宝塚歌劇月組公演・ミー&マイガール【博多座】

博多座に主演男役と主演娘役が来ない公演…というのは初めてです。
個人的には月組の瀬名じゅんさんの舞台を拝見した事がなかったので、楽しみにしていたのですが…それでも、偶然何かのTV放映で観て「芝居も歌も上手いジェンヌさんが居るんだなぁ」と存在を認識していた霧矢大夢さんが主演公演、と聞いて楽しみでした。
公演期間の途中で他の役ではキャストチェンジもあった…という、博多座のヅカ公演としては珍しく実験的だった印象です。
この演目は大学生の頃、ロンドンで一度だけ観た事があるのですが、メインテーマ曲とセット転換が面白かった印象しか残っておらず、歌詞も完全な理解に至りませんでした。 東宝での日本版も観た事がナイので…かれこれ、20年近くぶりの観劇となりました。
霧矢大夢さん@ビルは期待を裏切らない好演。 歌、芝居に加えて抜群のコメディセンスも持ち合わせグイグイと組を引っ張っての奮闘公演。
対して、羽桜しずくさん@サリーがあんまりにもあんまりで~冷や汗 私が観劇したのが初日だったので、公演後半では成長や安定も…だったのかもしれませんが汗 “ザ・娘役”というような乙女ビジュアルですが、歌があまりにも残念でした。 彼女は次期、どこぞの組で正式に主演娘役として就任する日が来るんでしょうか?
他に印象に残ったキャストは星条海斗さん@パーチェスター。 スラッと背が高く、頑張って霧矢さんのアドリブやギャクに食らいつき、おもしろ弁護士として?客席の笑いを取っていました♪
それから桐生園加さん@ジョン卿。 髭の似合うスマートなジェンヌさんって少ないかと思うのですが、これが色気があるおじさま風情で上品で凄く良かったです。 彼女の持ち役かと思いきや、これは本公演では霧矢さんがされていた役だそうで、今公演では大抜擢だったんですね! とても素敵で、ジョン卿ばかり目で追ってしまいました。
客席通路をふんだんに使ったり、ご当地ネタや時事ネタギャクも取り混ぜて、の奮闘ぶりは好感が持てました。 ラストのミニショーも「嗚呼、今年も博多座に宝塚がやって来た」という気にさせてくれて満足でした。

スカーレット・ピンパーネル【宝塚大劇場】

ず~っと観てみたかった1997年ブロードウェー初演のミュージカル作品。 日本での上演が宝塚歌劇団にて…と決まった時は正直ひどく落胆しました。 だって…歌がぁ~冷や汗 肝心の歌がぁ~汗
劇団四季【Song&Dance2】で♪マダム・ギロチン♪が歌われていた際に、その歌詞の内容と歌の迫力と重厚さに非常に印象に残っていたので、どうしてもそのレベルを求めてしまうんだもの~。
しかし!それは、歌の上手さに定評のある安蘭けいさんが率いる星組の上演という事で救われたうえ、その星組に在籍する従姉妹の高校時代の友人で今や男役さんの彼女が“本舞台で初めてセリフがある役で出演と聞けば…これはやっぱり観てみたい!
以前より『一度、あの独特の世界観でいつの世も乙女を夢中にさせている“乙女の本拠地”に足を踏み入れてみたい』と思っていたので、これはイイ機会かもと遠征を決行。 …って松竹座で【七月大歌舞伎】があっていたから抱き合わせ観劇で決定した訳で、ヅカ単独での遠征はあり得ませんでしたが~汗 あの【マダム・ギロチン】って曲がどういう場面で使われている曲なのか?っていうのもすごく気になっていたので。
今上演にあたって潤色・演出を手がけるは小池修一郎さん。 フランク・ワイルドホーンさんの曲+小池さん…といえば【NEVER SAY GOODBYE】で2006年読売演劇大賞優秀作品賞受賞しているので、これまた期待大! 私は今作品はこのヅカ版が初見なので、オリジナルにどの部分が潤色されているのか?は判りませんが【愛憎劇】【冒険活劇】【コメディー】という三つの要素が上手く調和した痛快娯楽作☆という印象でした。 ヅカ版のために書き下ろされた【ひとかけらの勇気】はテーマ曲として使われ、疑惑~希望~和解~愛情という感情の流れの根底に常に1本の筋を通している印象で効果的。 ただヅカ故に主人公二人の愛憎劇に重きを置いたせいか?いとも簡単にルイ16世の王太子シャルルを救出してしまったのは拍子抜け汗

