五月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

3月からの三ヶ月間に渡る【第十八代中村勘三郎襲名披露公演】の最終月です。 しかもこの日は楽前とあって、更なる盛り上がりをみせる歌舞伎座でした~。

義経千本桜【四の切】

私自身はどちらかと言えば澤瀉屋の型の方に馴染みがあるので、その違いをいろいろと発見出来て楽しめる音羽屋型。 以前拝見した時よりも「ちょっ重いかなぁ…」という感がいなめませんでした。 狐らしさが薄かった、と言いますか…全体的なスピード感を求めている訳ではないのですが、いろんな意味で重いな、と感じた今回の【四の切】でした。

鷺娘

博多座公演で観て…以来の観劇、かもしれません。 当サイトの今年最初のTOPページの題材でもあったので、改めてものすごい集中力で観劇しました。
今回は三階席からの観劇だったので、後見さんとの鮮やかなコンビネーションにうなる事度々。 やはり白無垢から場面も一転して赤の振り袖に変わる所が、まるで浅葱幕を切って落とすような見事な場面転換といいますか、そんな感じでした。 終盤の、降りしきる雪が床に積もって…それを美しく巻き上げながら苦しむ鷺の姿は、その悲痛な鳴き声が聞こえてくるような錯覚を覚えました。
…って、こんなに感動してますけど、実は私の前のお席の人が立派な体格の方で…舞台センターで演技がする事が多い鷺娘。 半分くらいはその姿が観えてませんの、私悲しい

研辰の討たれ

初演は映像でしか観ていませんので、生の舞台は今回が初観劇。 大好評を得た前公演以来の再演、しかも襲名披露公演でかかるとあって、今月の夜の部のチケット争奪戦はスゴかった。
この演目開演前にかかっている祝い幕は、衣装デザインを担当されている“ひびのこづえ”さんによるものだそうで、かなり異色。 迷彩柄ちっくで可愛い~。
演出や出演陣は初演と殆ど変わっていないそうですが、やはり画面では収まりきれず観れなかった舞台機構とか、袖の方で細かい演技をされている役者さんを拝見するのは楽しい、楽しい♪ オープニングの“影絵効果”や足場を組んだ廻り舞台を多様しての舞台美術には…私の席のお隣の方、声をあげて驚いていらっしゃいました。 歌舞伎座のあの舞台で…となると、やはりかなり新鮮で斬新で迫力がありますね。
お笑いネタは随所に今年バージョンが嫌味なく取り入れられていて、スパイスになってました。
福助さん扇雀さん、やはりこのお二人のコメディセンス…と申し上げていいのでしょうか? 改めてスゴイなぁ…と。
また、三津五郎さん@市郎右衛門のあのスキップを生で観れて感動?! 【和楽】だったかな?勘三郎さんが「あのスキップも彼は一生懸命お稽古していた」旨を話されていたの記事を目にして、思いっきり笑ったけど重みのある演技なんだな、と そして今公演では失礼ながら「三津五郎さん、ウマイっ!」と度々言ってしまわずにはいられない三津五郎さんに感動されられっぱなしでした。
今回楽しみにしていたのは…お察しの通り、亀蔵さん@からくり人形! 生で観ると“狂気あふれる不気味さ”が倍増ですね! 森山直太郎の【桜】を口ずさみながら、イッた目つきで刀を振り回す…。 亀蔵さんにしか出来ないでしょう! 「あっぱれじゃ!」
そして…芝のぶさん@芸者金魚。 関西の方から聞いて、あの関西弁ってどうだったんでしょうか? 福岡人の私が聞いてて、なんだか違和感があったのですが~。 しかし、こんなに目立った、弾けたキャラクターだったっけ?というくらい自然と目が惹き付けられる金魚ちゃん。 艶っぽくて可愛くて…辰次にツレなくしながらも【ギター侍】ネタで「…ですから。残念!」と“芝のぶ斬り”が観れるだなんて相当嬉しかったです。 辰次が仇討ちを果たそうとしている者と知ってからの態度の豹変ぶりがたまらなく、部屋の戸を閉めて辰次に迫るあの目つきはひゃぁ~っ!という感じでした。
そして清太夫さん、お疲れさまでした~。
勘三郎さん@守山辰次は…この野田版では勘三郎さんしか出来ないでしょう、と思われます。 けど、初演時に感じた『切ないまでの生への執着』というものに心を寄せる事はなく、ラストの衝撃も知っていたから弱いのか?強い印象としては、私は残りませんでした
しかし、客席三階席まで走り回ってくれる勘三郎さんの熱演に心が熱くなりまして、こんな楽しい舞台をみせてくれて「勘三郎さん、有り難う」という思いでした。

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