桜壽博多座大歌舞伎・昼の部【博多座】

磯異人館

私、初めて観た演目です…って、昭和62年歌舞伎座で初演→平成19年再演という新しくて上演回数も少ない作品なんですね。 鹿児島=九州ご当地もの、という事での上演なんでしょうね? 適材適所という配役で皆好演。
将来の希望に燃えつつも、すぐ目の前にある幸運が悲劇的な末路へ…という勘太郎さん@岡野精之介。 武士の子→職人という感じはしませんでしたが、精之介の人柄は良く伝わってきました。 早口になるとセリフが聴き取り辛いのが玉にキズ。 赤く光り輝く薩摩切子の瓶を背に切腹する様に「そんな長い刀でなら首カッ切った方が楽なんじゃ…」 生麦事件で切腹した父・岡野新助の…武士の子としての幕引きだったんでしょうね。
七之助さん@琉璃は、琉球の姫君らしい拵えが素敵。 【俊寛】の千鳥でも思うのですが…南の島の女性がこんなに華奢で生っ白い訳がないんだけどなぁ~! 可憐で儚い感じが◎ 個人的にはこの兄弟の恋人・夫婦役って苦手ですが。
猿弥さん@五代才助鹿児島県人として違和感ゼロ! 語弊があるかもしれませんが「猿弥さん、使い勝手がイイ役者さんだなぁ」と改めて今公演で思いました。 使い勝手?…ん~、なんて言うんでしょ?、声はイイし、芝居は上手いし、二の線も三の線もどちらもイケるし…なんでもソツなく上手い! 「澤瀉屋!」と大向うがかかる度に、なんだかとっても嬉しくなりました。
歌舞伎に限らず“外国人を演じる日本人俳優”が出て来る舞台って、どうしても違和感がありありで気になってしまいますね(日本が舞台でそこに外国人が…という設定時) 亀蔵さん@ハリソンは、別に面白い事をするわけでもないのに(至って頑固で気丈な英国紳士の役)…何故かしら笑ってしまう~! しまいには耳にかかる髪をかきあげる仕草に「なんですかぁ~」と聞こえてくる空耳(爆) よく面白キャラを演じられる亀蔵さん故にそうだったのか?役所がそうだったのか? 謎であります!
松也くん@岡野周三郎の出の立ち姿だけで「やっぱり太ったな、松也くん…」 血気盛んな周三郎を素晴らしく好演♪ 上から目線で失礼ですが、すっごくお芝居上手くなっていらっしゃいますよね!! 今公演ではヴィジュアルの変化に驚きつつも、芝居の上達振りに驚かされた松也くんでした。
國矢さんの悪役(役名失念!)、表情から“いかにもヤな奴”で好演。 名題になって初めての博多座ご出演?

吉野山

清元連中の裃が成駒屋さんの緑一色な上、見台も初めて見たよ、ソレ!と驚くくらい簡素なもの。 後に上手上段に桜裃の方々が加わるのですが…なんだか満開の桜な感じがせず、寂しい印象がして不思議。
橋之助さん@佐藤四郎兵衛忠信実は源九郎狐扇雀さん@静御前亀蔵さん@逸見藤太。 うん、特筆すべきことはなし。
橋之助さん×扇雀さんが“男雛女雛”で決まった時「両成駒~!」と大向うがかかったんですが、初めて聴いた。 これってありなんですか?

俊 寛

橋之助さん@俊寛僧都は初めて拝見。 我れ先にと船に駆け寄る様や、乗船への執着は若い俊寛故か?…イイ意味で浅ましい、人間くさい感じを受けました。 故に、ラスト丘に登って遠ざかる船に手を振った後の幕が下りるまでの虚脱感、特に表情がすごく印象的。 この余韻を楽しみたいところに「大当り!」という大向うがかかって殺意を覚えました!
彌十郎さん@瀬尾太郎兼康って…こんなにデッカイ瀬尾って怖すぎる~!!(頭には+タニシで更にデッケェ~) ろくに栄養も取っていない年老いた俊寛も、よくこんな厳つい人に斬り掛かったなぁ、と驚き~! それだけ乗船したかったんだな、と解釈。
亀蔵さん@平判官康頼は…藤太の白粉を落とす時間がなかったのか?! 首だけ真っ白で違和感。 ん?この役ってコレが正解でしたっけ?
他の配役は、勘太郎さん@丹左衛門尉基康七之助さん@海女千鳥松也くん@丹波少将成経

