スーパー歌舞伎の原点【ヤマトタケル】ですが…実は私、過去に映像でも観た事がなく、今回が全くの初見でした。 久々の再演となった今公演でしたが、猿之助さんのご出演はなく、脚本&演出を手がけられ、ヤマトタケルとタケヒコの二役を右近さんと段治郎さんのWキャストで演じるという趣向でした。
私は段治郎さん@ヤマトタケル、右近さん@タケヒコで観劇。
まず全体を通して強く感じた事は“和風”な印象 【新・三国志】がシリーズで続いた為、“スーパー歌舞伎-中国もの”というイメージがいつしか自分の中で固定されていたようで、「ほぉ…あら~」という、なんとも表現しようのない新鮮な驚きがありました。
段治郎さん@ヤマトタケルは、純粋な心を持つ心優しい若者と、ただひたすらに父親の愛を激しく求めて彷徨う息子の悲哀を併せ持つ主人公を好演☆
しかし、個人的に安心して観れて、段治郎さんの持ち味が発揮されたいたような気がしたのは色悪系の…ヤマトタケルの兄・大碓命。 自分の妻の妹に迫る悪ぶりは、そのセリフではないけれど「良いではないか、良いではないか~」という感じ。 純な部分を演出する為か…ヤマトタケルの高い声のトーンになかなか馴染めなかった私は、大碓命でホッと一息つけた感じでした。
この舞台で特に好きだったシーンは2つ☆
ひとつは第一幕・大五場【熊襲の国】。
猿四郎さん@兄タケル、猿弥さん@弟タケルが統治するこの国の人々の衣装は“海モチーフ”がふんだんに取り入れてあって、海好きの私にはことごとくツボにハマりでそのデザインセンスに大興奮☆ 珊瑚の模様に海色のスカート…のような侍女の衣装には「あれ、着てみたい!」。
極めつけはタケル兄弟の大袈裟なまでに豪華な衣装 猿弥さんのマントには蟹、猿四郎さんのマントにはタコが巨大に背中にあしらってあって、虚勢を張るところでは魚のモチーフがちりばめられてマントの裾を黒子さんがバーッと持ち上げてぶっかえり“海、海~”って感じ。 荒事の極みのようなデッケェ兄弟はカーテンコールでの、のっしのっし歩きもツボした♪ この演目の中で一番好きなキャラでした。
段治郎さん@踊り女は「デカッ!」とビビるものの、恥じらう表情とか可愛らしくってビックリ! あの色香に惑わされる熊襲兄弟の単純さに笑えました♪
もうひとつは第二幕・第四場【走水の海上】。
旅の途中、海路でのヤマトタケルのピンチを救ったのは、春猿さん@弟橘姫。 海の神へ人身御供としてその身を投げるのですが、この時の舞台演出・美術に大感動! 舟を囲んだ波布が荒く動いたかと思えば、畳を海に投げ入れると、その布を繰り出すようにして海面にその畳が広がる(←解ります?)。 これにはスゴイ、スゴイ! そして海に身を投げた姫の上半身がぶっかえって海の模様のお着物になって手を振りながら海底へ消えてゆく。
船上での段治郎さん@ヤマトタケルの取り乱しぶりや、深い悲しみなどの熱演も良く、ここは本当に素晴らしかった!
ただひたすらに父の愛を求め続けた果てには最後までお互いの心が通い合うこともなく、それでいて実は周りの女性を結構不幸にしてしまっているヤマトタケル。 最後は自身の“慢心”から命を落とす事で、観る者に教訓が得られるけれど…全体通して「では、何がこの作品で伝えたかったメッセージなのか? 主題はなんぞや?」という物語の軸の部分が、観劇日を経ても弱い印象私は残りました。
ただ“和的”な衣装やセットなどのビジュアル面や、踊り、音楽など…いわゆる“歌舞伎味”が多く、私は“中国シリーズ”より断然好きでした。
今回Wキャストで頑張る段治郎さんは、踊り女で「デカイっ!」、宙乗りで「デカイっ!」と若干引きながらも、カーテンコールで、メキシコのピラミッドのような所からピンで登場する時は“主役オーラ”を放っていて、その成長ぶりに(←エラそうに~)ジーンとウルウルきてしまいました。
タケヒコでの横ポニーテール姿も観てみたかったな♪(こっちが好きという人も多い)
「新橋演舞場」タグアーカイブ
新・三国志III ~完結篇~【新橋演舞場】
私、行きは早朝の飛行機だったため機内で絶対爆睡すると思いまして、コンタクトレンズは羽田に着いてから入れようと裸眼で搭乗。 で、到着後さて装着…とバックを探すと~、忘れました さっぱり見えない 自分で自分がものすごく情けなく「も~う、このバカちんがぁ~!」辛うじて、すでに度は合わなくなっているもののメガネは持参していたので、ものすご~く忙しい観劇体勢となりました。 かけて、はずしてオペラグラス、かけて、はずしてオペラグラス…。 演舞場では2列目なのにオペラグラスで観劇してたので…役者さん達からは、怖いお客と思われたはず…。 悲しかった
