壽 初春大歌舞伎・昼の部【松竹座】

毎年『その年の歌舞伎はじめは松竹座』なのですが…今年は藤十郎襲名の為、お目当ての翫雀さんは歌舞伎座へご出演。 「お江戸の一月公演は他の小屋でも歌舞伎公演がかかっているから今年は歌舞伎座かな」と思っておりました…が 松竹座の演目と配役が発表された時点で前言を瞬時に撤回。
やっぱり一月は松竹座ばい!」翫雀さんは来月博多座に来てくれるし♪
今公演の筋書きで…
仁左衛門さん『私なりの芝居の作り方を経験してもらえるイイ機会』
玉三郎さん『将来、この人たちが自分の一座をもった時の事を考えれば。今のうちに大きな役をやっておく、経験を積むことが何より大事』と語っていらっしゃいます。
今公演を拝見して、ただの歌舞伎一ファンながら「仁左衛門さん、玉三郎さん、本当に有り難うございます!」とこの舞台を観劇できる機会を得れた事にひたすら感謝でした。

義賢最期

今公演で一番楽しみにしていたのは…きっと多くの方もそうでしょうけど、愛之助さん@義賢! 仁左衛門さんのご指導の元、今回が初役で『生きているうちに1回できればいいなと思っていた遠い夢のような役』と愛之助さんご自身が語っていらっしゃった記事を読んでいたので、その意気込みたるやさぞ…と楽しみに観劇。
数年前の…それこそこの松竹座の一月公演で仁左衛門さん@義賢を拝見して以来観る【義賢最期】。 残念ながらその時は私が観劇する数日前に“戸板倒し”が予定とは逆の方向に倒れてしまった…とかで、仁左衛門さんがお怪我をされ、観る事が叶わず、私自身は“生の戸板倒し”を観るのは初めて。
今までのお役でも仁左衛門さんの面影を何故か彷彿とさせる部分もありましたが、今回は…うなりました。 正直、前半のどっしりした部分に“器の大きい大将”ぶりが薄く感じたのですが、白旗詮議からの心の底から絞り出すような気迫が素晴らしく、千畳敷を背景にズラリと軍兵がマイッタ・ポーズで居並ぶ中央に血だらけの形相で見得を切る大きさに、立派さにジ~ン!!
躍動感溢れる立ち廻りと“戸板倒し”や“仏倒れ”にはもちろん魅せられたのですが、一番印象に残ったのは花道での演技☆ 瀕死の状態で意識もうろうとなり突っ伏していたのが、ハッ!と顔を上げて気持ちだけで立ち上がる様は本当に感動的でした。
気迫溢れる熱演とその頑張りに心を打たれ、観劇後には舞台写真を購入。 仕事場に飾り、自分を鼓舞しています!
段治郎さん@下部折平の繻子奴ぶりは美しい…けど、こんなスマートな奴ってあまり観たコトなかったので違和感が。 実は多田蔵人行綱と正体を現してからも…見た目美しいのだけどなんだかサラッと流れてしまったような感がありました。 声に抑揚があるけど、平坦な感じというか、キャラクターの心情が伝わって来ないというか…魅力的なお役だと思うのだけど、ちょっと勿体ない感じが。
孝太郎さん@九郎助娘小万 やはりこのような世話女房のようなお役では「孝太郎さん上手いっ」と思ってしまいます。 いそいそと立ち振る舞う風情や、愛する者、信じるものを守る為、果敢に立ち廻る様はいつもながら応援しちゃいます。

十六夜清心

この演目の通しは関西でかかるのは初めてだそうですね? 私自身は仁左衛門さん×玉三郎さんコンビで…生の舞台拝見するのは初めて。
序幕の…玉三郎さん@十六夜と仁左衛門さん@清心のラブラブぶりって…スゴイんですね。 玉三郎さんって、相手が仁左衛門さんだと表情がとても穏やかな印象を受け、観ていると“幸せ~”のお裾分け”をいただいているような錯覚を受けます。
仁左衛門さん@清心の「幼い頃からの水練が仇となって死ねない~」って言う所はホント笑っちゃいますし、待ってました!の「しかし…待てよ~」はゾクッとする悪の色気があり、さすがな感がありました。
大詰での二人の変わりっぷりにはホントに笑えますが、あのヅラにはやっぱり…「美しい二人を観ていたい」そう思ってしまいます。
玉三郎さん@鬼薊のおさよ 玉三郎さんって悪婆演じていらっしゃる時って、嬉々とされている印象があるのですが、いかがでしょうか? 観てて何故だかいつもニッコリしちゃいます。
今公演、フル稼働の?猿弥さん@下男杢助実は寺沢塔十郎が痛快なラストを持ってっちゃうトコは、お話が分っていながらも「えええ~っ!」と驚き笑えます。 やっぱり木阿弥作品ってオモシロイ♪

