壽 初春大歌舞伎・夜の部【松竹座】

神霊矢口渡

孝太郎さん@お舟は今回が初役だったんですね もう何度もされている印象があったので驚きでした。
前半の…薪車さん@新田義峯を見染めて態度が豹変する辺り、春猿さん@傾城うてなの事を「奥さん?妹さん?」と尋ねるまでの恋する乙女ぶりは予想通りの可愛らしさでニッコリ。 どなたが演じられても、お盆を鏡のように使ってそれに映る義峯をウットリと見とれる場面は好きなんですけど…良かったです♪
ただ全体的にちょっとバタバタと動き回る印象が、ガサツな雑な感じに見えて気になりましたが…田舎娘?だからそれでイイのかしら? 上手く表現できないのですが「頑張ってます」って気持ちが前に出過ぎて…観てて疲れるというか?
ですから手負いになった後半の方が“イイ感じ”に押さえられていて好きでした。 ラスト、櫓で両手を合せて微笑む様には「なんて表情しているの~」と、ガツンとやられました。 だから孝太郎さんという役者さん、好きなんだなぁ。
弥十郎さん@渡し守頓兵衛も初役との事。 姿からもして大きく、壁を壊して家に入る様、大きな体を折ってちんまりと縁の下に潜り込む様には滑稽な可笑し味を強く感じました。 誤って娘を刺し、その瀕死の娘を見ながら裏切りを責めるくだりは“強欲非道”ぶりがよく出ていました

仮名手本忠臣蔵【落人】

ただひと言「綺麗~」☆ 眼福、眼福~と客席は皆鑑賞していた事でしょうね。
幸せな未来は望めないけど、こうして二人で居る今が幸せ…というような気持ちが伝わってきて、この後の悲劇を知っているだけにせつなく観てしまいます。
そこへあって…猿弥さん@鷺坂伴内の登場ですよ☆
花道の出だけでも笑えるあの猿弥さんのキャラクターは最強です! コロコロと…ヒョコヒョコと拵えだけでないキャラクターのに可笑し味が最高に表現されていて良かったです。
歌舞伎界一の名コンビの美しい舞踏に猿弥さんがこうして絡む。 感慨深いものがあり、笑いながらもウルッときてしまった私です。

仮名手本忠臣蔵【五、六段目】

段治郎さん×仁左衛門さんのツーショット。 こんな舞台を拝める日が来ようとは…。 芝居うんぬんよりも【山崎街道鉄砲渡しの場】では、段治郎ファンとしては感慨深いものがあり、涙ぐんでしまいました悲しい
段治郎さん@千崎弥五郎は“熱血”な感じですね。 今公演では一番このお役が好演でした。
愛之助さん@斧定九郎 出だけで「うわぁ~、この人悪人だよ」って判る風情。 目の動きや立ち廻る様で不気味さ十分のところにひと言つぶやく「五十両~」にゾゾ~ッ。 黒×白×赤の色彩の対比が美しく色悪の色気充分でした♪
竹三郎さん@母おかや も~う、も~う泣かされました 仁左衛門さん@勘平×玉三郎さん@おかる…な訳で、それだけで納得というか満足させられる部分もあるかもしれませんが『それだけ(主役)では舞台というのは成り立っているんじゃないんだよ』という事を観た感動的なおかやでした。
夫を殺したのは婿ではないかと疑い、確信を持ち責め、それが間違いであったと詫びる…この場で一番心を寄せて観たのは“おかや”に、でした。
勘違いから己の腹を切った勘平と、この一家の悲劇をより一層際立たせているのは竹三郎さん@母おかや。 素晴らしかった
あと特筆すべきは笑三郎さん@一文字屋お才。 おかみさん風情がなんとも自然で、シャキシャキと店を切り盛りしている様子がや仕事に対するプライドもみて取れて好演。 何を演っても上手い方だなぁ…と思っていたけど、このお役が私の中ではココ最近の中では最大のヒット☆

春調娘七草

『江戸の正月興行の吉例であった曽我物にちなみ、曽我五郎、十郎に静御前が絡み正月風俗の七草行事を題材に踊るという趣向の長唄舞踊』だそうですね。
“曽我兄弟と静御前”という組み合わせにいつも「」だったのですが…。
猿弥さん@曾我五郎は良かったです。 え~っと、やっぱり厳しいな、と思いました。 “型通り動いている”という印象で、“踊っている”んじゃナイ感じなんですよね。 特に段治郎さん@曾我十郎は、舞踏でいつも思うのですが、そのキャラクターの気持ちが入っていない感じがします。 表情が特に「いっぱい、いっばい」で…今後に期待。

