クレイジー・フォー・ユー【広島郵便貯金ホール】

昨年より『観たことがナイ四季作品は一度観てみよう』キャンペーン中の私は、とりあえず観た事がナイ作品がかかると可能な限り足を運んでいる現状…と7月の【オンディーヌ】レポートで公言しておりましたが…この作品も何故だか観劇の機会を逃していたので、広島まで行ってきました! 新幹線日帰りで昼&夜の部を観たのですが「これぞミュージカル」な作品なんですね。 これまた今まで断片的に知っていた曲やシーンがストーリーとして繋がって「スッキリした!」
あいにくの雨の広島でしたが、昼・夜ともに会場はとても賑わっていて、ロビーには福岡シティ劇場から…出張でしょうか? 柳瀬ビーストと木村ベルの等身大パネルがお客様をお出迎えしてました♪ 私的には【コーラスライン】のPVに釘付けでしたけど(これで京都公演行く事を決意!)
で、舞台は…と言いますと、舞台美術好き&衣装好きの私にはたまらない細部までのこだわりに感動! オペラグラスでセットの造りや小道具の数々をじ~っくり堪能していたら、舞台手前ではガンガン踊っていたりするので、かな~り忙しい観劇でした(昼&夜観てヨカッタ) ストーリーの進行に従って“育つヒナギク”だったりするんですねぇ…スゴイ! 衣装もそろぞれの人物のキャラクターを巧みに表現していて楽しかった♪
ストーリーは…簡単に言えば“Boy meets Girl” 映画にしちゃうと何てことナイ、よくあるタイプのストーリーながら“ミュージカル”という手法だからこそ、引き込まれる要素が多く楽しめるんですね。 改めて、名曲揃いの作品ミュージカル作品である事を再認識♪
キャストは、舞台に出演される役者さん全てに個人名が付いていて、結局どの人がなんて名前か?なんて事が判らず仕舞いのキャラクターも多かったです。
印象に残った役者さんは…広瀬明雄さん@ベラ・ザングラー。 べラの「どうも、どうも、どうも」ってセリフ、すっごく耳に残りますね。 今、マイブームです。 一人の女性の為に私財を投げ打って…ってまるでラスベガスを作ったベンジャミン・バクジー・シーゲルみたいですね。 彼がモデルなのかな? 広瀬さんって、ちょっとクスッと笑えるお役で拝見することが多いような気がするのですが、あの絶妙の間が素晴らしいですね。 これからご出演時は追ってしまいそうです。
そして…池末絵己子さん@パッツィー。  かわいい☆可愛い!カワイイ♪ 常にニコニコしているか、キョトンとしている時は口をポカ~ンと開けて“ちょっと抜けてる可愛い女の子”って、マリリン・モンローの持つ、可愛さと色気が同居してもっと親しみやすくした感じ。 と~っても楽しそうで観ているだけで気持ちがホンワカしてて釘付けでした。 ダンスも素敵で、私の中では『本日のベスト・アクトレス』
それから…斉藤昭子さん@ボビーの母。  結構重要な役どころなのに名前がナイ…んですね ラストの一目ぼれのシーンが、音楽にあわせて横スキップですり寄っていくところが猛烈に可愛くって笑えました。 カーテンコールではシャキシャキ踊ってらしてビックリ!
『最高にハッピーなミュージカル』というキャッチコピーに頷けた舞台でした♪

青い旗キャスト
ボビー・チャイルド:加藤敬二/ポリー・ベーカー:樋口麻美/ランク・ホーキンス:牧野公昭/アイリーン・ロス:八重沢真美/ベラ・ザングラー:広瀬明雄/エベレット・ベーカー:武見龍磨/ボビーの母:斉藤昭子/テス:有永美奈子/ユージーン・フォーダー:田中廣臣/パトリシア・フォーダー:加藤聖恵/
ムース:川辺将大/サム:岩城雄太/ミンゴ:畠山典之 /ビリー:石野喜一/パーキンス/カスタス:坂元剛 /ジュニア:平田郁夫/ピート:中山大豪/ジミー:和泉沢旭/ワイアット:関与志雄 /ハリー:村中弘和/
パッツィー:池末絵己子/シーラ:姚詠芝/ミッツィー:柴田桃子 /スージー:眞弓ヴァネッサ/ ルイーズ:大石眞由/ベッツィー:市川友貴/マギー:伊藤恵 /ベラ:ソン インミ/エレイン:荒木美保/

