門の山門にてのあまりにも有名なセリフは、五右衛門自身が処刑される賀茂川の三条河原の方角を見て言ってるんですね。 “散り際の美学”でしょうか? 宙乗りは定番のつづら抜け~鳥屋口から花道へと戻って行く珍しい手法もあり
小田春長の下で共に働いていた真柴久吉と石川五右衛門…という事で、扇雀さん@真柴久吉が五右衛門に出会って、突然態度が砕けてガラッパチになるのが面白い♪ 脇息に腰掛けるとはなにごとぞ~! 扇雀さん、三役で奮闘するも、どれも今ひとつ強く印象として残るものがなく残念。
浅葱幕前での大薩摩の演奏が下手側とは珍しいですよね! いつも思うのは三味線の足台って…三味線弾きが自分で持ってくればイイじゃん(って、何か意味があるんでしょうね)
瑠璃灯の下での大詰め立廻りの殺陣師は橋也さんと橋吾さんだそう。 大入りで斬って、三段上ってキメ☆
“石川五右衛門の通し狂言”と決して地味ではナイ題材で、相応の大掛かりなセットの大芝居…のはずなのに、何故かしら地味な印象がぬぐえなかった観劇でした。

錦秋文楽公演・昼の部【国立文楽劇場】

国立文楽劇場開場25周年記念”の公演だそうで、私にとってはこの劇場デビューをした昨年1月末以来の観劇。
どこかの専門学校か?校外学習のようで団体観劇していて客席は賑わってました。 やっぱり大阪では庶民の娯楽としてドッカリと根付いてるんだなぁ…と今回も思わされました。

13日に第1部と第2部の入れ替えがあり、本日の昼の部は【芦屋道満大内鑑】。 人形が今現在のように“三人遣い”になったのは1734年に上演されたこの【芦屋道満大内鑑】から…だそうで“文楽発祥の地”で、偶然にもその記念碑的な作品を観劇出来るのはラッキー♪
この演目【保名】と【葛の葉】【蘭菊の乱れ】は歌舞伎でも度々観ていますので、その違いが楽しく、またこれらの段並びでは観た事がナイので「なぁ~るほど!こ~ゆ~話に繋がるのか!」という気付きがあり、めっちゃ楽しめました☆
舞踏でしか観たことがナイ【保名】でしたが、その前段というべき【加茂館の段】で、その恋人が榊の前という人で、その人がどういう身の上で、保名を庇って彼の目の前で自害してしまった…故の保名の物狂いとなる下りを初めて知って「そりゃそうなるわなぁ…」と彼の悲しみへの理解が深まりました。 が!榊の前にそっくりその妹・葛の葉姫の出現に、速攻で恋仲になる~という変わり身の早さに驚き、涙が引く~。 葛の葉姫も姫だよっ! 保名の髪型は落ち武者のように垂らしたものでなく、ちゃんと結ってあるタイプなんですね。
葛の葉子別れの段】では文雀さんの女房・葛の葉~白狐が素晴らしかった! 人形ならではの変身ぶりは歌舞伎との違いが更に楽しく、狐の動きが機敏ながらも悲しみをたたえている表情(に見える!)で、人間も動物も親子の情愛に違いはナイんだなぁ…と感動させられます。 筋書きの…文雀さんが語る“狐の扱い方”が興味深かったです~♪
歌舞伎では『恋しくばたずね来てみよいづみなる信田の森のうらみ葛の葉』は曲書きで見せ場のひとつなので、文楽ではどういう工夫なんだろう?と思っていたら…呆気なかったッス汗汗汗

通しで観れて「前後が判って全体がガッテン!」となった嬉しい観劇でした。

堀部彌兵衛・清水一角・松浦の太鼓【国立劇場】

こちらも計らずも初日観劇となりました。 昨年【元禄忠臣蔵】も初日明けて間もない観劇だった為、プロンプ入りまくりで気持ちが萎えた為「今年も珍しくかかる演目だし、きっと…」とテンション低めで観劇に臨んだのですが…。 危惧したよりは大丈夫でホッ!(昨年はセリフ量が半端じゃなかったものね) 「やっぱり12月は忠臣蔵♪」と楽しみました。
それぞれの忠臣蔵】とサブタイトルが付けられた今公演は『討つ者・討たれる者・見守る者、吉良邸討入の陰には、さまざまな人間ドラマがあった!』というリードコピーにあるように、普段よく目にする忠臣蔵とは違った視点で楽しめる面白さがありました。 大石内蔵助も、吉良上野介も出て来ない忠臣蔵の外伝物。 このような演目を揃えて客席が賑わうのは、忠臣蔵が日本人に愛されもはや“一般常識”のように知られてるからこそ!なんでしょうね~。
昭和、明治、江戸。 偶然違う時代にできた作品が揃った。 それぞれの時代にタイムスリップしていただけるようなお芝居になれば』とは吉右衛門さん。

