六月博多座大歌舞伎・昼の部【博多座】

十一代目市川海老蔵襲名披露公演! 大劇場では最後となる襲名披露公演で、全国からも多くの海老蔵ファンが博多座にかけつけたのはもちろん、「一度、海老蔵を観てみたい!」と、大河ドラマでお茶の間でもお馴染みとなった海老蔵さんを一目見ようと、今公演で“歌舞伎デビュー”をされた地元の観客も多かったはず!
5/29に行われた船乗り込みでは日曜日と重なったこともあって、過去最高の人出を記録。 公演の盛り上がりが期待できましたが…それを裏切らないものとなり、連日客席が大いに賑わった歌舞伎公演となりました!
「いつもこのくらい博多座歌舞伎公演の客席が賑わってくれたら…」と、今後の動員を祈念せずにはいられません。
初日開ける前に【喜撰】でお梶をされる予定だった雀右衛門さんが体調不良との発表があり、大変心配しましたが【口上】にはご出演、千穐楽まで務められて安堵しました(代役の芝雀さんの奮闘公演!)
また、十蔵改め市蔵さん、正之助改め権十郎さん、男寅改め男女蔵さん、新次改め新蔵さんは、襲名後今回が初めての博多座ご出演でした。

源氏物語

“瀬戸内寂聴・源氏は、私は数年前の【明石の巻】を歌舞伎座で観ているのですが…どうも苦手だったので、その意識がぬぐえず1回のみの観劇となった。
御園座での襲名披露公演でもかかったが、今公演の博多座用にまた團十郎さんの演出がに大幅に変わったとの事も話題だった。

第一幕【藤壷の巻】
セットが面白い!菊之助さん@藤壷の寝所に忍んで行く、海老蔵さん@光の君の導線に併せて御殿のセットが回転し、本当に屋敷奥の寝所にようやく辿りついた…という感じで興味深かった。
また、藤壷への思いを遂げた光の君が屋敷に引きこもっている所に、松緑さん@頭中将が尋ねて来た時、ココは雨の情景なのだがその雰囲気がセットなのか?効果音なのか?役者の演技なのか?…しっとりとした湿気を感じる事が出来て面白かった。以前観た時も松緑さんの頭中将は好演だな、と思ったが今回も“気のいいさっぱりとした友達”風情が好きだった。対して鬱々とふける光の君の“気怠い色気”に、エラそうだが「海老蔵さんの成長をみた」という感じを受けた。

今回、とても楽しみにしてたのは…芝雀さん@六条御息所。 ひっそりと耐える美女、というイメージが私の中で強いので「嫉妬に狂った生霊の芝雀さんなんて♪」 【六条御息所邸 寝所】の場では 、芝雀さん@六条御息所が光の君を人目につかぬよう早く帰したがったり、でももっと一緒にいてほしがったり…とプライドの高さが邪魔をしながらも懸命にすがる姿がいじらしかった。対して「私、眠いんです」と年上女のヒステリーを持て余し、あしらう光の君のは面白かった。

第二幕【葵・六条御息所の巻】
【一条大路 車争い】でみせた六条御息所のギリギリとした悔しさは、今後の展開を容易に予感させる気迫充分!ブライドが高い…というのは時として悲劇につながる事もあるんだなと教訓。そして芝雀さんがこ~ゆ~お役の引き出しも…と収穫♪

【宮中 飛香舎】での須田あす美ちゃん@東宮の、なぁ~んと可愛らしいこと!歌舞伎で唯一?苦手なものに子役のセリフまわしがある私。「もっと普通にしゃべらんかい!」といつも思うのだけど…今回は現代語なので自然な子供らしい会話でその無邪気さが、あす美ちゃんの声の可愛さも手伝って際立ち、菊之助さん@藤壷の苦しい胸の内も強く伝わってきたように思えた。 ついホロッともらい泣き…。

【宮中 裏庭】
このセットは、すすき野に幾重にも橋がかけられ、ヴィジュアル的にとても美しく、また光の君と藤壷の距離を表して秀悦だった! ラストは非情にお互いの心情がとても良く出ていたと思う。
数年前に観た時よりも舞台セットの転換などスムーズで観やすくなっている印象は強かったものの、やっぱり暗転が気になり、BGMもウ~ン…で、やっぱり私は苦手な源氏物語だった。

海老蔵(光の君)/松緑(頭中将)/菊之助(藤壷女御)/亀治郎 (葵の上)/芝雀(六条御息所)/田之助 (弘徽殿)/團十郎(桐壷帝)

喜撰

瓢箪のついた桜の枝を手にしての花道の出で…それだけで笑ってしまう。口伝には“女形と立役の間で踊る”とあるそうで、なるほど足はちょっと内股で品が良く、でもユーモラスな感じ♪いつも思うがあの鼻の下のヒゲは反則!ど~しても笑ってしまう。茶汲み女の色香に迷う様子の舞踏…であれは、鼻の下を伸ばしている、と思えば納得の拵えなのだろうか?菊五郎さんの達者な踊りをウキウキと観れる楽しさに溢れた。 余談だが…菊五郎さんの喜撰メイク、チャップリンに似ている!と思った。
そして、雀右衛門さんの代役として芝雀さん@お梶。手ぬぐいを頭にかぶせて顔を隠しての出→取った瞬間の美しさ、は喜撰と同様に見とれてしまったし、安心だった。
喜撰の弟子がズラリと居並ぶ様は「これぞ襲名披露公演」とまた豪華、豪華! ここで特筆すべきは松也くん。 麗しすぎる坊主です。「これなら男色に走る坊主仲間がいても頷けるわ!」と思ったほどの色気ある坊主だった。
昼の部は長~い源氏物語、しかもラストが重いので、打ち出しにこのような楽しい舞踏が付いていてヨカッタ♪
菊五郎(喜撰法師)/芝雀(お梶)…雀右衛門の代役