拝啓 お父さんです。【ぽんプラザホール】

ひのあらたさん主催の演劇ユニット【アプローチシアター】のお芝居
今回の作品は、原案は出演も兼ねる“マッチョルラス”こと坂元健児さん。 他の出演者は、代表のひのさんはもちろん、安福毅さん、田中裕悟さん、坂口祐未衣さん…とくれば、劇団四季OB会という感じ。 しかし、歌やダンスなどはなく(吉岡健二さん@ゆりかもめ二郎を除く)純粋にコメディタッチのお芝居。
皆さんリズム感がイイ方ばかりだから?、コメディセンス…というか“間”が抜群にイイんですね☆ チームワークの良さは劇団時代から培ったものがありバッチリ!でしょうし 各々のキャラクター作りもナイスで「いるいる!こんな人!」とニンマリ。 “5本指ソックス”を履く25才って…汗
私的には一昔前の“一家庭”の家のセットにたまらなくこだわりを感じ、小道具を細かくチェックしては興奮してしまいました。 黒電話とか、旧式の保温ポットとか、よくあんなの揃えたなぁ~。 壁にかけてある観光地で買い求めたような木彫り枠の鏡もツボだし、ジュースの瓶を体にして作った飾り人形や…あ~、言い出したら切りがないですが、一番感動したのはこの小道具一連だったと言ったら失礼かしら汗 光男の部屋の…机の横に立ててあったポスターは岡田奈々ですよね?!
居間の雰囲気からすると、時代は昭和?と思って最初は観てたけど、【コンビニ】の話題や、【ファブリーズ(消臭剤)】が登場したからには、現代ですよね? 田舎だから、時代が止まったようなインテリアだった、という理解でOK? “六本木”に対して“ゆりかもめ”だったし… ん?コレは違うかなぁ?

鉛筆あらすじ
舞台は田舎の農家。急逝した村の村長の父親をもつ子供たちが、その葬儀を終え、遺書を読む…という所から物語が始まる。
長男(ひのあらたさん)は八王子で焼き芋屋を、長女(坂口祐未衣さん)は幸福を呼ぶ水晶に傾倒している主婦を(旦那さんが田中裕悟さん)、次男(安福毅さん)は父親の跡を継ぎ農業を…という兄弟だが、各々が問題を抱え、その遺言の内容を知りたくて躍起になっている所に、怪しげな弁護士と称する男(坂元健児さん)が現れてひと騒動が…。

終始、大小の笑いの連続、そしてちょっぴりホロリ…な部分もあり、楽しい作品 各々のキャラクター設定が楽しく、中でも一番好きだったのは、吉岡健二さん@ゆりかもめ二郎。 挙動不振なオドオド振りや、息を留めて聴きいってしまうナイスな?歌とダンス。 おもしろすぎです! 演じていらっしゃる役者さんも楽しそうで「お芝居が本当に好きなんだなぁ」という熱も伝わってきました。 ただ…ちょ~っとラストのまとめ方に難あり、かな?
最後に…ひのさん、足、長っ!