抜群の歌唱力で堂々と演じる主演男役の安蘭けいさん@パーシー・ブレイクニーの存在感は圧巻。 きらびやかヴィジュアルや確かな芝居、美しいダンスだけでは到底カバー出来ない“歌唱力”に負う所が大きいこの作品。 私はヅカに詳しい訳ではナイので他の組がどうだ?というのは判りませんが“今の星組の上演で正解☆”という気がしたのですが…この素人考えはいかがでしょうか?
安蘭さんは昨年2007年8月の博多座公演で一度拝見した事がありますが、この時は喉が不調だったとの事で、彼女の本来の歌唱力を堪能出来ませんでした。 故に、今公演で「うわぁ~、この人ホント上手い!」と感嘆しながら心地良く聴き入ってしまいました。 前回気になっていた“べらんめぇ口調”はすっかり陰をひそめ、キザでウィットに富んだ正義感溢れるイギリス紳士、はたまた怪しげなヒゲおやじ~、と次々とキャラクターと衣装を替え、またコメディセンスは言わずもがな抜群で客席の笑いをドッカン☆ドッカン取っていらっしゃいました♪
ただ~アドリブに対する客席の反応って…過剰ですね汗 通っているヅカファンが多いからこその毎度のお楽しみポイントなんでしょうけど“笑う事を思いっきり構えて観ている”、“ココで笑わなきゃ!”というような…なんか、中村屋さんの芝居における客席にも似た心地悪さを感じて、引いてしまいました~冷や汗
ちなみに本日のアドリブと思える肖像画スケッチのシーンでは「こんなポーズだったかな?」とピンクレディのUFO♪のポーズを取り~「あ、違った!こっちか!」と、角度を変えてもう一度UFO♪ 顔芸も最高に笑えます! 『清く正しく美しく』のジェンヌがイイのか?!あの顔は?!汗 あと…仮装舞踏会の衣装をショーヴランに助言するシーン(だったっけ?)で「衣装はピンクのネグリジェみたいなビタァ~ッとした、シュッっとして~、ヒュ~ッっとした…」とか擬音連発で衣装を提案してました。
遠野あすかさん@マルグリット・サン・ジュストはもったぶったセリフ回しが気になるうえ、得意・不得意の曲の歌唱の差があってバラつきはあるものの、歌唱力がある事は確か。 やはり姿勢とドレス姿が美しい方ですね。 キリリと凛とした強い意志を持つ主演娘役さんだなぁ…という印象を更に強くしました。
柚希礼音さん@ショーヴランは…歌唱が不安定なものの、役所を的確に演じており身にまとう雰囲気と“熱”に拍手
“ヅカならでは”のきらびやかで豪華な仮面舞踏会や、迫力ある群衆シーンなどは星組一丸となった大所帯の熱演で迫ってくるものがあり、大いに満足させられた舞台でした。
そして『これがヅカ以外での上演だったらどうなっていたか?』と考えさせられました。 仮に東宝であれば、時代設定など被る作品も多く、またいつもの固定メンバーでの上演だったら…逆に厳しそうですね~?汗

