エリザベート(武田トート)【日生劇場】

帝国劇場が改装中との事で、今回は日生劇場での公演。 …という事で、袖舞台がナイ為の、舞台規模に合せた演出の変更も多々あり、これもまた楽しめました。
【キッチュ】でのスライドの絵柄、何点か変わっていた気がしたのは…気のせい?
一番スッキリしたのは、シシィが木から落ちる時の映像。 ちゃんと引力に従った髪の毛の方向になってました♪
さて、観劇の一番の目的は“禅さん@フランツ”…ではありましたが、やはり今回は新トート・武田真治さんに注目観劇とならざるおえません!!
超ハードリピーターが多い大人気作品であり、観客も出演者も初演からの続投組も多い中、トートという大役で…しかもミュージカル初出演、というとてもつないキツイ状況での登板でしょうから、武田さんのプレッシャーたるや~冷や汗
総体的には…これだけの状況下の中、独自の“武田トート”というキャラクターを創造していた事に感嘆し、この段階でココまでのものを観せてくれた事に大きな賛辞を送ります!
イメージは小悪魔的というよりは“堕天使”でしょうか。 ヴィジュアル系です。 顔、ホント綺麗です☆
武田トートの唄い方は内野トートの流れを組むロック&シャウト系ですが、オリジナルで大きな特徴があるのは…【所作】と【衣装】
小柄で華奢な方ですから“闇の帝王”という役所から『大きく見せよう』という工夫がそうさせるのか? はたまたその風貌に見合った“小悪魔的”な妖しい雰囲気を醸し出すためか…手振りや動きがとても多く印象的。
残念なのは、背を高く見せようとするが為の“ポックリ・ブーツ”汗 それはあんまりな~、な上げ底ぶりで捻挫しないかと心配なほど。 次々と替わるきらびやかな衣装がどれも美しくキマっているだけに、足元のブーツがそれを台無しにしています。 あれは…別に無理に高く見せる必要なナイのでは? せっかく独自の“トート美”を創り上げているのに勿体ナイ! お洒落では足元が肝心ですもの。 見た目も…だし、第一動きにくそうだし、改善を願います~。
演技の方は、武田さんのトートに対する解釈がとても面白かったです。 “闇の帝王”というよりは、死の世界メンバーの一員だけど、その中ではちょっと変わり者な感じ。 自身が今居る“死の世界”より、“生の世界”に興味があり、度々訪れてはちょっかい出している…というような男の子。 力で支配し死の世界へ引き込む…というよりは甘く誘惑する(お願いだからこっちの世界に一緒に来てよ、というような)感じ。 だから私の中では“堕天使”の印象を強く受けたのかも。
一番驚いたのはルドルフに死のキスをしながら、唾を吐き捨て軽蔑したようにニヤリと笑うところ!! すご~く新鮮でした☆
歌は…試行錯誤されているようで、失礼ながら「意外とウマイ」。 ソロだと不安定な部分もあるけれど、ハモるところは○ 【私が踊るとき】ではすごく情感豊で素直に感動。 エリザベートと対決…な感じで、拒否されるとひどく傷付いてナイーブな男の子、という感じ
で、その衣装。 私の“お絵描き魂”に火が付きましたっ!
基本的にウエストシェイブの七分袖、ヒップハンガータイプのパンツ(お尻小さい!)、同じ色で型違いのパンツやブラウス、黒のバンツ×黒のブーツもあれば、黒のパンツ×赤ブーツもあり…とコーディネイトもいろいろ やっぱり“赤=ワインレッド”という暖色が取り入れられていた所が新鮮です♪ マエストロでは懐かしの白ブラウスで興奮しましたが、ボトムは黒でした。

