四月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

井伊大老

魁春さん@お静は初役とのこと。 吉右衛門さん@井伊直弼との夫婦ぶりが(立場は愛妾ですが) …個人的には目に珍しい印象。
「生まれ変わるなら間違っても大老にはなるまい…」と顔を覆って号泣する、というのは“殿様”と呼ばれる立場の男の人は珍しいのでは? それだけに打ちひしがれた様子と心情を強く感じ心が痛い。 直弼が静に贈った“安雛さま”を二人で手にし、日の落ちた部屋で寄り添いながら遠い目をして語る様に深い夫婦愛を感じられた。
しかし~魁春さんって、目が恋していない…っていうか、無表情っていうか汗
イヤホンガイドの腰元の着物の解説で、“矢絣”が流行ると戦争が起こる、というジンクス?を初めて知った!

口上・六代目中村松江襲名披露五代目中村玉太郎初舞台

下手より→
藤十郎・吉右衛門・又五郎・時蔵・勘太郎・福助・玉太郎・松江・東蔵・魁春 ・梅玉・芝翫・富十郎・仁左衛門・左團次・歌昇・秀太郎・我當・菊五郎・雀右衛門
豪華、豪華 又五郎さんの「歌右衛門さんとは子供の頃一緒に…」というようなお話はもう誰からも伺えない貴重なもの。 どうぞどうぞいつまでもお元気で。
玉太郎くんは途中参加♪

時雨西行

藤十郎さん@江口の君は初役との事ですが、遊女と菩薩の間を自在に行き来するという様を違和感なく表現されてさすがな印象。 「今、色っぽい遊女」「今、菩薩」…という切り替えが、梅玉さん@西行法師と一緒に見えて来て面白かった。

伊勢音頭恋寝刃

久々に仁左衛門さん@福岡貢を拝見。 要所要所の見せ場でパシッと美しく型が決まる様は観ていて気持ちがイイ! 御家の重宝・名刀(妖刀)青江下坂を手にお人好しの青年が狂気に取り憑かれて行く様は何度観てもそら恐ろしい
時蔵さん@お紺は、のれんを押してツイと出てくる様に、売れっ子遊女の艶っぽさと貢に対する気持ちが表情にみて取れて美しい☆
福助さん@仲居万野初役との事ですが、すでに範疇のお役かと。 私の隣席の人は「上手いねぇ」を連呼されており、ご本人も嬉々として憎々しくて嫌みな女を演じていらっしゃるご様子。 あの曲がった口がなんとも嫌みで、貢じゃなくてもイライラさせられる好演。
勘太郎さん@お岸は初々しい印象。
松江さん@今田万次郎は、つっころばしのナヨナヨとした部分はあるものの、可笑し味がもうすこし欲しく…弱い。
東蔵さん@お鹿、というよりはあんなデコ広の遊女自体に衝撃! ヅラの被り方?顔の作り方でああも違った印象になるのかと感心。 “お鹿”としては「何もお鹿ちゃんまで殺さなくてもイイのに」と貢に対して猛烈な憤りを毎回感じるのだが、それは今回なかった汗 もう少しバカっぽい?愛嬌が欲しかった…かな。
凄惨な連続殺人の場の前のひと時の…伊勢音頭の総踊りは何度観ても目に美しく楽しく、ホッと一息つける場である事を再認識。
このお話はノンフィクションで、後世、歌舞伎役者の手によって貢とお紺の墓が並んで建立された…との事。 合掌。

東海道四谷怪談・南番【シアターコクーン】

便箋 南番
1994年第1回コクーン歌舞伎で上演された『四谷怪談』が新たに串田演出によってよみがえる…

安心して…というか落ち着いて観れる、って感じ?
具体的に「この部分が串田演出だな」と初見で明らかに判るようなものはなく、いわゆる古典歌舞伎の中のエンターテーメントの手法の面白さに改めて感心する、といった演出

