十二月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

恋女房染分手綱

今月の歌舞伎座、昼夜観て一番心に残った…かな(と言っても開演に間に合わずちょっと冒頭は見逃した)! 『子別れ』物の代表作を、実の親子である福助さんと児太郎演じる事もみどころ
調姫は12才の設定なのに、キャスティングの子役さんはちょっと小さすぎないかな?と。 しかし昼の【盲目物語】といい、この演目といい、子役さんが好演していた今月の印象
12才なのに双六でご機嫌を取られて、知らない土地、顔も知らない殿への輿入れを決意する…とは、なんと世間知らずであどけない事か?と素直に思わされ当時のお姫様の箱入りぶりが伺えて面白い。
弥十郎さん@本田弥三左衛門七之助さん@腰元若菜の両者は姫のご機嫌取りの様が可笑し味があふれており、この場の笑いが後の母息子の別れの悲劇を立てている効果があるような印象を持ちました。 七之助さんは今まで拝見した中で一番好きかも(私は)。
児太郎くん@三吉
あの歌舞伎座の広い舞台に一人っきりで出ている場もあり、その空間と時間を持たせている事に立派さにビックリ 今後の活躍がますます楽しみになりました。
福助さん@乳人重の井
私はお役によってハッキリと好き嫌いが分かれてしまう役者さんなのですが…重の井はとても好きでした。 三吉が児太郎くんだから…という事は関係ナイのでしょうが、観ている側がそう思って観てしまうからなのか、セリフを言っていない時も我が子をかけよって抱きしめたい衝動をぐっと押さえている母親の心情が視線や所作からジンワリと伝わってきて静かに泣ける感じ。 最後の泣き笑いはさすがな印象。

船辨慶

先月、八千代座で観劇したばかりだったので、小屋の規模が全く違う歌舞伎座の空間仕様とその感じ方にどんな違いがあるかしら?と期待しての観劇。
総括としては『この演出だと小規模の小屋向きかな』と思いました。 南座(観てませんげど)や八千代座くらいの…役者と観客の距離感が比較的近い(キャパ)と、玉三郎ワールドの空気感が行き渡り、納得させられる力があったかと思うのですが、歌舞伎座の広さにはその空気感が隅々にまでは行き渡らなかった…といいますか。
ですから、歌舞伎座でも舞台により近いお席で観劇していたら違った印象だったかもしれません。 八千代座でとても感動した衣装でさえ照明で飛んでしまっていて、見た目の感動もなかったですし。
でも『【船辨慶】といえばこの演出』というものばかり観ていたので、違った演出で観れた楽しさはありました。
セットは通例の松羽目…でなく黒背景で、クッキリと役者が映えて新鮮な感じで好きでしたし。

松浦の太鼓

勘三郎さん@松浦鎮信(初役)は…というか、最近ひどく気になってしまうのが、勘三郎さんの愛嬌あふれる役者ぶりがそうさせるのでしょうが「ココは笑うところかしら?」と疑問を感じる場でも観客の笑い。 勘三郎さんの演技に対して、笑おう笑おうと構えているような節が見受けられて…気持ちが萎えてしまうんです。 う~ん、上手く説明できないんですけど汗
始まって「ああ、またか…」と思っていたら舞台が進むにつれて、今回は嫌味なく気にならず…自分の意のままにならない腰元お縫(勘太郎さん)に対して辛くあたってみたり、赤穂浪士の討入りの決行が本日と判るや否や居ても立ってもいられない喜びぶりは、無邪気でお調子者的な殿様風情がとても良く愛らしい感じさえあり、好きでした。
勘太郎さん@お縫
可憐でビックリ(勘太郎さんの女形はごついイメージが私の中で先行していたので失礼) ず~っとお茶を入れるお手前ばかり観ていたのですが…綺麗ですね。 でも時間を、心をこめて入れた二回も入れたお茶なのに、殿様は一度も飲まないんですね。 「あ~、もったいない!」と引き際に家臣の誰か飲んでくれたらイイのに~、なんてね あんな男衆ばかりの前でセクハラ話をされて…でも耐えて…可憐でした。
橋之助さん@大高源吾
なんか…でした いきなり大声のハイテンションでズカズカと屋敷に入ってきた印象で、今まで舞台上で進行していたお芝居のトーンと合わない感じが。
今までひたすら仇討ちの機会を伺って、いよいよ決行という時であるからして、気持ちが高揚しているのは解るのですが、松浦鎮信に報告している…というより、一人で得意満面に話していると言いますか。
今月の橋之助さんを拝見して「橋之助さんって…橋之助さんなんだなぁ」という印象を強くしました。 ちょっとニュアンスを上手く表現できませんが。
夜の部全ての演目にご出演の弥十郎さん。 お疲れさまです…。
この演目のイヤホンガイドの、おくだ健太郎さんの幕間の解説が面白かったです! お話の舞台となった場所を尋ね歩きながらの中継…といった企画だったのですが臨場感があってGood Job!

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