博多座文楽公演・夜の部【博多座】

文楽を楽しもう

昼の部と同じでしたので省略

絵本太功記

・夕顔棚の段 ・尼ヶ崎の段(○○さん)=人形役割
母さつき(玉英さん)が印象的でした。 子供を愛しながらも、だからこそ許せない葛藤があり苦しむ様がひしひしと感じられ、涙が誘われました。 人形なのに…ちゃんと老婆そのものなんですもの! 家族を守ろうと強い意志を持って画策する気丈さも伺えましたし。
そして…武智光秀(勘十郎さん)のラスト、豪快な木登り! 迫力と立派さに「おぉ~」と声出して見上げてしまいました! これは文楽ならではの表現方法ですよね。
相次ぐ肉親の死に、さすがにの光秀も涙しながらもその悲しみに堪える様には…武将としての悲哀も伝わってきたような気もしました。
このシーンでは特に太夫と三味線が激しく、強く、ズンズンと下から響いてくる迫力があり圧巻ですね。

卅三間堂棟由来(・平太郎住家より木遣音頭の段)

これは歌舞伎の演目であるのでしょうか? 初めて拝見しましたが、ちょっと【葛の葉】ちっくなお話なんですね。 印象的には“にっぽん昔ばなし”のような感じで、今公演の中で私は一番好きでした♪
柳の精である女房お柳(文雀さん)は、人間の夫・横曽根平太郎(和生さん)との間に、みどり丸(蓑紫郎さん)が生まれ幸せな生活を送っていたが、都に建立される三十三間堂の棟木として自分自身である柳が伐られる事となり家族の元を去る…という突然に家族が引き裂かれる悲しいお話。
女房お柳の…柳が伐られる事になったのを知った時の驚きと悲しみは切々と訴えるものがあり、胸が痛い。 突然去った彼女を慕う家族の前に、もはや人間ではなく“柳の精”として姿を表す手法が面白かった。 紗幕の奥にユラッとたちすくむ感じで幻想的 柳の葉が突然ハラハラと天井より舞い落ちてくる手法も新鮮! 桜や雪は散々歌舞伎で観て目に慣れているけど、緑のシャープなラインの葉が天から注ぐように降ってくるだなんて!
伐採された柳の大木が家族との別れを悲しみながらも、都人足に引かれながらも都に向かっていたけど動かなくってしまう。 そこで息子が引いていた綱を手に取ると再び動き出す…。
木遣り音頭の威勢のいい歌が親子の悲しみをより強く表現している印象がありました。 幼いながらも母との別れを理解し、涙ながらに(きっと彼は号泣中)キッと空を見上げて綱を引くみどり丸の姿に泣けました

博多座文楽公演・昼の部【博多座】

昨年に続いて二度目、2日間4公演の【博多座文楽公演】
ほぼ完売状態で、当日は3階席にもチラホラ観客が 当日券の販売などもあったのでしょうか?
出演陣は、文楽好きな方には垂涎の超豪華メンバーで、実際ロビーや客席で関西弁を多く耳にしましたので遠征の方も多かったのではないかと思われました。

文楽を楽しもう

昨年は、この後上演される演目に沿った解説になっていたので(よって昼と夜の解説内容は若干の違いあり)ほんの少し前知識として頭に置きながら観劇出来たので、より楽しめた記憶がありましたが、今回は基本の基本の解説でした。 よって昼と夜は全く同じ内容でした。
◆太夫ついて(竹本千歳太夫さん)
役割の説明。 老若男女、武士と町民の声色の使い分けや笑い方・泣き方の実演。
◆三味線について(鶴澤清二郎さん)
三味線の造りと材質の説明。 三本の糸の音色の違いの実演と情を込めた演奏方法の紹介。
◆人形について(桐竹勘十郎さん)
人形の構造と、頭の種類、三人の人形遣いの役割分担の説明。 高下駄の紹介や人形の操作方法を披露。
最初にお断りしておきますが、私、文楽観劇は二度目なのもので…以下書き綴ります感想はものすご~く幼稚なものかと思いますので何卒ご了承ください。 「人形なのに、スゴイ」とか~。

 恋女房染分手綱

・道中双六の段 ・重の井子別れの段(○○さん)=人形役割
今月、歌舞伎座で福助さん@乳母重の井、児太郎くん@馬方三吉で観たばかりだったので、印象が鮮明であり、歌舞伎との違いを興味深く観劇できて、その比較がとても面白かったです。
乳母重の井(文雀さん)が、調姫(玉翔さん)にサイコロを持たせて一緒に放り投げる細やかな一連の動作は人形とは思えないほど。 優しい眼差し(に見える)で姫のご機嫌を取る様にも、凛とした気品がありとても素敵☆
馬方三吉(一輔さん)が我が子と判ってからのせつない気持ちが、人形ながら何故にあんなに伝わってくるのでしょう? 気持ちを奮い立たせて突き放し、それでもやはり抱き寄せて…また突き放し。
三吉の母親との決別を決めてラストに切る見得には、肩で泣いているような印象が強く残りました。

