歌語り 一休宗純物語【紀伊国屋サザンシアター】

思いがけず観劇の機会を得て、なんの予備知識もなく劇場へ。
【歌語り】とは…日本の歌を特徴づけている“こぶし”に注目して小椋佳さんが考案した、新しい形式の音楽劇。 和、洋の楽器による演奏をバックに、民謡、浪曲、琵琶歌など各界を代表する11人の歌の達人が、一休宗純の生涯を歌により独特の世界観で描き出す…というもの。
一休さんと言えば“とんち小坊主”だが、この作品で描かれている一休は、奇人、変人、傍若無人で恋にも燃える自由奔放な男。 でも強烈なカリスマ性で弟子はもちろん民、天皇からも大変慕われていると言った人物。 あの有名な肖像画からはこちらの人物像がイメージが近い。
舞台は枯山水のような白砂に砂紋が描かれたような地面が傾斜にしつらえてあり、両袖には何本もの杭が打たれて、その外では奏者が演奏…というシンプルなもの。 しかし話の進行に合わせて次々と場が変わっていっても、変わることない舞台の造りは観客のイメージにゆだねられて難なくその場に転換していく見事さ。
各々のジャンルの歌の達人がなんの違和感もなく素晴らしい融合をみせ、ミュージカル、民謡、演歌、浪曲、甚句、琵琶歌…のイイとこ取り+αって感じ。
特に心に響いたのは民謡。 この“歌語り”の出発点になっているから、よりフューチャーされていたのかもしれないが、日本人のDNAに心地よく響くようになっているのだろうか? 『民謡はミュージカルに合っている』というのは語弊があるだろうか?
福井貴一さん@一休宗純は、カリスマ性のある…というよりは、どっしりとした男気のある“男が惚れる男”という感じ。 その熱演では、森女に対して示す愛情は…色気が…ちと、ありすぎる感も 歌はさすが~♪
伊東恵里さん@森女(・地獄太夫)の歌声は聖歌を聴くよう。 こんなに澄んで奇麗な声が出る人っているんだ~と、この度生で初めて拝聴して感激。 もっとミュージカルの舞台で拝見してみたい役者さんだと思った。
しかし…この作品の真の主役は、一休の一番弟子であろう。
高橋孝さん@墨斉は、その切々と語る民謡は素晴らしく心に響きせつない。 弟子として崇高な師匠であってほしいと願い、苦しみもがく様は…さながらジーザス&ユダのようで、心に残る。
総体的に…一言で言えば「こんな芝居、初めて観た」
歌の達人は、どのジャンルであっても“歌が上手い”のには変わりがナイ訳で、上手い歌ってホントに人の心に届いてくるものだ。
またこの“歌語り”の別の作品を拝見してみたいと思った舞台だった。

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