二月花形歌舞伎・昼の部【博多座】

歌舞伎役者さんとしては『博多座最多出演じゃ?』な、亀治郎さんの“亀治郎としては最後の博多座”という今公演。 終演後、鳴り止まない拍手に亀治郎さん+澤瀉屋一門が手をつないで花道にズラリと登場。 ニコニコと客席に手を振りながら素の皆さんはなんか微笑ましく、これから猿之助を襲名される亀治郎さんを皆でガッチリと支えていくんだな~という姿勢が見てとれて、すごく嬉しく思ったのですが…ここに月乃助さんが居ない寂しさもひとしおでした。
本日昼の部の出演者ご挨拶は春猿さん。 スッポンから手を振ってのにこやかな登場で、2~3階席には投げキッス☆ 5分間とにかく「盛大な拍手を宜しくね♪」という事のみしゃべって引っ込み。 …で、このレクチャー?のせいで、劇中はやたらと拍手が起きてちょっとウザくもあり~。 これ、以前の花形歌舞伎の時もあった、あった。
【天竺徳兵衛】って、観た事あるような気がしてたけど…どうやら初めてのようです、私。 『観たことある演目のいろいろがない交ぜになっている』からそういう印象だったようで?、というのが観劇後の感想。 「博多座で“ガマに乗って登場~”って前にも観たよ」と母が言うんですが…何かありましたっけ?(菊之助さん、博多座で【児雷也豪傑譚話】上演希望)

通し狂言【天竺徳兵衛新噺】

序幕は博多沖なんですね。 まんま【毛剃】でしたが、船底から現れた亀治郎さん@天竺徳兵衛に思わず「小っちぇ…」。 異国で見聞した事を船員に語る所では福岡からほど近い韓国の様子を昨今の韓流ブームと合わせてツラツラと語れば客席が湧く湧く! かたつむりパックまで…とは、どなたがセリフを考えたのでしょう? 汐見の見得では「よかよか~」とは言わないんですね。 徳兵衛にガマの妖術を授ける猿弥さん@木曽官の亡霊は…それなりのお顔を作っているのだけど…丸々として健康そう♪ 徳兵衛が手にしたガマ仙人の絵は血で描いたものとの事で不気味~。 妖術の呪文は仏教+キリスト教なんですね!

御殿の庭の池周りには澤瀉があり、この池に飛び込んで派手に姿を消す派手な演出に客席どよめく。 笑也さん@枝折姫、ものすごく久々に笑也さんの赤姫を拝見しましたが「フケたなぁ…」。 「あなたは蛇使いですか?」な門之助さん@今川左馬次郎、切腹の際身につける裃って“水裃”って言うんですね。 筧に絡み付いていた蛇が真っ二つに裂ける様に「うなぎかよ!」 歌舞伎の演目で木琴というのは初めて観ましたし、ましてや演奏を聴くのも初めて。 船盛りのような形をしているそれを亀治郎さんがお茶目な演奏で笑う♪
屋台崩し~巨大ガマ登場!はやっぱり迫力がありますね。 ガマの顔は…よ~く見るとなんだか可愛いのがツボ☆
真っ暗な夜道をあんな綺麗な格好した女性が二人で歩いていたら…襲われる率100%だろ! 笑三郎さん@左馬次郎奥方葛城が倒れると代わりに大蛇が出て来て応戦するのを、そばで見てる笑也さん@枝折姫「彼女は巳年づくしの年生まれだから」と解説するのが、ドラマ医龍の手術でよどみなく解説する佐々木蔵之介みたいで笑えた。
ガマが四天を相手に立ち廻る様は動きがテロンテロンしてるのにバッタバッタと周りが倒れるのが面白い。 亀治郎さん@徳兵衛が児雷也のようなあのでっけぇ衣装を着てガマの中に入って立ち廻っていたとはホントに驚き! “泳ぎ六法”って初めて観ました!
亀治郎さん@小平次が川に毒薬を入れると魚がプカプカと浮く様や、猿弥さん@馬士多九郎欣也さん@医者が小平次を残忍に斬り、何度も川に沈める様ではミニ泥場もちょっとあり~の大立ち廻り。 何度も川から這い上がる様はしまいには笑いが起こるほどでしたが、亀治郎さん@おとわ指を切り落としてパラパラと川に投げ入れる(血が流れるリアル演出)様に客席が静まり返る…。 惨忍な殺しの場って沢山あるけど…5本の指を血をしたたらせながら切り落す、というのは初めて観たし、これほど観る側に痛みを感じさせる手法もナイのでは?と驚き、惨忍さにおののきました! この場では様々な演出の工夫があって、更に舞台に引き込まれました。
おさわ、着物が黒いカラス+しゃれこうべ、だったりコウモリだったり…でこのキャラクター性がハッキリと判る工夫が(お洒落~)。 歌舞伎の舞台で使われる火の玉って“これぞ正統派な火の玉”的な感じがするのは私だけ?
春猿さん@小平次妹おまきは突然の客が右近さん@尾形十郎がイケメンと判ってからの態度の豹変振りと積極的が笑う~。 歌舞伎の演目で一目惚れした女性って大抵極端で積極的で笑えます
小平次の亡霊も“正統派・日本の幽霊”という感じ。 おさわの生首を手にする所では首から倒れた障子に血がしたたり落ちる演出で不気味さが。 亀ちゃん、自分の顔の生首を持つ…ってどんな気分なんだろ?
山門の場は…まんまですね。 宙乗り~葛籠抜けはやっぱり客席が沸きます。
笑三郎さん@左馬次郎奥方葛城の花道の出、美しく豪華な孔雀の打ち掛けに客席からため息が。 背が高いからより打ち掛けのデザインか映える☆ しかしこの時、笑三郎さん、右眉だけ書いてたのは…何故? 気を失って口移しに水を飲ませてくれた人に「いぇ~っ?!」と驚き「色になってくれ」と見染めて速攻モーションで「前もかよ!」
ラストはズラリと絵面で並んで三段に乗って幕。 春猿さん@梅津桂之介のいきなりの登場に、よくありがちの「あんた誰?」
これからも猿之助十八番の作品を博多座でどんどん上演してみたい』との亀治郎さん。 上演が途絶えて久しい演目も多々あますし…博多座での猿之助襲名披露公演、楽しみにお待ちしています!

