三月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

近頃河原の達引

私、初めて拝見する演目です。
ですから、猿が糸操り人形だという事も全く知らなかったもので、背負子からピョーンと飛び出た時は、心底驚きました「ええっ今、何が起こったと?」
歌舞伎の演目で、他にもこんな手法を使ってるものってあるんですか? 猿の動きは驚くほど巧みで、我當さん@猿廻し与次郎との信頼関係さえ感じられるよう(会話しているみたいだったもの)
我當さん@猿廻し与次郎は、親思い妹思いの正直物で朴訥とした雰囲気がニンな印象。
こういう「我當さんはきっとこんな感じのお人柄なんだろうな」と感じられるお役の方が、我當さんに関しては私は好きなのでなんだかホッとしました。
藤十郎さん@井筒屋伝兵衛。 やっぱりこういうお役は藤十郎さん、絶品ですね。
この所、婆役で拝見する事が多かった秀太郎さんが、可憐で色気充分な遊女お俊で拝見できたのは嬉しい、嬉しい♪ 可憐ながらも強い意志をもった女性。 「そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さん」からのクドキにはホロリ
吉之丞さん@与次郎母は素晴らしい。 愛する娘を失いたくない、けどその意志も尊重してあげたい。 母親とは皆そうなんだろうなぁ…と。
お俊の愛する男との“門出(心中)”を祝う猿廻しを与次郎が見せるシーンはボロボロ泣いてしまいました。
こんな素敵な演目なのに、あまりかからないのは“与次郎=十三代目さん”の印象が強いからなのでしょうか? また、すぐにでも観てみたい演目となりました。

二人椀久

こんなパワフルかつスピーディーな二人椀久、観たことナイ」というひと言につきます。 …って以下ダラダラと書き綴りますが~。
富十郎さんの踊りはいつみてもキレがあって気持ちが良く、でもこの演目では相応の情緒もあり、またまた人間国宝に対して失礼ながら「富十郎さん、上手いなぁ…」。
富十郎さん@椀屋久兵衛がフラフラと彷徨っての花道の出では、“恋の病で朦朧となっている”様子は観てとれなかったのですが(意識はちゃんとある印象)、松山太夫が現れてから、嬉々として踊り狂う(といっても過言ではない高速で派手な踊り)落差が大きく、自分一人と最後に気付く様に悲しみを強く誘われました
菊之助さん@松山太夫。 綺麗です。 夢幻のように綺麗です☆
踊りは必死に富十郎さんに付いていっている印象でしたが、表情は松山太夫でした。
照明がパッと明るくなってからは本当に楽しげに恋人同士が踊っている風情がありウキウキしました。
菊之助さんは、先月の玉三郎さんとの【京鹿子娘二人道成寺】、今月の富十郎さんとの【二人椀久】…と大先輩とガチンコ勝負舞踏が続いているのですね。 きっと素晴らしい成長が!

水天宮利生深川【筆屋幸兵衛】

実は、この演目も映像を含めて初めて拝見。 今月は“初めて”が多いので追善公演もさることながら楽しみでならなかったのです。
ここ最近、幸四郎さんは世話物の初役に続けてチャレンジされているそうで、今回も!との事。(個人的には合わないような気が…)
妻に先立たれ、三人の子供とふくれあがった借金を抱えた悲惨のどん底で正気を失ってゆく幸兵衛の凄絶な発狂ぶりが見所…らしいのですが、え~っと…う~んと汗
幸四郎さん@幸兵衛には、かつては侍だった気位の高さや、貧苦の様はあまり見てとれず「あら~、借金そんなに膨れ上がっちゃったの?」ってな、何故かしら開き直りのような、あっけらかんな感じに思えていたので発狂する様がものすごく唐突に感じられ、戸惑いました~。
壱太郎くん@お雪と、米吉くん@お霜の二人娘はけなげで可愛らしく、各々のキャラクターの性格もよく出ていて好演。 特に米吉くんは、目の不自由な姉と乳飲み子の弟をかいがいしく世話し、涙が誘われました(ポッチャリ体型で愛らしい)
彦三郎さん@金貸因業金兵衛権十郎さん@代言人茂栗安蔵は明治時代らしく洋装な部分もありハイカラで時代を感じさせ、維新前は侍であった幸兵衛の現状をあざ笑っているかのような嫌味が感じられました。
秀太郎さん@萩原妻おむらが、幸兵衛息子に「乳をあげる」ってのがなぁ~んか、なぁ~んか…ニガ笑いしちゃいました。
ラストの“水天宮の御利益でハッピーエンド”ってのがちょっと唐突で難あり、な感じでしたがなかなか面白い演目でした(でも…あの親子、貧苦からはまだ抜け出せた訳じゃナイんだけどなぁ)
気になったのは、幸兵衛の家の壁にかけてあった小道具のホウキ! あの斜めのスレ具合が妙にリアル 実際、大道具さんとかが使用しているものかしら?
隣の家で演奏されている浄瑠璃が聴こえてくる…というシチュエーションはよくありますが、これを【よそごと浄瑠璃】と呼ぶ、という事を今回初めて知りました

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