九月大歌舞伎・夜の部【博多座】

東海道四谷怪談

残念だったのは“お岩さま=恐い”という先入観がある方が多く 「夜の部は恐いから観ない」という声をよく耳にした事。  私も今回初めて舞台を観たのですが…こんなにもお岩様に感情移入して泣けてしまう、 【お岩様という女性の哀しい物語】だったんだ!…と解って驚きました。  だから「恐いから観ない」という声には「なんてもったいない!」って思たんです。  この演目が今後博多座でかかる…という事はもうナイかもしれないくらい貴重な機会 だったそうなので、今回舞台に通って観れた事、とても嬉しかったです。

お岩さまが 血の道の薬として有難くいただく、薬を飲む場面 。 博多座の客席が水を打ったように咳ひとつする人なくシーンと固唾を飲んで見守る様子に鳥肌がたちました! 有難いお薬を一粉たりともこぼさず丁寧に飲み干す様が細かく、その後の悲劇を知っているだけに胸が痛くなりました。 後に、勘九郎さんが「博多座のお客様はね…」と話される時に、この場面で『飲んだらいかんよ!』と客席から声をかかったエピソードをよく披露されてました。 それほどお芝居に入り込んで観てくださるんですよ…と。
薬のせいで手に力が入らず、坊やの羽織りを取り落としてしまう所でズキーン! 泣いてしまったのは、お梅との縁談が決まった伊右衛門が婚礼の金策の為に家財を次々に持ち出す様にすがるお岩さまの演技。 千穐楽では蚊屋を持っていかれて「爪がはがれた…」という所でボロボロ涙が…。
有名な髪梳きの場。 お歯黒を塗る様、 髪を梳く様は恐ろしいのだけれど、“女のプライド”が感じられ、胸が痛くてたまりませんでした。 宅悦の恐ろしがる反応に客席から笑いが起こっていましたが「ココは笑う場面 ではないのでは~」と、毎回腹立たしく思いながら観てました…。 橋之助さん@ 伊右衛門は“これぞ色悪”的な非情なまでのカッコよさ。 「首が飛んでも動いてみせるわ」では、「敵(?)ながらアッパレ!」と思わず言いたくなるくらいキマってました!

今回は“三角屋敷の場”がカットされていた為、勘太郎さんが舞台番鶴吉として舞台袖から登場し、その筋を説明する趣向でした。

勘九郎(女房お岩・小仏小平・佐藤与茂七)/橋之助(民谷伊右衛門)/福助(妹お袖・小平女房お花)/弥十郎(直助権兵衛)/亀蔵(宅悦)/勘太郎(舞台番鶴吉)/七之助(お梅)