三月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

今年の三月歌舞伎座公演は…十三代目片岡仁左衛門さんの十三回忌の追善公演
私は残念ながら、十三代目さんの生の舞台を拝見する事に間に合わなかった歌舞伎好きのひとりですが、役者として人間として大変魅力的な方だった事は今なお熱狂的なファンがいらっしゃる事をはじめ、我當さん、秀太郎さん、十五代目仁左衛門さんの父親として役者として敬愛してやまない言葉の端々に感じられ認識している…つもりです。
歌舞伎座の正面玄関を入ると優しい笑顔の十三代目さんのお写真が出迎えてくれ、2階のロビーでは数々の名舞台のお写真が展示されており、この場に立ち合えなかった悔しさと、素晴らしいだったであろう舞台に想いをはせていました。
特に印象に残ったお写真は新口村の孫右衛門。 忠兵衛と梅川を逃がし、頭を抱えて泣き叫ぶ…あのラストシーンのお写真からは振り絞る声が聞こえてくるようで、しばしボーッと立ちつくして拝見してました(周りの方邪魔ですんまっせん)

吉例寿曽我

“ザ・歌舞伎”ですね。 愛之助さん@八幡三郎進之介さん@近江小藤太が、鎌倉鶴岡八幡宮の大石段で巻物を取り合いながらの立ち廻り、そして“がんどう返し”で舞台転換。 超大掛かりなセットに「おぉ~っ」とうなると、大ゼリでキャラクター全員集合でガーッと型を決めて上がってくる豪華さ☆
「はぁ~っ、やっぱ歌舞伎、好きばい!」と改めて思う演出の連続でしたね、コレは!
後は“対面”や“だんまり”で次々と型を決め…終わり。 ってキャラクターを知らないと「え~っ?!皆さんそれぞれ誰だったのよ~」「何がこの演目は言いたかったのよぉ~」な一幕。 あ~、面白い豪華絢爛満足でした。
そういえば翫雀さん、先月の博多座でも曽我五郎でしたね♪(今月はコレだけ)

吉野山

どなたか教えてください。 人気舞踊なのは分ります…分りますが、ちょっと演りすぎじゃナイですか? それとも歌舞伎座では久し振りにかかったのでしょうか?
…とは言っても今回の配役で拝見するのは初めて。
一番楽しみにしていたのは東蔵さん@逸見藤太。 実は私、東蔵さんの道化役って、多分初めて拝見したんです。
でもって、この演目で“時事ネタ”が仕込まれるなんてビックリでした!(これは国立、PARCOでも同じネタが…でしたね)
愛嬌…というよりは、ひょうひょうとしている印象でありながら可笑し味がありながら…パワフル! 東蔵さんの幅の広さに感嘆した一幕でした。
福助さん@静御前は…私が今まで福助さんに感じた事がナイほどの可憐な感じで意外な印象。
幸四郎さん@狐忠信は…何故だか不気味。狐が人間に化けているのだから怪しい感じがあって然るべきなんでしょうけど、表情が?恐かったです。

道明寺

十三代さん@菅丞相はその名演が伝説となっているこの演目
今回、四年振り三度目、当代仁左衛門さんは菅丞相を務めるにあたって1月末には福岡・太宰府に参詣されました。
・「この演目を出す時には、他の芝居には出ない」
・「天神様のお遣いの牛は食さない」
・「夜の街は出歩かない」
・「楽屋は天神様の軸を掛けて塩と水を毎日取り換え、舞台の前後に拝む」
という日常の精神面からの徹底されるそうで、その役に入っていらっしゃる心がけでつとめていらっしゃるのですね。
ちなみに私、今演目は映像も含めて今舞台で観るのが初めて。 しかしながら、先月の博多座公演【時平の七笑】を観ているので(道真が時平の策略により太宰府への左遷が決まるまで)、続きを観ているようでスッと物語の中に入っての観劇。
芝翫さん@覚寿は婆役の大役。 さすがに立派!というのは失礼かもしれませんが、武家の女性としての凛とした強さ、母親としての慈愛がヒシヒシと伝わってきて感動しました。
仁左衛門さん@菅丞相人間と木像の演じ分けも大きな見所のひとつで、深刻な場面ながらも、その演じ分けの見事さに客席から笑いがもれるほどで、木像の時は瞬きさえしない演技に感嘆。 凛とした涼やかであり、悲しみをたたえる気品と風格は当代では十五代目さんしか表現できないのでは、とさえ思えました。
計らずも菅丞相の流罪の原因をつくってしまった孝太郎さん@苅屋姫。 自らの心のままに行動する…という印象を強く受け、姫のキャラクターは見ていると、ちょっと歯がいい…というか軽い憤りさえ感じられました(姫は何才の設定なんだろう?) 母親を押しのけて前に出たり、たたみかけるように早口で己の気持ちを述べるなど…“気丈”というよりは“気が強い”印象が強く、かなりビックリ☆
段四郎さん@宿禰太郎。 憎らしい!けど滑稽さも充分で豪快。 自分の妻・秀太郎さん@立田の前を、自分の父親と共謀して殺すのだからなんたる非道!と。
憤慨してしまうワルぶり。 時折、笑いが起こった滑稽さがよりワルぶりを際立たせた印象もありました。

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