青い旗 キャスト
小笠原長一郎 :ひのあらた/小笠原光男 :安福 毅/馬場菜々子 :坂口祐未衣/馬場信玄 :田中裕悟/ゆりかもめ二郎 :吉岡健二/六本木五郎 :坂元健児/小笠原正一郎(声) :前田昌明

禅・ファイヤー・フランツ!(エリザベート)

石川禅さんのフランツは…いろんな意味で目が釘付けです☆
メイクや演技で、ものすご~く化ける役者さんですが一貫して言えるのは“熱い”という事です。 度を過ぎて笑いを誘われることも度々、愛あるツッコミをしたくなる事も度々。 中でも大詰のラスト“悪夢”は、上記の要素をあますところなく堪能できる“禅さんの灼熱タイム”なのです~♪ “シシィちゃん☆LOVE”の禅フランツは最後の最期までシシィを愛しているが故の叫び…なんですけどネ汗 “絶品”なんですけど…ネ。

禅フランツの灼熱【悪夢】
あまりの熱さ…に両肩で目玉焼きだって焼けちゃうくらい湯立ってます! ふりかぶった時に前髪が“On the 眉毛”で一直線になるのもポイント♪ 最後の絶叫では“下敷きで頭をこすった”くらい髪の毛逆立ってます! 再度言いますけど…“絶品”なんですけどネ。
楽しいな、禅さん☆

ミュージカル 李香蘭【四季劇場・秋】

福岡公演時には…これまた何故か見逃していて、私、今回が初見でした(舞台中継の録画映像は観た事あり)
今年は戦後60年という節目の年…という事で、劇団四季の“昭和歴史三部作”が連続上演、という企画の第一弾(→異国の丘→南十字星)。
満州国、溥儀、川島芳子…というと、私の中では大好きな映画【ラスト・エンペラー】(半端じゃない回数観てます)の比重が大きく、舞台が進むにつれて、そのキャラクターの描かれ方にひどく拒否反応がありましたが、当時の日本人の傲慢さは、愚かさ、罪深さは良く表現されていたと思いました。
タイトルから推察するに『李香蘭=山口淑子、というその時代に翻弄された一人の女性の人生の生き様を描く物語』かと思っていたのですが(【異国の丘】の九重秀隆のように)、彼女を軸として「その時代に何が起こったのか、どんな事がなされたのかを伝える」という作品なのですね。 …なので『作品として伝えたいメッセージは充分理解できた』のですが…、で、だから『李香蘭=山口淑子という女性の生き様への解答』は?という疑問が残りました
【ミュージカル・李香蘭】ですよね? 彼女自身の体験を通して、彼女自身の口から訴えたかったメッセージというのが、その時代を生きた“歴史の証人”として、観客に投げかける言葉が欲しかったかな、と。「私は日本も中国も愛しています」という事ではなく。
一人の女性としての描かれ方としては、私の中ではむしろ、中国人・李愛蓮の強い意思を持った揺るぎない愛国心と、仲間や恋人に対する愛情の強さが印象深く残った作品でした。
役者さんとして印象に残ったのは…
五東由衣さん@李愛蓮 スーッと楽に歌っているようで、なんであんなに心に染入るような心のある歌声なんでしょう? 演技も素晴らしく、セリフのひとつひとつが“李愛蓮”という女性が話している言葉でした。 死に際の同胞に故郷の歌を唄って聴かせるシーンでは涙を流されていて、それでいて歌は力強く美しい。 きっと、どんなお役にもなりきってしまうタイプの方なのでは?と感じ、今後、五東さんが何かの作品にご出演の際には、絶対その舞台を拝見してみたい!と思いました。
末次美沙緒さん! 李夫人や声楽教師…はたまたアンサンブルでは、神出鬼没で大活躍 【マンチュリアン・ドリーム】でのミニスカート姿での熱唱は…「す、末次さんをこんな枠で使ってなんと贅沢な」と思って驚いたのは私だけではナイはず! でも、くるくる変わるお役のそれぞれを完全になりきって演じてらっしゃるのは、さすが!な感動がありました

