五月大歌舞伎・夜の部【新橋演舞場】

座頭が吉右衛門さんで、なかなか珍しい座組で…しかも魅力的な演目がズラリと並んだ演舞場歌舞伎。 開幕前から、こんなにワクワクと観劇を待っていた歌舞伎公演は久しぶりかも☆
昼夜観劇を終えた総括的な印象は『信二郎さんに敢闘賞』!
どれも重要な役所でありながら、全く違うタイプのキャラクターの演じ分け。 これは…2001年六月博多座大歌舞伎以来のフル稼働活躍では?という感じで、普段の信二郎さんの役付に今イチ不満だった私、今公演でのご活躍は素直に嬉しい☆ 今後のご活躍が楽しみ♪

増補双級巴 石川五右衛門

数ある五右衛門の狂言から面白い場面を抜き出してつなぎ合わせたのが、今回上演される『増補双級巴』との事。
公家の道化役って…よく身ぐるみはがされますよね? 桂三さん@呉羽中納もまた然りで「まろにも衣装」「まろ裸」はお決まり。
公家に化けて足利将軍家に乗り込んだ吉右衛門さん@石川五右衛門染五郎さん@此下久吉が「やっぱりお前か」と幼なじみのよしみに戻ってから寝転んで頬杖をついて話す様が絵的に面白い。
演目の見せ場、公家装束に葛を背負って宙乗り…というこのギャップが豪快さを際立たせている感があり、改めて見事な演出だな、と。
浅葱幕って『空気を現している、次の場は屋外の場面ですよ…という暗示』だったとは、そんな意味が含まれているとは、恥ずかしながら今回初めて知る。 その浅葱幕前では、杵屋栄津三郎さん+鳥羽屋里長さんによる大薩摩演奏がダイナミックで聴き惚れる。
南禅寺山門では、鷹が一巻を持って飛んできて、それを門上に居る黒子さんにバトンタッチして五右衛門の元へ…という連携プレイに感動。
「絶景かな~、絶景かな~」というセリフはいつも心の中で一緒に言ってしまう名セリフのひとつ ココでは五右衛門役者の誰もが満席の客席を見渡してさぞ気持ちがイイでしょうね。
宗之助さん@左忠太、むきみの隈のお顔を初めて拝見! あら、りりしい♪
昔は自分の出生に関する系図は縦系図と横系図があって、お金の為に由緒正しき家柄の人がそれを売ったり、身分を偽装するものが出世の為に買ったり…という売買が行われていたらしい。 今じゃ“個人情報保護法”なるもので厳重な管理下の元にあるから…きっと無理ね

京鹿子娘道成寺

種太郎、廣太郎、米吉、廣松、隼人、児太郎、龍之助…と所化に梨園の御曹司がズラリ。 小学生~高校生までと背丈のバラつきはあるものの、皆さん初々しくて可愛い。
米吉くん?が袖からなかなかお銚子が出ずに手間取っていたら、仲間の皆がすご~く心配そうに見守っていた様にニッコリ。 恒例の“舞づくし”がなかったのはちと残念だったが、客席への手ぬぐい投げの趣向が 福助さんと御曹司のサイン入り…だったそうで、各々どんなサインか見てみたいものだ!
所化は、舞台両袖で控えている時に正座でもじもじ…けど、踊りとなるとシャンと素晴らしく立ち上がって踊る様に感動。 さすがです。 中でも児太郎くんの…お父さん(福助さん@白拍子花子)を、舞踏を食い入るように見ていた目が印象的
道成寺の言われをいう演出となっており、福助さん@白拍子花子は東京では襲名披露公演以来14年振りとの事で…なんだかよく目にしていた印象だったので意外(映画のせいかな?) 鐘の綱に烏帽子をかけて新月にみたてるというのは“中村流?”との事で、今回もあり(今年二月博多座でも魁春さんも)
今回、疑問に思ったのは裃後見さん。 芝喜松さん@女形の拵え、福太郎さん@立ち役の拵え…と男女一対の後見って初めてみたような? あれは、どういう基準なんだろうか?
道成寺、改めて大変な舞踏だと思いながらも新しい発見もあり興味深く拝見。
鈴太鼓に変わる前の引き抜きでは、ヘビが脱皮するかのごとく脱ぎ捨てスルリと薄墨色の桜の着物に変わったのは見事だった 後の大蛇を想像させるようで…。