劇場 キャスト
パーシー・ブレイクニー:安蘭けい/マルグリット・サン・ジュスト:遠野あすか/ショーヴラン:柚希礼音

七月大歌舞伎・夜の部【松竹座】

熊谷陣屋

最近やたら観ている印象ですが、松嶋屋+成駒屋のみの関西勢で演じられた今舞台は独自の部分もあって興味深く拝見
まず仁左衛門さん@熊谷直実の裃がすっごく奇麗で目を奪われました☆ 亀甲模様のベースのそれぞれの配色が“日本の伝統色”のカラーチップを散りばめたような…カラフルなんだけど渋い色合いでホントに奇麗~♪ 胸元の家紋“向かい鳩”も金糸の刺繍で立体的で素晴らしい細工。 これはご自身で誂えたものなんでしょうね?
孝太郎さん@藤の局熊谷の陣屋に助けを求めて転がり込んで来る…というくだりは、私は初めて観たような。 この前置きがあるからこそ藤の局が突然姿を現して斬り掛かる~という所が「あんた誰?」感がなくてイイですね。
熊谷直実が我が子の首を三段まで持って進み出て、それを秀太郎さん@相模はよろめきながら立ち上がり、三段を途中まで上って受け…夫婦揃ってその首を持ちながら見つめ合い涙する所は、胸を締め上げられるような悲しさが伝わってきました。 こんなに長い時間、我が子の首を手にして嘆く相模は初めて観ましたし、納得できない無念さがより伝わってきましたし、忠実な家臣とはいえやはり愛情深い父親であった直実の我が子と別れ難い悲しみをこの時点でより鮮明に伺う事が出来ました。
藤十郎さん@源義経の「解った、そういう事にしておこう」という度量の深さに加え、直実夫婦の悲しみに深い哀れみと同情している様が伺え、何故かしら義経の表情を観て泣けてしまいました悲しい
これらの濃厚な芝居の中、我當さん@白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清のセリフ回しだけが個人的にはちょっと浮いているように感じられたのが唯一残念。 着物は“南無阿弥陀仏”柄?なんですね。
『同じ演目でも役者が替わればこうも違う』という、歌舞伎観劇の楽しさを改めて知らされた…という感じでした。

黒手組曲輪達引

河竹黙阿弥作の“世話の助六”で、至る所に【助六】のパロディが散りばめられた世話狂言。 私、これも初見の演目。 今月の松竹座の演目…実は私、初見のものが多かったのも今遠征を決行した一因なんです。
菊五郎さん@番頭権九郎花川戸助六の激しい落差の変身ぶりは楽しい楽しい♪ ここまでヴィジュアルも演技も鮮やかに演じ分け、どちらも充分な魅力で楽しませてくれる役者さんって…やっぱり当代は菊五郎さんがピカイチ☆ではナイでしょうか?
菊之助さん@新造白玉との道行き、花道の出では「菊之助さん、よく吹き出さナイなぁ」と妙な所で感心しながら、どえらい美人さんぶりに見とれました。
松緑さん@牛若伝次のメイクがやたら大衆演劇風だったのがひどく気になりました汗 不良っぽい感じを出そうとしての事でしょうか? 初めて観た化粧だな…汗
今演目の最大のお遊びはご当地ネタ大放出! 菊五郎さんって…あの【2001年宇宙の旅】のテーマ曲(クラシックの正式曲名は何でしたっけ?)好きですねぇ。 カモが黄色×黒ストライプ法被と鉢巻きを身につけて“トラガモ”で登場。 田之助さんは【大阪くいだおれ】閉店の8日までは“くいだおれ太郎”→閉店後は阪神タイガースのマスコット“トラッキー”。 そして團蔵さんはKFCの“カーネル・サンダース”で「ぐぅ~っ♪」。 團蔵さん“エド・はるみ”好きですねぇ。 只今絶好調の阪神タイガース、これらのキャラクターが今年また道頓堀で弄ばれるかも?!
この後「あ、これはあの場のパロディね」というシーンが目白押し!ですが、前半のインパクトが強すぎたせいか、サラリと流れた感じで印象が薄かったのは…演目全体としては良かったのか?悪かったのか?汗
立ち廻りにご当地仕様の“だんじり”が使われていたのは風情があって◎
印象的だったのは、亀三郎さん@朝顔仙平。 助六では朝顔モチーフ満載のとぼけた道化キャラ(大好き☆)ですが、こちらは気の短い怒りっぽい荒々しい厳めしい武士風情。 こんなタイプのお役の亀三郎さんを拝見するのは新鮮で、かつて歌舞伎の演目でここまで長いセリフをしゃべっているお役…というのは初めて拝見したような~?で嬉しい配役。 うん、やっぱり彦三郎さんに更に似て来た!
そして橘太郎さん@白酒売り。 睫毛まで白く塗っているので、なおさら“おじいちゃん”という感じ。 武士の横暴さにビクビクしながらも、言う事は言う!気丈さと愛嬌が。 ん~、やっぱり橘太郎さん、ラブリ~♪

