東海道四谷怪談・北番【シアターコクーン】

実は…コクーン歌舞伎は、昨年の【桜姫】が初見で、勘三郎さんがご出演の…となると今回が初めての観劇。
【東海道四谷怪談】は2002年9月の博多座公演以来の観劇で、この時、勘九郎さん(当時)@お岩さんに大泣きしながら深い感銘を受け『お岩さんなら勘九郎さん』な私。 久々の再会と斬新な演出で毎回話題の“コクーン歌舞伎”ではそのお岩さんはどうなるのか?が興味津々で観劇。
そのコクーン歌舞伎、今回の演目は12年前に第1回公演として上演した【東海道四谷怪談】。
『これまでのコクーン歌舞伎の集大成』ともいうべき南番。 襲名後の新たな出発に向け「いつまでも“革新”でありたい」という勘三郎さんの思いが詰まった北番。 …という串田和美さんの演出による二つのバージョンが用意され、その比較も楽しみのひとつ。

便箋 北番
南番では上演されない“三角屋敷・小仏小平内”を上演。 洋楽を使用し、斬新さな演出がより顕著で革新的な舞台。

開演前や幕間には椎名林檎の曲が流れ、その気だるい歌声は天井からさがる大提灯の不気味な雰囲気と妙にマッチしている。
洋楽…は、私見としては『ハマっている所もあれば、厳しいところもある』かな? わざわざそこは効果音を鳴らさなくても~と耳障りな部分も感じたのは確かだけど、両袖の屋台倉?からチャリンと揚幕をあげてミュージシャンたちが演奏するのは目に楽しい
断末魔の鐘の音はさすがに古典に取って替わるものがなかったのか、そのまま使われていたので、改めて下座音楽?の素晴らしさを認識する気付きもあった。
舞台美術は…まず、巨大な仁王像にビックリ! アレって…造るの大変だっただろうなぁ、材質は何で出来てるんだろう?と気になってしばらく舞台に集中できず~汗 コクーンって、盆はナイの? その役割を担う板敷きに車輪が付いた上で演じ、大道具さんが袖からスライドIN~OUT~回転で大忙しの活躍の様も楽しい
また【欽ちゃんの仮装大賞】のごとく頑張る浪後見さんの活躍にうなる“隠亡堀の場”には「なるほど、そうきたか!」と思い、“大詰”では…「ほぉ~、そういう終わり方かぁ…」と意表をつかれて面白かった。
お子様の“遠見”は大変効果的に使われており、印象的。

勘三郎さん@お岩さんには…やっぱり泣かされた。 私の“涙腺決壊ポイント”である『蚊帳に取りすがって爪がはがれる』シーンでは、その指先がちゃんと真っ赤に染まっているのを初めて知り、その細かさに驚いた
どうやら奈落がナイ?舞台で“髪梳き”はどうやってするんだろう?と、いつも以上に固唾を呑んで観ていたが…判らない。 照明の光量の差か?不気味な暗さと、お歯黒のカネが口から顎に流れて見た目の怖さ倍増。 …ながらも悲しみをたたえているお岩さんに胸が締め付けられ…悲しい。
新悟くん@お梅は、過呼吸なのか?大げさに息を吸い込んで言う様に笑いが起こるが、しつこい印象が強く必要性を感じない。 が、ただひたすらに見染めた伊右衛門に「お前じゃ、お前じゃ」と熱に浮かされている様は微笑ましくもあり、怖さも感じることが出来た。
もう完全に“チーム中村屋”のレギュラー・笹野高史さんは、今公演でも何役も兼ねる活躍。 北番の伊藤喜兵衛は金ピカ成金で大袈裟にユーモラスな役作りで、笑えたけど…けど…、と今公演に関しては私的には「う~ん」
扇雀さん佐藤与茂七小仏小平と立役のニ役だったが、スッキリとした風情で…実は最近は女形より、立役の扇雀さんの方が好きかも。
“三角屋敷・小仏小平内”が上演されたので、より話の背景が解る事も最後に書き添えておかねば…という事と、このような斬新な実験的な?演出に挑戦する姿勢にやっぱり大きな拍手です。

青い旗キャスト
お岩・直助権兵衛:勘三郎/民谷伊右衛門・小汐田又之丞:橋之助/お袖:七之助/お梅:新悟/秋山長兵衛:亀蔵/伊藤喜兵衛・按摩宅悦・お熊:笹野高史/四谷左門・仏孫兵衛:弥十郎/佐藤与茂七・小仏小平:扇雀

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