壽 初春大歌舞伎・昼の部【松竹座】

毎年『その年の歌舞伎はじめは松竹座』なのですが…今年は藤十郎襲名の為、お目当ての翫雀さんは歌舞伎座へご出演。 「お江戸の一月公演は他の小屋でも歌舞伎公演がかかっているから今年は歌舞伎座かな」と思っておりました…が 松竹座の演目と配役が発表された時点で前言を瞬時に撤回。
やっぱり一月は松竹座ばい!」翫雀さんは来月博多座に来てくれるし♪
今公演の筋書きで…
仁左衛門さん『私なりの芝居の作り方を経験してもらえるイイ機会』
玉三郎さん『将来、この人たちが自分の一座をもった時の事を考えれば。今のうちに大きな役をやっておく、経験を積むことが何より大事』と語っていらっしゃいます。
今公演を拝見して、ただの歌舞伎一ファンながら「仁左衛門さん、玉三郎さん、本当に有り難うございます!」とこの舞台を観劇できる機会を得れた事にひたすら感謝でした。

義賢最期

今公演で一番楽しみにしていたのは…きっと多くの方もそうでしょうけど、愛之助さん@義賢! 仁左衛門さんのご指導の元、今回が初役で『生きているうちに1回できればいいなと思っていた遠い夢のような役』と愛之助さんご自身が語っていらっしゃった記事を読んでいたので、その意気込みたるやさぞ…と楽しみに観劇。
数年前の…それこそこの松竹座の一月公演で仁左衛門さん@義賢を拝見して以来観る【義賢最期】。 残念ながらその時は私が観劇する数日前に“戸板倒し”が予定とは逆の方向に倒れてしまった…とかで、仁左衛門さんがお怪我をされ、観る事が叶わず、私自身は“生の戸板倒し”を観るのは初めて。
今までのお役でも仁左衛門さんの面影を何故か彷彿とさせる部分もありましたが、今回は…うなりました。 正直、前半のどっしりした部分に“器の大きい大将”ぶりが薄く感じたのですが、白旗詮議からの心の底から絞り出すような気迫が素晴らしく、千畳敷を背景にズラリと軍兵がマイッタ・ポーズで居並ぶ中央に血だらけの形相で見得を切る大きさに、立派さにジ~ン!!
躍動感溢れる立ち廻りと“戸板倒し”や“仏倒れ”にはもちろん魅せられたのですが、一番印象に残ったのは花道での演技☆ 瀕死の状態で意識もうろうとなり突っ伏していたのが、ハッ!と顔を上げて気持ちだけで立ち上がる様は本当に感動的でした。
気迫溢れる熱演とその頑張りに心を打たれ、観劇後には舞台写真を購入。 仕事場に飾り、自分を鼓舞しています!
段治郎さん@下部折平の繻子奴ぶりは美しい…けど、こんなスマートな奴ってあまり観たコトなかったので違和感が。 実は多田蔵人行綱と正体を現してからも…見た目美しいのだけどなんだかサラッと流れてしまったような感がありました。 声に抑揚があるけど、平坦な感じというか、キャラクターの心情が伝わって来ないというか…魅力的なお役だと思うのだけど、ちょっと勿体ない感じが。
孝太郎さん@九郎助娘小万 やはりこのような世話女房のようなお役では「孝太郎さん上手いっ」と思ってしまいます。 いそいそと立ち振る舞う風情や、愛する者、信じるものを守る為、果敢に立ち廻る様はいつもながら応援しちゃいます。

十六夜清心

この演目の通しは関西でかかるのは初めてだそうですね? 私自身は仁左衛門さん×玉三郎さんコンビで…生の舞台拝見するのは初めて。
序幕の…玉三郎さん@十六夜と仁左衛門さん@清心のラブラブぶりって…スゴイんですね。 玉三郎さんって、相手が仁左衛門さんだと表情がとても穏やかな印象を受け、観ていると“幸せ~”のお裾分け”をいただいているような錯覚を受けます。
仁左衛門さん@清心の「幼い頃からの水練が仇となって死ねない~」って言う所はホント笑っちゃいますし、待ってました!の「しかし…待てよ~」はゾクッとする悪の色気があり、さすがな感がありました。
大詰での二人の変わりっぷりにはホントに笑えますが、あのヅラにはやっぱり…「美しい二人を観ていたい」そう思ってしまいます。
玉三郎さん@鬼薊のおさよ 玉三郎さんって悪婆演じていらっしゃる時って、嬉々とされている印象があるのですが、いかがでしょうか? 観てて何故だかいつもニッコリしちゃいます。
今公演、フル稼働の?猿弥さん@下男杢助実は寺沢塔十郎が痛快なラストを持ってっちゃうトコは、お話が分っていながらも「えええ~っ!」と驚き笑えます。 やっぱり木阿弥作品ってオモシロイ♪

