南総里見八犬伝【博多座】

澤瀉一門の古典歌舞伎・博多座初登場! 猿之助さんが病に倒れて休演されたのは、ちょうど一年前の博多座公演【西太后】でした。 その後一度、巡業で復帰はされたものの…今に至っている事を思うと、一日も早い復帰を願いながらも、ゆっくりしっかりと静養され、完全復帰のその日を楽しみに待ちたいです。
澤瀉屋一門は博多座にはほぼ毎年出演されていますが、それはスーパー歌舞伎(新・三国志シリーズ)とお芝居においてで、古典歌舞伎は今公演が初めて! しかも、今回は師匠不在。 今までのスーパー歌舞伎等で惹き付けた博多のお客の動員は一門とっては大きなカケにも似た公演になったのではナイでしょうか?
【南総里見八犬伝】の公演が発表された時は、正直「また?」という感があったのですが、今回は配役も変わり演出も 変更、若手ならではのスピード感が増し、実際に舞台上に八犬士がズラリと勢揃いする!という事もあって、楽しめました。 「歌舞伎を一度観てみたいんだけど…」と二の足を踏んでいる人を劇場に引っ張って行くには、もってこい!の舞台でしたので、今月“歌舞伎って面白い”と、その魅力に気がついた方も数多くいらっしゃるのではないでしょうか?

発端・序幕

「 待ってました!」の芳流閣大屋根の立廻り♪ 霊犬・八房の表情の移り変わり見えるようでした。 笑三郎さん@伏姫から拒絶され、あしらわれる所なんか、とても淋しそうで、同情しちゃいましたよ。舞台は一転【簸川村八幡宮の場】 で、なんとも鮮やか! 【富山山中の場】は右近さん@犬山道節が見ていた夢であった…という場面で、笑三郎さん@伏姫が私の好きなスライダーに乗って(矢の根の兄ちゃん十郎登場仕様)出てくるところが、またしてもツボに入ってしまい、引っ込みの時、そのスライダーを一生懸命押す黒子さんの奮闘ぶりを見てまたツボに~。 面白いなぁ~も~う。 笑也さん@犬塚信乃の父の飼い犬・与四郎は悪代官に滅多打ちにされて血だらけになるんだけど、犬の造りが可愛いのか、黒子さんが上手いのか…本気で「かわいそ~う」と思ってしまった!私的には「待ってました!」の【芳流閣の場】。 博多座ではこの場の上演は二度目だけど、やはりお話の流れの中で観るとよく 理解出来て、楽しめるなぁと思いました。 段治郎さん@犬飼現八と笑也さん@犬塚信乃の大屋根での立廻りはスピード感があって、勢いあまって何度も「屋根から落ちちゃう!」と思ったほど。 段治郎さんご自身は「八犬士の中で犬飼現八が好き」とおっしゃっていたので、嬉々と演じていらっしゃるような印象が♪
【円塚山山麓の場】で、春猿さん@浜路の黒地小花の振り袖、すっごく可愛い! 似合ってマス!が、あっと言う間にお着替え~。【円塚山山中の場】で犬坂毛野としてお堂から登場する早替わりは、判らないのか?客席の反応が薄くて残念。 この場で、延夫さん@犬川壮介、猿四郎さん@犬江親兵衛が登場してくる所は、やっぱり唐突すぎで解りにくいかなぁ。

二幕目

さすが元・劇団四季研究生?!華麗な猫ステップ! 【藤の森古那屋の場】では、笑子さん@葛城中納言のナイスキャラぶりが炸裂。 【新・三国志III】の時の宦官の怪演でもキラリと光っていらっしゃいましたが…こういうアクの強いお役がハマる方なのかもしれませんね。 これから舞台を拝見するのが楽しみになりました。
【玉返しの里庵室の場】、歌六さん@赤岩一角実は猫の怪は「さすが元・劇団四季研究生!」ってな華麗な猫ステップを披露。 以前拝見した時よりもキュートなダンスになっていた印象が~。 今回「おっ♪」と思ったのが笑三郎さん@犬村角太郎。 綺麗です。 伏姫よりも綺麗かも。 憂いを秘めた表情になんともいえない色気があって美青年~! 今まで何度か笑三郎さんの立役は拝見しましたが、一番好き(今回のズラが似合ってます) それから、笑野さん@雛衣の“スーパーえび反り”! スゴイです! 縁側のフチで反るのだけれど、頭が縁の下まで下がって…体力測定の前屈で言えば“+15cm”といった所。 儚げな貞淑な妻風情がとっても似合ってらして◎
猫+犬飼現八+犬村角太郎の三人宙乗りの前の、猫の群舞が…笑えます。 6匹?8匹?ほど舞台両袖からワラワラと出てきて、場つなぎのために踊るのですが…笑えます。 型が決まっていないようで、各人好きなようにやっているのが…笑えます。 ノリノリの猫がいたり、所在なさげにスキップだけでごまかしたり…笑えます。

大詰

時事ネタと葛篭抜け!【山下館御殿の場】では、葛城中納言になりすました、右近さん@犬山道節お馴染みの…“ご当地+時事ネタ”の披露は『今月の博多座は澤瀉屋若手一門で大奮闘、ヨン様、世界の中心で愛を叫ぶ、紀宮様ご婚約』など。
村雨丸の威力により御殿に波が押し寄せる場面では、欣弥さん@馬加大記が健闘。『北島康介金メダル、祈・ホークス優勝、タイタニック、♪魚魚魚~♪、ゲッツ』など、家来との息もピッタリ。 でも…ちょ~っと時事はズレてましたネ。 “葛篭抜け”は博多座初登場とあって、右近さん@犬山道節の宙乗りも盛り上がりました~。
【山下館御殿対牛楼の場】 やはり、八犬士のたたみかけるような立廻りは見応えがあり、客席からは拍手喝采! スピードがあって素晴らしかったです! 花道から上手に向かって刀を投げるのは…公演前半で役者さんが怪我をされたらしいと聞いていたので、ドキドキしちゃいましたよ。
歌六さん@山下定包が三段に上がって見得を切り、八犬士がズラリと並んだ絵はゴージャスで、なんだかジーンときました。

右近(犬山道節)/笑也(犬塚信乃)/猿弥(犬田小文吾)/笑三郎(◆犬村角太郎◆伏姫)/春猿(◆犬坂毛野◆浜路)/段治郎(犬飼現八)/延夫 (犬川壮介)/猿四郎(犬江親兵衛)/寿猿 (姥雪世四郎)/門之助(金鞠大輔後にヽ大法師・滸我成氏)/歌六 (◆赤岩一角実は猫の怪◆山下定包