壽 初春大歌舞伎・昼の部【松竹座】

毎年『歌舞伎はじめは松竹座』が恒例の私。 昨年はお江戸に浮気してしまいましたが…今年は原点に?戻って。 正直…今ひとつ心惹かれる演目がなかったのですが、他劇場観劇も絡めて検討すると「やっぱり関西遠征!」に決定☆ しかしその後、続々とお江戸のお正月公演の詳細が明らかとなり「もっと早く発表してくれればお江戸にしたのに~」と悔やんだ事も事実。
2泊3日、キツキツに詰め込んだ観劇スケジュールでしたが大いに満喫してニコニコで帰福すると…殺人的スケジュールの仕事が待ち構えておりました~冷や汗 よって観劇の興奮や感動もすっかり冷めてしまった…いずれの公演もとっくに千穐楽を迎えた後での遠い記憶?を辿りながらの観劇レポートなので、かなりテンション低め~ですが、自分の観劇記録としてUP。

葛の葉

昼の部、朝イチの演目から『中村扇雀宙乗り相勤め申し候』というお年玉。 この演目で宙乗りという演出も、扇雀さん@葛の葉も私、今回初観劇。
総体的な感想は「こんなアクティブ葛の葉はじめて!」。 正体を見破られて徐々に狐テイストが現れてくるくだりで、通力で扉を開けたり、屏風を返したりする様は裏方さんとの鮮やかな連携プレーでスピーディー☆ 字が上手い事で有名な扇雀さん、曲書きでは今まで拝見したどの葛の葉よりも達筆!(って後半は判断できませんが汗) しかしこの場って、こんなに自分を慕っている我が子と別れなければならない、母親の情を断ち切らねばらならない辛さ…などを感じて涙するのが常なんですが、それが殆ど感じられないアッサリした“曲書きを見せるだけの場”に終始したのは残念。
狐へと姿を変えてすっぽんよりセリ上がると面灯りが当てられて、天井から紅葉がヒラリ~、そして宙乗りとなり信田の森へ戻って…幕。 ん? んんん?
あの~、ラストはなんだか妖怪変化ぶりが強調されて不気味で怖いんですけど汗 葛の葉を観ていつも感じる、愛する人の元を去らなければならない悲しさ、辛さを感じで胸が締めつけられる…あの余韻が全く感じられナイ。 前段の芝居は“宙乗りやります!”の助走のようでいて、全く違ったテイストにブチ切れている印象が強く「なんか…もったいない」と思ったのは私だけでしょうか?
今回、初めて知ったのは、冒頭で息子(後の安倍清明)がトンボを捕まえて持ち歩いているのは“虫の殺生=狐の血が流れている”という伏線がある、という事。
翫雀さん@安倍保名は…何度か拝見した事がありますが、このキャラにはちょ~っと声が強すぎる印象。 もう少し声も柔らかみが欲しいなぁ(以前も感じたこと)

佐々木高綱

翫雀さん@おみの気がつけば私、この演目は映像も含めてどうやら初見のようでした汗(何故かすっかり観た気になってた~)
しかし、私的に特筆すべきは翫雀さん@子之介姉おみのでしょう!(吉弥さん@馬飼子之介…っていつもなら逆の配役の印象で驚き~) あの“馬のしっぽ”(って言うのかな?お冨さんみたいな髪型)のヅラ姿では初めて目にする翫雀さんに「おおっ♪」と姿勢を正して座り直した私。 胸のうちを切々と訴え、強固な意志で立ち向かう様に胸が打たれるものの、気持ちが入って声が大きくなると…翫雀さんってど~しても女形という声ではなくなってしまうのがホントに残念。 見た目ふっくらと愛らしいのに~、あんなにお父さんにソックリなのに~。 女形は見た目がソックリでもやっぱり“芸のさせる技”なんだな、とソックリ親子を観て、藤十郎さんの偉大さを今回改めて思い知らされました。 翫雀さん“兼ねる役者”の道、応援してますっ!
で他には…初見の演目というのにやたらに印象に残ったのは登場人物の足元。 新悟くん@高綱娘薄衣は鮮やかなピンクの足袋。 侍女(嶋之亟さん?)は、これまた鮮やかな水色。 我當さん@佐々木高綱進之介さん@佐々木小太郎定重の…この冬流行のブーティーのようなショートブーツ! 他の演目であまり目にしない小物の数々に注目してしまいました~。 足袋の色って、何かを現しているんでしょうか?
馬の達者な動きに客席が大いに湧いてました♪(彌十郎さん@高野の僧智山は重かったかと~)
で…、あれ? 佐々木高綱は~汗

芋掘長者

生で観るのは今公演が初めてで、と~っても楽しみにしてました。 三津五郎さんを松竹座で拝見するのも久々のような?
新悟くんは今公演、大活躍ですね。 いずれも女形での出演で、線が細く頼りなげな少女の匂いのする可憐さだったのですが…しかしやっぱり背が高いので、ひどく膝を折っており、横向きになると立ち姿のフォルムがひどく不自然で気の毒。 きっとまだ伸びるでしょうし、今後は…どう進んで行くんでしょうか?
三津五郎さん@芋掘藤五郎の愛らしい事!  扇雀さん@緑御前への想いをなんとか遂げさせてあげたいっ!と応援したくなっちゃう一生懸命の奮闘はユーモラスで楽しい、楽しい♪ 時節ネタ『そんなの関係ねぇ!』も盛り込まれていた模様。 友達治六郎は数年前の復活上演時からずっと橋之助さんでしょうか? と~っても息の合ったコンビで楽しい一幕ですね。 冠者のような二人のお着物の模様がすっごく鮮やかで凝っていて好きです。
扇雀さん@緑御前は求婚者が踊る様にもっとウキウキと“踊りが好きな様”が見てとれたら良かったなぁ~と。

沼津

我當さんのお役の中でこの雲助平作が一番好きなんです。 …ってこんな汚い拵えのお役で~とは我當さんは不本意かもしれませんが汗
藤十郎さん@呉服屋十兵衛との前半のじゃらじゃらした(←男女間でしか使わない表現?)やり取りは微笑ましく、客席歩きは大いに湧いてました。
お米秀太郎さん。 昼夜通して、今公演でのご出演はこれのみ!とは残念(夜の部【封印切】おえんはてっきり秀太郎さんだとばかり~)
平作が命がけで仇の居所を聞くだりには、毎度のことながら息を呑んで見守り心打たれ涙するのですが、今回すごく印象に残ったのは十兵衛の方。 暗闇で状況が解らないまま平作に呼びかけ…そして現状を察した驚きと悲しみと迷い。 そして決断。 鮮やかで「藤十郎さん、やっぱ上手いわ~」と人間国宝をつかまえて何様な感想ですが、ホントそう思いました。
三津五郎さん荷持安兵衛はなんとも贅沢なお年玉でした♪

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