團菊祭五月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】
泥棒と若殿
山本周五郎の昭和24年(1949年)に書かれ、昭和40年に舞台化された作品。 歌舞伎座での上演は久し振り…だそうですが、上演自体何年振りだったのでしょうか? 私、もちろん映像も含めてこの度初めて拝見。「ええ~、話しや…」 自分でもビックリするほどダダ泣きに泣いてしまって、隣席の人が引いてました(ご迷惑かけました
)
今年二月の博多座花形歌舞伎で、すごく成長を感じた(何様な表現で失礼!)松緑さんでしたが…泥棒・伝九郎には更にうなりました。 お役がハマっているのか? やはりものすご~く上達されているのか? 気のイイ心優しい男ぶりが押しつけがましくなく、素直に爽やかに表現されていて「なんてイイ奴なんだ~♪」と観ていて自然とニッコリしちゃいます。
対して三津五郎さん@松平成信(悲運の若殿)。 荒れ果てた住まいと寂しい身なりなれど、滲み出る品格と殿としての凛とした威厳は観てとれる様は素晴らしいな、と。 そして城に戻った後は、きっと全ての民に優しい良い政治を執り行ってくれるんだろうなぁ…という若殿ぶり。
若殿とは知らずにかいがいしく身の回りの世話を焼く伝九郎と、その世話を驚きながらも受け、次第に心を通わす二人(それぞれ何歳くらいの設定なんだろう?)。 泥棒を働こうとした自分より悲運な男が居る事に同情をし、力を得た伝九郎。 友情というよりは愛情が芽生えたような印象にも感じるものがある部分もあり「おやすみ~」はツボ。 「でんく」「のぶさん」と呼び合う間合いも良く、若殿が別れの朝餉をこしらえる姿にすでに涙腺決壊。 「信さん、俺はもう止めねえよぉ」で涙ダーッ 信さんの世話を焼く事がささやかな生き甲斐となっていた伝九郎は…あの後、どうやって生きていくんだろう?と切なくなりました。
三津五郎さんvs松緑さん、二人でこのような感じでカッツリ組み合ってお芝居をされているのも私は目新しく、達者な演技に大満足させられた舞台でした。
また違う役者さんで観ると、受ける印象もすごく違ってくるような気もしましたが、いかがでしょうか?
勧進帳
1887年、九代目團十郎らの尽力で初めて天覧歌舞伎が実現してから今年で120年!という事で今公演は【天覧歌舞伎百二十年記念】と冠付き。 舞台芸術として広く認められる推進力となったこの慶事を記念して、当代の團十郎vs菊五郎でこの度上演☆
2005年にはユネスコ【世界無形遺産】ともなった歌舞伎。 その認められる出発点ともえる作品なんですね(ま~た、勧進帳かぁ…と毎回思う私を許して~)
先日のパリ公演を大成功のうちに務めた團十郎さん@蔵坊弁慶の…帰国後初の勧進帳は、いつも以上に気合いと気迫が感じられ…たような気がしました。
梅玉さん@源義経、菊五郎さん@富樫左衛門。 四天王は友右衛門さん、家橘さん、右之助さん、團蔵さんの顔合わせで。
与話情浮名横櫛
海老蔵さん@与三郎vs菊之助さん@お富の組み合わせは今回二回目との事。
【木更津海岸見染の場】は…つっころばし系というか、和事の柔らかみのある世話もののボンボンは…海老蔵さん、キツイなぁ~ 私、全く受け付けられませんでした。 可笑し味のある二枚目って、二月の博多座で拝見した【おちくぼ物語】での好演も記憶に新しく、期待していたのですが…「あら~」。 こ、声は…あれは何でしょうか?
羽織も今から落とすぞ、落とすぞ~と思いっきり構えている所がシラけてしまって。
対して【源氏店の場】でのビジュアルのハマりっぷりは流石に美しく、悪党ぷりは様になっていて…でも、肝心の見せ場の名セリフでは、やっぱり何を言っているか聴き取れナイ。 え~っと、元来、私は苦手な役者さんですので殊更な感想になってしまっているかも?…なので、今公演の海老蔵さん@与三郎、ファンの方に是非とも感想を伺ってみたいです。
対する菊之助さん@お富。 いつでもどのお役でも綺麗で魅せられる…だけど、血が通ってナイ印象が私は強くて…なのですが、今回は源氏店での色気は素敵で、自分に好意を寄せる橘太郎さん@藤八(ラブリ~☆)を弄ぶ“大人の女の艶っぽさ”に感心。 でも、やっぱり感情が薄い…んだなぁ。
市蔵さん@蝙蝠安で、観客は随分助けられた印象でした。
女伊達
映像も含めて、初めての観劇だったのですが、芝翫さんの舞踏って【年増】とかすっごく好きなので嬉しく拝見。 「江戸って“粋”だなぁ~」とウキウキするカッコ良さ!
翫雀さんと門之助さん…という組み合わせの珍しさも手伝って、すごい集中力で観劇しつつ…最後まで観る事叶わず残念!!(新橋演舞場・夜の部観劇ダッシュ移動の為)
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