七月大歌舞伎・夜の部【松竹座】

熊谷陣屋

最近やたら観ている印象ですが、松嶋屋+成駒屋のみの関西勢で演じられた今舞台は独自の部分もあって興味深く拝見
まず仁左衛門さん@熊谷直実の裃がすっごく奇麗で目を奪われました☆ 亀甲模様のベースのそれぞれの配色が“日本の伝統色”のカラーチップを散りばめたような…カラフルなんだけど渋い色合いでホントに奇麗~♪ 胸元の家紋“向かい鳩”も金糸の刺繍で立体的で素晴らしい細工。 これはご自身で誂えたものなんでしょうね?
孝太郎さん@藤の局熊谷の陣屋に助けを求めて転がり込んで来る…というくだりは、私は初めて観たような。 この前置きがあるからこそ藤の局が突然姿を現して斬り掛かる~という所が「あんた誰?」感がなくてイイですね。
熊谷直実が我が子の首を三段まで持って進み出て、それを秀太郎さん@相模はよろめきながら立ち上がり、三段を途中まで上って受け…夫婦揃ってその首を持ちながら見つめ合い涙する所は、胸を締め上げられるような悲しさが伝わってきました。 こんなに長い時間、我が子の首を手にして嘆く相模は初めて観ましたし、納得できない無念さがより伝わってきましたし、忠実な家臣とはいえやはり愛情深い父親であった直実の我が子と別れ難い悲しみをこの時点でより鮮明に伺う事が出来ました。
藤十郎さん@源義経の「解った、そういう事にしておこう」という度量の深さに加え、直実夫婦の悲しみに深い哀れみと同情している様が伺え、何故かしら義経の表情を観て泣けてしまいました悲しい
これらの濃厚な芝居の中、我當さん@白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清のセリフ回しだけが個人的にはちょっと浮いているように感じられたのが唯一残念。 着物は“南無阿弥陀仏”柄?なんですね。
『同じ演目でも役者が替わればこうも違う』という、歌舞伎観劇の楽しさを改めて知らされた…という感じでした。

黒手組曲輪達引

河竹黙阿弥作の“世話の助六”で、至る所に【助六】のパロディが散りばめられた世話狂言。 私、これも初見の演目。 今月の松竹座の演目…実は私、初見のものが多かったのも今遠征を決行した一因なんです。
菊五郎さん@番頭権九郎花川戸助六の激しい落差の変身ぶりは楽しい楽しい♪ ここまでヴィジュアルも演技も鮮やかに演じ分け、どちらも充分な魅力で楽しませてくれる役者さんって…やっぱり当代は菊五郎さんがピカイチ☆ではナイでしょうか?
菊之助さん@新造白玉との道行き、花道の出では「菊之助さん、よく吹き出さナイなぁ」と妙な所で感心しながら、どえらい美人さんぶりに見とれました。
松緑さん@牛若伝次のメイクがやたら大衆演劇風だったのがひどく気になりました汗 不良っぽい感じを出そうとしての事でしょうか? 初めて観た化粧だな…汗
今演目の最大のお遊びはご当地ネタ大放出! 菊五郎さんって…あの【2001年宇宙の旅】のテーマ曲(クラシックの正式曲名は何でしたっけ?)好きですねぇ。 カモが黄色×黒ストライプ法被と鉢巻きを身につけて“トラガモ”で登場。 田之助さんは【大阪くいだおれ】閉店の8日までは“くいだおれ太郎”→閉店後は阪神タイガースのマスコット“トラッキー”。 そして團蔵さんはKFCの“カーネル・サンダース”で「ぐぅ~っ♪」。 團蔵さん“エド・はるみ”好きですねぇ。 只今絶好調の阪神タイガース、これらのキャラクターが今年また道頓堀で弄ばれるかも?!
この後「あ、これはあの場のパロディね」というシーンが目白押し!ですが、前半のインパクトが強すぎたせいか、サラリと流れた感じで印象が薄かったのは…演目全体としては良かったのか?悪かったのか?汗
立ち廻りにご当地仕様の“だんじり”が使われていたのは風情があって◎
印象的だったのは、亀三郎さん@朝顔仙平。 助六では朝顔モチーフ満載のとぼけた道化キャラ(大好き☆)ですが、こちらは気の短い怒りっぽい荒々しい厳めしい武士風情。 こんなタイプのお役の亀三郎さんを拝見するのは新鮮で、かつて歌舞伎の演目でここまで長いセリフをしゃべっているお役…というのは初めて拝見したような~?で嬉しい配役。 うん、やっぱり彦三郎さんに更に似て来た!
そして橘太郎さん@白酒売り。 睫毛まで白く塗っているので、なおさら“おじいちゃん”という感じ。 武士の横暴さにビクビクしながらも、言う事は言う!気丈さと愛嬌が。 ん~、やっぱり橘太郎さん、ラブリ~♪

羽 衣

幻想的な美しさを堪能する舞踏で終わるのか…と思いきや! 舞台機構がすっごく面白く、ラスト「うぉぉぉ~!」とおもわず声を出して感嘆してしまいましたっ! 松緑さん@漁師伯竜から、羽衣を返してもらった菊之助さん@天女が、天へ舞い上がる見せ方がソレ! 手前の松やの岩場がセリ下がると同時に、舞台奥から雲塊がセリ上がり…その上で羽ばたく天女は、まさに“天に舞い上がる”ように見えて面白い! これって…デフォルトの演出ですか? 先人の舞台演出の工夫には多々驚かされますが…いや~、感心しました!

団子売

ご当地仕様でセットは“天神祭”。 愛之助さん@杵造×孝太郎さん@お臼夫婦は、最初に頭巾と法被(正式名称は何て言うの?)を身につけているタイプなんですね。 私、この拵えがすっごく好きなので嬉しかったです♪ 私、観ているようで…意外と観ていないこの組み合わせの夫婦でしたが、色っぽいくだりに「あらま」というような仲睦まじさ見てとれた、軽やかな打ち出しでした。

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