青い旗キャスト
トート:武田真治/フランツ:石川禅/ルドルフ:浦井健治/ゾフィー:寿ひずる/少年ルドルフ:塩野魁士

五月大歌舞伎・昼の部【新橋演舞場】

ひと夜
歌舞伎座で上演されたのは42年前で、その時は雀右衛門さん(@おとよ)襲名披露公演。  今回はそのご子息・芝雀さんが初役でおとよを務める。
時代は大正の浅草の夏の夜。 セットの書き割りには凌雲閣も描かれていたそうで? 私は三階席だったので残念ながら見えず~悲しい
芝雀さん@おとよは…2002年3月国立劇場で上演された【秋の河童】以来の“蓮っ葉な浮気女”ってな感じの役柄。
“ほうろく灸”の盆を頭に「あ~ん、怖いわ。あ~っ、熱くなってきたわ。あ~っ、あ~っ」と、もだえる声が色っぽくて笑える。 ほうろく灸とは、頭の上に焙烙(ほうろく)の皿を載せ、百会のツボ に灸をすえ、無病息災、身体健全を祈願するもの。
信二郎さん@松太郎はおとよの夫で活動写真家。ちょっとおねえ系でナヨナヨしてて「あ~っ、爪が割れたわ」ってのは爆笑!! ドブ板に足を突っ込んでヒステリックに怒るところとか、猛烈に嫉妬して怒り狂い…いざ本人の前ではダダをこねてジレてみたり。 「信二郎さん、もしかしてソレ、地ですか?」ってなくらいな好演☆
夫婦喧嘩に翻弄される歌昇さん@田口義道の翻弄されっぷりも楽しく、おとよを抱きしめようと葛藤する場面は、さながら【ルパン三世・カリオストロの城】ルパンを連想させる?!(解る人には激しく同意してもらえるかと)。

寿式三番叟

千歳=女性…と思っていた(しか観た事がなかった)ので、種太郎くん@千歳の前髪立ちの少年バージョンにまずビックリ。 歌六さん
染五郎さん@三番叟×亀治郎さん@三番叟のダンスバトルが始まると、背景は松葉目ものの定番の松から、松竹梅のものにチェンジ! さすがに舞踊に定評のある花形二人、一気にみせられる
五穀豊穣の神に祈りを捧げる舞で、盛んに足をフラメンコのように踏みならすのは…『大地を強く踏みしめて大地から災いを追い払う』…という意味があるそう。
ここまでアクティブな三番叟は初めて観たかも!

夏祭浪花鑑

この演目で、一番好きなのは…実はお辰のあのセリフ。
こちの人が好くのはココじゃござんせん。…ココでごさんす。
これを聞くと「く~っ、カッコイイ~っ」と胸がスカッとするのが楽しみのひとつ。
しかし…福助さん@お辰は、なんであんなにネチャ~ッという感じの粘着質な感じの物言いと表情なんでしょう? さすがに「ココでござんす」は、スパッと気前イイ感じでしたが。 お辰って女性は、今回イヤホンガイドでも改めて解説していましたが『付けるモノを付け忘れて生まれ出て来たような女』、というキャラ設定。スパッと竹を割ったような威勢のような姉さん、のはず。 今回、全体的に受けた福助さんのネットリとした印象は“顔に色気があり過ぎる”部分をより強調したのだろうか?
もうひとつ残念だったのは、『あの旦那にしてこの女房あり!』みたいな徳兵衛とお辰の夫婦ぶりが(この二人が夫婦というイメージが出来なかった)全く感じられなかった事。 いつもは「こんな気っ風のイイ夫婦、イイねぇ~」と思うのだが。
お辰の“襟の折り返し”、これって私は初めて観た…と思う。 遊女以外の女性で、あの襟にはどんな意味があるのだろうか?
あ!お辰が頬に押し当てる鉄球はホントに煙が出ている…って事は私、初めての気付き。
【長町裏の場】では…歌六さん@義平次の垢まみれで臭ってきそうな様と、欲が着物をきているかのような金に対する執着心は見事に表現されていて、まさに“欲望の権化”。
吉右衛門さん@団七。 実はこの演目で一番観たかった、楽しみにしていたのはやっばり吉右衛門さん@団七。
でも…意外にも何故かしら『一本足で立っての見得の美しさ』と『義平次を跨いで前後にジャンプ』が印象的だった事以外、実はあまり記憶に残っていない汗 何故? 「悪人でも舅は親。親どの許してくだんせや」は絞り出すようで心に響いて残ったが。
今回、祭囃子はお江戸で上演という事で『わっしょい、わっしょい』というかけ声の神輿。 な~んか、な~んか拍子抜けでパンチがなくて~悲しい
コレ、もし博多座で上演だったら『オイッサ、オイッサ』になるのかな? でも、博多山笠だったら全速力で駆け抜ける山(神輿)だから、団七が殺人の後始末する暇はなく、アッという間に通りすぎちゃうな汗