青い旗キャスト
李香蘭:野村玲子 /川島芳子:濱田めぐみ/李愛蓮:五東由衣/杉本:芝 清道/王玉林:芹沢秀明

九月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

平家蟹

岡本綺堂作の新歌舞伎。 冒頭には物語の背景を映像を交え白石加代子さんの語りで観客に伝える等の新演出もあり、私、初見の演目。
舞台は平家一門が滅亡し、壇の浦では生き残った官女たちが惨めな暮らしをしている…という場面から。 芝喜松さん京蔵さん芝のぶさんの三人の女官達がその日食べるものを浜で採りながら己の身の上を嘆いて舞台中央へ。 「私達も若くて美しければ“女”を使い、身を売るなどして、楽出来るものを」という趣旨をつぶやいて悲嘆にくれるのですが、「いやいや、芝のぶさんは充分イケるから、一緒にしないで!」と激しくツッコミを入れた不謹慎な私汗
え~、さて…芝翫さん@玉蟲も平家の女官で源氏への恨みを深く抱きながら暮らし、日々憎悪をたぎらせ、その容貌までも鬼気迫るものが表れているかのよう。 魁春さん@妹の玉琴の恋人(橋之助さん@那須与五郎)が源氏方の人間であると知り『女性の強い怨念と執着に、おどろおどろしさがあいまった展開』となる玉蟲の行動は『岡本綺堂が、江戸時代の草双紙からヒントを得て描いたものならでは』との事。
常軌を逸して不気味に高笑いする笑い声は耳について離れません! 私は芝翫さんの“恐い女”のお役、というのに何故だか縁がなかったので、その不気味さが強烈な印象として残りました。 舞台をうごめく平家蟹のリアルな動きとラスト海の豪快な演出は大変興味深かったです。

勧進帳

吉右衛門さん、8年振りの弁慶』という事で今月の歌舞伎座遠征を決定したほど 期待いっぱいでワクワクと観劇に臨みました☆
吉右衛門さん@弁慶×富十郎さん@富樫…とあらば、口跡ハッキリ対決というかセリフがポンポンと客席に飛んでくるような、圧してくるような感じを想像していたのですが、意外にも富十郎さんが低く抑えているような感があり、“どっしり”と重厚な印象が強い。 しかしながら、山伏問答の気迫は充分で思わず息を詰めて固唾を飲んで見入る…という感じの二人の芝居。 弁慶、富樫共に“男が惚れる男”という今月の両者だったような気がします。
弁慶の花道~舞台中央への…関所へ近づくまでの緊張感が素晴らしく、その気合いが四天王にも及んで家来連中のピリピリと神経を尖らした心臓の音がドキドキと聞こえてくるようで、弁慶の主君に対する思いが芝居ではひしひしと伝わるさすが感はあったのですが【延年の舞】など踊りの部分がちょっと淡白な印象が残りました。

植木屋

私、初めて拝見した、忠臣蔵外伝の演目でした。
上方和事の主人公にありがちな、つっころばし系のおぼっちゃんでナヨナヨしてて…でもイイ男でモテモテ、という弥七実は千崎弥五郎には梅玉さん。 カッチリと真面目な印象が強い梅玉さんでしたが、【人間万事金世中(松竹座2004年1月の宇津蔵)】から「結構笑える梅玉さん」という感が強くなり、以前よりも柔らか味が増しているような。 今後も貴公子路線に加えて…で、このようなお役を拝見する機会が増えてくるのでしょうか?
この手の主人公に絡む女性は、何故だかダメ男を一途に慕いあまり幸せでない末路を迎える事が多いですが…やっぱり!な悲しいお話なんですね。
時蔵さん@お蘭の方は、愛する弥七の役に立とうと高師直の愛妾にまでなって非業の最期を遂げるのですが…そのラストの演出が印象的
ちょっと遠くのお席からでは、あまりにもさりげなくて判りにくいのでは?と思われましたが、お蘭の方の意を決して籠へ入る表情、閉め切った籠の中で小さく叫ぶ声に、「彼女は幸せだったんだろうか?」と、自らを犠牲にする彼女の悲哀に涙しました。
前半はじゃらじゃらとして笑いところがある為、後半の悲劇性が際立つような印象でしたが、ちょっと中だるみするような気も。 私は好きな演目でした♪