羽 衣

幻想的な美しさを堪能する舞踏で終わるのか…と思いきや! 舞台機構がすっごく面白く、ラスト「うぉぉぉ~!」とおもわず声を出して感嘆してしまいましたっ! 松緑さん@漁師伯竜から、羽衣を返してもらった菊之助さん@天女が、天へ舞い上がる見せ方がソレ! 手前の松やの岩場がセリ下がると同時に、舞台奥から雲塊がセリ上がり…その上で羽ばたく天女は、まさに“天に舞い上がる”ように見えて面白い! これって…デフォルトの演出ですか? 先人の舞台演出の工夫には多々驚かされますが…いや~、感心しました!

団子売

ご当地仕様でセットは“天神祭”。 愛之助さん@杵造×孝太郎さん@お臼夫婦は、最初に頭巾と法被(正式名称は何て言うの?)を身につけているタイプなんですね。 私、この拵えがすっごく好きなので嬉しかったです♪ 私、観ているようで…意外と観ていないこの組み合わせの夫婦でしたが、色っぽいくだりに「あらま」というような仲睦まじさ見てとれた、軽やかな打ち出しでした。

七月大歌舞伎・昼の部【松竹座】

例年だと“夏に遠征”というのはあり得ない私ですが、今年は以前からすご~く観てみたかったミュージカル作品が宝塚大劇場でかかる!という事で心が揺らぎ~「あ、松竹座で歌舞伎やってるじゃん!」と気付きまして…決行!
数日前の7月8日に閉店した【大阪名物くいだおれ】の店先には、もはや“くいだおれ太郎”の姿もなく…いつも賑わう道頓堀がちょっと寂しく感じました悲しい
で、気がつけば私、図らずも…菊之助さん&亀三郎さんは5月より三ヶ月連続、橘太郎さんに至っては4月より四ヶ月連続の観劇となったのでビックリ! まるで追っかけみたい~汗(橘太郎さんはファンですけどネ)

植物 春調娘七種
先月の博多座も菊之助さん@曽我十郎祐成松緑さん@曽我五郎時致で拝見しているので、なんだか続きを観ているような不思議な感じ汗(拵えも全く同じだし)
歌舞伎を観ていると「何故この季節にソレなんだ?!」と季節感を全く無視した演目がかかるのが常日頃なんとも不思議に感じている私(夏に【紅葉狩】は拷問です!)。 日本の伝統芸能=四季の移ろいを楽しむ…みたいな、四季がある国だからこ今の季節を楽しむ=風流(=贅沢・娯楽)、かと思ったり…。 しかしそうなると演目がなおさら固定されちゃいますから…面白くナイんだろうなぁ~汗
で、この舞踏は正月の七草粥の準備を…という設定。 孝太郎さん@静御前は、赤姫が頭に手ぬぐいを…って他では観れないですよね。 ひとりお澄まし姉さん、という感じでしたが…艶やかな一幕で、目が覚めました!

 第十四回【日本俳優協会賞】表彰式
幕間にいきなり式典が始まったのでビックリしました! 「今月は毎日あってるのか?!」と思いきや、本日たまたま…だったようですね。 式典の様子はコチラ
司会進行は鈴木治彦さん、プレゼンターは藤十郎さんと田之助さん。 受賞者の鴈乃助さん當十郎さんそれぞれに受賞の喜びをコメントされていた中、當十郎さんの十三代目さんとの思い出話にジ~ンときちゃいました。

便箋 血判取
自分のあやふやな記憶を辿ってみても…多分、この演目は初見かと。
左團次さん@徳川家康は「老衰すると何事も忘却~」「年を取っているので指の血が出ないから(んなバカな!)舌先を噛んで血判を…(怖すぎる~!)」と、なんともトボケた、しかしその裏にはキラリと眼光鋭い百戦錬磨の軍略家“狸爺”その人!という感じですね。 左團次さんの将軍は目に珍しく、楽しく拝見♪ いつも気になるのは戦場の大将の履物。 毛皮のモカシンみたいな…あれって何って名前ですか?
我當さん@木村長門守は、着物に香をたきしめる粋さを持ち合わせた華やかな若武者には…厳しかったなぁ汗進之介さん@郡主馬之助との組み合わせも一因あり?!) しかし緊迫している場のはずなのに、なんともゆる~い雰囲気のやり取りが面白い演目なんですね。
亀三郎さん@井伊兵部亀寿さん@成瀬隼人正。 最近別々でのご出演が多くなっている亀ご兄弟を久々に並びで拝見。 松也くん@榊原越中守は…やはり最近は立役の方がキリリとして姿が良いように思います。 後ろにズラリと居並ぶ20名もの家臣は迫力☆

