アイ-ダ【大阪MBS劇場】

【Song&Dance2】で照明に感動していたら「だったら是非【アイ-ダ】を観てみて」と薦められたので、観劇(もともと古代エジプトものは美術的に好き)。
最初と最後が現代のシーンとしてリンクしていく部分などは映画的手法で面白いですね! 冒頭のシーンでスコーンと舞台の世界にハマりました。
濱田めぐみさん@アイーダ“ヌビアの女王”という意思の強さと凛とした気高さを感じさせ、さすがの歌唱力も圧巻だったけど、驚きだったのはそのヴィジュアル。 “ヌビア人そのもの!”…って、実際のヌビアの人を知っている訳ではないけれど、私が持っているイメージそのままで、メイクや衣装さんの力もあるんでしょうけど、やはり濱田さんの演技に負うところが多かったと思います。 特に、森川美穂さん@アムネリスの髪を梳くシーン、自分も同じ女王としての立場から彼女の気持ちに沿って語りかける時の表情が印象的でした。
実は私、森川美穂さんって、あの“歌手の森川美穂さん”って判っていなかったので(劇団四季は四季の役者さんだけかと)まず驚き、「やっぱり歌の上手い人だなぁ」という印象を新たにしました。 今後は本田美奈子さんのようにミュージカル女優として活躍の場を広げていらっしゃるのでしょうか? 楽しみです。
一番好きだったのは“お風呂のシーン” 背景の水槽のようなところで泳ぐ?侍女やその登場シーンなど、本当に暑い蒸すスチームの中に共にいるようで、彼女がつける香油の匂いが漂ってくるようで、とても好きでした。【お洒落は私の切り札】はガラッと雰囲気が変わって楽しいですね♪
舞台美術はあまりセットを作りこむ訳でもないのに、シルエットや照明でエジプトの太陽の熱や土埃、ナイルの川の匂い、石の冷たさなどを感じる事が出来(行った事はナイけどね)、感動感動 特に葦?のシルエットの前で壷を頭に乗せた侍女たちの静かな群舞は、影絵のようでエキゾチックで素敵でした。
ラストシーン、黒い幕でどんどん視界が狭くなっていく手法は、二人と一緒に埋められたような圧迫感とせつない想いが圧縮されたような効果があり見事でした! あの手法、考えた人スゴイなぁ…。
この舞台、通える劇場での上演だったら…多分、相当通ってしまう事間違いなし!

青い旗キャスト
アイーダ:濱田めぐみ /アムネリス:森川美穂/ラダメス:福井晶一/メレブ:有賀光一 /ゾーザー:大塚俊/アモナスロ:川原洋一郎/ファラオ:岩下浩(劇団民藝)

マンマ・ミーア!【大阪四季劇場】

お江戸遠征はいつもギリギリの日程しか組んでいないので、歌舞伎座と海劇場が徒歩移動も可能な距離と知りながら、なかなか観劇のチャンスがなく、無理して行こうと心に決めてみると千穐楽が決まりチケットはSOLD OUT状態! で、結局『毎年1月は松竹座で歌舞伎♪』が恒例な私、その大阪遠征に合わせて大阪四季劇場の柿落とし公演でやっと観劇する機会を得たのでした。
実はABBA好きの小学生だった私。 近所のひとつ上のお姉ちゃんが、当時カーペンターズをはじめ、ABBA、アラベスク、そしてノーランズ…と聴いていたので、その影響で最初の洋楽かぶれらしき洗礼を受ける? その後、時を経てカルチャークラブ、デュランデュラン、JAPAN(全てヴィジュアル系だな)などに移っていくんですが…と、そんな私の洋楽歴はどうでも良いですかね?
…なので日本で劇団四季が上演する前から『全曲ABBAの曲のミュージカル』という事で、えらく興奮したものでした。 まず歌詞が日本語という事に興味があったし、『舞台はエーゲ海でABBA』の曲ってのがどうしても頭の中で結びつかなかったから(スウェーデン出身=寒いイメージ)興味深々だったんです。
で、舞台は…と言いますと、観たい気持ちが高まり過ぎていたのが悪い方に作用したのか?「あれ?」という感じでした。 プロモーションビデオ等で観ていたそれぞれのシーンがようやくストーリーとして繋がったのでスッキリはしたのですが、う~ん。 主演のお三方はさすがに歌は上手く、群舞も迫力があってコメディタッチな部分、ホロリとさせられる部分…それぞれ従順に反応して、カーテンコールでは立ち上がって一緒に歌って踊って…の観劇だったのですが、観劇後時間を経てみると…「あれ?」という感じででした。
「それは何故か?」とず~っと考えていたのですが、“太陽の熱と潮の香りがしない”という事でした。 海を感じさせるセットだったり、小道具だったり、衣裳だったり…は当然あるものの、舞台からは潮の香りがしない…。 別にお話しの舞台がエーゲ海でなくても成立するストーリーのような気がして、私の中では違和感が残り、消化不良でした。