三国一夜譚【博多座】

通し狂言【三国一夜譚】は3年前の平成14年9月、大阪松竹座で初演された新作歌舞伎。染五郎さんが題材を発掘?し、中心となって若手花形のアイデアをまとめ、新進の歌舞伎作者である今井豊茂さんが脚本化、猿之助歌舞伎の重要なスタッフである奈河彰輔氏が補綴(てい)・演出し、大好評を博した…そうです(博多座往来より一部抜粋) 当然私は今回が初見でしたし、この再演時にあたって大幅に内容を変えた…との事で期待大!
公演前には、演目縁の住吉神社で成功祈願のお練り、女性記者のみを招いての記者会見、そして公演中には【KABUKI NIGHT】などイベントが催され、若い女性に歌舞伎の魅力の訴求になったのではないでしょうか? …とはいえ、私は三回観劇したのですが…いずれも宙乗りが気の毒なくらい二階客席が赤くて…涙。 『二月、八月は難しい』とは興行や商売では定説ですが…ちょっと悲しすぎました。

発端・序幕

冒頭、花道七三で物語りの発端を染五郎さんが口上。 「助けた亀に連れられて…とは、どこぞのお話で聞いたような…」と、ユーモアたっぷり。 大亀+子亀の動きも細かく、海好きの私としては一気に舞台に引き込まれた!
“雅楽”には全く馴染みがナイのだが、独特な音色と…衣装の色・柄の美しさに驚く。 染五郎さん@富士太郎愛之助さん@浅間左衛門の“雅楽・知ってるクイズ”合戦は聞いてて「?」だったが、やり込められてギリギリと悔しがる左衛門の表情が、今後の仕返しを容易に想像出来、その悪役ぶりで好演。
今回、誰しもがMVPに秀太郎さん@浅間母卯原を挙げるだろう! 息子への愛情の注ぎ方は人を殺してもなんとも思わないほどの溺愛ぶりで、極端なまでの行動は客席の笑いを誘う。 秀太郎さんご自身も、珍しい悪役を嬉々と演じていらっしゃるご様子で、観ていてホント楽しかった!
道行廻歳響仇鼓】では、富士太郎親子が父親の敵を探し求めて長い歳月を放浪する様が実によく演出されていた。 セットの移り変わりや、清水大希くん@叡太郎の成長ぶり、季節の移り変わり…。 【雪だるま→花かご】に変わるという仕掛けは“欽ちゃんの仮装大賞 ”からヒントを得た染五郎さんのアイデアらしい。 大希くんとしては博多座出演はこれで最後の公演となった(中村鶴松襲名のため)