五月大歌舞伎・夜の部【新橋演舞場】

座頭が吉右衛門さんで、なかなか珍しい座組で…しかも魅力的な演目がズラリと並んだ演舞場歌舞伎。 開幕前から、こんなにワクワクと観劇を待っていた歌舞伎公演は久しぶりかも☆
昼夜観劇を終えた総括的な印象は『信二郎さんに敢闘賞』!
どれも重要な役所でありながら、全く違うタイプのキャラクターの演じ分け。 これは…2001年六月博多座大歌舞伎以来のフル稼働活躍では?という感じで、普段の信二郎さんの役付に今イチ不満だった私、今公演でのご活躍は素直に嬉しい☆ 今後のご活躍が楽しみ♪

増補双級巴 石川五右衛門

数ある五右衛門の狂言から面白い場面を抜き出してつなぎ合わせたのが、今回上演される『増補双級巴』との事。
公家の道化役って…よく身ぐるみはがされますよね? 桂三さん@呉羽中納もまた然りで「まろにも衣装」「まろ裸」はお決まり。
公家に化けて足利将軍家に乗り込んだ吉右衛門さん@石川五右衛門染五郎さん@此下久吉が「やっぱりお前か」と幼なじみのよしみに戻ってから寝転んで頬杖をついて話す様が絵的に面白い。
演目の見せ場、公家装束に葛を背負って宙乗り…というこのギャップが豪快さを際立たせている感があり、改めて見事な演出だな、と。
浅葱幕って『空気を現している、次の場は屋外の場面ですよ…という暗示』だったとは、そんな意味が含まれているとは、恥ずかしながら今回初めて知る。 その浅葱幕前では、杵屋栄津三郎さん+鳥羽屋里長さんによる大薩摩演奏がダイナミックで聴き惚れる。
南禅寺山門では、鷹が一巻を持って飛んできて、それを門上に居る黒子さんにバトンタッチして五右衛門の元へ…という連携プレイに感動。
「絶景かな~、絶景かな~」というセリフはいつも心の中で一緒に言ってしまう名セリフのひとつ ココでは五右衛門役者の誰もが満席の客席を見渡してさぞ気持ちがイイでしょうね。
宗之助さん@左忠太、むきみの隈のお顔を初めて拝見! あら、りりしい♪
昔は自分の出生に関する系図は縦系図と横系図があって、お金の為に由緒正しき家柄の人がそれを売ったり、身分を偽装するものが出世の為に買ったり…という売買が行われていたらしい。 今じゃ“個人情報保護法”なるもので厳重な管理下の元にあるから…きっと無理ね

京鹿子娘道成寺

種太郎、廣太郎、米吉、廣松、隼人、児太郎、龍之助…と所化に梨園の御曹司がズラリ。 小学生~高校生までと背丈のバラつきはあるものの、皆さん初々しくて可愛い。
米吉くん?が袖からなかなかお銚子が出ずに手間取っていたら、仲間の皆がすご~く心配そうに見守っていた様にニッコリ。 恒例の“舞づくし”がなかったのはちと残念だったが、客席への手ぬぐい投げの趣向が 福助さんと御曹司のサイン入り…だったそうで、各々どんなサインか見てみたいものだ!
所化は、舞台両袖で控えている時に正座でもじもじ…けど、踊りとなるとシャンと素晴らしく立ち上がって踊る様に感動。 さすがです。 中でも児太郎くんの…お父さん(福助さん@白拍子花子)を、舞踏を食い入るように見ていた目が印象的
道成寺の言われをいう演出となっており、福助さん@白拍子花子は東京では襲名披露公演以来14年振りとの事で…なんだかよく目にしていた印象だったので意外(映画のせいかな?) 鐘の綱に烏帽子をかけて新月にみたてるというのは“中村流?”との事で、今回もあり(今年二月博多座でも魁春さんも)
今回、疑問に思ったのは裃後見さん。 芝喜松さん@女形の拵え、福太郎さん@立ち役の拵え…と男女一対の後見って初めてみたような? あれは、どういう基準なんだろうか?
道成寺、改めて大変な舞踏だと思いながらも新しい発見もあり興味深く拝見。
鈴太鼓に変わる前の引き抜きでは、ヘビが脱皮するかのごとく脱ぎ捨てスルリと薄墨色の桜の着物に変わったのは見事だった 後の大蛇を想像させるようで…。

