わたしは真悟【新国立劇場 中劇場】

私、今回のミュージカル舞台化になるまで楳図かずお先生の原作を知らなかった。 でもって観劇前に原作を読むに至らず『相思相愛の小学生が子供を作ろうとロボットと巻き起こす騒動記』というザックリとした、ちょっと解釈を取り違えた知識のまま観劇に臨む。

演出・振付はフィリップ・ドゥクフレ氏(アルベールビル冬季五輪の開閉会式演出)、劇伴としてOpen Reel Ensembleも舞台上手に登壇+演奏…という、今までのミュージカルの舞台では観たことがナイような斬新な演出が様々なところに施してあり、目新しい。 が!観劇後「これはミュージカルなの?」「ミュージカルの定義って一体?!」という事と「…と言います。」という真悟の言い回しが頭の中をグルグル。

開演前、客電が落ちる前から舞台下手で機械が動いてる。ひたすら“機械が機械的に”動いていて、その動作音が一定のリズムで不気味に響き、観客は段々と物語の中に引き込まれていく。

基本、舞台美術は全編を通して夜や屋内で閉塞感漂う闇の中、どのセットも鉄骨が冷たく光るセットに鮮やかに光る電飾、映像で展開。 そこにOpen Reel Ensembleが奏でる音が絡み付くように響き、異空間のような、近未来のような独特な世界が広がる…って、ゴメン!お話はよく解らなかった! でもその演出や役者さんの演技が強く印象に残る舞台だった。アンサンブルさんはシンガーというより、ダンサーがメインでしょうか? 体全体を使ってキレッキレのダンスでの表現で情景を物語るのはパントマイムのようであり、モダンダンスのようであり…。

観劇後、強烈な印象として残ったのは、なんといっても成河さん@真悟。 原作を知らないので、元々の真悟との表現の違いが比較出来ないのがもどかしいけど「こんなに身体能力が高い役者さんだったんだ!」と驚愕!(【エリザベート】のルキーニしか拝見したことがナイ) 器械体操のような、カポエイラのような、独特な動きと機械的な語り口、そしてカッ!見開いた目に感情が見えない表情は、舞台のどこに居ても目が引きつけられた! 無表情なんだけど…なぜか悲しみが伝わってくるのは何故なんだろう? 成河さん、これからも出演の舞台は追って行きたい!と思った「…と言います。」

高畑充希さん@山本真鈴、残念ながら歌を堪能できるほどの“歌”はなく、耳に残るナンバーもなく…なので、観劇の動機だった「彼女の生歌を聴いてみたい!」というのは消化不良だったけど、すごくセリフがクリアで聞き取りやすい! 長年舞台で鍛えた賜物だろうなぁ。 小学生に見える! 門脇麦さん@近藤悟、うん!女性が演じて正解!   大原櫻子さん@しずかは一人で“陽と動”の部分担当で大変だったかと。 小関裕太さん@ロビンは目の青さが強烈で怖かった! 客席で観てアレだけ青いってどういう仕掛けなんだろう? 頭が小さくって手足が長〜い! イイ具合に狂ってて不気味で良い♪
しかし、皆さん舞台では初めて拝見する役者さんばかりで「この人でなきゃ!」というハマり具合だったのかは?判断がつかなった。

で、やっぱり一番の印象は「ミュージカルだったのか?」という疑問だな!

劇場
新国立劇場 中劇場
日時
2017.1.12(木曜日)/13:30〜

壽新春大歌舞伎・昼の部【新橋演舞場】

81年ぶり名跡復活!! 右近改め三代目市川右團次+三代目市川右團次襲名披露興行でおめでたい新橋演舞場。 …とはいえ、澤瀉屋一門の代表格的な存在であった右近さんが“髙嶋屋”になるのは、ちょっと…いやかなり寂しい私。 おめでたい事だとは解ってるんだけど、うん。
観劇日当日、10時に羽田着で11時開演…って、やっぱりちょっと無謀だった。 周辺のお席の方、ご迷惑かけてすみませんでした。

雙生隅田川

通し狂言です。 “三代猿之助四十八撰の内”との事だけど、私、初観劇。 「梅若丸伝説」を素材にしているそうで、人間×天狗で繰り広げられる壮大なお話。
猿之助さん×右團次さん×右近くんの【三人宙乗り】 ! “6歳で宙乗り”というのは最年少だそうで(夜の部では“早替り”最年少!)、しかも乗ってる最中、落ちそうになるお芝居まで演ってのけるとは〜! 客席の「三人で微笑ましいねぇ」という空気が一転、悲鳴にも似た声が上がった! 右近くん、恐るべし。

