博多座文楽公演・仮名手本忠臣蔵(夜の部)【博多座】

五段目【山崎街道出合いの段】【二ツ玉の段】

お芝居の前の解説で勘十郎さんが「イノシシが2006年から2007年へと一瞬にして駆け抜けますので、お見逃しなきよう♪」とおっしゃってましたので、その登場に客席が湧きました♪

六段目【勘平住家身売りの段】【勘平腹切の段】

この段の重要な役所なのに、文楽では“おかや”には名前がナイんですね(文楽に登場する女性は名前があまりついてナイらしい?) 訪ねてきた原郷右衛門と千崎弥五郎に、婿の罪を訴える様はやはり重要な役所で、勘平は窮地に。
舅殺しの疑い晴れながらも瀕死の状態で仇討の連判状への連盟を許される勘平。 血判は…なんと切り裂いた腹から臓物を取り出して、それで押すとは、なんとも豪快な!

七段目【祗園一力茶屋の場】

嶋太夫さん@由良助。 お声が…吉右衛門さん@由良之助に似ている印象があったのですが、私だけ?(私の中では吉右衛門さん=由良之助、なので)
この場はほぼ歌舞伎と同じなので、人形の動きのみに集中できました♪
タヌキ寝入りをしながら、平右衛門の仇討参加の嘆願書を突き返す様など、目の動きの細かさとか…感動しました。
そして、とにもかくにも「お軽が激カワイイときめき  鏡で手紙を覗きみる様はもちろん、恐がりながら梯子を下りる様がなんと可愛い事でしょう!! 色っぽいことでしょう!
チーム平右衛門
平右衛門とその主遣いの玉女さんの袴、咲太夫さんの裃、みんなお揃いでお洒落~♪ (夏祭…の団七などもお揃いらしいですね?) 咲太夫さんは下手から一人、見台もなしに登場で語る…というのは初めて観ました。 この時の裃は柄は同じだけど色違いだったような? 文楽、面白い☆
今回はこの段まででしたが、討入りの【十一段目】を一度観たいものです!
毎度変わらず「人形なのにスゴイ、凄い!」という幼稚な感想しか言えませんが、今回は人形遣いさんが見えなくなる時間が多かったように思いました。 お話に馴染んでいた、という事もありますがそれだけ舞台にグッと入り込んで観劇していた…という事なんでしょうね。
さて来年の博多座文楽公演はどんな演目で何日間公演になるのでしょう?
願わくば、最初の年に上演された【寿式三番叟】のような、思わず手拍子が出てしまうような、明るくて楽しい笑える演目もひとつ、宜しくです♪

博多座文楽公演・仮名手本忠臣蔵(昼の部)【博多座】

博多座文楽公演は今年で3回目となり、公演数も1日増えて3日間。 初の昼夜通し上演という試みで、浄瑠璃三大名作のひとつ【仮名手本忠臣蔵】がかかりました(他は菅原伝授手習鑑、義経千本桜)
歌舞伎では何度となく観ているこの狂言ですが、元ネタの人形浄瑠璃を観るのは私、今回が初めて! 何しろ文楽ビギナーですので、観点は主に歌舞伎との違いが中心となります以下レポートはその旨ご容赦くださいませ汗
どちらの部もお芝居がはじまる前に人形遣いの桐竹勘十郎さんによる【解説・文楽を楽しもう】が20分ほど設けられ、今回はこれから上演される物語のあらすじや登場人物の紹介。 そして忠臣蔵に関する豆知識などを披露。 勘十郎さんが初めて接した忠臣蔵がアニメ【わんわん忠臣蔵】だった…ってのが、なんとも意外で笑えました(仇はトラで名前はキラー、なんだって!)
いろはなほへと赤穂浪士四十七士という事で、お芝居の中には様々な“47”があしらってあるので、その発見も楽しい訳ですが、あの『いろはにほへと…』が47文字であり、この歌に“咎なくて死す”という意味が隠されているとは、ビックリ! 罰されるべき行いをしていないのに死にゆく無念さが秘められているようで「だから“仮名手本”なんだ!」と、あまりにも今更知った次第の私汗(違う?)