特筆すべきは…といってもコレは北番も、だが勘三郎さん@お岩さん“薬を飲む一連の所作”は、やはり素晴らしい! 大切に大切に有り難かって一粒たりとも残さないように丁寧に飲む薬は、彼女以外は皆、それが毒だと知っている訳で、彼女が感謝の気持ちを口にするほど胸が締め付けらる。 そして、坊やの着物を手にして語りかけていた時に急に手に力が入らず取り落としてしまう。 ココが私の第二の涙腺決壊ポイント(第一は蚊帳で爪が剥がれるトコね) もう涙、涙…悲しい
伊藤家に談じ込もうと身支度する様は、顔が醜くなったとしても女性としての身だしなみをなんとかつくろうとする様がまた悲しすぎる。 元結が手が上がらず切れないため宅悦に切ってもらう…ココが私の第三の涙腺決壊ポイント! 顔だけでなく全身に毒は回ってるんだな、と。 あなたはもうすぐ死ぬんですよ、と…判ってしまう。
今まで観た中でこの場は一番激しくて胸元がガバッとはだけ、もう乳房が(ナイですよ)見えそうなくらいのその胸元はゴツゴツと骨が浮き出ている(化粧ですよ)様でお岩さんという女性の哀れさ、悲しい生涯を観るようで胸がとても痛くなった
今回、これほどまでにお岩さんに対して改めて「なんて薄幸な女性なんだ」という印象を強くしたのに対し、橋之助さん@伊右衛門が以前感じたほどの“とんでもなくイヤな男”に見えなかった(印象が薄かった)のは何故だろう?
「首が飛んでも動いてみせるわぁ~」の名セリフに「こいつホントどうしようもない悪だよ」という、いつも感じる憤慨の思いもなく…なんだかスーッと流れて行く感じで残念。

“隠亡堀の場”は本水を使用。 この場の前に、平場のお客さんに対し笹野さん+七之助さん@舞台番から“水よけの練習”指導があって、皆さんの息の合った防水シート使いが面白い!
ここで弥十郎さんと扇雀さんが歌舞伎役者のなりでトークに参加。 来年?再びNY公演が決定した事などの報告があり、一息つく場が設けられていた。
本水での“戸板返し”は、その補助の為にダイバーが潜ってて…「ソレ、私やりたい~」と、そのダイバー(ってか作業潜水士)ばかりが気になってしまった!!
戸板返しは…それなり早さだったが、水門から登場の与茂七への早替わりは改めてスゴイ☆ 早いっ! 全身ズブ濡れなのに、あのスピードで与茂七は…スゴイ~!!

“仇討の場”は…季節は冬??? “夏の悲劇”という演目という認識だったので、いきなりドカンと雪が降ってきてビックリ(コクーン三人吉三も観たかったな)!
本水を使っての立廻りは、コクーンだと舞台と客席がホントに近いので半端じゃなく水がかかるんでしょうね? 避けるのに必死で舞台をちゃんと観れないのでは?やっぱり椅子席で良かった…と思ったのはひがみです、ハイ汗
今回、二つのバージョンを観て思った総括的・個人的な感想は「勘三郎さん以外の役者さんが立っていない」という印象が強かった
今まで観た“チーム中村屋”のお芝居って勘三郎さんを中心にして、各々の役者さんの個性も意外な一面も上手く引き出されて好演…そしてお芝居全体が、小屋全体に熱気が充満している印象を私はもっていたのだが、今回は「勘三郎さんしか印象に残らなかった」
演目によるのかも…なのだが、ちょっと残念。
さ、勘三郎さんの次なる挑戦は何を見せてくれるのか? 楽しみ~

青い旗キャスト
お岩・小仏小平・佐藤与茂七:勘三郎/民谷伊右衛門:橋之助/お梅:七之助/按摩宅悦:亀蔵/伊藤喜兵衛・お熊・舞台番:笹野高史/直助権兵衛:弥十郎 /お袖・お花:扇雀ー

四月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

私は残念ながら歌右衛門さんの生の舞台を拝見する機会には間に合いませんでしたが、歌舞伎にスコーンとハマった時に頻繁に映像を拝見する機会に多く恵まれました。
で、今公演は【六世歌中村右衛門五年祭】(神道は○○回忌ではなく○○祭…なんですね)であり、六代目中村松江襲名披露&五代目中村玉太郎初舞台。 歌右衛門さんの得意とされた演目を拝見出来る嬉しさと、おめでたい舞台に立ち会える喜びを感じながらの観劇。 しかも…【伊勢音頭】以外は全て初めて観る演目でいつも以上にワクワクして歌舞伎座に足を運びました♪