右團次さん@猿島惣太後に七郎天狗/奴軍介は感情のブレも、立ち廻りも激しいドラマティックなお役で襲名披露公演の奮闘ぶりが相応しい力走。 折檻して殺してしまった子供が若君と判明し、使い込んだお家の金を工面しようと長年貯めていた金を天井を突いて、家中に小判を降らせる演出がダイナミックで絵的に、音的に面白い! そして天狗に変身! えっ?なんで? 大詰の【鯉つかみ】の本水の大立廻りは、あまりにも詰め込みすぎて、動きにキレがなく「だ、大丈夫?右團次さん?」 最近はデッケェ仇役的な感じが続いていて、その貫禄が安心して拝見できる事に少し寂しさも感じていたけど、キビキビした若武者の口跡と動きに“澤瀉スピリッツ”的なものを感じることが出来て嬉しかった。 襲名心よりおめでとうございます。

右近くん@梅若丸/松若丸は、今まで私が観た初舞台のお子さんの中で一番しっかりとしていて、立派にお芝居をしていて、とにかく感心した! その裏には厳しい厳しい大変なお稽古があったんだろうなぁ…と察せられる立派さで、ちょっと涙を誘われることも度々。 6歳って! 6歳なのに二役って! いや〜、ただただ感心。 彼自身もホント頑張っただろうけど、梨園出身ではない右團次さんもご自身の襲名に加えて…とにかく大変だったろうなぁ、と。

男女蔵さん@淡路前司兼成。 男女蔵さんが左團次さんに似ている…と今まで一度も感じた事がなかったけど、今舞台の憎々しい仇役を拝見してビックリ! 声がこんなにもソックリだったなんて驚いた〜。 猿之助さん@班女御前海老蔵さん@県権正武国、この度の襲名、この親子に力を貸してくださり有難うございます〜、という身内じゃないけど、そんな感想をもってしまった! そして笑三郎さん@局長尾猿弥さん@勘解由兵衛景逸に、これからもどうぞ宜しく〜、と、身内じゃないけど!

貴婦人の訪問-THE VISIT-【キャナルシティ劇場】

2015年夏『日本ミュージカル界を支える豪華キャストが集結!』という触れ込みでの日本初演が、早くも再演!で、私、この度初見。 主役級の役者さんズラ〜リの中、瀬奈じゅんさん@マチルデ(アルフレッドの妻)のみ初参加とのこと(初演は春野寿美礼さん) 総括は「今まで観た涼風さんの中で一番良かった!観入った!」という感想。

ウィーンミュージカルらしく?なかなか暗くて重いストーリ展開に、不安な気持ちでどんよりと引きづられる感じの作品。 それに伴って、舞台美術も終始暗〜くて無彩色な印象。 ストーリーが衝撃的なだけに、観劇後も頭の中に残ってグルグル〜という曲はなかったかな(その時、その時印象的なメロディはあるんだけど) もう一度観るか?と問われれば…う〜ん。 心に余力がある時ならばアリかな。 集団心理に突き動かされる人間の怖さ、というところはディズニーミュージカルっぽい?

山口祐一郎さん@アルフレッド。 山口さんが“普通の人間”を演じているのは…記憶にナイくらい久し振りに拝見。 うん、山口祐一郎だった。 唄う時は普通の人間でもやっぱりアノお手振り付きだった。 なんだろう?元来声が高いうえ、感情が高ぶる表現で手をバタバタと上に振ったりグルグル回したりするのが、なんだか昔のアメリカのテレビドラマ的な(笑い声が入るアレ)感じを受けて、シリアスな作品なのに“何故か一人だけコメディ”の印象。 歌は間違いなく上手い方なのに、何故だか聴いていて心地良く感じるものが皆無だったのも残念。 しかしいろいろと流されて逃げてばかりいる不器用なクズ男キャラはバッチリ☆

涼風真世さん@クレア。 これは素晴らしくハマリ役! 涼風さんファンの方は「待ってました!こんな役!」じゃないかな? 文句なく凛とした氷のような冷たい美しさで、次々と衣装替えがあり眼福。 衣装はホントにどれも素敵でとってもお似合い! お芝居もすごく丁寧で、役に乗っ取られてるんじゃ?と思ってしまうほどの気迫と孤独を感じた。 故にねぇ〜、山口さんとの温度差がねえ〜、なんともチグハグに感じて残念。 コミカル×シリアスって感じ。