二幕目

個人的には高麗蔵さんの博多座出演時には「高麗蔵さんなのに、もったいないっ!」と思ってしまうキャスティングでのご出演がここ数年多かっただけに、嬉しい奮闘公演。 高麗蔵さん@遊女波路は富士太郎の妹小雪でありながら、知らなかったとはいえ自分の父親の敵・浅間左衛門を愛してしまう事から悲劇が始まる。 左衛門は小雪が富士太郎の妹だと知って利用しているのだが…。
吉弥さん@遊女浪江は腕に“照様命”と彫り物をして、一途に想っている様が激しいまでの嫉妬の感情によく現れていて好演。 いつも歌舞伎の“○○命”という入れ黒子は「もうちょっとお洒落なデザインで入れればイイのに…」と思っていたが、あれは想う相手に書いてもらった…その筆跡のものを彫る、という事を後ほど知った。 想う相手が字が下手だったら…入れるのに躊躇しそうだなぁ~。
追っ手を逃れるための秘策として、卯原が左衛門に用意したのは“白髪になる薬”。 そしてその解毒剤が“疱瘡にかかった幼子の生き肝を食べる”という…なんとも突飛すぎる薬て爆笑。 卯原とはいろんな薬を調合できる薬剤師さんなのか? 「疱瘡?ほぉ~そぉ」と軽くウケてたった秀太郎さん、面白すぎ!

大詰

行方知れずとなった息子の安否を気遣いながら、染五郎さん@富士太郎と亀治郎さん@妻桜子が楽器を演奏するのも今回の見所のひとつ。 太郎は篳篥を、桜子は琴の合奏となる訳たが…亀治郎さんの琴の演奏、恐かった。 ものすごく力強い音色で…悲しみにくれる母親、ではなかったわ。 篳篥は音を出すのも難しいらしく、上手い下手は判らないがあんな地位さな笛なのに劇場全体に聞こえる音量には驚いた(マイクで拾ってた?) で…その夫婦の合奏シーンから、何故か突如として龍宮殿にいる二人。 悲しみにくれる音色を聴いて、冒頭で太郎が助けた亀が恩返しとして、息子の行方と玉手箱を渡すため呼び寄せたのである。
ココは染五郎さん@富士太郎→龍宮の皇女亀治郎さん@妻桜子→龍宮の皇子となる数回に渡る早替わりが楽しく、客席からは驚きの歓声と拍車が起こる。 私は…海のシーンなので大満喫! 愛之助さん@亀大臣は、ニヒルな美形悪役から一転しておとぼけ爺キャラでなんともツボ! これは博多座演出で初登場らしい。

左衛門と共に逃げ、女房となった高麗蔵さん@女房お浪実は妹小雪に辛くあたる秀太郎さん@卯原のなんと憎々しいこと! もう可笑しいくらいなのだが、左衛門も一緒になって辛くあたるので「いつの世も嫁姑問題は大変なんだ」と妙にシンミリしてしまったり~(未経験ですが)

卯原の最後は壮絶! 息子の容貌を元に戻そうと疱瘡にかかった叡太郎に襲いかかるのは、大希くんが気の毒なくらい大迫力。 でもって富士太郎に首を撃ち落とされるのだが、これがまた“欽ちゃんの仮装大賞”からのアイデアで、首がストッと落ちる趣向。 しかし首を落とされてもまだしゃべっている卯原は「首が飛んでも動いてみせらぁ~」の民谷伊衛門もビックリの執念であった。

父の敵も討ち取り帰参も叶ってめでたしめでたし…なのだが、その時、門之助さん@足利義満が与えた名前『三国一富士太郎和一』に、なんだかなぁ~。 そんなセンスがナイ名前、もらって嬉しいかしら?
ラストの正面は各キャラクターにピンスポットが当たって色彩も美しく幻想的でとても印象に残った。

三回の観劇を経て思ったことは『主人公の陰が薄い』ということ。 板に載ってる時間は当然長いのですが…こんなにも印象が薄い主人公って?と不思議だった。 しかし全体としては様々な趣向が凝らされていて、作り手の心意気が感じられた楽しい作品だった…だけにもっと多くの人に観てほしかったなぁ。

