ファンタスティックス【キャナルシティ劇場】

思いがけず観劇の機会をいただいて、なんの予備知識も無しに劇場へ。
タイトルは耳にした事があったのですが、世界最長ロングラン記録を持つミュージカル作品で、宝田明さん@語り手が出演回数300回を超える…という大層なものだと知ったのは観劇後。 音はピアノとハープのみ、舞台上手で生演奏で、こんな演奏形態のミュージカルは初めて観ました。 客席通路を多用しており、観客をどんどん舞台に引き込む手法があったり…でしたが、そんな大層な作品の感想は…ん~、なんと表現したらイイでしょう? 私にはちょっと難しく、ロングランを続ける作品の魅力は…一体どこにあるのか、疑問のまま。

しかし演者は8名少数精鋭(島崎俊郎さん@モーティマーだけ異色)で皆さんはどなたも芸達者で素晴らしく観入りました。 光枝明彦さん@老俳優沢木順さん@青年の父親青山明さん@少女の父親劇団四季出身のお三方が観れた事に軽く興奮。 「光枝さんがこの劇場に立ってる!」って。
宝田明さん@語り手御年78才とは到底おもえない軽やかな動きと艶のあるイイお声、そしてダンディな色気を放っていて驚きました! 客席には“宝田さんの往年のファン”だろうな、らしきご婦人方がチラホラと。
松岡充さん@青年は40代とは思えない若々しい容姿で、彩乃かなみさん@少女より可愛かったかも? 劇中の場面表現に重要な役割を果たす本間ひとしさん@無言のしなやかな動きは綺麗。
カーテンコールでは宝田さんのこの作品に対する熱い想いが切々と語られ、劇中曲【トライ・トゥ・リメンバー】を観客と歌って終了。

新派特別公演【博多座】

11月の博多座は前半が【ジェーン・エア】で後半の5日間、20日から25日が【新派特別公演】です。 【麥秋】は休憩をはさんでの二幕構成+【滝の白糸】という構成。

麥秋

小津安二郎監督の映画【麥秋】を山田洋次が舞台用に脚本を書き下ろし自らが演出、というこの作品。 まずは映画セットのような、もう映像作品が撮影出来るんじゃナイかしら?と思えるような精巧な造りの舞台美術にビックリ! このセットで終始話しが進んで転換がなかったので納得の造り。
古き良き日本の家族と絆の物語で“THE日本人”が織りなす…なんて事はないけれど、なんかイイ作品、というと何様ですが、そういう印象を受けました。 舞台中央で物語の軸が演じられている脇でも、自然な日常生活が営われいるような演技がず~っと続いていて、すごく不思議な感じ。 お風呂上がりのスッポンポンの子供達(多分、一瞬だったので私の席からでは確認不可)が横切ったり、食事の下ごしらえをしていたり…細かな演出に驚きました。
転勤が決まった結婚相手に付いていく決心をした瀬戸摩純さん@妹・紀子の旅立ちを喜びながら寂しがって泣く…という波乃久里子さん@姉・史子が印象的でした。 「演技上手いなぁ~」と何様な感想ですが感動。 英太郎さんのおしゃべりっぷりが「いるいる!こんなおばちゃん!」って感じでかなり笑えました。 水谷八重子さんがすっごいお婆ちゃんになってて(役ですから!)驚いた~。
機会があれば映画作品も観てみたいと思います。

滝の白糸

個人的にはダンジロさん(月乃助さんな!)が目的の観劇。 段治郎さんが月乃助となって初めての博多座!って事で、私も“月乃助”としては初観劇(ダンジロさん、ってか月乃助さんな!を拝見するのは…いつ以来かな?)。 ご本人は何年振りの博多座御出演になるのかな? 月乃助さん@寅吉は、やっぱり立ち姿と声がイイ。 ん~、もう歌舞伎は無理なのかなぁ…と、ホントもったいないとつくづく思った、ちょっと寂しい気持ちの観劇でした。 澤瀉屋から春猿さん@滝の白糸笑三郎さん@お辰、その他にも数人ご出演。
作品は2001年4月の博多座公演で、水谷八重子さん@滝の白糸+辰巳琢郎さん@村越欣弥で観たことがあったのですが…今観劇で「ん?こんなに面白くなかったっけ?」と驚きの感想。 一幕という事でかなり端折っているからでしょうか? 「なんで殺すよ?」「なんで死ぬよ?」と理不尽さが際立ち「納得いかんなぁ~」というモヤモヤ感がひたすら残るという。

ジェーン・エア【博多座】

松さんは今年5月【ラ・マンチャの男】に続いて二度目の博多座登板。 2002年以来10年振り…で、いきなり年2回ってどういうバランス?! 松さん単独主演(になるのかな?)では初になりますね。
初演では松さんが第35回菊田一夫演劇賞を受賞したとの事で、3年振りの再演でまさか博多座公演があるとは思わなかったのでラッキー♪ 今作品、私は初観劇で博多座公演前に公開された映画を先に観ていて良かった~、と思いました(先行していた“暗くて難しい作品イメージ”は間違ってなかったので)
博多座では初となる“舞台上に客席を設ける”試みが。 あ~する意味がどこにあるのか?って通常客席からの観劇では謎でしたが、ご覧になった方いかがでしたか? 故に場面転換はどうやるのだろう?と思っていたら、これがホントに良く計算された舞台美術で照明や最小限の小道具であらゆるシーンを表現していて感嘆! 物語が進むにつれて両脇に配された客席も眼中に入らなくなりましたし。

歌は…難しいメロディに心情を吐露しながら~そしてセリフにつなぐ、というタイプが多く、聴衆が聴き入って1曲毎に拍手、という感じではありません。 ので、ちょっと気持ちが乗り切れない部分が多く「別にミュージカルじゃなくてもイイんじゃ…?」と正直思ってしまいました(でもストレートプレイだと観劇しなかったかも) 狂人の妻の存在が判明する場があまりにもバタバタと進んでしまい、せっかくの謎解き?の衝撃がお芝居では解りづらかった印象
松たか子さん@ジェーン・エアは出づっぱりにもかかわらず、歌・芝居共にどっしりと安定。 故に“不幸な生い立ちの線の細い女性”が、いろいろな境遇に鍛えられ愛を知って強くなる…的な成長は感じられませんでしたが…安定。  橋本さとしさん@ロチェスターはヴィジュアルは◎でしたが、他は特筆すべき印象は残らず。 やっぱりメロディが難しいのかな? 聴いていて“耳が心地良い”類いの歌ではありまんせでした。 阿知波悟美さん@リード夫人は死の病床で力強く歌いすぎでビビリました~。