五月大歌舞伎・夜の部【新橋演舞場】

歌舞伎座・昼の部の終演が15:55で、新橋演舞場・夜の部の開演が16:00。 ダッシュ→遅刻→汗だく着席~。 周りのお席の方、ご迷惑かけまして申し訳ございません!!
昨年より『5月の新橋演舞場は吉右衛門さんを座頭とする大歌舞伎』…と定着の公演なのかは不明ですが、今年も引き続き。

妹背山婦女庭訓(三笠山御殿の場)

高麗蔵さん@橘姫(赤姫姿って、初めて拝見かも)vs福助さん@お三輪。 その二人が染五郎さん@烏帽子折求女実は藤原淡海を巡って…なので、なんとなく強い女二人に意志なく翻弄される弱い男…のような見えてしまい(私だけ?)、それがかえって面白かったです。 お三輪ちゃんを虐める御殿の官女達は立役さんが務められる事が楽しみのひとつですが、今回はなんとなく下品な印象で残念汗
ここでの儲け役、というかスペシャルお役といえば豆腐買おむら。 毎回どなたがされるのか楽しみではありますが、今公演は歌六さん。 でも…なんだか“特別感”がなくて…普通でした。
歌舞伎の演目でよく思う「それって…どうよ?」「んな、強引な~!」と思う演目中の言い訳で、私の中では上位にランクインの“お三輪の生血”。 嫉妬心が凝結した“擬着の相”の生血が入鹿を滅ぼすために役立つ…って、どんな理屈やねん!
すごいよ、歌舞伎冷や汗

隅田川続俤

【法界坊】+++
私“生の吉右衛門さん@法界坊”は、初めて拝見!なのも無理はありません。 演じられるのは今公演が10年振りとの事ですから~。
このキャラクター自体、愛嬌あふれるものなのでどなたが演じられても…かと思うのですが、吉右衛門さんのあのどっしりとした威厳ある体躯が、軽やかに舞台を飛び回り、いたずらっ子感いっぱいの表情がキュートで、なんともたまりません! “縄跳び”参りました…。
なんと言っても吉右衛門さんご自身が、すっごく楽しそうに演じていらっしゃる印象が今公演、昼夜合せて感じられましたが…ご覧になった方、どう思われましたか?
玉太郎くん+吉右衛門さん法界坊が大阪屋に押し掛けてくるくだりは、それに対応する玉太郎くん@丁稚長太が超ラブリー!! 法界坊も思わず吉右衛門さんに戻って?長太にちょっかい出すツーショットは可愛くて、可愛くて目尻が下がりました~ときめき でもって想いを寄せる芝雀さん@おくみに対しては「ホントにおくみが好きなんだなぁ…」と。 今まで観た他の方の法界坊は、単に怒りにまかせておくみを誘拐…という感じが強かったのですが、吉右衛門さん@法界坊は、おくみへの執着心が勝っている(自分の手元に置いておきたい)印象で新鮮でした。
【双面水照月】+++
なんと~!! 染五郎さん@法界坊&野分姫の霊です! なんとも楽しい趣向です!
いつも思うのですが小顔で細面で造りも美しいのに、染五郎さんって女形、似合わないですよね(と、思うのは私だけ?) いわゆる男顔!だからなのか?声なのか? 「綺麗なのに…なんで?」というのはいつも謎であります。
怨念に燃えたぎる霊の持つ威圧感や不気味さが劇場を支配…というようなスケール感はありませんでしたが、どんなお役でもソツなくこなされる役者さんだなぁという印象を強く感じました。
錦之助さん@手代要助実は吉田松若丸芝雀さん@おくみ。 元来、美男美女でうっとりなのですが、最近富みにお二人ともその美しさに磨きがかかったような印象で惹き付けられました~♪