壽初春大歌舞伎・夜の部【松竹座】

一條大蔵譚

鴈治郎さん@一條大蔵長成初役だそうで、これまた坂田藤十郎襲名対する意気込みが伺えます! 想像していたよりも“抑えた阿呆ぶり”でしたが、ニコニコと相手の顔を覗き込んだり、相手に合わせて踊ってみたり…その愛嬌は想像通り。
秀太郎さん@常盤御前翫雀さん@鬼平次女房お京はあまり拝見したことがないタイプのお役で楽しめました。 今回の舞台を拝見し、鴈治郎さんの一條大蔵長成は今後も繰り返し演じられるのでは…と思いました。

吉田屋

孝太郎さん@夕霧初役で、今回の遠征で楽しみにしていたひとつでした。
扇雀さん@伊左衛門はあり拝見したことがなかったのですが…う~ん、あまり好きではありませんでした(個人的な感想ですので失礼します)。 夕霧に対するスネ方が、なんかただの意地悪にしか見えなくって、ラストの勘当が許されてるノー天気ぶりには「良かったね~」と一緒に喜べなかったなぁ。 愛嬌が…ナイ。
対して夕霧はスネられてもスネられても、癇癪ひとつおこさず伊左衛門にすがるのが…「なんで~?」と思え、その感情が不自然な印象。 この演目の伊左衛門というお役の難しさを改めて感じた、今回の吉田屋でした。

幸助餅

松竹新喜劇の狂言を今回初めて歌舞伎の世話物として、関西を中心に活躍する役者さんを中心に上演。 翫雀さんの希望が叶ったとあって私も期待大で拝見! この演目に関しては、私見が激しく入った偏った感想になるので…まずお断りを。
翫雀さん@幸助は私が、翫雀さんファンになった角力場の山崎屋与五郎を彷彿とさせる、関取に入れあげる阿呆な若旦那ぶりで、私、頬がゆるみっぱなし。
孝太郎さん@女房おきみは、相撲にうつつをぬかす幸助を戒めるしっかり女房で【翫雀さん@頼りない夫+孝太郎さん@しっかり女房】のカップルが大好きな私には「たまらんかったとです!」
幸助が入れあげる弥十郎さん@関取雷五良吉、デッケェ!(たぶん2mはあったわ) カッコいいっ 花道の出、私は花横のお席だったので思いっきり見上げる形となって、大迫力(たぶん3mはあったかと…)。 カッコいいっす~っ♪
恩を受けた幸助の現状を知ってわざと悪役をかって出る、雷。 そうとは知らずに雷に対する憎しみの気持ちだけで、人生を立て直すことが出来た幸助。 ラストに真実を知る幸助と、苦しかった胸の内を明かす雷の二人の男泣きにもらい泣き
大好きな役者さんが揃いも揃ってニンに合ったお役でひとつの演目で新年早々拝見できるとは「こいつぁ春から“演技”がいいわぇ~。」
この演目はこれから是非上演を重ねていただきたいです! 翫雀さんの売るお餅、美味しそうでした~♪

壽初春大歌舞伎・昼の部【松竹座】

いやっほ~い♪ “2005年初歌舞伎”です! 今年末はいよいよ三代目鴈治郎さんが坂田藤十郎襲名という事で、その日の為に懐を暖めておかなくてはならない…のに、いきなり散財です。 いいんです。 『1月は松竹座遠征』は恒例なんですから!