桜壽博多座大歌舞伎・夜の部【博多座】

本日は【着物の日】の博多座でしたが、あいにくの雨。 …と言っても結構な着物比率で客席は華やか☆ 着用者へのプレゼントとして博多織のポケットティッシュケースいただきました♪
九州新幹線全線開業記念』と銘打って5年振りに勘三郎さんが博多座へ~と言うことで盛り上がりが期待されましたが、まさかの“看板が休演”という事態にガッカリ。 歌舞伎好きには「カンタが初役で団七!」という楽しみはありますが、やはりそれは…ですね。
夜の部・開演前の挨拶勘太郎さん。 勘三郎さん休演の詫びと博多座初お目見えの際の、お岩様での舞台のエピソードをご紹介。

棒しばり

猿弥さん@次郎冠者に「やっぱ山城新伍に似てる…」と改めて確信。 ふくよかだけどメッチャきびきびな猿弥さんの舞踏って大好きなうえ、こ~ゆ~愛嬌のあるお役はバッチリなんで安心して拝見していると…「いや、待てよ~。本公演でこんな大きなお役で拝見出来るって凄い事だわ!これは!」とフト思い出し、何故か段々ー緊張して観るハメに~。 「うぃ~っ…」と酔いが回って本調子で踊り出す所からは…「あれ?れ?」 最初から全力で踊っていたせいなのか?、“ここが見せ場”って感じの盛り上がりに欠けた気がしました。
七之助さん@太郎冠者は猿弥さんとの体型の対比がヴィジュアル的に面白い☆ 亀蔵さん@曽根松兵衛は手堅い。
何度も観ている舞踏だけど、博多座の客席のドッと沸く反応が楽しかった♪

夏祭浪花鑑

串田和美演出で観るのは…もう何回目だろう? 『ニューヨーク・ベルリン・大阪で熱狂の舞台 博多座へ』とキャッチコピー付きで上演するからは、ラストは“博多座バージョン”の捕物帳が期待できるのでは?と、あれこれと予想しながら観劇へ。 そしてなんといっても初役で臨む勘太郎さん@団七の頑張りに期待!!
この演目では中村座の定式幕がかかるんですね。 舞台美術も串田仕様で、運ぶ大道具さんには黒い作務衣姿の女性もいて新鮮☆
幕開きは客電が付いたまま、祭りでの喧嘩が始まり1階客席通路や空いている座席を使ったり、瓦版屋がビラを配ったり…と“らしい”幕開き。 泥場の照明は和蝋燭で、花道での見得では一点のスポットライトでシルエットを巨大に映し出し効果的でしたが…博多座の広さで果たして3階席では観えたのだろうか?という疑問も。 博多座で初登場の平場席は舞台との高低差が大きすぎて、間違いなく舞台奥での演技は観えずらかったかと~(泥水除けのシートを着用して水はかかるが演技が観えかったのでは???) 蚤取りでは、照明デザインの意図するところが解らず、ただただ観えずらかったのは残念。
だんじりのお囃子は大太鼓(+パーカッション少々)とのお二人がメインで演奏で聴き応えあり☆ 附け打ちさんが下手で打っているのは初めてみたかも?
勘太郎さん@団七九郎兵衛は「若いって…美しい!」と思わされる場が度々。 床屋からスッキリと仕上がって出て来た様に「おぉ~♪」 喧嘩っ早い、青い感じがイイように作用している気がしました。 とにかく“全身全霊で頑張ってる”という様がヒシヒシと感じるからか?それ故に凄く力を入れて観てしまうからか?観劇後、ドッと疲れました。 「カンタ、よくやった!」と何様の上から目線ですが…きっと誰もがそう言うでしょう。 いちいちの決める型は美しく、絵的にも綺麗なのですが…たたみかける、心情があれこれと交錯しながら…ついにはこうなってしまう!的な、心情の流れがセリフの中に見えずらく、ちょっと唐突に感じる部分がありました。 しかし初役でこれだと充分な及第点かと思います(何様再びスミマセン) ノド、千穐楽まで枯らさないでね~。
配役をよく確認せずに観ていたので「磯之丞、誰アレ?」 松也くんでした…。 新悟くん@傾城琴浦がよっぽど背が高くなったのね(って松也くん、顔丸くなってるよ…)  七之助さん@お辰は、鉄弓を頬に当てる迄は好演だなぁ、と思ったのですが…それ以降が「もうちょっと年配じゃナイと難しいのかなぁ」という印象(どっしりと構えた感が欲しい)。 私、この演目で一番好きなシーンと言っても過言ではナイ、お辰の「ウチの人の好くのは…」の花道での決めセリフもしかり。 バシッ☆と決まる、スパン!と言ってのける潔さが弱くて残念。 他の役者陣はいつも通りの手堅さで脇をガッチリ固めていらっしゃいました。
ラストは…あれ?それ?で?…でした。 ん~、他の仕様を知っていると物足りなく感じたのですが、初めてご覧になった方はどう感じたのでしょうか?
カーテンコールが3度ほどありましたが、しかし…やっぱりA席18,000円に見合うか?と言われれば、それはご祝儀としても高過ぎました。