團菊祭五月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

泥棒と若殿

山本周五郎の昭和24年(1949年)に書かれ、昭和40年に舞台化された作品。 歌舞伎座での上演は久し振り…だそうですが、上演自体何年振りだったのでしょうか? 私、もちろん映像も含めてこの度初めて拝見。「ええ~、話しや…悲しい 自分でもビックリするほどダダ泣きに泣いてしまって、隣席の人が引いてました(ご迷惑かけました汗
今年二月の博多座花形歌舞伎で、すごく成長を感じた(何様な表現で失礼!)松緑さんでしたが…泥棒・伝九郎には更にうなりました。 お役がハマっているのか? やはりものすご~く上達されているのか? 気のイイ心優しい男ぶりが押しつけがましくなく、素直に爽やかに表現されていて「なんてイイ奴なんだ~♪」と観ていて自然とニッコリしちゃいます。
若殿
対して三津五郎さん@松平成信(悲運の若殿)。 荒れ果てた住まいと寂しい身なりなれど、滲み出る品格と殿としての凛とした威厳は観てとれる様は素晴らしいな、と。 そして城に戻った後は、きっと全ての民に優しい良い政治を執り行ってくれるんだろうなぁ…という若殿ぶり。
若殿とは知らずにかいがいしく身の回りの世話を焼く伝九郎と、その世話を驚きながらも受け、次第に心を通わす二人(それぞれ何歳くらいの設定なんだろう?)。 泥棒を働こうとした自分より悲運な男が居る事に同情をし、力を得た伝九郎。 友情というよりは愛情が芽生えたような印象にも感じるものがある部分もあり「おやすみ~」はツボ。 「でんく」「のぶさん」と呼び合う間合いも良く、若殿が別れの朝餉をこしらえる姿にすでに涙腺決壊。 「信さん、俺はもう止めねえよぉ」で涙ダーッ悲しい 信さんの世話を焼く事がささやかな生き甲斐となっていた伝九郎は…あの後、どうやって生きていくんだろう?と切なくなりました。
三津五郎さんvs松緑さん、二人でこのような感じでカッツリ組み合ってお芝居をされているのも私は目新しく、達者な演技に大満足させられた舞台でした。
また違う役者さんで観ると、受ける印象もすごく違ってくるような気もしましたが、いかがでしょうか?

勧進帳

1887年、九代目團十郎らの尽力で初めて天覧歌舞伎が実現してから今年で120年!という事で今公演は【天覧歌舞伎百二十年記念】と冠付き。 舞台芸術として広く認められる推進力となったこの慶事を記念して、当代の團十郎vs菊五郎でこの度上演☆
2005年にはユネスコ【世界無形遺産】ともなった歌舞伎。 その認められる出発点ともえる作品なんですね(ま~た、勧進帳かぁ…と毎回思う私を許して~)
先日のパリ公演を大成功のうちに務めた團十郎さん@蔵坊弁慶の…帰国後初の勧進帳は、いつも以上に気合いと気迫が感じられ…たような気がしました。
梅玉さん@源義経菊五郎さん@富樫左衛門。 四天王は友右衛門さん家橘さん右之助さん團蔵さんの顔合わせで。

与話情浮名横櫛

海老蔵さん@与三郎vs菊之助さん@お富の組み合わせは今回二回目との事。
【木更津海岸見染の場】は…つっころばし系というか、和事の柔らかみのある世話もののボンボンは…海老蔵さん、キツイなぁ~汗 私、全く受け付けられませんでした。 可笑し味のある二枚目って、二月の博多座で拝見した【おちくぼ物語】での好演も記憶に新しく、期待していたのですが…「あら~」。 こ、声は…あれは何でしょうか?汗 羽織も今から落とすぞ、落とすぞ~と思いっきり構えている所がシラけてしまって。
対して【源氏店の場】でのビジュアルのハマりっぷりは流石に美しく、悪党ぷりは様になっていて…でも、肝心の見せ場の名セリフでは、やっぱり何を言っているか聴き取れナイ。 え~っと、元来、私は苦手な役者さんですので殊更な感想になってしまっているかも?…なので、今公演の海老蔵さん@与三郎、ファンの方に是非とも感想を伺ってみたいです。
対する菊之助さん@お富。 いつでもどのお役でも綺麗で魅せられる…だけど、血が通ってナイ印象が私は強くて…なのですが、今回は源氏店での色気は素敵で、自分に好意を寄せる橘太郎さん@藤八(ラブリ~☆)を弄ぶ“大人の女の艶っぽさ”に感心。 でも、やっぱり感情が薄い…んだなぁ。
市蔵さん@蝙蝠安で、観客は随分助けられた印象でした。

女伊達

映像も含めて、初めての観劇だったのですが、芝翫さんの舞踏って【年増】とかすっごく好きなので嬉しく拝見。 「江戸って“粋”だなぁ~」とウキウキするカッコ良さ!
翫雀さん門之助さん…という組み合わせの珍しさも手伝って、すごい集中力で観劇しつつ…最後まで観る事叶わず残念!!(新橋演舞場・夜の部観劇ダッシュ移動の為GO!