大序【鶴が岡兜改めより恋歌の段】

歌舞伎では人形振りで…ですが、そこは元々人形なので、印象としては太夫さんからの点呼終了後にスイッチが入ったように動き出す、という印象。 いつも疑問なのですが、主遣いが頭巾を被る場合とそうでナイ場合ってどういう基準なんでしょうか? 演目の場によって決まっている事なのかしら?
史実では『何故、浅野内匠頭が吉良上野介に斬りつけたか?』という理由は明らかではナイそうで(お恥ずかしいが、今回初めて知った!)、この場は創作部分。 歌舞伎でも通しでもナイ限りあまり上演されないけれど、高野師直(=吉良)の嫌らしく、憎々しい敵役振りが冒頭で強烈な印象として残り、刃傷に及んでしまった塩谷判官(=内匠頭)の気持ちもより同情を持って解ります。

三段目【足利館大手下馬進物の段】【殿中刃傷の段】【裏門の段】

“鮒侍”とネチネチ虐める師直にキレるくだりの判官は、まるで顔の血管が浮き立ち、あぶら汗を額に浮かべているよう。 怒りの沸点に達して斬り掛かる迫力、そしてそれを必死で止める本蔵たちの力を持ってしても飛び出さんばかりの勢いは圧巻! 素晴らしい…。

四段目【塩谷館花籠の段】【判官切腹の段】【明渡しの段】

切腹の前に一目だけでも由良助に逢いたいとジリジリと待ちわびる判官の様に「由良助、早く!早く!」と気持ちが急きました! 床に突っ伏した瀕死の状態の主君をしっかと見据え、 その無念を聞き取り形見を受け取って涙する様は、嗚咽が聞こえてくるよう。 客席は事前に【通さん場】に関する説明もあり、咳ひとつしない沈黙の空間。 あれだけ大きな劇場で、客席から何ひとつ物音がしないというのは驚異的な事ではないでしょうか? それほどの緊迫感があり、悲しみと無念さがひたひたと広がるようで胸が痛かったです。
昼夜通して一番印象に残ったのは、この【明け渡しの段】。 明け渡した屋敷を背に、提灯の紋を主君の形見である切腹刀で切り取るんですね。 無念さと、仇討の強い決意が感じられる素晴らしい演出拍手

博多座文楽公演・夜の部【博多座】

文楽を楽しもう

昼の部と同じでしたので省略

絵本太功記

・夕顔棚の段 ・尼ヶ崎の段(○○さん)=人形役割
母さつき(玉英さん)が印象的でした。 子供を愛しながらも、だからこそ許せない葛藤があり苦しむ様がひしひしと感じられ、涙が誘われました。 人形なのに…ちゃんと老婆そのものなんですもの! 家族を守ろうと強い意志を持って画策する気丈さも伺えましたし。
そして…武智光秀(勘十郎さん)のラスト、豪快な木登り! 迫力と立派さに「おぉ~」と声出して見上げてしまいました! これは文楽ならではの表現方法ですよね。
相次ぐ肉親の死に、さすがにの光秀も涙しながらもその悲しみに堪える様には…武将としての悲哀も伝わってきたような気もしました。
このシーンでは特に太夫と三味線が激しく、強く、ズンズンと下から響いてくる迫力があり圧巻ですね。

卅三間堂棟由来(・平太郎住家より木遣音頭の段)