堀部彌兵衛

宇野信夫さんが初代吉右衛門さんにあて書きした作品だそうで、今回が昭和49年以来の…4回目の久々の上演との事。
まず吉右衛門さん@彌兵衛吉之丞さん@妻たね夫婦ぶりがなんとも素敵☆ 幕開きでは各々、61歳と48歳、そして娘さちは3歳という設定らしいのですが汗 …歌舞伎で思う事は昔でその年だと、かなりのご老体になるんだろうなぁ…と(同じ宇野さん作品“ぢいさんばあさん”しかり) 彌兵衛が歌昇さん@中山安兵衛を見染め、ぜひ自分の養子に!とイライラと、ハラハラと、しかし頑固に想いを告げ、遂げる様が無邪気な感じで一途で可愛らしく、その二人を取り持つ由次郎さん@住持丈念が面白い! 『山伏が夕立に遭う』とは「(ホラ)貝かぶる」=かいかぶる、『坊主の頭に光るものあり』とか「全く結う所がナイ」=全く言う所がナイ、というような洒落たやり取りはニッコリと楽しい。
討入りの日が決まった当日、仇討本懐の前祝いと歌昇さん@安兵衛と15歳となった隼人くん@娘さちの祝言がとり行われる。 赤紫の艶やかな着物で登場した隼人くんに周囲のオペラグラスが一斉に上がる! 「誰?キレイ!可愛い…」とじわが。 兄と慕っていた安兵衛を夫とする喜びと、この婚礼が死を覚悟した仇討への見送りとなる寂しさが、儚げなヴィジュアルと憂いを含んだ表情から伺えて好演でした。 勝ち戦を祈っての膳?は…かち栗、昆布、なとり、鶏の吸い物…あと何でしたっけ?(勝負事の前膳に今でも使えますネ)
彌兵衛の隣人、桂三さん@半田判右衛門玉太郎くん@倅判平の厳しい暮らしぶりも、そのせつなさに胸を打ち、ラストの余韻が印象的に残りました。

清水一角

吉良方の人物が主人公という大変珍しい演目で、今回は46年振りの上演との事! 私、もちろん初めて観るうえ、河竹黙阿弥作品とあれば自ずと期待も高まる訳で~♪ 結果、今ひとつ面白みに欠ける感じ汗 これは作品によるものなのか?(46年振りとあらば)役者陣によるものなのか?…それは謎。
歌舞伎の演目で酒に酩酊して大騒動を巻き起こす…というのは多々ありますが、この主人公・染五郎さん@清水一角も深酒が過ぎる人物。 日々こんな状態で吉良家の警護役が勤まるんかいな?と思わせておいて、夜討ちを告げる太鼓の音には鮮やかに覚醒し屋敷に駆けつける…という、ダラダラ~フニャフニャ~状態→シュタッ!キビキビ!猛ダッシュ!…の豹変ぶりが面白い。 立ち廻りをしながらの着替えは見せ場のひとつで面白いのですが…この日は袴の後ろを蹴り上げて紐キャッチ☆が逆になってしまって、裏返し状態で“着付け完了”だったので客席大爆笑でした。 討入りで女物の小袖を羽織っていたのは、姉の愛情故だったのね!と合点☆(これぞ外伝?!)
種太郎さん@弟与一郎はイイですね! 最近努めて舞台に立っていらっしゃる成果が着々と見受けられ頼もしい感じ♪(役所もダメ兄ちゃんをフォローだし)

松浦の太鼓

松浦の殿様秀山十種のひとつですが…今公演の吉右衛門さん@松浦鎮信愛らしい殿様ぶりを拝見し、見事にその芸が引き継がれているんだなぁ、と思いました。 どっしりと構えた威厳ある存在感と上品な殿様然とした様と、我がままだったり、無邪気だったり…と子供のような様が見事にミックスさせていて、観客一同ニッコリと笑みがこぼれてしまいます♪
私の中では【大石内蔵助=吉右衛門さん】なんですが、【松浦の殿様=吉右衛門さん】でもあるので…なんか不思議な感じ。
歌六さん@宝井共角がイイ! 殿の機嫌を伺いながらの心理作戦で芝雀さん@お縫の擁護を努める辺りが、表情の変化ひとつをとっても大袈裟で楽しめました☆ 人生経験も豊富で、人の世をひょいひょいと渡り歩いて来たような、どんな人物でも相応のあしらいで対処出来るような…そんな人物に見受けられました。
染五郎さん@大高源吾は…いつも思うのですが、あの討入りのくだりを語る超長セリフは…リズムで覚えるのでしょうか? 感心します~。 …が、槍に辞世の句を結びつけ討入りに臨んだほどの風流な武人には見えず、松浦の殿様の「風流はココじゃぞぉ~」と、嬉々とした様子に観客の気持ちが全部もって行かれてしまう弱さを感じてしまいました。
今回これらの外伝を拝見して、また更に【忠臣蔵】を楽しめる嬉しさを感じて嬉しくなりました♪