ノートルダムの鐘【四季劇場・秋】

劇団四季×ディズニーミュージカルは【美女と野獣】【ライオンキング】【アイーダ】【リトル・マーメイド】【アラジン】に続いて今作が6作目! 【アイーダ】以外、ファミリー向け+ハッピーエンド娯楽作品が多い中、今作は“大人向け! ダークで奥深い物語”で異質。 私は【Song&Dance】で【僕の願い】を聴いて以来ず〜っとこの作品を観る事を熱望していたので、やっと! 「開幕キャストで観たい!」とチケット争奪戦に参戦するも、全く繋がらず過去一番開幕チケット入手が大変だった印象。

コーラスの“圧”が凄い!!!!!!』これは声を大にして言いたいっ!!! これは劇団四季での上演だからこそ出来る圧倒的な体感だと思う! 全編を通して男女8名ずつの聖歌隊が舞台奥に列座し大音量で劇場全体を震わせる様は荘厳であり、何故だか涙が出てくる不思議。 とにかくこれは是非劇場で全身で体感して欲しい!

物語のテーマ?は『人間と怪物、どこに違いがあるのだろう』。 ディズニーアニメーションって『悪役が先導して民衆が暴徒化する』ってのが定番な印象があるけど、今作でもそれは踏襲されている。

舞台転換はなく、常に7つの大きな鐘が再現されているノートル大聖堂のまま。 ステンドグラスを通す照明の美しさは“荘厳”で物語の重厚感に大きな役割を担っているように思える。 カジモドの友達であり、親でもあるかのように彼の吐露する気持ちに同意したり、アドバイスしたり、叱咤するのは教会の石膏像たちであり、また彼らが黒子のように大聖堂の柵や街並みや牢屋などを移動させ、組み立てて場面を変えて行く見事さ!

飯田達郎さん@カジモドは舞台に登場してから、背中の異形を背負い、顔を汚して役に入っていき物語が始まり…ラストはその逆の行程を行い、対して彼を取り囲んでいた人々が登場時のカジモドのように顔を汚して不自由な体勢を取って幕、という趣向は興味深い。 期待していた【僕の願い】は、アニメーション映画と歌詞が違うので「ついに聴けた〜!」という達成感?は、なかったもののやはり心震える素敵な曲だった。 劇中「どうぞ彼に幸せを!」と願いながら観劇し、胸が痛くなる好演。

しかし、なんといっても印象的なのは野中万寿夫さん@フロロー。 登場人物の中では“普通の人間に近い”彼が一番感情移入がしやすく、自分ではコントロール出来ない自身の感情に戸惑い、振り回され、苦悩する様が手に取るように解る。 故にエスメラルダに対する思いが暴走して、周囲を巻き込む様の怖さが際立つ印象。 野中さんは“戸惑いフロロー”。 「どうしちゃったの?自分…」と度々自問自答しながらもブレーキがかけられない自身に苦悩する様に人間味が溢れる。 フロロー役、これは是非いろんな役者さんで拝見したい!

岡村美南さん@エスメラルダは、強い意志を持ち、ジプシーという“定住しない、捕らえ所のナイ”感じが三人の男の運命を翻弄させる魅力的な女性として存在するものの、ちょっと彼女の心情の変化が解り辛かった印象。 彼女との出会いでカジモド、フロロー、フィーバスの運命が悲劇へと動き出す【Esmeralda】は演出、曲、共に圧巻! 牧清水大星さん@フィーバスは、観客はカジモドとフロローに激しく感情移入してしまうので、難しい役所かと。

キャスト
カジモド:飯田達郎/フロロー:野中万寿夫/エスメラルダ:岡村美南/フィーバス:清水大星/クロパン:吉賀陶馬ワイス
劇場
四季劇場・秋
日時
2017.1.13(金曜日)/13:00~