きのこグリーン 伽羅先代萩
関西では【花水橋】【対決】【刃傷】の場は久々の上演との事。 私、実はこれらは初見!(のはず…) いつも観ている演目の前後を観る事によって、より理解が深まり…いや~、すっごく面白かった!「まぁ~た先代萩?!」って思って、ゴメンなさい汗でした。
★花水橋
“佃の合方”って好きなんですよね~♪ コレ、三味線でテケテケ弾けたらカッコイイ!と思うのだけど。
菊之助さん@足利頼兼は伽羅の下駄が似合うまさに“伊達男”って感じですね。 お話の設定は足利家なんだけど、竹&雀の柄の着物=伊達家の人間(実際はネ)、というこういう隠し味?が歌舞伎は楽しいですね。 めちゃくちゃ強いお殿様で、別に愛之助さん@絹川谷蔵の助っ人も要らないのでは?と思うのですが~汗 愛之助さんの相撲取りってのも珍しい。
この殿様が陰謀で隠居させられ、幼い息子・鶴千代が足利家の当主になるのであった…という部分だけの繋がりですが、悪党が怖さに押されてマッサージしてみたり、地図にされて道の説明に使われたり(←コレよくありますね)…となかなか楽しい一幕。
★御 殿
藤十郎さん@乳人政岡は何度も拝見していますが、今回が一番胸に迫るものがあり泣けました。 化粧が汗で落ちる様が両目から“赤い血の涙”を流しているようであり、腹のそこから絞り出すような慟哭に息をのみました。 「よく死んでたもった、でかしゃった~!」「有り難い、かたじけない、有り難い、かたじけない…」は、あまりの力強さに完全に“おっさんの声”になってましたけど汗 今回は【飯炊き】がナイ分、この場での注力が凄かったのかも? 先月に引き続き人間国宝に対して大変失礼ながら「当代・坂田藤十郎って凄いよ!」と改めて。
仁左衛門さん@弾正妹八汐は…怖い。 見るからに悪女!という悪意に溢れた冷酷な表情に惹き付けられます。 「何をざわざわ~。可哀想に、痛いかのぉ~?」は残酷さに凄みがあり、引っ込みの“ニヤリ”で背筋ゾゾォ~ッ冷や汗
政岡と八汐の体型も対照的だったのは、すごく効果的だったように思えました。
小川真生ちゃん@ 鶴千代は…ん~、ちょっとこの主君の為には命は差し出したくナイなぁ~汗という感じの冷血な印象。 対して長亮太朗くん@千松は演技が細かくてビックリ。 毒菓子を口にした上、八汐に刺されたその腕の中では足がピクピクと痙攣するんですもの!! あんな苦しみを見せられると政岡ママでなくても、たまりません悲しい
★床 下
松緑さん@荒獅子男之助に、仁左衛門さん@仁木弾正。 ただただ奇麗です…。 これほどまでに場の空気を支配して悠々と妖しく去って行く弾正なのに、次の場ではお白州に座っているって…カッコ悪~汗 【床下】の後場が続けてあまり上演されない訳が解ったような気がします。
ねずみが足からすっぽんに飛び込んだのには驚きました。
★対決・刃傷
菊五郎さん@細川勝元はスッキリとした裁き役。 傷を負いながらも左團次さん@渡辺外記左衛門愛之助さん@渡辺民部親子(珍しい組み合わせの親子だ!)に弾正へとどめを刺させ、また薬を飲ませたり、宮中内移動にも輿を用意させたり…と懐の深いお殿様の計らいにビックリ
渡辺外記左衛門が上状をいただく時、裃の差し込みを外して書状を挟んで受け取る…というのは作法なんですか? 血で手が汚れていたからたまたまこの場では…なんですか?
遺体となった仁左衛門さん@仁木弾正は“大の字”のまま頭上高く担ぎ上げられて退場。 これが絵になってカッコ良く“仁木弾正=カッコイイ役”という面目は保たれた…ような?