瀬奈じゅんさん@マチルデは「瀬奈さんだったっけ?」ってなくらいのイイ意味で“普通の田舎のおばちゃん”。 暗い作品の中で唯一救いのある明るさを持ち合わせている印象。
“歌ウマ〜おじさんカルテット”の、今井清隆さん@マティアス(市長)×石川禅さん@クラウス(校長)×今拓哉さん@ゲルハルト(警察署長)×中山昇さん@ヨハネス(牧師)はもっと歌を聴きたかったなぁ。

劇場
キャナルシティ劇場
日時
2016.12.10(金曜日)/16:00~

石川五右衛門【博多座】

ストーリーは置いといて…海老蔵がやりたい事を全て詰め込んだ“海老蔵ショー”』という、情報を得て観劇。 個人的には“澤瀉屋の市川右近としては最後の博多座出演”となる右近さんのご出演を楽しみに観劇。 ちょうど現在、テレビ東京系列“金曜8時のドラマ”で【石川五右衛門】放映中という事で、ご覧になっている方は映像がそのまま立体的に目の前で、という楽しみ方も出来てのではないでしょうか? 劇中テレビの宣伝はもちろん有り(ゴメン!一度も観たことナイ)
当日は学生の団体観劇もあり、拍手の多さやタイミングから『歌舞伎初観劇の方が多いのかな?』という、劇中は静かな客席の印象…でしたが、幕が引かれたとたん凄い拍手で大盛り上がり。「劇団四季のカテコか?!」ってなくらい、何度も繰り返されたカテコでしたが、そこに“右近さんとしては博多座最後の出演”の右近さんが居ないのは残念! 出演も1幕だけのほんのチョットだし…。
でもって、この日は二幕目から客席に横綱・白鵬が!でその登場に客席から歓声と拍手が。 そしてまさかのフィナーレで海老蔵さん@五右衛門と、龍のねぶたに乗って登場。 手を広げたり、足を踏みならしたり…と付け焼き刃で海老蔵さんに合わせてポーズを取っていたものの、いずれも「俺、どうしたらイイんだ」「間が持たないよ…」と、所在無さげで目が泳いでいる横綱が面白い。ねぶた山車を従えた前には綺麗どころのお姉さん4人が登場。劇中、上手の琴にも女性奏者がご出演で“いつもの歌舞伎とは違う”感じ。
そして三味線奏者の上妻宏光さんが今公演にご参加で嬉しい趣向!…の割には、今ひとつ演奏を堪能出来る場が少ない印象でちと残念。

ストーリーは…???なので、舞台美術と役者さんの感想を。
大道具や演出手法のひとつひとつは「おぉ!」と思わず声を上げてしまう驚きや感嘆のもがあり一興☆ 広間→海原+船の場面転換は大胆でお見事っ! しかし何故か波後見ではナイので黒子さんが目立つ、目立つ! 大小の船がバラバラ出てくる側での奮闘ぶりはよく見えるんだけど…。 で、何故、竜と戦う?どういう脈絡?(龍は迫力があって動きもなめらかでカッコイイ造形!)
分身の術】では1階客席通路や2、3階席にも五右衛門がワラワラ登場して登場して賑やかで楽しい趣向♪
見せ場のひとつである宙乗りは、今まで観た宙乗りの中で一番怖かった。 ただ凧のパネルの狭い足場に立って、手で枠を握っているだけのようで…しかもその手は花びらを掴んではまき散らし〜で離したりするし。 観てて怖かった…。
三升曲輪傘売】博多仁和加面がデザインされた半纏で可愛い。 一体何本の傘が仕込まれているの?! でもって、頭の方から傘をパッと綺麗に開くって難しそうなのに、とっても鮮やか!