南総里見八犬伝【博多座】

澤瀉一門の古典歌舞伎・博多座初登場! 猿之助さんが病に倒れて休演されたのは、ちょうど一年前の博多座公演【西太后】でした。 その後一度、巡業で復帰はされたものの…今に至っている事を思うと、一日も早い復帰を願いながらも、ゆっくりしっかりと静養され、完全復帰のその日を楽しみに待ちたいです。
澤瀉屋一門は博多座にはほぼ毎年出演されていますが、それはスーパー歌舞伎(新・三国志シリーズ)とお芝居においてで、古典歌舞伎は今公演が初めて! しかも、今回は師匠不在。 今までのスーパー歌舞伎等で惹き付けた博多のお客の動員は一門とっては大きなカケにも似た公演になったのではナイでしょうか?
【南総里見八犬伝】の公演が発表された時は、正直「また?」という感があったのですが、今回は配役も変わり演出も 変更、若手ならではのスピード感が増し、実際に舞台上に八犬士がズラリと勢揃いする!という事もあって、楽しめました。 「歌舞伎を一度観てみたいんだけど…」と二の足を踏んでいる人を劇場に引っ張って行くには、もってこい!の舞台でしたので、今月“歌舞伎って面白い”と、その魅力に気がついた方も数多くいらっしゃるのではないでしょうか?

発端・序幕

「 待ってました!」の芳流閣大屋根の立廻り♪ 霊犬・八房の表情の移り変わり見えるようでした。 笑三郎さん@伏姫から拒絶され、あしらわれる所なんか、とても淋しそうで、同情しちゃいましたよ。舞台は一転【簸川村八幡宮の場】 で、なんとも鮮やか! 【富山山中の場】は右近さん@犬山道節が見ていた夢であった…という場面で、笑三郎さん@伏姫が私の好きなスライダーに乗って(矢の根の兄ちゃん十郎登場仕様)出てくるところが、またしてもツボに入ってしまい、引っ込みの時、そのスライダーを一生懸命押す黒子さんの奮闘ぶりを見てまたツボに~。 面白いなぁ~も~う。 笑也さん@犬塚信乃の父の飼い犬・与四郎は悪代官に滅多打ちにされて血だらけになるんだけど、犬の造りが可愛いのか、黒子さんが上手いのか…本気で「かわいそ~う」と思ってしまった!私的には「待ってました!」の【芳流閣の場】。 博多座ではこの場の上演は二度目だけど、やはりお話の流れの中で観るとよく 理解出来て、楽しめるなぁと思いました。 段治郎さん@犬飼現八と笑也さん@犬塚信乃の大屋根での立廻りはスピード感があって、勢いあまって何度も「屋根から落ちちゃう!」と思ったほど。 段治郎さんご自身は「八犬士の中で犬飼現八が好き」とおっしゃっていたので、嬉々と演じていらっしゃるような印象が♪
【円塚山山麓の場】で、春猿さん@浜路の黒地小花の振り袖、すっごく可愛い! 似合ってマス!が、あっと言う間にお着替え~。【円塚山山中の場】で犬坂毛野としてお堂から登場する早替わりは、判らないのか?客席の反応が薄くて残念。 この場で、延夫さん@犬川壮介、猿四郎さん@犬江親兵衛が登場してくる所は、やっぱり唐突すぎで解りにくいかなぁ。

二幕目

さすが元・劇団四季研究生?!華麗な猫ステップ! 【藤の森古那屋の場】では、笑子さん@葛城中納言のナイスキャラぶりが炸裂。 【新・三国志III】の時の宦官の怪演でもキラリと光っていらっしゃいましたが…こういうアクの強いお役がハマる方なのかもしれませんね。 これから舞台を拝見するのが楽しみになりました。
【玉返しの里庵室の場】、歌六さん@赤岩一角実は猫の怪は「さすが元・劇団四季研究生!」ってな華麗な猫ステップを披露。 以前拝見した時よりもキュートなダンスになっていた印象が~。 今回「おっ♪」と思ったのが笑三郎さん@犬村角太郎。 綺麗です。 伏姫よりも綺麗かも。 憂いを秘めた表情になんともいえない色気があって美青年~! 今まで何度か笑三郎さんの立役は拝見しましたが、一番好き(今回のズラが似合ってます) それから、笑野さん@雛衣の“スーパーえび反り”! スゴイです! 縁側のフチで反るのだけれど、頭が縁の下まで下がって…体力測定の前屈で言えば“+15cm”といった所。 儚げな貞淑な妻風情がとっても似合ってらして◎
猫+犬飼現八+犬村角太郎の三人宙乗りの前の、猫の群舞が…笑えます。 6匹?8匹?ほど舞台両袖からワラワラと出てきて、場つなぎのために踊るのですが…笑えます。 型が決まっていないようで、各人好きなようにやっているのが…笑えます。 ノリノリの猫がいたり、所在なさげにスキップだけでごまかしたり…笑えます。