六月博多座大歌舞伎・夜の部【博多座】

日の出 菅原伝授手習鑑
【加茂堤】梅玉さん@桜丸ポニーテールを揺らしながらいそいそと立ち回る様が愛らしい♪ 時蔵さん@女房八重とのアツアツ新婚ぶりは観ているこっちが照れるようで(結構きわどい夫婦の会話!)…だからこそ【賀の祝】での悲劇が引き立つ感じ。
今公演、全てにおいて「イイ!」と大注目だった梅枝くん@苅谷姫。 な~んかすごく安定感があって引きつけられるんですよね。 赤姫姿も愛らしくいじらしく、桜丸夫婦と一緒にジリジリしちゃう感じ。
松江さん@斎世親王は、眉間の皺が深く苦悩の色が…。
秀調さん@三善清行って…こんな半道敵での秀調さんを拝見したのは初めてだったので、軽快な可笑し味が新鮮。 ニマァ~と笑う表情に大爆笑!
幕開きからず~っと座って控えている牛車の前足が“横座り”なのが、すっごく気になりました汗
【賀の祝】 翫雀さん@松王丸って…翫雀さんが三つ子の一人を演じるのはすごく珍しいので目に新鮮☆ 松緑さん@梅王丸との“子供のけんか的なバトル”は『おぉ~♪W英竹対決~』で楽しく、「おいらは知らぬ~」と二人揃ってトボけるなんだか可愛らしくてニッコリ。 「お兄様を足蹴にするとは~」とブチ切れて真ん丸体でコロコロと奮起する翫雀さん、愛らしかぁ~(激しく贔屓目)…って二人ともちょっと関取みたいでしたけどネ汗 慌てすぎて二人とも女房を取り違える様がすごく自然で客席爆笑でした♪
東蔵さん@松王丸女房千代菊之助さん@梅王丸女房春が、左團次さん@白太夫の70歳の祝いの膳を整える様は、どこからみても“女房”ども。 今回は特に菊之助さんの後ろ姿が、女性にしか見えないという…人妻の色っぽさがあって感嘆☆
ここで時蔵さん@桜丸女房八重だけ着物が“お引きづり”なのは…何故なんだろう?
船乗り込みで「博多座で初めて切腹をいたします! その死に様を是非とも皆様にご覧いただきたく思います」と熱く語っていらっしゃった梅玉さん。 腹かっ斬る~自ら頸動脈へトドメ~床に突っ伏す、そしてラスト顔を上げて合唱する一連の表情に気品が漂うのは、ならでは!の魅力。 物語の悲劇性が倍増したように思いました。