相生獅子

扇雀さん孝太郎さんの二人の姫。 紅白の艶やかな姫の舞は新年のおめでたい雰囲気にふさわしく「あ~、コレよ、コレ! 私が観たかったのはこ~ゆ~空気の舞台なのよ~」と、久々の歌舞伎の舞台の雰囲気にうっとり。 実は、今回気がついたのですが、孝太郎さんの赤姫姿って私、どうやら初見のような…。 前半が可憐な姫だっただけに、後半の獅子の精となってからの鋭い表情や動きとの落差が際立ち、見入ってしまいました。 嗅覚や聴覚が研ぎすまされている動物のような鋭い動き…というのでしょうか? 姫のこしらえで毛振りする…って、そんなに足をパカッと広げて踏ん張れないでしょうし、大変だろうなぁ。 孝太郎さんという役者さんに初めて「カッコイイ~」という感想を持ちました♪

時平の七笑

翫雀さん@菅原道真という配役を知った時から楽しみでならなかったんです。 今まであまり品のある高貴なお役で拝見した事がなかったし、菅原道真公といえば福岡の人間であればやはり誰しも親しみを持っている人物なので、翫雀さんがどのように演じられるのか楽しみでした。 慕ってくれる子供たちに向ける慈愛に満ちた穏やかな表情には、今後いろいろいなお役への可能性を感じることが私自身出来て、嬉しい収穫でした。
竹三郎さん@左中弁希世は、自己中心的な卑怯さと滑稽さを兼ね備えた道化役がさすがで、政治的な陰謀がうずめく息のつまる駆け引きの中、笑いでひと息つかせてもらえました~。
我當さん@左大臣藤原時平は、まずこのような白塗りでヤンキー眉という悪人公家風情でのお役で拝見した事がなかったので、そのビジュアルに驚きました~! 筋書きで、我當さんが「この演目をいつか博多で演じてみたい」と話されていたのはとっても嬉しかったです。 楽しみにお待ちしていま~す。
ラスト、セットの御殿全体が前にセリ出ての手法は“時平の七笑”の迫力を増長させるような演出で素晴らしい工夫ですね。
イヤホンガイドの話。 天神さまへのお賽銭はお札はダメだそうです! 紙幣(しへい)だけに道真公が嫌う…と。 落語の小噺のネタだそうですが、ウマい!ですね。

男の花道

実はなんだかタイトルだけで敬遠していたのですが…号泣でした! 泣き過ぎて観劇後ひどい頭痛にしばし悩まされる有様。 前回の上演は平成6年・中座にて…との事ですから、実に11年ぶりの上演で私はもちろん初見。
鴈治郎さん@加賀屋歌右衛門は一座のスターの女形で、失明の危機にあったが、大阪から江戸に上がる道中、我當さん@土生玄碩という眼科医と出会い、視力と江戸での名声を手に入れる。 四年の歳月が流れ、江戸で開業していた玄碩は、とある諍いから切腹を迫られる危機に陥るが、今度はその危機を歌右衛門が救う…という、ちょっと【走れメロス】のようなストーリー
玄碩はオランダ医学を学んでいるとあって、ハイカラなバックを持っていたり、ブーツを履いていたりする(これがカワイイ)のだけど、その融通の利かない頑固ぶりは昔の侍そのものだった。
玄碩の危機を知らせる手紙は一座の後見人、竹三郎さん@加賀屋東蔵が、鴈治郎さん@歌右衛門が【櫓のお七】を演じている最中に差出し…恩人の危機を知った歌右衛門は舞台を中断し、客席の皆に事情の説明と断りを入れて劇場を飛び出す! この劇中劇の趣向は観客の自分も舞台に参加しているようで、「はやく先生の所に行ってあげて!」と言いたくなってしまった! ちょうどお席が舞台から走り降りる場所だったので、降る雪を巻き上げなから、ものすごいスピードで駆け抜けて行く歌右衛門の熱い想いが伝わってきました。
「先生!しばらく!」と悲痛な叫びをあげながら、花道を転びながら玄碩の座敷へと駆けつける歌右衛門に号泣。 お話だから間に合うと解かっちゃいるけど…号泣。 「なるほど男の友情のお話だったのね」と思ったものの、歌右衛門が女形ゆえ、なんか二人の間には恋愛感情があるような感じにも見えましたね。
あと役名が今現在もご活躍の役者さんの名前だったりして、聞いていると混乱してきたことと…元々は新劇の芝居だったこともあり、大袈裟な効果音が入り、それがかえってツヤ消しだったりして…不思議な印象でもありました。 またまた言いますけど、失礼ながら…鴈治郎さん、ウマイです!