狐と笛吹き

久々に歌舞伎の演目でダダ泣きしてしまった悲しい 両隣の席の人の視線が痛いくらいグズグスさせてしまい…失礼致しました汗
北條秀司が『今昔物語』のエピソードに想を得て書いた大人のファンタジー”…という事で、時折気恥ずかしくなるような台詞もあるけど…せつないお話。 ちょっと映画【キャット・ピープル】を思い出させる。
舞台の進行にあわせて四季の移り変わりの美術が美しく、目に鮮やかで楽しい
苦悩する貴公子を演じたら私の中ではNo.1な梅玉さん@春方は、相も変わらず爽やかな台詞まわしで、嫌みがなく、その苦悩と葛藤に心を寄せて観ることが出来、さすがな印象。 狐を抱いて帝に別れを告げる花道の引っ込みに号泣。
対して、福助さん@ともねは、スネたり甘えたりする様がやりすぎな感があり、狐である事を打ち明けた後も春方が永遠の愛を誓ってくれた事に喜ぶ姿と笑顔が…ニタリ、って感じで怖い(なぜキャイ~ンポーズなんだ?) しかし春方が絶望にうちひしがれるラストでの葛藤は、思いっきり涙を誘われる熱演。

高尾

久しぶりに雀右衛門さんの舞踏を拝見。 これって… 上演時間中の移動距離って、六畳くらいなもんですよね?(前席の人の頭がかぶって殆ど見えず~悲しい
自分の墓の前に亡霊として現れた遊女高尾太夫が、恋のときめきやつらさ、地獄の責め苦を表現…していたらしいのだが…見えなかった 荻江節にのせて。

沓手鳥孤城落月

国生くん@石川銀八(裸武者)は…その出で立ちに…豊満な胸にビックリでしたが、驚くほどしっかりとした立廻りで、身長に合わせたサイズなんだろうけど?長刀の扱いも決まっていて、二度ビックリ! ここまで一人で見せる舞台は初めて拝見したので、その成長ぶりに感慨深いものが。 演じるご自身も嬉々としたものがあり、最期の階段落ちにも度胸の良さが見受けられ、沢山の拍手が。
淀君は五世と六世の歌右衛門の当たり役…との事で、この度は芝翫さんが。 発狂してゆく驕慢な女は恐ろしく、人の判別も出来ない様で家来に色目を使う様は薄気味悪く…ちょっと【平家蟹】の玉蟲が思い出された。
しかし~、この発狂の様をなだめつづける女官役の皆さんは長~い時間、手を上下させて…お疲れさまです汗

関八州繋馬

近松門左衛門の浄瑠璃をもとにした舞踊劇で、六世歌右衛門さんが心血を注いで復活上演した大作との事。 この度は如月姫実は小蜘蛛の精実は土蜘蛛の精魁春さんが演じる注目の舞台であり、松江さん@源頼平玉太郎くん@里の子梅松…での襲名のこの演目では、東蔵さん@里の女小百合が若い女の役(娘でビックリ)で花を添えていたおめでたさも。 梅丸さん@里の子も好演。
時蔵さん@伊予の内侍は、このところ艶っぽい姉さんで拝見する事が多かったので、目に新鮮。 改めてクールビューティーです。
仁左衛門さん@将軍太郎良門は、久々に藍隈・仁左さんを観てそのカッコ良さに惚れボレ☆
魁春さんは三役って事になるんですかね? その変化の演じ分けで大奮闘に拍手~でしたが、土蜘蛛の精は…なんであんなに隈が汚いの? ず~っと気になって、気になって…気になって~汗
何故だが演目全体の感想、といよりは役者さん個々の印象が強く残った観劇だったが、ラストは“ザ・歌舞伎”な趣向で大満足な演目。

東海道四谷怪談・北番【シアターコクーン】

実は…コクーン歌舞伎は、昨年の【桜姫】が初見で、勘三郎さんがご出演の…となると今回が初めての観劇。
【東海道四谷怪談】は2002年9月の博多座公演以来の観劇で、この時、勘九郎さん(当時)@お岩さんに大泣きしながら深い感銘を受け『お岩さんなら勘九郎さん』な私。 久々の再会と斬新な演出で毎回話題の“コクーン歌舞伎”ではそのお岩さんはどうなるのか?が興味津々で観劇。
そのコクーン歌舞伎、今回の演目は12年前に第1回公演として上演した【東海道四谷怪談】。
『これまでのコクーン歌舞伎の集大成』ともいうべき南番。 襲名後の新たな出発に向け「いつまでも“革新”でありたい」という勘三郎さんの思いが詰まった北番。 …という串田和美さんの演出による二つのバージョンが用意され、その比較も楽しみのひとつ。

