二月花形歌舞伎・伊達の十役【博多座】

博多座では初上演です。 澤瀉屋専売特許的な演目かと思っていたので(…って海老蔵さんもされてましたね=市川家特許?)染五郎さんが?と驚きましたが、2014年5月の明治座公演で大好評を受けての今公演。 期待が高まります! 澤瀉屋からは右近さん@八汐、笑三郎さん@三浦屋女房松代が座組に。
2月3日は【お練りと節分豆まき】、14日は【KABUKI NIGHT】と…舞台以外でも大奮闘の染五郎さん。 今公演で、どのくらい体重が減ったんだろう?
慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)】は、恥も外聞も構わず大汗をかき、紅葉のように顔を真っ赤に染めて奮闘する、という意味があるそうです。 【伊達の十役】は通称…とは恥ずかしながら初めて知りました!

 💡 口上
幕開きに、染五郎さんが物語のあらすじと登場キャラを幕に投影して紹介する…という親切スタート。 博多座公演の挨拶ではお馴染み「母は福岡出身で、半分博多の血が流れてる」から始まり「演目通り顔ば赤うして大汗かきながら4時間頑張りますけん応援ばよろしくお願いします〜」と、博多弁で。 染五郎さん、これ、どなたかに任せても良かったのでは? …ほら、あなた今から大忙しだからさ。

染五郎さん@仁木弾正/絹川与右衛門/赤松満祐/足利頼兼/土手の道哲/高尾太夫/腰元 累/乳人政岡/荒獅子男之助/細川勝元 うん、書き連ねると改めて凄いですね。 歌舞伎だと性別も行き来するから、体や声の使い方も違ってて、とにかく全力の全身運動でしょう! これを昼夜2回公演って超人的! 途中から『もう染ちゃん、飽きた…。 他の役者さんが観たい』って、ごめんなさい! ホントにそう思うくらい“どこを切っても染ちゃんな金太郎飴状態”なんだもの。 他にご出演のイイ役者さんがズラリなんだから、そちらに役を振っても…って、ごめんね、染ちゃん。
特筆すべきは、ご本人が一番演じたかったという乳母政岡。 vs右近さん@八汐ってビックリな配役に、いつも以上に息を詰めて見入りました。 政岡と八汐を演じるには若いなぁ…と思ったものの、政岡は千松のお母さん…と考えると、実年齢くらいなのかも? 王道に、基本に忠実に演じている印象。 右近さんの敵役ってイイ!  秀太郎さん@栄御前がしっかりと場を締めてくれます。 そして仁木弾正の宙乗り。 最近は派手なパフォーマンス宙乗りばかり目にしていたので、妖気をまとって静かに上がっていく様はとても綺麗でした。

4時間で10役。 演じるご本人はもちろん、裏方さんはそれこそF1レースのピットなみの慌ただしさなんでしょうね。 凄いチームワークだ! で、観劇後に強く思ったことは“猿翁さんの凄さ”!  染五郎さんは“頑張って演じてます”って感じが全面に押し出され熱として伝わってくるんだけど、猿翁さんはそんな素振りが全く感じられず、各々をサラサラと切り替えて、職人みたいにこなしていく感じ…って、言いたいこと伝わりますかね?
他にご出演の役者さんについても感想を…と思うのだけど、目が及ばずご容赦!

北島三郎最終公演【博多座】

サブちゃん最後の劇場での座長公演!
博多座開場以来、ほぼ毎年公演を行ってきて…おそらく“満員御礼”の札が立った回数も一番多い観客動員数を誇り、“博多座ドル箱公演”なサブちゃん公演。 私も…多分片手くらいはそのカウントに入っており、終わってしまうのはやはり寂しいもの。 「これは最後を見届けなくては!」と、私にとっては数年ぶりのサブちゃん公演に勇んで劇場に入ると…玄関ロビーから大量の大漁旗が懸垂されていて、それは館内至るところに装飾され、物産展の体を成したロビーにはわっさわっさとお客さんが蠢く賑わいぶり! きっと一番購買力がある方々がメインの層であるお客さんなんでしょうね〜。

 💡 お芝居【国定忠治】
これ以前の公演で拝見した事があります。 作・演出共に“原譲二”=サブちゃんご本人。 サブちゃん@国定忠治は…声は「録音源?」と思うほどこもってて、殺陣も動きも「今回で最終公演とした英断は寂しいけれど正しかった」と思える年月を感じました。 すでにサブちゃんの女房役として安定感のある星由里子さん@おふじや実娘の水町レイコさん@お千代、実義息子の北山たけしさん@浅太郎と盤石の布陣で臨む博多座での最後のサブちゃん芝居。 過去の公演感想で何度もつぶやきましたが、作・演出は他の方に任せてみてはどうだろう?

 💡 ヒットパレード【北島三郎、魂の唄を…】
『燦然と輝く46年間の金字塔。史上最多公演を誇る、魂のステージ!!』のコピーで、最後の博多座座長公演を締めくくります。 魅せます!聴かせます! 多分、毎公演言ってますが『歌手、とはこ〜ゆ〜人の事を言うのだろう』という感動があります。 はっきり言ってサブちゃん作曲の“一文字シリーズ”(母・山・川・竹など)は、曲の違いが判らないけれど、合間に挟むトークは相変わらず軽妙で楽しい。 そしてお約束の北島丸に乗船しての【北の猟場】も巨大神輿に乗ってのフィナーレ【まつり】は圧巻!大満足!