桂春団治【博多座】

観劇前にたまたまTVで映画が2本放映されたので、予習の為に?鑑賞してから博多座へ~♪
テレビ【世にも面白い男の一生 桂春団治】(森繁久彌主演:1956年)
テレビ【色ごと師 春団治】(藤山寛美主演:1965年)

博多座には今年で4度目の登場の直美さん。 毎回春にご出演なので、もはや直美さんは“博多の春の風物詩”?! なんでも直美さんのデビュー作がこの【桂春団治】との事だし、博多座初お目見えの沢田研二さんとの共演とあっていつも以上に話題♪
沢田さんが春団治を演じるのは5年ぶりとの事。 今公演は4月・新橋演舞場→5月・博多座→6月・松竹座と3ヶ月のロングラン公演で、直美さんご自身『舞台で3ヶ月間も同じ役を演じるのは初めて』とので、より進化していくであろう舞台に期待大☆
上方落語界に伝説を残す初代春団治。 明治~昭和にかけて落語の古い型を破ろうともがき苦しみ“金と女”にだらしがなく…♪芸のためなら女房も泣かす それがどうした文句があるか~♪(浪花恋しぐれ)の、その歌のまんま・天衣無縫っぷりに唖然!
彼を取り巻く人々、特に女性はひどく苦しんだでしょうが、その苦しみ予期していながらも惹き付けられる強烈な魅力を持っていた人なんだろうなぁ…と、愛すべきキャラの人だったんだろうなぁ…という事が沢田研二さん@桂春団治からは伺えました(沢田春団次は見た目もイイ男さんですし☆) 私、沢田さんって関西弁のイメージが何故だかあって、今回のセリフも全く違和感なく(私が関西圏じゃない人間だから?)、ご自身の言葉として容易に操っていらっしゃる印象だったので…この度、鳥取県のご出身だと知ってビックリ! これはこの前も思った事なのですが音楽に携わっていらっしゃる方は耳がイイでしょうね~。 直美さんとの掛け合いも大変に耳に心地良く~♪
私、この度初めて知ったのですが…噺家さんにとって?この当時の芸人にとって?『人力車と車夫を抱える』というのは一種のステイタスなんですね。
真っ赤な人力車と派手な高座衣裳がトレードマークともなっていた春団治も、当時のいわゆる“歌舞伎もの”だったようで☆

曽我廼家文童さん@車夫・力松がこれまた愛すべきキャラクターであり、素晴らしい好演で強く心に残りました。 ですので、この力松あの世にからも車を引いて主人を迎えに来る笑いに包まれるラストでは、心優しい男がココまで慕った春団治の魅力が強く強く表現されていた素敵な幕引きだなぁ~と感じ、心から拍手喝采でした!(このラストは映画作品二本共に同じですが改めて笑えました)
土田早苗さん@一番目の妻・おたま藤山直美さん@二番目の妻・おとき入江若葉さん@三番目の妻・おりうのお三方で春団治の妻を演じていらっしゃいましたが、どの妻も「なんでこんな良く出来た女性が、こんな男に…」という良妻っぷり。 ま、だから世間はバランスが取れているかもしれませんけど~。
特に三番目のおりうが病床の春団治を助ける為に、二番目の妻おときに頭を地面にすりつけて懇願する様が印象的でした。
直美さんやW小島さんに限って言えば、昨年の【はなのお六】のような、その可笑し味爆発!のような舞台が好きなので、今公演は私的にはちょっと消化不良気味。
と、言っても作品としては舞台セットも素晴らしく(←ココは声を大にして)、当時の情景を素晴らしく再現していて感動でしたし、“人の気持ち”というモノについて考えされられた、あったか~い素敵な作品でした。