便箋 北番
南番では上演されない“三角屋敷・小仏小平内”を上演。 洋楽を使用し、斬新さな演出がより顕著で革新的な舞台。

開演前や幕間には椎名林檎の曲が流れ、その気だるい歌声は天井からさがる大提灯の不気味な雰囲気と妙にマッチしている。
洋楽…は、私見としては『ハマっている所もあれば、厳しいところもある』かな? わざわざそこは効果音を鳴らさなくても~と耳障りな部分も感じたのは確かだけど、両袖の屋台倉?からチャリンと揚幕をあげてミュージシャンたちが演奏するのは目に楽しい
断末魔の鐘の音はさすがに古典に取って替わるものがなかったのか、そのまま使われていたので、改めて下座音楽?の素晴らしさを認識する気付きもあった。
舞台美術は…まず、巨大な仁王像にビックリ! アレって…造るの大変だっただろうなぁ、材質は何で出来てるんだろう?と気になってしばらく舞台に集中できず~汗 コクーンって、盆はナイの? その役割を担う板敷きに車輪が付いた上で演じ、大道具さんが袖からスライドIN~OUT~回転で大忙しの活躍の様も楽しい
また【欽ちゃんの仮装大賞】のごとく頑張る浪後見さんの活躍にうなる“隠亡堀の場”には「なるほど、そうきたか!」と思い、“大詰”では…「ほぉ~、そういう終わり方かぁ…」と意表をつかれて面白かった。
お子様の“遠見”は大変効果的に使われており、印象的。

勘三郎さん@お岩さんには…やっぱり泣かされた。 私の“涙腺決壊ポイント”である『蚊帳に取りすがって爪がはがれる』シーンでは、その指先がちゃんと真っ赤に染まっているのを初めて知り、その細かさに驚いた
どうやら奈落がナイ?舞台で“髪梳き”はどうやってするんだろう?と、いつも以上に固唾を呑んで観ていたが…判らない。 照明の光量の差か?不気味な暗さと、お歯黒のカネが口から顎に流れて見た目の怖さ倍増。 …ながらも悲しみをたたえているお岩さんに胸が締め付けられ…悲しい。
新悟くん@お梅は、過呼吸なのか?大げさに息を吸い込んで言う様に笑いが起こるが、しつこい印象が強く必要性を感じない。 が、ただひたすらに見染めた伊右衛門に「お前じゃ、お前じゃ」と熱に浮かされている様は微笑ましくもあり、怖さも感じることが出来た。
もう完全に“チーム中村屋”のレギュラー・笹野高史さんは、今公演でも何役も兼ねる活躍。 北番の伊藤喜兵衛は金ピカ成金で大袈裟にユーモラスな役作りで、笑えたけど…けど…、と今公演に関しては私的には「う~ん」
扇雀さん佐藤与茂七小仏小平と立役のニ役だったが、スッキリとした風情で…実は最近は女形より、立役の扇雀さんの方が好きかも。
“三角屋敷・小仏小平内”が上演されたので、より話の背景が解る事も最後に書き添えておかねば…という事と、このような斬新な実験的な?演出に挑戦する姿勢にやっぱり大きな拍手です。

青い旗キャスト
お岩・直助権兵衛:勘三郎/民谷伊右衛門・小汐田又之丞:橋之助/お袖:七之助/お梅:新悟/秋山長兵衛:亀蔵/伊藤喜兵衛・按摩宅悦・お熊:笹野高史/四谷左門・仏孫兵衛:弥十郎/佐藤与茂七・小仏小平:扇雀

四月博多座名作公演【博多座】

藤山直美さんの博多座公演は【喜劇 道頓堀ものがたり(‘03.4)】、【花あかり(‘04.4)】に続いて今回で3回目。
『博多の春は直美さん』がこのまま定番化してくれると嬉しいなぁ☆ 「あ~、笑った。楽しかった」で劇場を出ることの出来るお芝居って博多っ子にはすごく合っていると思いますし、かく言う私も大好き! しかも今公演は…泣いて、笑ってという人情芝居【太夫さん】、思いっきり笑える喜劇【はなのお六】という豪華二本立て☆
2006年秋スタートの連続テレビ小説【芋たこなんきん】主演が決まっている直美さん。 この先しばらくは舞台で会えないと思うと観劇にも力が入ります?

