當世流小栗判官・第一部【国立劇場】

実は…古典の【小栗判官】を観るのは初めて。 過去一度、京都南座(’92年3月公演)にてスーパー歌舞伎の【オグリ】を観ただけで、この時は“スーパー歌舞伎初体験”だったもので、ただもう圧倒されて「スゴイスゴイ」という記憶しかなく、歌舞伎自体にも全く馴染みがなかったので、ストーリーとしての記憶は今イチ残っておらず。 何故かしら一番記憶に残っているシーンは照手姫が判官を躄車に乗せて引いている…という寂しいシーン(他が派手だったから落差が印象的だったのか?)
予習の足しに…と、この時の筋書きを開いてみると…門之助さんの襲名と猿十郎さんの名題昇進のご挨拶が掲載されており…猿十郎さん偲んでしんみり
さて、今回は昼と夜の二部制。 そうするだけの意味ある舞台である事が期待される訳であり、どちらかの部だけでも楽しめ、またもう一方も観たくなる…という価値が求められる訳で公演形態としても新たなチャレンジ! 観劇料金やイヤホンガイド利用料では“通し割引料金”が設定されたり、一部、二部とも冒頭に口上をつける事に工夫も。 口上では「もう一方の部も必ずや観ていただけるかと」と宣伝も忘れないご愛嬌☆
一日通し観劇をした印象としては、一部に軍配…かな

乍憚口上

壮大なスケールのファンタジック時代物の大筋や人物関係を口上でもって、右近さん、笑三郎さん、春猿さんが解説。 澤瀉屋一門の口上だなんて今後も滅多にみれる事はナイ貴重な機会だろう…と、初めてみるその姿は爽やかな浅葱色の裃で初々しささえ感じられる。
「もちろん第二部も観ていただけるとは信じてはおりますが…」とユーモアも交え解りやすく解説し終えると、大セリがスッと下がって舞台をはけていく。 これには「お~っ、そうきたか」と早くもこの舞台の意表をつく演出にボルテージが上がった!

発端~序幕

御家騒動の発端から、馬術を得意とする小栗判官が荒馬を乗りこなし“碁盤の上での曲乗り”の見せ場まで。
歌舞伎の演目で馬が出てくる演目は数あれど、ここまで馬自体がアクロバティックな動きをするものはナイのでは? 馬役(っていうの?)さんの奮闘振りに拍手の連続☆ 馬の表情さえも変わって見えてくるから不思議。 後ろ足で立って、前足を上げる“ヒヒィ~ン体勢”は前足役の方の負担が大きいんだそうで、二人の呼吸の合せも訓練の賜物なんでしょうね。 その上にまたがって「ハッ!ハッ!」と涼しい顔でかけ声をかけているだけ(だけじゃないんだ、乗り手もきっと大変なんだ)右近さん@小栗判官。 「馬役の人、大変なんだからもうちょっと手加減してやってよ~」と軽い憤りを感じてみたり?
“馬相”=馬の良否の見分け方…という言葉、初めて知った!

二幕目

忠臣達による決闘シーンがメイン。
段治郎さん@浪七門之助さん@お藤。 この二人が夫婦役って…初めて拝見したような? 「来世でも夫婦に…」と誓う程、二人の間に愛は感じられなかったのは残念。 猿弥さん@鬼瓦の胴八は愛嬌のある悪党で、従来の猿弥さんの範疇のお役であろうし、手堅い印象。 借金取りに身ぐるみ剥がれて裸腹に着物を巻き付けての登場は、歌舞伎でそんな出で立ちって観たことナイから、えらくツボ。 肉襦袢?の胸がミョ~にリアルなのも笑える☆
かつては三枚目の橋蔵と二枚目の小栗を同じ役者が演じる…というのが通例だったそうで、この度は右近さんが! 事前にその事を知らなかった私は、花道の引込みまで「誰だ?この芸達者な人は?!」と思っていたほどの化けっぷり(見た目臭ってきそうに汚い…)。 ちょっと演りすぎの感はいなめなかったけど、楽しい息抜きの時間。
【浜辺の場】段治郎さん@浪七、オンステージ☆
遠ざかる船を小高い丘から必死に呼ぶ様、丘が盆の上で回る様は俊寛であり、自らの腸を取り出し瀕死の状態ながらもの胴八との斬り合いは壮絶で、知盛を彷彿とさせ迫力満点。
岩肌を豪快に流れる鮮血とラスト頭から丘を滑り落ちる演出は衝撃的であり、劇的な幕切れの…まさに“大出血サービス”だ!!
個人的には、あの大舞台でスケールの大きな芝居を一人で演じる時間も長く、そんなダンジロさんを観て「立派になって…」と胸がいっぱい。 涙悲しい
とはいえ、浪七(実は美戸小次郎武継)の前半の人となりの描かれが薄く、自分の命を投げ出して照手姫を取り戻すという忠義ぶりが唐突な印象が残った。
ここで、浪後見さんたちの奮闘ぶりも是非書き添えておきたい!