五月大歌舞伎・昼の部【新橋演舞場】

鳴神

染五郎さん@鳴神上人初役との事で、これは意外でした! 新鮮に感じた部分が何点があるのですが、そういえば染五郎さんの荒事を拝見した事も…少ないかも。 鳴神上人を演じるには充分(というと何様ですが)かと思うのですが、華奢で線が細いせいか迫力不足な感じ。 しかし勢いあるエネルギーのような、気のようなものがバシバシ飛んで来る感じでした。 破戒僧となり怒りに燃える形相となった時の“百日の毬栗”のヅラは一部が三つ編みになっていたり、ぶっかえりの炎のお着物は色のコントラスが通常より鮮やかなファイヤ~☆で、すっごく派手な印象で、染五郎さんオリジナルでしょうか?
酔いつぶれた時の消し幕があんなに真っ赤!って…他の演目で何かありましたっけ? 個人的なツボは、御簾が上がった際、鳴神上人は祭壇に祈りを捧げている為後ろ姿なんですが、同じ姿勢で裃後見さん(どなただったのか?)が祭壇に向かっているのに笑えました~。
芝雀さん@雲の絶間姫は何度か拝見してますが…ここまで拵えが違うのは初めて拝見した印象。 大振りな花かんざしが前に2本、後ろに2本。 紫の眉隠し頭巾(なんていう名称か知らないです~)は小振りで、眉は通常の触角眉でなく、頭巾には隠れることなく出ていて優しいげな横眉で可愛い。 で、後ろの髪はロングポニーテールが紫の布で覆われています。 拵えだけでも随分印象が変わるなぁ…という驚きがありました。 勅使を受けた“出来る女スバイ”という機敏さよりは、「騙してゴメンネ。でも勅命だからやらなくっちゃいけないの~」という、そんな感じの姫でした。
芝雀さんって…若手の立役さんと組んでも年齢の差が全く気にならない不思議さがあるなぁ、といつも思うのですが、今回その印象を更に強くしました。

鬼平犯科帳(大川の隠居)

「大好きなお頭に生で会える日が来ようとは…」という感動が。 しかもシリーズの中でもお気に入りの1本【大川の隠居】の舞台化なものだから…私、観劇前から異様にテンション上がってました! が、同時にあの鬼平をどのように歌舞伎仕立ての舞台化にもってくのか?という不安もありました。 しか~し、それは危惧に終わり「よくまとめて作ってあるなぁ~」と感心しきり。
まずは幕開きの大川のセットが素晴らしく素敵に作ってあって、水上を行き交う船の再現もお見事拍手
歌昇さんはTVシリーズでは平蔵の忠誠心厚い与力・小林金弥を好演されていますが、今公演ではなんと!平蔵の下働きの一員・小房の粂八でご出演という嬉しい御馳走
舞台化の話を耳にした時に、真っ先に気になったのは船頭友五郎はどなたが…?でしたが歌六さんとは~! 老齢ながらも船頭として現役で働いている様は軽やかな船上の身のこなしからも伺え、同時にかつてのお務めの腕もまだ衰えちゃいない…という事を様が見て取れ、なるほど納得なキャスティング。 まるで【チキチキマシーン猛レース】のケンケンか?!ってな独特な笑いはなんとも独特な魅力。 酔いが進んで、平蔵を目の前にして“鬼の平蔵”の悪口を言う様は真剣そのもの。 だからこそ友五郎の言葉にいちいち敏感に反応する吉右衛門さん@長谷川平蔵の様がたまらなく可笑しい。
「思わぬ人との巡り会わせ(出逢い)が人を変えていく」という言葉がズシンと心に突き刺さる。 舞台でも度量の深い、素敵なお頭でした。
福助さん@久栄は…仲睦まじい夫婦っぷりは良かったのですが、色気がありすぎる印象。 松江さん@同心・木村忠吾。 これは尾美としのりさんの印象が強烈なので難しそうだなぁ…と思っていたのですが、松江さん、お見事です! 三枚目、これからもバンバン演じていただきたい!と思った好演でした。 笑った~♪
もちろんラストの“大川の隠居”、一瞬のお出ましは見逃しませんでしたよ☆
今後も【一本眉】とか【兇賊】など、人気の高いお話の舞台化も期待できる…かも?と思われる良く出来た舞台でした。

釣女

お頭→醜女。 吉右衛門さんのこの変身ぶりがたまりません!! スゴイ、スゴイです、吉右衛門さん! 「長谷川平蔵改め醜女」ってか?この流れがスゴすぎます~。 前の幕の演目とココまで違うタイプのお役を演じる事って…役者さんも楽しそうです(大変でしょうけど…)
釣女
錦之助さん@大名某はスッキリと美しく楽しげに踊っていらっしゃる様に見とれていたら、どこからか「錦ちゃん、ステキ~っラブ」との声が。 ハッとすると…その声の出所は吉右衛門さん@醜女。 毎日の芝居でいろいろと言ってらっしゃるのでしょうが、あまりにも可笑しくて…錦之助さん、必死に笑いをこらえて踊っている様子に、観客も笑いが止まらない~。
その醜女はでっけぇ~!…なのに超チャーミングなんですけど~。 太郎冠者を見つめる熱い視線がたまらない♪
で、特筆すべきは歌昇さん@太郎冠者。 踊りもスッキリと気持ち良く、なんといっても演技、特に表情が抜群で、醜女の可笑し味を素晴らしく引き立てている印象。
冷静に考えると「人は見た目で判断しちゃいかん!けしからん演目だ!」となるんでしょうけど…単純にガハハと大笑いして幕、でイイのでしょう、きっと。

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