松竹梅湯島掛額

まず、上手から下手にむけて定式幕が引かれての幕開きにビックリ!
オウムが何度も繰り返される「あっちも気がかり、こっちも気がかり…。どうか体が二つほしいものじゃ…わいわいガヤガヤ」はそれぞれの役者さんのカラーが出ていて笑える♪
吉祥院お堂の欄間の天女柄は毒々しいほどの極彩色で艶かしい感じ。 この左甚五郎作の“吉祥天の天女のような娘”といわれて、亀治郎さん@八百屋お七がその欄間になりすまして身を隠す様は面白く(どうみてもバレバレなのがまた笑える~)、お嬢吉三を彷彿とさせる。
信二郎さん@長沼六郎は、ふんぞりかえった思慮の浅い悪役で奮闘。 あのような道化の悪役では私、初めて拝見! 「お七はどこじゃ」と探す場では…ムービン、ズバリ言うわよ、チッチキチ~、イナバウワー…は誰もきちんとウケをしなくてやりっぱなしな感があり、かえって笑える。
染五郎さん@小姓吉三郎ではの前髪立ち姿を久々に拝見するが、まだまだイケる! 若くて美しい16才だった。 お着物が“吉印”なのもお洒落。 吉右衛門さん@紅長さんから「女の扱いにかけては梨園で一二を争う色男・染五郎に尋ねてみよう」というような事をフラれ、困る染五郎さん「しかし最近は子供にメロメロで~」と更に続けられると「たいそう可愛い子お子様だそうで」と受けた立つご愛嬌。
で、その…なんとも愛嬌たっぷりな吉右衛門さん@紅長さんは、亀治郎さん@お七がだだをこねる様を茶化して真似する様がかわいらしくてたまらない!
【吉祥院お土砂】は、もうホント楽しい、楽しい♪
御土砂とは…加持祈祷に用い、 死体にかけると硬直が治ると考えられていたもの。
新派の役者さんの客演によるビックリな演出もあったりで、思いっきりのお遊びの場。 とにかく舞台に居るあらゆる人に吉右衛門さん@紅長さんが御土砂を振りかけてぐにゃぐにゃにしてしまい笑いの連続。 一番いたずらっ子な表情が輝いていた?のは、…ツケ打ちさんにかけちゃうトコ。 あの吉右衛門さんの嬉々とした表情を観るだけで、この演目は満足!な感じさえも♪
そして定式幕を引く扇一朗さんにもふりかけてグニャグニャに…で「バーッタリ!」
【火の見櫓】では、鳥屋口の揚げ幕のところまで、ちゃんと木戸になっているんだ!…ってな事も今更気が付く私。 私、実は人形ぶりを観るのはコレが初めて。 …なので亀治郎さん@お七に対して比較対称のものがなくコレに関しては「どうだった」という感想は述べられないが、人形振り後の…花道からラスト鐘を打ち鳴らすまでの気迫はものすごいものがあり一気にみせられた
「早く、早く今のうちに逃げて~」と泣き叫んでいるお七の心情が痛いほど伝わっきて、少女~女へと変貌を遂げた情念が怖いほど
人形遣い又之助さん段之さん。 足遣い(踏みならし)は錦弥さんで…その足遣いは下手で専用の板上で鳴らす、という事も今回初めて知り興味深かった。
それにしても…前半と後半で随分印象の違う、違いすぎる演目だったなぁ汗

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