度々登場しては、観客と一緒に現状を把握して物語に戻る…という狂言回し的な役回りの五右衛門子分三人衆は、今月8日に発生した“博多駅前の陥没事故”ネタも早速取り入れて時事ネタで客席を湧かせ、“ゆーとぴあ”の「よろしくぅ~ねっ!」のポーズ(←ぐぐったよ!)で走り去る〜。 猿弥さんは終始出突っ張りな印象で、ラストの舞踏ではセンターを取っていてビックリ。そして彼のお着物が、ひよこの顔に見えて仕方がナイ! 猿弥さん、毎度の感想ですが、何を演じても達者な方だなぁ。
女形さんの剣の舞が花道等で披露されるけど、すごく緩く感じる…のは、度々、澤瀉屋さんの舞台で京劇の技を観てしまっているからだろうけど。

お芝居として、なんだかよく解らなかったけど、客入りは上々のようで何より♪

全国座長大会【嘉穂劇場】

2016・座長大会
「いつかは行ってみたい!」と思い続けて…この度、やっと初めて嘉穂劇場の【全国座長大会】に行ってきました!
今公演は【橘大五郎九州演劇協会会長襲名披露】という事で、博多新劇座で何度か拝見した事がある“橘菊太郎劇団”の座長・大五郎さんが…という事だったので「この機会に行かずして、いつ行くよ?」
しかし大衆演劇の観劇はここ数年ご無沙汰だったので、あの独特な空気感に馴染むまでしばし戸惑う〜。

2016・座長大会嘉穂劇場は他の公演で何度か行った事がありましたが『これぞ庶民がお芝居を楽しんでいる本来の姿』なんだろうなぁ〜、と思わされる客席の大らかな観劇スタイルに驚くやら、飽きれるやら、笑うやら…で忙しい。 現在、劇場での観劇時にはNGとされている事がことごとなされていて(喫煙はさすがにNG)、特に驚いたのは『舞台で役者さんが演技しているのに、その時花道が未使用時、桟敷席から花道に乗り上がって廊下として利用しちゃうお客さん』!! 「あれ役者さん出てきた?」って暗い花道に注目すると、スタスタと一般客が歩いてて、揚げ幕をバッと上げてトイレへ…って、大らか過ぎるだろ! 枡席は昔の人サイズなので小柄の私でも狭く、同じ桟敷内のおばちゃん達と決択して柵に背を付けれるように配置替え。おばちゃん大プッシュの役者さん“宝海大空”さんの魅力を解説してもらったり、気が付けば、みかんや飴をもらったり…“ならでは”の楽しみ方を満喫

2016・座長大会構成は【お披露目口上】→【舞踏ショー】→お芝居【忠臣蔵】→【舞踏ショー】
歌舞伎以外の口上って初めて見ましたが、“正装”で居並ぶ座長の化粧とヅラが「ごめん、それふざけてる?」ってなくらいの、各々が個性的過ぎるブッ飛びぶりで、しばし凝視。 おもしろい…。 最後、座長の一人が三本締めの柝を打ち、そのまま幕引きの柝まで打ち続ける…シュールだ。
舞踏ショーは、相変わらず「初めて聴いた、こんな曲」的な謎の選曲に合わせて、歌詞には全く沿わない不思議な振りと猥雑な照明、ド派手なヅラ、メイク、着物で見せるショーでは、“襲名披露”という事もあり、大五郎さんはかつて見たことがナイくらいの“おひねり”の量! お札が扇状に次々とクリップで留められてバッサバッサな胸元に。 ついには留める場所がなくなって袖口に…という具合で圧巻、盛り上がる客席! 舞台上の贔屓の役者に桟敷後方からヒタヒタと忍び寄って、おひねりをあげるお客さんは“忍者”のようで面白い。 「来た、来た、来たぁ〜!」 やんや、やんやと客席からかかる声援に、気分が高揚してきた私もかけてみたいものの、役者さんを知らないので全力の拍手で応援。
お芝居は【忠臣蔵】。 外は30℃越えですが、舞台は雪降ってます。 松の廊下での刃傷沙汰から始まったものの「えっ?!そんな脚本?」という、ビックリな端折り方に唖然! お芝居ではさすがに上手い人を揃ってる! 玄海竜二さんの息子さん、沢村菊乃助さんが三枚目の女形、舞踏ショーでは綺麗な女形で奮闘で印象に残りました。

いや〜、突っ込みどころ満載で面白かった! 久々に博多新劇座にも足を運びたくなりました♪

2016・座長大会

出演者
藤 仙太郎/荒城 照師/藤美 一馬/里見 要次郎/葵 好二郎/南条 隆/姫 春之助/滝 夢之助/宝海 大空/一条 こま/橘 大五郎/二代目・藤ひろし/大島 竜志/司 大樹/沢村 菊乃助/都 京弥/筑紫 桃之助/三代目・小林 隆次郎/姫 金之助/錦 蓮/市川 市二郎/千澤 秀/梅田 英太郎/玄海 竜二
劇場
嘉穂劇場
日時
2016.9.10(土曜日)/17:00〜