太夫さん

戦時中、ある男が身ごもっている自分の彼女を遊郭に預けお金を受け取り失踪。しかし女は子を生み育て、男の帰りを信じてひたすらに待っている。戦争が終わり、日本も復興著しくなってきた折、その景気に乗って財を成した男が、女と子供をを迎えに来る…というハートフルなお伽噺。
過去の病気のせいで?ちょっとトロめな藤山直美さん@きみ子は人を疑う事を知らず、人から言われた通りに物事に励む純真無垢な女性。
登場では小汚いなりで、太夫としての修行を積んで“さなぎが蝶に成長”するがごとく、見た目の変化も楽しく、「男に孕ませられたうえ、金で売られて逃げられたかわいそうな女」という周囲(観客)の目の中、健気に生きる彼女に対し、最初は哀れみを持って彼女を見る。
しかし「あの人は必ず迎えに来てくれる」という確固たる信念をもって待ち続け、母親として一回り強くなったきみ子の姿には、「そうだといいね。きっと来てくれるよ」という気持ちにさせられ応援したくなる愛嬌ある女性として好演♪
波乃久里子さん@遊郭・女将おえい。 時代の流れによって抱えていた遊女達から“人としての人権を主張”しストライキ遭う。 売り買いではなく、人助けで遊女を抱えていた女将としては、時代の流れによって“義理人情”を忘れつつある時代を嘆く。 なかなか気苦労の多い…昔はバリバリと店を切り盛りしていたであろう年老いた女将風情がよく表現されている。
もう店をたたんでしまう!と決めた矢先にきみ子が突然舞い込んで来て、とまどいながらも人の心の優しさや人を信じる事を思い出し、経営に再び生を出す…という女将の心情の変化やその年月の経過が伺えてさすが!
時代背景やその情景を取り込んだセットが素晴らしくきちんと造り込んでって秀悦。 女将が歯磨きで実際に口をすすぐシーンなどもあり、水場もきちんと造り込んであり、奥座敷では輪になって客とお姉さん方が歌い踊るスペースもあり、観客は幕が上がると一瞬にしてタイムスリップする感じ。 ラストには煌びやかな花魁道中もありもハッピーエンドに華を添える☆
観劇日のアクシデントとしては…きみ子が生んだ息子役で幼児(1歳くらい?)が登場するのだが、私が観た時はすご~く泣いてしまって「ママ~」と叫んでしまったのが、あらら… 現代っ子でした汗

はなのお六

立身出世を志し大和から江戸に上った“どんな遠くの匂いもかぎ分ける鼻利き”直美さん@お六”が、尾家の大事がかかった大名家の旗探しに、その鼻で一役買うというお話。
「藤山直美という人はやっぱり凄い!」と爆笑しながらもそう思わされる楽しい楽しい芝居☆
このお芝居は藤山寛美さんが松竹新喜劇でやっていた『はなの六兵衛』の主役を女性(お六)に替えたものだそうで、寛美さんの舞台をご覧になっている方は「ソックリ!」という比較の楽しみもあったのでは?
田舎から出てきた娘の怖いもの知らずの度胸と、愛嬌あるしゃべり、仕草のひとつひとつに観客は大笑い。 抜群のリズム感の足取りや笑いの間で…面白いっ!
ここでは打って変わってあでやかな姉さん役の波乃久里子さんのお着物のきこなしが素敵。 小島秀哉さんの旦那もドッシリとした包容力があってカッコ良く、この夫婦に惚れボレ。 中でもとにかく、とにかく爆笑、“腹をかかえて笑う”とはこの事だというくらい笑ったのは…
小島慶四郎さん@有馬玄蕃頭の登場シーン! 白塗りの殿様。 もうただ舞台に居るだけで、その存在だけで笑える。 志村けんのバカ殿どころではない。 あの眉毛の描き方と位置がポイントなのか? しかも観客があまりにも笑うものだから、共演者の皆さんも改めて可笑しいのか?ちょっぴり吹きながらのセリフ。 …につられて殿様も吹いてしまうので、なおさら可笑しくて。 いや~、あの顔は…反則!

直美さんはもちろんだけど、W小島さんらの脇をしめる役者さん、そのチームワークの良さを感じた舞台でもありました。
あ~、出来ることなら【はなのお六】のみ激しくリピート観劇したいくらい気に入ってしまった
笑った、笑った 面白ろかった~♪