これは歌舞伎の演目であるのでしょうか? 初めて拝見しましたが、ちょっと【葛の葉】ちっくなお話なんですね。 印象的には“にっぽん昔ばなし”のような感じで、今公演の中で私は一番好きでした♪
柳の精である女房お柳(文雀さん)は、人間の夫・横曽根平太郎(和生さん)との間に、みどり丸(蓑紫郎さん)が生まれ幸せな生活を送っていたが、都に建立される三十三間堂の棟木として自分自身である柳が伐られる事となり家族の元を去る…という突然に家族が引き裂かれる悲しいお話。
女房お柳の…柳が伐られる事になったのを知った時の驚きと悲しみは切々と訴えるものがあり、胸が痛い。 突然去った彼女を慕う家族の前に、もはや人間ではなく“柳の精”として姿を表す手法が面白かった。 紗幕の奥にユラッとたちすくむ感じで幻想的 柳の葉が突然ハラハラと天井より舞い落ちてくる手法も新鮮! 桜や雪は散々歌舞伎で観て目に慣れているけど、緑のシャープなラインの葉が天から注ぐように降ってくるだなんて!
伐採された柳の大木が家族との別れを悲しみながらも、都人足に引かれながらも都に向かっていたけど動かなくってしまう。 そこで息子が引いていた綱を手に取ると再び動き出す…。
木遣り音頭の威勢のいい歌が親子の悲しみをより強く表現している印象がありました。 幼いながらも母との別れを理解し、涙ながらに(きっと彼は号泣中)キッと空を見上げて綱を引くみどり丸の姿に泣けました

博多座文楽公演・昼の部【博多座】

昨年に続いて二度目、2日間4公演の【博多座文楽公演】
ほぼ完売状態で、当日は3階席にもチラホラ観客が 当日券の販売などもあったのでしょうか?
出演陣は、文楽好きな方には垂涎の超豪華メンバーで、実際ロビーや客席で関西弁を多く耳にしましたので遠征の方も多かったのではないかと思われました。

文楽を楽しもう

昨年は、この後上演される演目に沿った解説になっていたので(よって昼と夜の解説内容は若干の違いあり)ほんの少し前知識として頭に置きながら観劇出来たので、より楽しめた記憶がありましたが、今回は基本の基本の解説でした。 よって昼と夜は全く同じ内容でした。
◆太夫ついて(竹本千歳太夫さん)
役割の説明。 老若男女、武士と町民の声色の使い分けや笑い方・泣き方の実演。
◆三味線について(鶴澤清二郎さん)
三味線の造りと材質の説明。 三本の糸の音色の違いの実演と情を込めた演奏方法の紹介。
◆人形について(桐竹勘十郎さん)
人形の構造と、頭の種類、三人の人形遣いの役割分担の説明。 高下駄の紹介や人形の操作方法を披露。
最初にお断りしておきますが、私、文楽観劇は二度目なのもので…以下書き綴ります感想はものすご~く幼稚なものかと思いますので何卒ご了承ください。 「人形なのに、スゴイ」とか~。

 恋女房染分手綱

・道中双六の段 ・重の井子別れの段(○○さん)=人形役割
今月、歌舞伎座で福助さん@乳母重の井、児太郎くん@馬方三吉で観たばかりだったので、印象が鮮明であり、歌舞伎との違いを興味深く観劇できて、その比較がとても面白かったです。
乳母重の井(文雀さん)が、調姫(玉翔さん)にサイコロを持たせて一緒に放り投げる細やかな一連の動作は人形とは思えないほど。 優しい眼差し(に見える)で姫のご機嫌を取る様にも、凛とした気品がありとても素敵☆
馬方三吉(一輔さん)が我が子と判ってからのせつない気持ちが、人形ながら何故にあんなに伝わってくるのでしょう? 気持ちを奮い立たせて突き放し、それでもやはり抱き寄せて…また突き放し。
三吉の母親との決別を決めてラストに切る見得には、肩で泣いているような印象が強く残りました。

 伊賀越道中双六

・沼津の段
やはり歌舞伎で馴染んでいる演目だと、芝居に早く入り込んで観劇できますね。 沼津は必ず涙してしまう…観劇後は心が痛くなる演目ですが大好きな演目ですので、今回文楽で観れるのことのほか楽しみにしていました。
義太夫は竹本住太夫さん。 今公演のパンフレットに『沼津は好き。最後に平作が「南無弥陀物」と唱える所は息で言うため太夫の力量が問われる。こんな名作をできるのは太夫冥利につきる』と語っていらっしゃいます。 文楽観劇二度目のビキナーの私が聴いていても耳に大変心地良く、セリフはその性別、その年齢のものに聞こえ心に染入る感じで感動しきりでした。
親平作(玉也さん)は、力を振り絞ってヨロヨロと立ち上がり、必死の体で呉服屋十兵衛(蓑助さん)について行く様は、老人そのもので…ユーモラスな雰囲気もちゃんと兼ね備えているのには驚きました!
娘お米(勘十郎さん)の楚々とした仕草のなんとかわいらしい事! 夫の為にした盗みが発覚して泣き伏す様のなんといじらしい事! 平作とのやりとりに貧しいながらも支え合って生きる親子愛がとても伝わってきました。
人形で…自害のシーンをこれほど感動的に演じられるとは! 驚きと感動の沼津でした。