コーラスライン【京都劇場】

以下、あくまでも私個人の感想なので何卒ご了承ください汗
え~っと…正直な感想をひと言「こんなに面白くなかったっけ???」
一番最近では2004年末~2005年始の自由劇場での公演を観劇しているのですが、あの時「この演目、おもしろ~い」「通える環境だったら通っちゃうな」と思った興奮は…何処へ? 舞台が進行するにつれて、久し振り観る演目への記憶は鮮明に蘇ってくるんだけど「あれ?あれれれ~?」
寒い冬の京都にまで足を伸ばして楽しみに観た演目だったのに「何が原因なのか?」「どうしてそう思ったのか?」という事を終演後にかなり考え込んでしまいました。 今公演で初めてキャスティングされた役者さんや、前公演とは違ったお役を演じる方も多く、とても楽しみにしていたのですが…「ん?」
ダンスがメインの演目だろうけど「歌、それはあんまりなんじゃ…」ってな度合いが前公演よりも全体的に強く感じたし、一番の原因は『セリフ(歌)に対してその情景がイメージできなかった(湧いて来なかった)』って事だったみたい?
各々のキャラクターが、自分自身の生い立ちから今現在までの自身の事を、素晴らしくビックリなバリエーションで披露していく訳で、その語りにおいて「ウッソ~!」と思ったり「クスッ♪」と笑ったり、ちょっぴり同情したり…する訳です。 そして、その各々の語りにおいて「お金を握りしめて美容整形に駆け込む様子」だったり、「100cmのボインボイン」だったり、「教会で牧師に救いを求めて泣きそうにすがっている様子」だったり、「演技教室?でつまはじきにされている様子」だったり…と、その人物たちが置かれていた状況をクリアにイメージできたのですが、それが今回…殆ど出来なかった 私はソコにこの演目の最大の面白みを感じていたので、それが出来なかったのが「こんなに面白くなかったっけ???」という感想になったのかなぁ。
なんか歌と言葉としてスーッと耳に流れる感じで、ひっかかりがなかったというか。 小屋の規模や雰囲気の違いなのか? 観る側の私のその時の心境の違いなのか? キャスト全体のまとまりによるものなのか?…それは判りません。
ダンスや演出、曲はやはり「と~っても好き」だと感じました…が…でした。
また別のキャスティングで観てみたい、そう思いました。

青い旗キャスト
ザック:飯野おさみ/ラリー:中山大豪/ダン:朱 涛/マギー:真鍋奈津美/マイク:藤原大輔/コニー:高城信江/グレッグ:武藤 寛 /キャシー:坂田加奈子/シーラ:増本 藍/ボビー:道口瑞之/ビビ:荻原亮子/ジュディー:遠藤瑠美子/リチー:松島勇気/アル:川口雄二/クリスティン:村中ちえ/ヴァル:八田亜哉香/マーク:良知真次/ポール:望月龍平/ディアナ:吉沢梨絵

屋根の上のヴァイオリン弾き【博多座】

2006年の観劇はじめ』はこの作品となりました。
昨年の年明けは…観劇後に気持ちがどよ~んと重くなるお芝居だったので“博多座の年明け一発目はミュージカル”での定着がイイと思います。 博多座さん!
私自身は今回がこの作品、初観劇。 断片的に知っていたシーンや歌の印象では「ユダヤ教徒の悲しいお話」というイメージが強く先行してしまっていたので、観劇を経てビックリ! 「こんなに笑える、楽しい作品だったんだ!」 テヴィエが市村正親さんだった…という事も大きく作用しているのかもしれません。
反省したのは、事前にユダヤ教徒の“しきたり”について、ちょっと頭に入れて観劇すれば良かったな、と。 劇中、宗教的な行為や儀式がいろいろと出てきて「?」な部分も多く、後に「なるほど~」と合点!な部分も多々ありましたので、知って観てみるとより深く楽しめるのではと思いました。 私はあまり予習?をして舞台観劇をしないのですが、演目によっては必要かな、と気付かされたかな。
市村正親さん@テヴィエは、ホントにチャーミング☆ 神様に日々語りかける敬虔な教徒、恐妻家の夫、優しい父親。 どれをとっても「市村さんって…ほんとスゴイ!」と失礼ながら改めてそう思った舞台でした。 この作品はきっと今後も彼のライフワークとして演じ続けられていく事でしょうね。
個人的に好きだったテヴィエのシーンは“夢のお告げ”という事で妻を上手く説き伏せ「めでたい めでたい」と喜ぶ様と、長女の夫・モーテルの“新しい中古のミシン”をチラリと見るシーン。 どちらもその恐妻家ぶりに笑えました
今公演で一番の私的ヒットは駒田一さん@モーテル。 駒田さんは…床屋@ラ・マンチャの男のあの能天気ぶりがすごく好きなのですが、他の作品でのその化けっぷりに要注意役者さん! で、今回、気弱な仕立て屋のモーテルで更にガツン!と衝撃を受けました☆ 「す、すごいよ駒田さん!!
長女ツァイテルとの結婚を許されて喜び爆発で唄う【奇蹟の中の奇蹟】は「歌、ウマ~」と大感動☆ 駒田さんが唄ってるんじゃなくて、モーテルが唄ってるんですよ、モーテルという人が! これからも違ったお役で拝見する楽しみが増えました。
ツァイテルとモーテルの結婚式で踊られる“ボトル・ダンス” あれって本当に頭に載せているだけなんですね! ボトルを落としそうになった時、落ちる前にサッと手に取って踊りの輪をはずれ、新郎新婦に一礼して見物客の輪に加わりました。 「あ、落とした時はそういう対処なんだ…」と判明。 ロシア人チームのダンスは…太ももが鍛えられそうです。
どの曲も、他のミュージカル作品ではあまり耳にしない民族的かつ独特な旋律で心に響く名曲揃いなんですね。 長く愛されている作品であるか事が解ったような気がします。