博多座文楽公演・仮名手本忠臣蔵(昼の部)【博多座】
博多座文楽公演は今年で3回目となり、公演数も1日増えて3日間。 初の昼夜通し上演という試みで、浄瑠璃三大名作のひとつ【仮名手本忠臣蔵】がかかりました(他は菅原伝授手習鑑、義経千本桜)
歌舞伎では何度となく観ているこの狂言ですが、元ネタの人形浄瑠璃を観るのは私、今回が初めて! 何しろ文楽ビギナーですので、観点は主に歌舞伎との違いが中心となります以下レポートはその旨ご容赦くださいませ
どちらの部もお芝居がはじまる前に人形遣いの桐竹勘十郎さんによる【解説・文楽を楽しもう】が20分ほど設けられ、今回はこれから上演される物語のあらすじや登場人物の紹介。 そして忠臣蔵に関する豆知識などを披露。 勘十郎さんが初めて接した忠臣蔵がアニメ【わんわん忠臣蔵】だった…ってのが、なんとも意外で笑えました(仇はトラで名前はキラー、なんだって!)
赤穂浪士四十七士という事で、お芝居の中には様々な“47”があしらってあるので、その発見も楽しい訳ですが、あの『いろはにほへと…』が47文字であり、この歌に“咎なくて死す”という意味が隠されているとは、ビックリ! 罰されるべき行いをしていないのに死にゆく無念さが秘められているようで「だから“仮名手本”なんだ!」と、あまりにも今更知った次第の私
(違う?)
大序【鶴が岡兜改めより恋歌の段】
歌舞伎では人形振りで…ですが、そこは元々人形なので、印象としては太夫さんからの点呼終了後にスイッチが入ったように動き出す、という印象。 いつも疑問なのですが、主遣いが頭巾を被る場合とそうでナイ場合ってどういう基準なんでしょうか? 演目の場によって決まっている事なのかしら?
史実では『何故、浅野内匠頭が吉良上野介に斬りつけたか?』という理由は明らかではナイそうで(お恥ずかしいが、今回初めて知った!)、この場は創作部分。 歌舞伎でも通しでもナイ限りあまり上演されないけれど、高野師直(=吉良)の嫌らしく、憎々しい敵役振りが冒頭で強烈な印象として残り、刃傷に及んでしまった塩谷判官(=内匠頭)の気持ちもより同情を持って解ります。
三段目【足利館大手下馬進物の段】【殿中刃傷の段】【裏門の段】
“鮒侍”とネチネチ虐める師直にキレるくだりの判官は、まるで顔の血管が浮き立ち、あぶら汗を額に浮かべているよう。 怒りの沸点に達して斬り掛かる迫力、そしてそれを必死で止める本蔵たちの力を持ってしても飛び出さんばかりの勢いは圧巻! 素晴らしい…。
四段目【塩谷館花籠の段】【判官切腹の段】【明渡しの段】
切腹の前に一目だけでも由良助に逢いたいとジリジリと待ちわびる判官の様に「由良助、早く!早く!」と気持ちが急きました! 床に突っ伏した瀕死の状態の主君をしっかと見据え、 その無念を聞き取り形見を受け取って涙する様は、嗚咽が聞こえてくるよう。 客席は事前に【通さん場】に関する説明もあり、咳ひとつしない沈黙の空間。 あれだけ大きな劇場で、客席から何ひとつ物音がしないというのは驚異的な事ではないでしょうか? それほどの緊迫感があり、悲しみと無念さがひたひたと広がるようで胸が痛かったです。
昼夜通して一番印象に残ったのは、この【明け渡しの段】。 明け渡した屋敷を背に、提灯の紋を主君の形見である切腹刀で切り取るんですね。 無念さと、仇討の強い決意が感じられる素晴らしい演出
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