松竹梅湯島掛額

まず、上手から下手にむけて定式幕が引かれての幕開きにビックリ!
オウムが何度も繰り返される「あっちも気がかり、こっちも気がかり…。どうか体が二つほしいものじゃ…わいわいガヤガヤ」はそれぞれの役者さんのカラーが出ていて笑える♪
吉祥院お堂の欄間の天女柄は毒々しいほどの極彩色で艶かしい感じ。 この左甚五郎作の“吉祥天の天女のような娘”といわれて、亀治郎さん@八百屋お七がその欄間になりすまして身を隠す様は面白く(どうみてもバレバレなのがまた笑える~)、お嬢吉三を彷彿とさせる。
信二郎さん@長沼六郎は、ふんぞりかえった思慮の浅い悪役で奮闘。 あのような道化の悪役では私、初めて拝見! 「お七はどこじゃ」と探す場では…ムービン、ズバリ言うわよ、チッチキチ~、イナバウワー…は誰もきちんとウケをしなくてやりっぱなしな感があり、かえって笑える。
染五郎さん@小姓吉三郎ではの前髪立ち姿を久々に拝見するが、まだまだイケる! 若くて美しい16才だった。 お着物が“吉印”なのもお洒落。 吉右衛門さん@紅長さんから「女の扱いにかけては梨園で一二を争う色男・染五郎に尋ねてみよう」というような事をフラれ、困る染五郎さん「しかし最近は子供にメロメロで~」と更に続けられると「たいそう可愛い子お子様だそうで」と受けた立つご愛嬌。
で、その…なんとも愛嬌たっぷりな吉右衛門さん@紅長さんは、亀治郎さん@お七がだだをこねる様を茶化して真似する様がかわいらしくてたまらない!
【吉祥院お土砂】は、もうホント楽しい、楽しい♪
御土砂とは…加持祈祷に用い、 死体にかけると硬直が治ると考えられていたもの。
新派の役者さんの客演によるビックリな演出もあったりで、思いっきりのお遊びの場。 とにかく舞台に居るあらゆる人に吉右衛門さん@紅長さんが御土砂を振りかけてぐにゃぐにゃにしてしまい笑いの連続。 一番いたずらっ子な表情が輝いていた?のは、…ツケ打ちさんにかけちゃうトコ。 あの吉右衛門さんの嬉々とした表情を観るだけで、この演目は満足!な感じさえも♪
そして定式幕を引く扇一朗さんにもふりかけてグニャグニャに…で「バーッタリ!」
【火の見櫓】では、鳥屋口の揚げ幕のところまで、ちゃんと木戸になっているんだ!…ってな事も今更気が付く私。 私、実は人形ぶりを観るのはコレが初めて。 …なので亀治郎さん@お七に対して比較対称のものがなくコレに関しては「どうだった」という感想は述べられないが、人形振り後の…花道からラスト鐘を打ち鳴らすまでの気迫はものすごいものがあり一気にみせられた
「早く、早く今のうちに逃げて~」と泣き叫んでいるお七の心情が痛いほど伝わっきて、少女~女へと変貌を遂げた情念が怖いほど
人形遣い又之助さん段之さん。 足遣い(踏みならし)は錦弥さんで…その足遣いは下手で専用の板上で鳴らす、という事も今回初めて知り興味深かった。
それにしても…前半と後半で随分印象の違う、違いすぎる演目だったなぁ汗