青い旗キャスト
ドナ・シェリダン:保坂知寿/ソフィ・シェリダン:樋口麻美/ターニャ:森 以鶴美/ロージー:青山弥生/サム・カーマイケル:渡辺 正/ハリー・ブライト:明戸信吾/ビル・オースティン:野中万寿夫/スカイ:鈴木涼太/アリ:沼上麻子/リサ:宮崎しょうこ/エディ:丹下博喜/ペッパー:大塚道人

壽初春大歌舞伎・昼の部【松竹座】

いやっほ~い♪ “2005年初歌舞伎”です! 今年末はいよいよ三代目鴈治郎さんが坂田藤十郎襲名という事で、その日の為に懐を暖めておかなくてはならない…のに、いきなり散財です。 いいんです。 『1月は松竹座遠征』は恒例なんですから!

相生獅子

扇雀さん孝太郎さんの二人の姫。 紅白の艶やかな姫の舞は新年のおめでたい雰囲気にふさわしく「あ~、コレよ、コレ! 私が観たかったのはこ~ゆ~空気の舞台なのよ~」と、久々の歌舞伎の舞台の雰囲気にうっとり。 実は、今回気がついたのですが、孝太郎さんの赤姫姿って私、どうやら初見のような…。 前半が可憐な姫だっただけに、後半の獅子の精となってからの鋭い表情や動きとの落差が際立ち、見入ってしまいました。 嗅覚や聴覚が研ぎすまされている動物のような鋭い動き…というのでしょうか? 姫のこしらえで毛振りする…って、そんなに足をパカッと広げて踏ん張れないでしょうし、大変だろうなぁ。 孝太郎さんという役者さんに初めて「カッコイイ~」という感想を持ちました♪

時平の七笑

翫雀さん@菅原道真という配役を知った時から楽しみでならなかったんです。 今まであまり品のある高貴なお役で拝見した事がなかったし、菅原道真公といえば福岡の人間であればやはり誰しも親しみを持っている人物なので、翫雀さんがどのように演じられるのか楽しみでした。 慕ってくれる子供たちに向ける慈愛に満ちた穏やかな表情には、今後いろいろいなお役への可能性を感じることが私自身出来て、嬉しい収穫でした。
竹三郎さん@左中弁希世は、自己中心的な卑怯さと滑稽さを兼ね備えた道化役がさすがで、政治的な陰謀がうずめく息のつまる駆け引きの中、笑いでひと息つかせてもらえました~。
我當さん@左大臣藤原時平は、まずこのような白塗りでヤンキー眉という悪人公家風情でのお役で拝見した事がなかったので、そのビジュアルに驚きました~! 筋書きで、我當さんが「この演目をいつか博多で演じてみたい」と話されていたのはとっても嬉しかったです。 楽しみにお待ちしていま~す。
ラスト、セットの御殿全体が前にセリ出ての手法は“時平の七笑”の迫力を増長させるような演出で素晴らしい工夫ですね。
イヤホンガイドの話。 天神さまへのお賽銭はお札はダメだそうです! 紙幣(しへい)だけに道真公が嫌う…と。 落語の小噺のネタだそうですが、ウマい!ですね。