浪花花形歌舞伎(Bプロ)【松竹座】

 河庄

翫雀さん@治兵衛
翫雀さん@治兵衛鴈治郎さん@孫右衛門は…“双子の兄弟”と言っても過言ではナイでしょう! ソックリ!
治兵衛の花道の出では「エエ男やん♪」と花横で見とれてました~。 途中、多少キャンキャンと叫び過ぎてちょっとウルサイな…、とかちょっとオーバー過ぎでは~、と私的に気になった所はありましたけど『治兵衛は翫雀さんでお願いします!
最後、孝太郎さん@小春に詰め寄り、ガッツリ腕をつかんで責めるシーンでは哀願するようで、小春に対する愛情が見てとれた気がしました。 小春は「ハッ!」と目を見開いて驚き、治兵衛を見据える表情がたまらなく良かったです。

曾根崎心中

扇雀さん@忠兵衛
初めて扇雀さん@忠兵衛を拝見しました。 「なるほど、こ~ゆ~解釈なのか…」と発見もありまして、次回の翫雀さん@忠兵衛での観劇が楽しみになりました。 鴈治郎さん@お初は…いつみても驚きの初々しい19才でありんした~。

女殺油地獄

亀鶴さん@与兵衛
亀鶴さん@与兵衛、コワイです。 今で言うなら“キレた若者”! どんな与兵衛になるのか、全く想像がつかなかった分、衝撃的! ですから、橘三郎さん@父・徳兵衛竹三郎さん@母・おさわの両親の悲哀がしみじみと感じられ、お吉に「金を渡してやって」と二人して頼むシーンでは客席のあちこちからすすり泣く声が…。
「いっそ不義になって貸してくだされ…」からの目の血走り具合は狂気が宿って、マジで怖い! 油で化粧が流れて、マジで怖い!
これからの亀鶴さんのご活躍が楽しみになった今回の与兵衛でした。

浪花花形歌舞伎(Aプロ)【松竹座】

8日間という公演でしたが、4/24・25に大阪松竹座に遠征してきまして、25日は千穐楽でした。 楽しみで仕方がなかった今公演☆ 公演前はAプロ、Bプロ合わせて6枚のチケットを手にしてウキウキとしていたけど、アッ!という間に6枚とも切られてしまいました~。
筋書きで鴈治郎さんが『手取り足取りの教え方よりも、それぞれの役者の持ち味を引き出して、お客様により強く訴えられるように』とお考えになったとのコメントがありまして、なるほど各々の役者さんで単純に“×2”ではなく“×3”以上もの舞台を拝見できる機会を得てラッキーだったな…と嬉しい公演でした。

河庄

扇雀さん@治兵衛
粉屋孫右衛門は吉弥さんの代役で鴈治郎さん。 複雑な思いで拝見しましたが、そこはやはり親子の間の呼吸というのでしょうか? 押し問答はリズミカルで小気味が良かったです。 扇雀さん@治兵衛は「小春に対してなんて思いやりのない、自己中心的なボンボンなんだろう」と、その我がままに言い分に腹立たしく感じ、その分、孝太郎さん@小春痛々しいまでの心の苦しみが伝わってきたように思えました。

曾根崎心中

翫雀さん@忠兵衛
もう何度も観ているけれど、今回ほど第三場の“曾根崎森の場”での翫雀さん@忠兵衛に感動したことはありません! 死を思い詰めた表情がものすっごく色っぽくて、ゾクゾクしてしまいました(ん?贔屓目ですか?)。

女殺油地獄

愛之助さん@与兵衛
孝太郎さん@お吉との再会にただただ感動~!の私。 最初の茶屋の場面でお光ちゃんにフーフーしてお茶を渡す所とか…その他の仕草が以前よりグッと母親らしくなったような気がしました。 “色っぽい人妻”は…う~ん、という感じはまだしませんでしたが、夫を助ける堅実な人妻ぶりは◎でした♪ 愛之助さん@与兵衛は、なんとなく想像していた通りでしたが、やはりビジュアル的にとっても合ってるな、と思いました。