團菊祭五月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

傾城反魂香

梅枝くん@土佐修理之助は生真面目で初々しい感じ。 私、修理之助と又平は同い年くらいの同期、という認識がなぜかあったので驚いた。
三津五郎さん@又平は、死を覚悟して今生の名残りに…と、手水鉢に絵を描こうとする時、手に筆を持ちボーッとしている様子(心ここにあらず的な)が、うつろな目が印象的で、時蔵さん@女房おとくが、その様子に気付き、筆に墨をふくませて持たせて優しく持たせてあげる所に涙
名字を許されてからの喜びいさんでのお着替えは「見て見て」「いいでしょ」ってな感じが微笑ましく、無邪気に喜ぶ夫の着替えをかいがいしく手伝いながらも、ふと涙をぬぐう様、泣き笑いの表情が実に素敵な女房ぶり
喜びの舞で出だしの鼓の調子が合わず、たしなめる夫と合点とうなずく夫婦間の空気も実にイイ感じで、二人の心に寄せて「ホント良かったネ~」と一緒に喜べる印象。

保名

夜の部二つ目の演目、舞踏二本立ては将来の團菊対決。 どちらも初役とのことで、期待が高まる~♪
物狂いの象徴でもある“狂い笹”の替わりに恋人の小袖を羽織ってひきづり、鬢バラのかつらに病鉢巻きとくれば…菊之助さん@ 保名、麗しさ充分。
保名は…いつも彼の素性が気になっていたのだが“天文博士の弟子”という身分である事を今回知った。 やはり?ロマンチストな男性の要素を多分に秘めているキャラクターなのだろうか?
♪その人影に露ほども似た人あらば教えてよ~♪と、本来なら前半は死んだ恋人を想うあまり夢うつつで意識が朦朧としている…という表情であろうが、菊之助さんは最初から恋人の死を認識して悲しみの舞を舞っている、という印象。 終始目が覚醒している、意識がはっきりしている感じが強い。 よって“物狂い”の印象は薄かった。 面白かったのは、長袴を前後に一本に伸ばし、まるで板の上に乗っているような…心のバランスを懸命に取っているような印象を受けたこと
途中参加の望月朴清さんの鼓が圧巻!

藤娘

立役の海老蔵さんが、生粋の女方舞踊に挑む。 この後のパリ公演でも披露だそうで。 海老蔵さん@藤の精…って私、海老蔵さんの女形って初めて拝見。 ん~、感想を文章にするのが非常に難しい エラそうですが「海老蔵さん、頑張ってた」という印象。
藤のカーテンからヒョイと覗く様や娘の恥じらいの部分は…体の造形的、雰囲気からどうしても厳しく“妖精”な感じはナイ。 扇子の開き方が豪快でビビる事も多々。 しかしながら、藤音頭では軽快に、男を知る前と後との踊り分けや扇を使って格子から覗く様などは強く印象に残った。
便箋 大津絵とは…
江戸時代、人々の往来で賑わった東海道の宿場町、大津で生まれた民画で、鬼の念仏、藤娘、鷹匠、座頭、槍持奴などがあり、それぞれの画題に応じて護符としての意味も持つ絵。
中でも【藤担ぎ娘=(藤娘)】は『娘に良縁が授かる』というご利益があるらしく特に人気が高かったとか。