大詰

時事ネタと葛篭抜け!【山下館御殿の場】では、葛城中納言になりすました、右近さん@犬山道節お馴染みの…“ご当地+時事ネタ”の披露は『今月の博多座は澤瀉屋若手一門で大奮闘、ヨン様、世界の中心で愛を叫ぶ、紀宮様ご婚約』など。
村雨丸の威力により御殿に波が押し寄せる場面では、欣弥さん@馬加大記が健闘。『北島康介金メダル、祈・ホークス優勝、タイタニック、♪魚魚魚~♪、ゲッツ』など、家来との息もピッタリ。 でも…ちょ~っと時事はズレてましたネ。 “葛篭抜け”は博多座初登場とあって、右近さん@犬山道節の宙乗りも盛り上がりました~。
【山下館御殿対牛楼の場】 やはり、八犬士のたたみかけるような立廻りは見応えがあり、客席からは拍手喝采! スピードがあって素晴らしかったです! 花道から上手に向かって刀を投げるのは…公演前半で役者さんが怪我をされたらしいと聞いていたので、ドキドキしちゃいましたよ。
歌六さん@山下定包が三段に上がって見得を切り、八犬士がズラリと並んだ絵はゴージャスで、なんだかジーンときました。

右近(犬山道節)/笑也(犬塚信乃)/猿弥(犬田小文吾)/笑三郎(◆犬村角太郎◆伏姫)/春猿(◆犬坂毛野◆浜路)/段治郎(犬飼現八)/延夫 (犬川壮介)/猿四郎(犬江親兵衛)/寿猿 (姥雪世四郎)/門之助(金鞠大輔後にヽ大法師・滸我成氏)/歌六 (◆赤岩一角実は猫の怪◆山下定包

 

通し狂言・加賀見山旧錦絵【国立劇場】

3月の国立劇場は、ほぼ毎年新作歌舞伎がかかっていましたが、今年は違いましたね。 しかし!翫雀さんはご出演。 しかも岩藤で! これを聞いただけで、遠征は即決でしたが、尾上は扇雀さん、お勝はなんと亀治郎さん!とくれば、嬉しさ倍増。
国立劇場が新・システムになってから初めての遠征でもありました。 銀座から外苑をうららかな春の日差しの中、の~んびりとお散歩しながら参上しましたが、終演後はスーパー競歩で歌舞伎座へ汗だく猛ダッシユでした~。

実は私【再岩藤】の方しか舞台で観たことナイので 今回のどの部分が“上方風”なのか判らず ( ̄∇ ̄*)ゞ 序幕“三圍花見の場”の上演は珍しい…らしいです。
岩藤って“ただ怖い悪ドイおばさん”というイメージ しかなかったけど、亀鶴さん@求女をめぐって 翫雀さん@岩藤鴈成さん@腰元早枝が恋の火花を 散らすのが面白かった♪ 岩藤が求女にジットリと 迫るシーンはなんだかすごくイヤラシくて、求女の おろたえぶりには気の毒な気さえしました。 かなり笑えるシーンでしたけど(*^m^*)  岩藤も恋する 女性だったですね~♪
扇雀さん@尾上は、草履打されて意気消沈しての花道 の引っ込みが素晴らしかった。 感動しました。
亀治郎さん@お初。 なんだか鴈治郎さんに表情まで もが似ていたような気がしたのは…気のせい? 最後は、すっかり舞台を持っていっちゃいました~。

翫雀さんの女形、少しづつ免疫がついてきた…かな~。私。

二月花形歌舞伎・お染の七役【博多座】

筋書には“登場人物相関図”が入っていて、歌舞伎初観劇の同僚への説明に大助かり♪ コレは保存版ですな。
愛之助さんの鬼門の喜兵衛は福助さんからのご指名だったそうで、今公演が初役。 …という事でコレをお目当てに遠征の方も多かったようです♪

