十二月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

弁慶上使

やっぱり何度観ても辛いお話で、観劇後にズーンと気持ちが重たくなって苦手。 朝イチで観るのは…かなりこたえました。
福助さん@おさわは初役との事ですが、福助さんのおさわは母親~女という変化を、特に弁慶がずっと再会を望んでいた娘の父親であるという事が判ってからの女ぶりはちょっと観ていて照れるくらい色っぽかったです。 でも、ここは誰が演じられていても思う事なのですが、そばで娘が死に至るような刺し傷を負って瀕死の状態にあるのに、ウキウキと「あたしあたしよ」みたいな色目使っているのがすっごく嫌なんです。
娘の髪を梳いてあげたり、たしなめたりする様の母親ぶりは微笑ましい母娘愛がみてとれて良かった。
橋之助さん@武蔵坊弁慶
女性と契ったのも大泣きしたのも、生涯にただ一度きりだったという豪快な弁慶が、自分の娘を殺し『三十余年の溜め涙』と泣き崩れるのが見所のこの演目。
私はこの演目の弁慶には愛嬌「無粋で可愛い」と思えるような風情があるのが好みなのですが、終始大きな声で虚勢を張る武者という感じでした。 セリフのリズム…というかトーンというか…一辺倒な印象が強かったような。 娘を殺して泣き崩れる場で、いつも一気に弁慶に気持ちが傾くのですが、…あまり感動がなかったのは、何度も観た中で初めてかも。
新悟くん@腰元しのぶ
「いつの間にかこんなに大きくなって…まぁ」と親戚のおばちゃん状態(福助さんより背が高かっような?)。 多分、声が一番難しい時期かと思うのですが健闘していたかと思います。 純真無垢な可憐な娘風情が、スラッと細いビジュアルに見合っていました。 多分…これからも背が伸びるでしょうから、今回の女形を観れたのは貴重な機会だった…って事になるかも?
芝のぶさん@卿の君 私にとっては一服の清涼剤…という感じで重い演目の中…多少救われました。

猩々

私は【寿猩々】しか観たことがなく、今回のタイプは初めて観劇で、弥十郎さん@酒売りと緑の酒樽、大きな柄杓と道具が印象的でした。
で、最初に断っておきますが…私、前の座席の人の頭で思いっきり舞台中央の部分の視界を遮られて、実は殆ど観えてません 舞台中央で踊ってる事が大半な為、ちゃんとした感想が…書けません 勘太郎&七之助兄弟の二人だけの舞踏って実は…私、初めての観劇だったと思います。
見えた範囲では二人とも酒好きの陽気な妖精って感じが今イチ伝わってこなかったです。 お酒が好き…というか、お酒が美味しくて美味しくて…という、観てて「お酒ってそんなに美味しいんだ」って思えなかった、というか。

三社祭

楽しい舞踏…という印象が私は弱く感じました 総じて勘太郎さんの動きの方がなめらかな印象を持ちました。

盲目物語

谷崎潤一郎の小説が元となっているこの演目は私、映像も含めて今回が初めて観劇。
お市の方に使え従順に慕う盲目の弥市と、お市の方に求婚し拒絶され続ける武将・木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)の二役を同じ役者さんが演じるというのがこの作品の見所のひとつ。 また、お市の方の琴、弥市の三味線の合奏が聴けるのも嬉しい。
勘三郎さん@弥市
玉三郎さん@お市の方を慕いながら従順に仕えているが、どこか艶かしいものを感じたのは何故だろう? 「肌が…肌が…」と言うから? でもそういうセリフを聴きながら、お市の方はナイスバティなんだろうなぁと素直にイメージできるのが玉三郎さんの美しさに納得させられるものがあり困難ではないところが凄いと思ったり。
生涯を通してお市を慕い、その気持ちを最後には娘のお茶々(後に淀君)にスライドさせて告げた挙げ句、激しい拒絶にあってしまう悲しい男の生涯がラスト、とてもよく感じられてせつなくなりました。
勘三郎さん@木下藤吉郎(後に豊臣秀吉)
勝家に嫁いでも最後までお市の方を求め、彼女の絶命後の体を腕に抱き「そなたを得たいが為に戦を起こしたのだ」と家来の前で慟哭する様は…ストーカーめいた狂気を感じゾッとしました。 しかし…その主君の女に対する想いの為に戦を余儀なくされた家来は大迷惑ですよね、全く。
玉三郎さん@お市の方
亡き夫に操を立てながらも、橋之助さん@柴田勝家、勘三郎さん@木下藤吉郎(後に豊臣秀吉)からの求婚に心が揺れ、一方に心惹かれ、一方を激しく拒絶する…と一見、凛とした毅然さがありながら、激しい感情を持ち合わせている女性。
藤吉郎を「あの足軽あがりが!」という言い方がひどく汚らわしいという不快感があり、勝家に嫁ぐ事を藤吉郎に告げる際に冷たい微笑みを浮かべながら「どうだ参ったか」というようなニュアンスで意地悪く言い放つ様に女のいやらしさを感じ、プライドが高さ…だけでない、狡猾さが面白かったです。
七之助さん@お茶々
ついには親の仇である男の側室となり、淀君として生きている女性。 復讐心などは心の奥底には秘めていたのでしょうが、実はこの話の中でこの人が一番したたかで強いのかもしれないですね。 ですから、弥市から想いを告げられて示す激しい拒絶が違和感を私は感じました。

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