黒手組曲輪達引

セットでちょっと疑問だったのが…手前には睡蓮が終わりかけている様で、奥には桜が満開の様子が描かれているところ。 季節は…春?
矢ガモの【2001年宇宙の旅】~【恋のダウンロード】までは、ちょ~っとお遊びが長過ぎる印象だったが、そこは“團菊祭”。 お祭りですからイイんです! 菊五郎さん、やりたかったんだろうなぁ…汗 私的にはイヤホンガイドの塚田さんが「これは仲間由紀恵withダウンロードの…」とうやうやしく解説していたのが激しくツボだった~☆
【助六由縁江戸桜】の登場人物を使って世話物に仕上げた河竹黙阿弥のパロディ狂言なので「あ、コレはアノ部分だ」などの発見も楽しいが、私の大好きな朝顔仙平は普通の武士の拵えで、ちと残念(亀蔵さん)。 あの超ド派手朝顔コーディネイトが好きなので。
本家?では、助六の兄(曾我十郎)として白塗りのイイ男な白酒売りですが、橘太郎さん@白酒売は、貧しい老人風情で“白さけの言い立て”を。 橘太郎さんのあのコロンとしたほんわかな愛嬌ある雰囲気が大好きなのですが…おヤセにいらっしゃいますよね? 品切れの事を「山でございました」と言うんだ~?!
名物?“股くぐり(助六のみ)”は、扇であおぐ、お祓い、カーリング…など、本家と同じように笑いを取るところ。
“短気を意見の封印”として刀を簡単に抜かないように刀のツバに結ぶのは面白い。
立廻りでは、菊五郎さんの家紋・重ね扇の形をつくったり、ラストの屋根上では5月だから“鯉のぼり”?をあしらっていて、歌舞伎の立廻りの型の美しさを堪能。 さすが菊五郎劇団!
菊五郎さん番頭の権九郎花川戸助六は、実に鮮やかで楽しいものだった☆

アラビアン ナイト【スペース・ゼロ】

お誘いをいただきまして、私“初・文学座”。
…と言っても、今回は『子供も楽しめる大人の芝居』をコンセプトに企画された“文学座ファミリーシアター”という作品のひとつを観劇。 …なので、いつもの文学座のお芝居とはちょっと趣が違っていたでしょうね?
今作品【アラビアン ナイト】は4年前に好評を博したとの事でそれからの再演。

便箋 あらすじ
最愛の妻から裏切られた国王は、その妻の替わりに毎夜若い娘を妻に迎えては翌朝処刑するという残忍な人間に変わってしまった。 そこで国の娘と国王自身を救おうとシャハラザードという娘が自ら王の妻となる。 初夜“世にも不思議で面白い物語”を語り聞かせると、王は興味を示しその続きを聞きたいが為に、彼女の翌朝の処刑を延期する。そうして千日間、夜毎ひとつずつ語った物語も尽きる時がきた…。
有名な千夜一夜物語から【アリ・ババと四十人の盗賊】【ある乞食の物語】【船乗りシンドバッドの冒険】【アブ・ハサンが屁をした話】【ものを食べない奥さんの話】【妹をねたんだ二人の姉】を、目黒未奈さん@シャハラザードが、早坂直家さん@国王に次々と語り聞かせる。
舞台美術は傾斜がついた板目の丸盆のみ、が基本で、その上に木が差し込まれたり、切り穴から小道具を取り出したり…という、至ってシンプルなもの。
役者の衣装も全員全身白で、物語ごとに多少+α小物がある程度。
巧みな語りで物語とキャラクターの状況説明で舞台は進み、観客のイマジネーションにゆだねられる部分が大きく、それはなんの苦もなく皆、アラビアの世界へと誘われる
音楽は4人のミュージシャンによる生演奏で、使われる楽器は民族楽器も入れて30種もあるそうで、独特な世界観を演出に一役買っていたのも興味深かった!
“ファミリーミュージカル”という類いの作品は他劇団でも観劇したが、それは完全にその物語の世界を美術や衣装で造って見せるもの。 見たままのものに対して子供たちは各々に何かしらの感動を覚えるのだろうが、それに対し、シンプルに徹したこの舞台は“想像する力を育む”という作用が大きく働くと思う。 これはとても大きな魅力であろう
語られる話の中には初めて聞くものもあり、忘れかけていたものが鮮明になったり、面白かったり、怖かったり、リアルだったり…。
中でも【妹をねたんだ二人の姉】ではマスクプレイで、ますますイマジネーションをかきたてられ、人間の愚かさについて深く考えさせられ印象に残った!
とにかく初めて観るタイプの芝居だったので、とても新鮮に感じ大変面白かった♪