七月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

『夏は“海女活動に専念”』と自分の中で線引きをして観劇遠征はお休み…のはずだったのに… 玉三郎さんの【桜姫東文章】がかかる! しかも相手役はダンジロさん!と聞けば「もう二度とナイわ!海は逃げないし~」とアッサリと戒を破り歌舞伎座へ行って遠征してきました!

修善寺物語

歌六さん@夜叉王は…面作師としての名匠ゆえのこだわりぶりが、ただただ頑固な自分勝手で非情なおやじさん、という印象が強く残るのみ。 門之助さん@源頼家は、元来の感情をあらわに怒鳴りあげるタイプのお役で拝見したことがなかったので新鮮でした。 夜の部での【川連法眼館】での源義経といい、おっとりとした風情が“麻呂”系のニンだなぁ…とつくづく思いました。
笑三郎さん@姉娘桂は、鼻にツンとかけた気位の高さが伝わってきました。 その気位ゆえに悲しい結末になるも、自分の望んだ境遇にてこの世を去る嬉しさと、名匠の父に対する恩義なのか、虫の息でキッと顔をあげる表情はとても心に響いてきました。

桜姫東文章・上の巻

★江の島稚児ヶ淵の場
玉三郎さん@白菊丸段治郎さん@清玄の心中場面。 牛若丸のようなこしらえの初々しい様子の玉三郎さんですが、荒波に立つ断崖絶壁にぐいぐいと登って行く様は、年上の清玄を断然リードしている感じ。 ためらいもなく思い切って荒波に飛び込む様は「玉三郎さん、海はヘッチャラだからなぁ~♪」と雑念が入りながらも、心中におじけづいて「ごめ~ん」という段治郎さん@清玄に笑ってしまいました。
“美男同士の心中”というショッキングで美しい場面なのに…自身の雑念が多すぎて~。

★新清水の場
浅黄幕が切って落とされると「うわぁ…」と客席からどよめきが起こります。 清水の舞台に桜姫ご一行さまがズラリと居ら並んでいて、息を呑む美しさ! 序幕が薄暗く重い場でしたので、この場の転換との対比の鮮やかさにうなる素晴らしい演出の工夫。
玉三郎さん@桜姫は、赤姫ぶりに気品が漂い、でもしかし17歳という若さも感じられる…という、う~んさすがだ!と思って見入ってしまいます。 対して、笑三郎さん@長浦は、驚くほどどっかりと落ち着いた風情で、年を感じさせるうえ、座っている表情だけで「この人はきっとこんな人物」と想像できてしまう局ぶり。 阿舎利となった段治郎さん@清玄は…残念なから、心中から17年経ったという時間を感じることはできず、高僧のもつ威厳や風格の漂いはなく~

★桜谷草庵の場
皆、あのポスターでいやがおうでも期待が高まっていますからね~♪
玉三郎さん@桜姫は、権助があの時の男だと判ってからの表情と視線がとにかく、とにかく艶かしいのです! 権助を誘う表情が…スゴイです! 段治郎さん@権助は上背があるので、玉三郎さん@桜姫の背後から胸元に手を入れたり(鳴神体勢)、帯をほどいたり…が楽勝です(なんじゃそりゃ) 胸元に手を入れた時、桜姫の香箱に触れ「ちぇっ!邪魔だ!」とばかりにポーンと投げる笑いの演出は、固唾を飲んで観入っている観客にひと呼吸与えてくれます。 “帯び解き・あれ~くるくる”を桜姫が権助に対してするのには驚きました! そしていよいよポスター体勢になった時、「玉三郎さん、それ! その表情をポスターでして欲しかった!」というような恍惚とした表情で二人の顔は近づき…「きゃ~っ」となった所で御簾がスルスルと降りてきます。 多分、この場はお客さんの方を観てみるのも楽しいはず! 御簾が降りてきた瞬間「あ~ぁ」「はぁ…」といろんな感情が混じったため息が一斉に漏れましたので。 御簾内の中を覗きみる歌六さん@残月と笑三郎さん@長浦のコミカルな演技で、フッと楽になれました(そんだけ集中して観ていた訳ですね)
段治郎さん@釣鐘権助は安心して観てられました。 ご自身は「世話物は苦手」という事でしたが、色悪は結構されているので悪ぶりはよく出ていたと思います。 軽~いチンピラという感は◎

★稲瀬川の場
段治郎さん@清玄が受戒を破り、豹変して玉三郎さん@桜姫に迫るのは唐突感がぬぐえない。 お姫さまでありながら、腕には刺青をし赤子を抱えてさらし者になっている姿は「なんとも呆れたお姫さま」のセリフの通り。 暗い場面にひときわ赤姫の姿が色鮮やかで、その姿が美しく舞台に浮かびます。

★三囲堤の場
『もっとも風情のある場』とイヤホンガイドで解説がありましたが桜姫が花道で、清玄が上手の土手で…の割セリフは、リズム感があって耳に心地よい感じでした。  気になったのは段治郎さんの赤子の抱き方。 「多分まだ首がすわってナイ赤ちゃんなのに、それじゃ不安定だよ~」と、とにかく終始気になって仕方がありませんでした…。

三社祭

右近さん@悪玉猿弥さん@善玉。 桜姫…が、どんよりとした場面で終わったので、明るく楽しい舞踊に心が晴れます。 …と言いつつ、正直、特記すべき印象に残るものがなかったかな。
猿弥さん、素は左とん平だけど、顔をつくると山城新伍だよなぁ」とか、また自身の雑念が邪魔をしました。

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