坊主 達陀
私は2004年3月に歌舞伎座で一度観ただけなので、群舞の迫力だけしか印象に残っておらず、今演目が発表になった時「博多座で【達陀】がかかるとは~!」という嬉しい驚きと同時に「通いそうで…怖い」と思いました。 で、結局4回汗
特筆すべきは藤十郎さん@青衣の女人! 「何故妾の名を呼び忘れ給いしそうらえか~(←不確か)」と妖しく菊五郎さん@僧集慶蛇のようにネットリと絡まり付いて、煩悩へ引きづり込もうとする“女の情念の権化”の様が圧巻。 「うわぁ~、集慶ピンチ!」「もはや堕落か?!」と思う事度々。 生々しい色香は集慶が青衣の女人の胸元に手を差し入れた時の、その両者の表情が最高潮。 よってそれを潔く振り切る重慶に青衣を投げかけ~投げかけ、再度誘惑を試みる必死の形相~鬼の形相になる女人は大迫力。 青衣の女人の濃厚さで、この修行がより大変な業である事が感じられた次第でございます~。 すっぽんからの出と引っ込みの…その纏っている空気感だけで「あ~、この女この世の者ではナイなぁ」と納得させらるさすがの存在感にうなりました。
チーム火天はリーダー團蔵さん。 ファイヤ~なメラメラと立ち上る迫力の照明の中、豪快な足踏みから発せられる「ダッダッダッ」というリズムとドラ?太鼓?のメロディに、ぐわぁ~っと体温が上がります! やはり公演を重ねるに従って、まとまりが出て来て更に心地良いですね。 團蔵さんのキリリとした気迫の表情が、このチームの迫力に大きく加担している事は間違いないっ!
チーム水天はリーダー橘太郎さん。 こちらの照明は青っぽいだけで、特に水らしい揺らぎの仕掛けはなく、チームメンバーは皆、顔色が悪く見える~汗 対照的な流涎的な動きは…優雅といよりは“可愛らしい”と感じてしまうのは、リーダーのせい?! 何故だか火天に対して、水天の踊りは短く感じたのですが…通常版でしたか? ラストのツツツ…という後ろ高速引っ込みは「よく後ろの人につまずかないもんだ!」と手に汗握ります。
そして…練行僧大集合!となった所で、天井から火の粉のキラキラ紙吹雪が惜しげもなくザンザンと降り注ぎ、さらに加熱!加速! 観ているこっちもボルテージも急加速! 「迫力の群舞も堪能したけど、一人一人も観たい」もんだから忙しい、忙しい~びっくり
梅枝くんと、そして秀調さんの踊りに安定感とキレがあって惹き付けられました(橘太郎さんは言わずもがな♪) 秀調さん、今公演では役所がバリエーション豊かだった事もあったし…今までそんなに気に留めて拝見する事がなかったので新鮮でした(奥様のお里が福岡だそうで♪)
上手に控える…唄のお姉さん方。 なんで照明があんなに怖いんですか~冷や汗 まるで顎の下から懐中電灯で顔を照らしたかのようで、暗闇にぬぼぉ~っと浮かび上がる青い3つの顔。 でもって歌い出しが「さんげぇ~、さんげぇ~、さんげぇ~」と低くオドロオドロしいもんだから、怖すぎますって汗

青りんご 弁天娘女男白浪
先月の團菊祭でベテラン五人衆を拝見していたので、当代の菊之助さんが弁天小僧菊之助を演じる今月のフレッシュ五人衆はその比較を楽しみに拝見。 それぞれに良さがあって「歌舞伎って面白い♪」と改めてその観劇の楽しさを知った次第であります。
橘太郎さん@番頭与久郎♪ 実は私、【浪速花形歌舞伎@お染の七役】【團菊祭@白浪五人男】に続いて今月…と“三ヶ月連続・橘太郎さん@番頭さん”を拝見する事に♪ ん~、やっぱりそのラブリーさにニッコリしちゃいます。 「今月の博多座大歌舞伎と、レストラン花幸さんも大入り」は、毎回同じだったようで。
菊之助さん@弁天小僧菊之助は、正体を現す時に紅を落とすだけでなく、眉も描き変えているんですね。 よりキリリと凛々しい男の子風情が際立って、鮮やかな変身ぶりに見えました。 待ってました!な名ゼリフは…ちょっと節を付け過ぎのような~、歌っているような感じというか~、艶を付け過ぎるというか~、で個人的にはちょっと耳に心地が悪かった。 「わっちゃぁ~、ほんの頭数」っいうトボケた言い回しも笑えず。 力が入り過ぎているのか?なんだか、迷いながら演じているような硬い印象。 しかしながら、松緑さん@南郷力丸との相性は良く、その掛け合いは小気味イイ☆ 引き上げ時を目で合図し合う様や、花道での“坊主持ち”の引っ込みの可笑し味は充分!
亀三郎さん@忠信利平彦三郎さんをみた! 今まで似ている…と思った事は皆無でしたが、茶で取った目の隈の顔と、声が…ソックリ~。
梅枝くん@赤星十三郎、こちらも先月お父様がされたお役を…ですね。 傘を持つ手がピタッと動かず感心。 この場だけで、赤星というキャラクターを印象付けるのはやっぱり至難かと。 声色だけでは“なよなよ君”的な印象が勝ってしまいました。
團蔵さん@日本駄右衛門って…私、初めて拝見したかも? 若者不良グループを取りまとめるリーダーの貫禄は充分なれど、如何せん細い~。