二月花形歌舞伎・昼の部【博多座】

引窓

2008年4月【浪花花形歌舞伎】以来の観劇。 その時と同じく竹三郎さん@母お幸で、今回も『さすが竹三郎さん!』『やっぱり竹三郎さん!』と改めて感動させらた母親ぶり。 ホントにピリリっと芝居が締まる、んですね~。 芝居がどっしりと重みをもつ…というか。
高麗蔵さん@女房お早は、しっとりとした落ち着きのある姉さん女房な感じと、時々廓育ちの部分が出てしまう可愛さを持ち合わせていて好演。 夫と義母、双方の気持ちを想い計って立ち廻るけなげさも◎ 高麗蔵さんの女形って、私、久々に拝見したかも?
獅童さん@濡髪長五郎。 “濡髪”ってイヤホンガイドの解説によると『濡れた髪を肌になでつけていると刀で斬られた際にはガードとなって?深手を負わないらしい…』との事。 初めて知った豆知識! 市川雷蔵の映画に“濡れ髪シリーズ”(=これはコメディ時代劇で面白いっ♪)ってあるから『濡れ髪とは何ぞや?』と気になっていました~。 お相撲さんは日常も喧嘩も多かった時代なのかな? 思いのほか関取風情が出ていたものの…感想は控えておきます汗
十次兵衛の二人の同僚“警備・昼の部担当”には種太郎くん@平岡丹平壱太郎くん@三原伝造。 幼い! 可愛いお侍さん♪ 濡髪長五郎にこの二人が揃ってかかってもアッサリとフッ飛ばされるだろうなぁ~、ってな華奢なお侍さんコンビ。 壱くん、顔ちっちゃ!
染五郎さん@南方十次兵衛は、自分の立派な姿を母親や女房に大きく見せようとウキウキする様や、十手を乱暴に扱って慌てる様などは◎ 緊迫していた空気にホッと笑いが起こります。 実子・長五郎の“手配似顔絵”を自分の死後の供養費の為に貯金した金で買い取ろうと、母お幸が差し出す金を…私、返さないまま着服か?!と思って以前からもやもやしていましたが…家を出る際に女房にこっそり手渡していたんですね(ご指摘くださった方、有り難うございました『2/25修正・加筆』)
捕獲した魚や鳥獣を野に放し、殺生を戒める宗教儀式という【放生会(福岡では“ほうじょうや”と読む)】と、仲秋の名月の一夜の出来事…という情景がすごくよく理解、イメージ出来た引窓でした。