男の花道

実はなんだかタイトルだけで敬遠していたのですが…号泣でした! 泣き過ぎて観劇後ひどい頭痛にしばし悩まされる有様。 前回の上演は平成6年・中座にて…との事ですから、実に11年ぶりの上演で私はもちろん初見。
鴈治郎さん@加賀屋歌右衛門は一座のスターの女形で、失明の危機にあったが、大阪から江戸に上がる道中、我當さん@土生玄碩という眼科医と出会い、視力と江戸での名声を手に入れる。 四年の歳月が流れ、江戸で開業していた玄碩は、とある諍いから切腹を迫られる危機に陥るが、今度はその危機を歌右衛門が救う…という、ちょっと【走れメロス】のようなストーリー
玄碩はオランダ医学を学んでいるとあって、ハイカラなバックを持っていたり、ブーツを履いていたりする(これがカワイイ)のだけど、その融通の利かない頑固ぶりは昔の侍そのものだった。
玄碩の危機を知らせる手紙は一座の後見人、竹三郎さん@加賀屋東蔵が、鴈治郎さん@歌右衛門が【櫓のお七】を演じている最中に差出し…恩人の危機を知った歌右衛門は舞台を中断し、客席の皆に事情の説明と断りを入れて劇場を飛び出す! この劇中劇の趣向は観客の自分も舞台に参加しているようで、「はやく先生の所に行ってあげて!」と言いたくなってしまった! ちょうどお席が舞台から走り降りる場所だったので、降る雪を巻き上げなから、ものすごいスピードで駆け抜けて行く歌右衛門の熱い想いが伝わってきました。
「先生!しばらく!」と悲痛な叫びをあげながら、花道を転びながら玄碩の座敷へと駆けつける歌右衛門に号泣。 お話だから間に合うと解かっちゃいるけど…号泣。 「なるほど男の友情のお話だったのね」と思ったものの、歌右衛門が女形ゆえ、なんか二人の間には恋愛感情があるような感じにも見えましたね。
あと役名が今現在もご活躍の役者さんの名前だったりして、聞いていると混乱してきたことと…元々は新劇の芝居だったこともあり、大袈裟な効果音が入り、それがかえってツヤ消しだったりして…不思議な印象でもありました。 またまた言いますけど、失礼ながら…鴈治郎さん、ウマイです!

新・近松心中物語【博多座】

冠スポンサーが付いて、大々的に広告展開した博多座公演って…今回が初めてでしょうか? 過去記憶にはナイのですが、波や紙媒体による広告展開スゴかったですけど、博多座内でのサンプリングや商品の販売など、驚く事がとても多かったです。
『博多座の1月はミュージカルでバァ~ッと明るく!』という図式が出来ていたので、この演目が発表された時は「お正月から心中もの?! 暗~い…」と、かなり不満だった私。 しかしながら、主演4名の役者さんは、いづれも博多座初お目見えだし、テレビでもよくお見かけする面々。 博多座初の“蜷川作品”だし…で注目度は高そう。 私は初日開けてすぐのお正月休み中での観劇だったので、客席はお着物の方も多く賑わっていました(公演期間トータルの動員は…さて?)
幕が開いて、真っ暗な舞台の中層を真赤な彼岸花が半円を描いて浮かんでいて…なんとも不思議。 それから照明が舞台の板へと落とされると、廓の様子が濃厚に妖艶に描かれて「ええっ?!」とド肝を抜かれました! シーンと静まり返った客席の間を花魁道中が舞台へと進み…物語が始まります。 これも“暗闇に紅”という色の対比の鮮やかで美しく、一気に舞台に気持ちが入っていました。
遊郭→古道具商→飛脚屋…と舞台の移り変わり(ひとつのセットの応用ぶりというか)はお見事! 今回、舞台美術と照明はと~っても好きでした。
二人の想いを添い遂げる為に、痛いくらい真剣に心中という道まで突き進んでしまう阿部寛さん@忠兵衛寺島しのぶさん@梅川。 対照的に夫婦でありながら、計らずも心中を…という田辺誠一さん@与兵衛須藤理彩さん@お亀。 対照的な二組のカップルと、それを取り巻く人間模様が描かれる訳ですが…コミカルな部分、客席が沸く部分が与兵衛&お亀カップルなうえ、時間を割いて丁寧に描かれている分、一番立つべき“忠兵衛&梅川”の印象が薄い…。 二人が出遭ってから、心中に至るまでの気持ちの経過をみてとる事が出来ず「いつの間にお互いそんな真剣になったの?」「あれ?それで心中までいく?」という印象で残念! 歌舞伎では、この二人のお話はいくつかの演目に分かれて、じっくり観せているからかもしれないけど「えらくあっさり心中に至ったなぁ…」と。
本水を使った川にダイブする与兵衛と、忠兵衛&梅川の渦巻く吹雪の中での心中はさすがに見応えがあり、また要所要所で流れる森山良子さんが刹那的に唄う、宇崎竜童さん作曲の『それは恋』は効果抜群でした!
全体の感想。 期待していた寺島しのぶさんが、なんだかもったいないなぁ…という印象と、田辺誠一さんに敢闘賞という感じでした。 で、やっぱり『博多座の1月はミュージカルでバァ~ッと明るく』でお願いしたい!と強く思った次第でございます☆