序幕・柳島妙見の場

この場だけで、お染→久松→竹川→小糸と早替りで一気に観客を引きつけた福助さん。 博多座の客席は素直すぎるほど、どよめく、どよめく~。 「はやっ!」「スゴっ!」…と思わず口をついて出る言葉があちこちで聞かれ、福助さんはさぞ気持ちイイだろうなぁ…と思って観ていました。
中でも一番似合うなぁ…と思ったのは芸者小糸。博多献上帯を粋に締めた、ちょっとハスっぱな感じ(失礼!)がイイ感じ。高麗蔵さん@油屋多三郎とのやり取りも一番生き生きしていたような~♪ 竹川の…足袋が最後まで気になってしかたがなかった私でした。 アノ足袋は“早替り仕様”なのかしら? 個人的には亀蔵さんのご出演に驚喜したものの、百姓久作だなんて…もったいない~と不満が残りました。橘太郎さん@番頭善六には満足。

序幕・橋本座敷の場

この場での早替りが一番大変なのでは?! 話の筋カットしても良さそうだけど、きっとお客さんの目を楽しませる場なんだろうな、と解釈。

序幕・小梅莨屋の場

土手のお六って…七役の中で出演時間が一番長いそうですね。主人公のお染ではなくって~。タバコ屋、繕い物屋、そしてゆすり屋?!といろいろな家業を営む生活の様がセットに色濃く表現されていて面白い。
愛之助さん@鬼門の喜兵衛は線は細いけれど、声にスゴ味があって◎でも私の笑うツボ「タニシの木の芽和えよぉ」というセリフは何故だか笑えず残念。亀寿さん@髪結の亀吉の手際や道具がとっても面白かった ~。毎回凝視してました!でも…亀寿さんは今公演コレだけのご出演。もったいなさすぎ!

二幕目・瓦町油屋の場

ふぐを食べて死んだと思っていた福太郎さん@丁稚久太の猛特訓?!した博多弁の聞きどころ。気のせいか初日が一番上手かったような~。 お灸を 据える橘太郎@番頭善六は♪燃焼系~ 燃焼系~ アミノ式♪ なんでだろう~ なんでだろう~ ♪ と自慢の喉をまたもや披露?!で笑いを取る。 ずっと後ろ向きで控えているお六@福助さんの肩が震えているのを見逃さなかったわ!

二幕目・瓦町油屋の座敷の場/土蔵の場

福助さん六役目の母・貞昌。ついたての陰でめまぐるしく かわるお染。袖の使い方などに感心していると…セットがガーッと上がって建物の1階部分が見える。 こういうセットの工夫が歌舞伎の大好きなところのひとつ!  どうみても喜兵衛の方が強そうだけど、久松がフニャフニャと立ち廻るのもキャラクターの違いが出ていて面白い。

大詰・向島道行の場

籠を使っての花道での早替わりに観客は動揺。ギリギリまで籠の中から客席に愛想を振りまくお染の演出にいつもながら感心。三階席から観ると手法はバレバレだけど、同じ目線で観てるとビックリだろうなぁ…。
でいきなり七つめのおなく お役・許嫁お光登場。 初めて観た人はイヤホンガイドがナイとこの人は一体何なのかは理解不可能だろう。 松緑さん@船頭長吉と亀治郎さん@女猿廻しお作の踊りは、微笑ましい。 ココでもやっぱり亀治郎さんの踊りに釘付け。

そして…待ってました!のお六の大立ち廻り。福助さんは家紋の首抜きで成駒屋と染められた着物で粋~。絡む船頭たちの手には“なりこまや”と書かれた番傘。舞台いっぱい広げられるととっても華やかでした。切口上で 「まず今日は…」でどうしても笑いが起こってしまう博多座でした~。

福助(油屋娘お染・丁稚久松・許嫁お光・芸者小糸・奥女中竹川・土手のお六・後家貞昌)
/愛之助(鬼門の喜兵衛)/亀蔵 (百姓久作)/亀三郎(山家屋清兵衛)/亀寿(髪結亀吉)/高麗蔵(油屋多三郎)/錦吾(鈴木弥忠太)/橘太郎(番頭善六)/松緑(船頭長吉)/亀治郎(女猿廻しお作)