金弊猿島郡

私、今回初めて拝見する作品は“猿之助十八番”の一つで、今回は猿之助さんご指導の下、初役で挑戦!の亀治郎さん。 昼の部後半は『市川亀治郎宙乗り相勤め申し候』で亀ちゃんオンステージ”☆
歌六さん@如月尼実は乳人御厨。 歌六さんの女形を初めて拝見しましたが…役所ゆえでしょうが、怖いくらい勇ましくてビビるっ汗 親子の情より、主君への忠誠が重かった時代であるにしても、そりゃあんまりだよ! いくら娘清姫本人が「目は見えないし、愛しい男は何処の誰だか判らないし、この世にもう未練はナイわ~」と言ったとしても「じゃ、姫の身替わりとして死んでね」って、あんまり~! 七綾姫も姫で「あら、あなたが私の身替わりになって死んでくれるの?んじゃ、宜しく!」ってな感じであんまりじゃぞぇ~!
門之助さん@およし実は将門腰元桜木もこれまた勇ましい! 追っ手を一人で受けての立ち廻りはクモの巣状に張られた縄の上に仰向けに寝る見せ場ありで、女形がこ~ゆ~立ち廻りをするのを初めて拝見して「おぉ~♪」と思わず声に出して拍手。
染五郎さん@北白川の安珍実は文珠丸頼光。 綺麗。 染ちゃん改めて、顔小っちゃい! 清姫と七綾姫の猛烈なアピールを受けてオロオロする優男ぶりと繊細な感じはピッタリ☆ ホント綺麗。
亀治郎さん@清姫は、頼光が抜いた源氏の重宝・村雨丸の威光で突然目が見えるようになり、愛しい男が目の前に居る頼光と分ってからの「おまえじゃ、おまえじゃ~」という凄みさえある迫りっぷりと、あからさまに七綾姫をじゃけんに敵視する様に大爆笑♪ 七綾姫は将門妹であり、文珠丸頼光とはいわばロミオとジュリエット的な恋仲な訳だからその想いが成就するのは無理なんだから、私が彼を引き受けるわ!的な態度がなんともツボ。 頼光と七綾姫が二人で奥の間に引っ込んでからのシルエットロマンスを見てキィ~ッとなり、部屋の灯が消え「ひぃ~っ!この胸が煮え返るわいなぁ~っ!」と地団駄を踏む様は、同情より爆笑。 時を告げる鐘の回数を細工して、捕り手達に早く姫を引き渡そうと…自らが縛られた鐘に頭突きをする清姫。 「ゴォ~ン」で、大爆笑! スゴイよ、スゴイっ! 表裏でヘビを表現した絶妙な柄の長~い帯は…いったい何メートルあるんだろ?! 亀治郎さん@右衛門尉藤原忠文のネットリとした七綾姫へのアプローチはその情念の深さが不気味
梅枝くん@七綾姫は可憐。 しっかりと女形に成長されましたね~(って何様感想ですが) 今、赤姫系をされたら一番しっくりとくる年齢で綺麗なのでは? 若いって美しい☆
獅童さん@寂莫法印のひょうひょうとした役所は解るけど、歌舞伎味ゼロ。 坊主が手鏡を携帯してる…ってありですか? 信仰の本尊として持ち歩いてた? 立役が鏡を見て自分の姿に驚く、って演出に驚き!
亀治郎さん@忠文はセリフ回しや声が猿之助さんソックリ~♪ 正札が火を吹いて燃え、お堂もファイヤ~で焼け崩れる様は一面真っ赤で大迫力。 寂莫法印を川の中に落とし、自らも川中へ消えて行く演出は見所~見所で面白かったです。
花道にも浪布が敷かれ、頼光が七綾姫の癪の介抱する仲睦まじさに視線を反らせる船頭さんとは相反して「ヒュー、ヒュ~♪」な客席の反応での引っ込みは笑えたっ!
一面火の海になった舞台では清姫の化身となった蛇(帯)が“長崎くんち”の龍踊りのように横断。 私、赤衣(あかご、って言うの?!)さんって初めて見たわ!
清姫×忠文の怨念の塊となった亀治郎さんはすっぽんから鬼の形相で吊られて登場! キラキラ紙吹雪が舞う中、熱演の宙乗りでしたが、3階席引っ込みの鳥屋口すぐ横のお席のお客さん「亀ちゃぁ~ん!」と手を振る。 興奮するのは解るけど、「亀ちゃぁ~ん」って…どうよ?!
終始不思議だったのは、亀治郎さんが見得を決める前に上半身をクネクネっと振って顔をキメ!…の、このクネクネ仕草に笑いが起こるのが謎だった。 オーバーだから? 蛇っぽいから? 不思議な客席の反応…。

双面道成寺

美しい琵琶湖畔を背景に上手に清元、下手に常磐津で「豪華だなぁ~」と思っていたら、途中より奥の大セリより長唄連中がドーンとセリ上がり総勢30名の豪華な三方掛け合い☆ 人間国宝の所作事かっ!と嬉しい突っ込みを入れつつ、層の厚い音色が心地良い~♪
門之助さん@能力黒雲×高麗蔵さん@能力白雲の【おきあがりこぼし】の歌とフリがカワイイ☆
【京鹿子娘道成寺】のパロディなんですね。 所々に「見たことあるある~」的な振りや曲があって面白い。
白拍子花子実は清姫の霊、狂言師升六実は忠文の霊としての踊りとなり、狂言師升六では、お大臣×太鼓持ち×遊女の三つのお面を次々と替えての踊り分けは見応え充分! そして寸分のタイミング狂う事なくお面を差し出す裃後見さん(どなたでしょうか?)の手際もスゴイ! コレ、お面間違えて渡しちゃったら大変ですよね~。
清姫×忠文と半身になった鬼の形相で、それぞれの恋しい人にすり寄る様は、恐ろしい形相ながらも仕草がいじらくて笑えました。 所作殺陣の見所も充分。 獅童さん@田原藤太秀郷との五つ頭での押し戻しの後、「カーッ、カーッ、カーッ」って言った後「ンゴ~ッ」って鼻を鳴らすのアレ(←正式名称は何?)、この場では〆の?「ンゴ~っ」がナイくてビックリ。 そんなのもあるんですね、初めて聞いた!
総括。 言葉が適当ではナイですが『憎たらしいほどに亀ちゃんは上手い!』 鼻にかけている感じが…いつも上から目線的な感じが個人的には苦手な亀ちゃんですが、上手い事は認めざるをえないのが悔しいくらいやっぱり上手いっ!!…と思った昼の部でした。

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