義経千本桜

・道行初音旅)
狐って、文楽ではこ~ゆ~ふうに表現するんだ」という驚きが一番でした。
狐忠信の主遣い玉女さんは狐火をあしらった真っ白な裃姿で狐を遣い…その動物の仕草がまた細かい! 桜の木の後ろで人間の姿の忠信にへ~んしん!すると玉女さんは通常の裃に早替わり。 「ほぉえ~すご~い」と思わず口に出して言う事も何度か。
静御前(和生さん)との息のあった動き、特に扇子を回転→キャッチ、投げて→キャッチ!など、役者さんが普通に演じてても難しいであろうフリがあって興奮しました~。

博多座文楽公演【博多座】

毎年12月の博多座は【市民桧舞台の月】ですが、今年は“博多座開業五周年”という事で二日間四公演、初めて文楽公演がかかりました。 太夫・三味線・人形と人間国宝の方が4人もご出演で、ビギナーにはなんとも贅沢な舞台でした。
私は、今まで何故だか観劇の機会を何度も逃していたので“文楽初体験”となりまして、一日通しで観劇しました 客席は二階までお客さんを入れていて、昼・夜ともに補助席まで出て満員御礼! 来年も、再来年もこの人気ぶりに公演が決定したそうです。
イヤホンガイドがなかったので、パンフレットに付いていた床本集を手元において観劇しまして、ビギナーには頼もしかったです。
どちらの部も、最初に解説【文楽を楽しもう】があり、それぞれその後上演する演目に沿っての解説となっており、とても解りやすかったです。 とにかく初めて観るものばかりで「定式幕は上手から下手に開けて、下手から上手に閉めるんだ…」って事から、いろいろビックリする事が多くて忙しかったです~♪
昼の部

菅原伝授手習鑑

【寺子屋】では、沢山の子供の人形の後ろに、人形遣いの方がズラリと並んでいるのは、まだ目が慣れてなくて、とっても不思議で面白かったです 黒子さんの被り物の形も歌舞伎とは違うんですね…。 【車曳】を含めて、どの場面も歌舞伎では馴染みがあるので判りやすかったですが、やっぱり歌舞伎では絶対観れない【天拝山】は菅丞相が髪振り乱して激怒し山を駆け上ってくる様は、すごい迫力で圧倒されました。 人形なのに…あんなに表情が、感情が伝わってくるんでしょう?!
夜の部

寿式三番叟

これは歌舞伎では祝儀舞踏(っていう言葉あるのかな?)で静かに厳かな感じで観る演目…という印象しかなかったので、三番叟が踊りをサボったり、汗をふいたり…とユーモラスな笑える部分があったのに驚きましたし、これは博多座だけかもしれませんが客席から手拍子が起こった事もビックリでした! 「楽しい演目だったんだ…」
便箋【博多座往来】12/28号より
夜の部の「三番叟」では客席から手拍子まで出て「初めてですよ、日本では博多座だけですね、こんなに乗ってくれるのは」と出演者も興奮気味だった。

曾根崎心中

とにかくお初は鴈治郎さんでしか拝見した事がなかったので、と~っても楽しみでした心中を決心する…床下にいる徳兵衛がお初の足を取って喉元に当てるシーンとか、とっても色っぽくて素敵でした また、足を取ったあとに徳兵衛がお初の着物の裾を直してあげてたりする、という細かい所作もあり大感動!
そして心中は、帯を使っての上下の見得の形の綺麗な事といったら そして喉を刺して抱き合って倒れ込む…という所まであるとは思わなかったので、これまた驚きでした。
お初は一つ一つの動きが丁寧で細かくて綺麗で可愛くて仕方がありませんでした!