「今年もサブちゃんを観た!」という満足感で満たされ、毎年この感動を届けてくれたサブちゃんに感謝! 有難うサブちゃん! そしてお疲れさまでした…。

壽初春大歌舞伎・昼の部【松竹座】

 💡 寿曽我対面
愛之助さん@曽我五郎時致+扇雀さん@曽我十郎祐成の兄弟。 キビキビと小気味良い動きと、耳に心地よい台詞回し、歌舞伎の様式美溢れる目に鮮やかな演目で襲名披露公演の幕開きに相応しい祝祭劇♪ 橋之助さん@工藤左衛門祐経が、なかなかの大物振り。

 💡 吉田屋
鴈治郎さん@伊左衛門は初役ですって! もう何回もされている印象だったので驚きと同時に、初役で拝見できる嬉しさひとしお♪ 藤十郎さん@扇屋夕霧秀太郎さん@吉田屋女房おきさ、という最強の布陣。 いそいそと夕霧との再会を待つ愛らしさ、嫉妬ですねる様、どちらも可愛らしくあるものの(←贔屓目入ってます)、ブラス色気が欲しいなぁ…と思いました。 ただの“駄々っ子”ですもの。 あまりにも夕霧に辛く当たるので、ホントに彼女が可哀想になるし、勘当が溶けてめでたしめでたし…は『こんな大人子供を甘やかしてハッピーエンドな訳なかろう!』と思ってしまう、いつもの感想。

 💡 河内山
多分、河内山宗俊は仁左衛門さんで一番回数拝見してるかと〜。 仁左衛門さん@河内山宗俊、対するは梅玉さん@松江出雲守。 悪巧みに長けたお数寄屋坊主ですから、“ああ言えばこう言う”という具合に出雲守をやり込める様は、出雲守と一緒にギリギリと言い分を聞く感じ。 亀蔵さん@北村大膳が正体を見破ってからの開き直りっぷりが鮮やか! 河竹黙阿弥の七五調の名ゼリフは本当に耳に心地よく、気が付けば節と一緒に首を振って口ずさんでいる事が多いなぁ。 「馬鹿ぁ〜めぇ〜!」 壱太郎さん@腰元浪路、可愛い!可憐だ!

壽初春大歌舞伎・夜の部【松竹座】

大好きな翫雀さんが…ついに【四代目中村鴈治郎】に!
年明けの大阪松竹座は『松竹創業120周年☆中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露壽初春大歌舞伎』、張り切って遠征してきました!呼び慣れた「翫雀さん」というお名前と、あの大好きな可愛らしい翫雀の紋が変わってしまうのは個人的にはとても寂しくはありますが、上方歌舞伎にとって大きなお名前の襲名はとってもお目出度い事。 気持ちを切り替えて「がんじろはん!」、呼ばせてもらいます!

 💡 将軍江戸を去る
私の中では【真山青果作品=梅玉さん】という図式があるのは何故なんだろう? 梅玉さんの@徳川慶喜の声が、真山作品のセリフのリズムにすごくフィットするイメージ。 虎之介くん@宇佐見常三郎 、舞台の虎ちゃんを本当に久し振りに拝見し、親戚のおばちゃん状態でその成長に感涙。 実は、真山青果はどうしても苦手意識があるうえ、早朝の博多からの移動で…え~っと。 この襲名披露公演、あんなにも楽しみにしていたのに、一体なんなのよ私! という自身への愚痴は先行してしまう情けなさ。 何故コレを襲名披露公演の一発目でかけるのよっ!

 💡 四代目中村鴈治郎襲名披露・口上
下手から…
秀太郎亀鶴虎之助壱太郎扇雀藤十郎鴈治郎仁左衛門橋之助愛之助竹三郎彌十郎梅玉
いや〜「ついにこの時が来た!」と居並ぶ面々の中央に座するご本人を目にして感慨深いっ。客席から「がんじろうはん!」「待ってました!」と声がかかる度、このお名前は大阪の方にとっては本当に親しみのある大きなお名前なんだなぁ、と実感。 ご本人がとっても嬉しそうにされているのが印象的。 我當さん、休演なのが本当に寂しい…。

 💡 封印切
上方和事を代表する忠兵衛は“鴈治郎襲名公演”にふさわしく、NEW鴈治郎 VS 仁左衛門さん@丹波屋八右衛門!という嬉し過ぎる配役♪ “ちょっと抜けてる、でも憎めない愛嬌のあるイイ人”を演じたら最高にハマる鴈治郎さん@忠兵衛の花道出の「梶原源太は、わしかしらんて」は品のある可愛らしさ☆ 対して、仁左衛門さん@丹波屋八右衛門の嫌味ったら敷くネチネチと底意地悪く追いつめる様がなんとも憎らしく、観ている側も井筒屋の皆と一緒にギリギリと我慢を強いられてしまいました〜。 いつもは封印を切ってしまってから、ハタと我に返る表情が印象に残るのですが、今回は封印を切っている最中の気分が高揚している表情がなんとも引きつけらました。 秀太郎さん@井筒屋おえんは、いつになく八っつぁんに辛辣な攻撃でスカッとした! 扇雀さん@傾城梅川なんだけど、いつも思うのはこの兄弟の恋人や夫婦って、さっぱり色気がナイ。 好き合っている感じがしないんだよなぁ…。

 💡 棒しばり
愛之助さん@次郎冠者壱太郎くん@太郎冠者。 お二人とも達者で客席が多いに湧き、打ち出しに最適♪ 亀鶴さん@曽根松兵衛とのバランスも良い。

劇場
大阪松竹座
日時
2015.1.13(火曜日)/16:00〜