さて本題。 段治郎さん@謳凌は最初のセリ上がりの出で、鳥肌ゾゾ~!! 綺麗です! 絵になります! カッコ良すぎです! そして、その姿に「立派になって…」と、もう親心のような心境で涙がじわ~っと度々出てきて困りました(ただでさえ見えないのに)
【新・三国志】シリーズは回を重ねるごとにセリフが説教くさく聞こえて…キーワード“夢みる力”がくどくて拒否反応があったのですが、今回は素直に自分の中にスッと入ってきました。 きっと公演回数を重ねて台本・演出等の直しもあったのでしょうが、やはり一番大きな原因は、段治郎さん@謳凌だった事にあると思われます。 猿之助さんご自身が筋書きのコメントで話されていますが「謳凌は段治郎の方がニンに合っている」と。
謳凌は架空の人物で、そのキャラクター設定も難しかったと思われますが“爽やかな平和を愛する武将”という感じが良く出ていて、好演でした。 やはり花道での全力疾走やパワー全開のスピード溢れる立ち廻りなどは、観ていて気持ちが良かったです。
そして最後、関羽となっての一人宙乗り。 客席全体に降り注ぐ桃の花びらの中をダンジロさんがゆっくりと、ゆっくりと進むと感動の最高点! 泣いちゃってました、私。
あと、本来ならダンジロさんが演じる予定だった馬謖の息子・馬潤を笑三郎さんがされていまして、コレがまた「イイもん見っけ!」という感じ(?) 私は笑三郎さんの立役を多分、一度も拝見した事がナイので、その衝撃も大きかったのですが“退廃的な美青年”といった感じがとっても良く出ていました。
私の中では『パート3まで作る必要があったのかしら?』という疑念がずーっとあったのですが、今公演で納得。 スッキリできました。
とはいえダンジロさん…立派になって…
新・三国志II【新橋演舞場】
「Part2として作る意味があったのかな?」と いうのが正直な感想です。 宙乗りにしても…「宙乗りにしなくてはいけない必要性」 は感じられず、お約束シーンを盛り込んだ…という感じが強かったですし、 アクロバットの連続技に魅せられたとしても 「そこまでする必要があるの?」という、ちょっと過剰気味演出である印象が ぬぐえませんでした。 “スーパー歌舞伎”の“スーパー”な部分が、私の中ではちょっとズレてきた感じがしました…。
衣装は今回も素晴らしかった! チーム編成によるカラーリングはもちろんの事、 細部にわたるデザインまで魅せてくれました♪ 南方国の美人姉妹の衣装、胸の部分が…昔のアニメ【マジンガーZ】の“おっぱいロケット”のようにどうしても見えてきて、バーンと飛び道具が胸から出ないかなぁ…と期待しましたが、それはなかったデスね、やっぱり。 舞台セットや表現の手法に「お~っ、オグリだ!」「お~っ、八犬伝だ!」 というものが見受けられ、その時の感動も思い出されて 楽しめました♪
役者さんに関しては、前半のくどさが気になりつつも笑三郎さん@祝融が好きでした♪ 恋を知ってた女心の経過をとても自然に観ることができ、グッときました…。 ご自身も より一段とシャーブになって美しさに磨きがかかり、衣装替えも多く 視覚的にとても楽しませてもらいました♪
ご贔屓役者・段治郎さん@馬謖は、若き武将という精悍な感じが出ていて好演でしたが、ストーリー自体がもう少し死に至るまでの馬謖の活躍が描かれていると、より「殺すには惜しい…」という点が 際立ったのではないかしら?…とちょっと残念。 猿之助さん@孔明のセリフのみで説明される状況はちょっとツラかったような気がしました。
そして、今回のお気に入りのキャラは…仲達親子☆ 段四郎さん@仲達、猿四郎さん@子元、段三郎さん@子尚の“紫三人組”はナイスでした♪ 弟が兄に向かって「兄上」というのは分かるけど、 兄が弟に向かって「弟!」と呼ぶのには笑えた~。 …名前を呼んであげなよ。
実は、途中からこの仲達親子が【おじゃる丸】にでてくる“小鬼たち”にイメージがダブってしまって、しょうがなかったんです、私☆ 「やい!孔明、今日こそはお前の命をいただくでごんす!」 「ひとまず今日は退散するでごんす!」ってな感じで…。
最近、何故か“笑いどころ”探してしまう自分の観劇姿勢に困っています〜。
来年3月の博多座では、どのように変わっているか楽しみです♪