 伊賀越道中双六

・沼津の段
やはり歌舞伎で馴染んでいる演目だと、芝居に早く入り込んで観劇できますね。 沼津は必ず涙してしまう…観劇後は心が痛くなる演目ですが大好きな演目ですので、今回文楽で観れるのことのほか楽しみにしていました。
義太夫は竹本住太夫さん。 今公演のパンフレットに『沼津は好き。最後に平作が「南無弥陀物」と唱える所は息で言うため太夫の力量が問われる。こんな名作をできるのは太夫冥利につきる』と語っていらっしゃいます。 文楽観劇二度目のビキナーの私が聴いていても耳に大変心地良く、セリフはその性別、その年齢のものに聞こえ心に染入る感じで感動しきりでした。
親平作(玉也さん)は、力を振り絞ってヨロヨロと立ち上がり、必死の体で呉服屋十兵衛(蓑助さん)について行く様は、老人そのもので…ユーモラスな雰囲気もちゃんと兼ね備えているのには驚きました!
娘お米(勘十郎さん)の楚々とした仕草のなんとかわいらしい事! 夫の為にした盗みが発覚して泣き伏す様のなんといじらしい事! 平作とのやりとりに貧しいながらも支え合って生きる親子愛がとても伝わってきました。
人形で…自害のシーンをこれほど感動的に演じられるとは! 驚きと感動の沼津でした。

義経千本桜

・道行初音旅)
狐って、文楽ではこ~ゆ~ふうに表現するんだ」という驚きが一番でした。
狐忠信の主遣い玉女さんは狐火をあしらった真っ白な裃姿で狐を遣い…その動物の仕草がまた細かい! 桜の木の後ろで人間の姿の忠信にへ~んしん!すると玉女さんは通常の裃に早替わり。 「ほぉえ~すご~い」と思わず口に出して言う事も何度か。
静御前(和生さん)との息のあった動き、特に扇子を回転→キャッチ、投げて→キャッチ!など、役者さんが普通に演じてても難しいであろうフリがあって興奮しました~。

スーパー喜劇・狸御殿【新橋演舞場】

スーパー喜劇”この作品の上演が発表され時、正直ものすご~く複雑な胸中でした。 猿之助さんが病に倒れ、舞台でのお姿を拝見することがなくなって久しく、毎年7月の歌舞伎座での30年以上連続で行われていた奮闘公演もなくなり、澤瀉屋一門の皆さんが歌舞伎の舞台に立つ機会がどんどん減っている不安を感じていたので「ついにココまで…」と思ってしまったのです。
しかし、今回急遽観劇する機会を得て、大反省 自分の考え方をひどく恥じ入り、この観劇の機会を得れた事に縁を感じました。
藤山直美さんは『子供の頃、歌舞伎役者になりたかった。男しかなれないと判った時は大ショックだった』そうですし、『市川猿之助さんの大ファン』というのは有名。
ですので、今作品には随所に歌舞伎の手法や作品のパロディ的要素がふんだんに取り入れられ、それがちゃんと本物に基づいているもので、決して上っ面の真似事ではないので感動しました!
花道の舞台(スッポン利用)、ツケ、見得はもちろん(大向うあり)…ぶっ返り、ドロドロ、宙乗り、だんまり、六方、渡りゼリフ。 歌舞伎を観て馴染んでいる人はより楽しめる手法が多く、「あ、あの演目のパロディだ!」の発見も嬉しい
特に笑ったのは…
二幕冒頭で、直美さん@狸のきぬた姫右近さん@相馬織部を躄車(いざりぐるま)に乗せて引きながら花道から登場するシーン。
右近=「ところで私は何故コレに乗っているのでしょう?」
直美=「私、一度【小栗判官】が演ってみたかったの」
右近=「ではあなたは…照手姫?」
直美=「何か問題でも?」
右近=「…いえ 何も…。」
そしてもうひとつは【盲長屋梅加賀鳶】の大詰、道玄のだんまり御用の場のパロディー。
「俺だ、俺だ」と捕手の仲間を声で装い、逃げようとするあの場では…「オレ、オレ詐欺には御用心」って。 も~う大爆笑でした! 直美さん、ホント歌舞伎がお好きなんだなぁ…と、こんな所が随所に♪
好きだったのは…
大詰、花道での立廻りの出の名乗りは耳に心地よい渡りゼリフが繋がっていたら直美さん@きぬた姫「となりのかべにかべたてかけた」って。 腹、イタ~☆
でも一番笑ったセリフは「華奢な女を演じてみました」

エグゼクティブスーパーバイザーに市川猿之助さんを迎え、全編を貫く“リスペクト猿之助”ぶりに感涙。
子供の頃の夢を叶えた嬉しさに溢れているようで、直美さんの想いが観客にもビンビン届いてくる感じ。 客席が沸き返る素敵なお芝居を見せてくれる“藤山直美”という凄い役者さんに、これほどまでに影響を与えている市川猿之助という人の偉大さを改めて感じた舞台でもありました。
舞台美術 スーラの点描のような油絵チックな書き割りが異色。
衣装 狸御殿の住人たちはどこかしらに狸のモチーフがあしらってあり可愛らしく、対する狐軍団はクールでシャープな印象。
化粧 澤瀉屋さん達は基本的には歌舞伎メイクなんだけど、どっちかというと…大衆演劇に近い感じ。 ○○○○一座、みたいな。 右近さんなんかは完全に大衆演劇・劇団看板二枚目役者って風情。
澤瀉屋ファンにとっては、歌舞伎の舞台ではみられない意外な一面を見られる上、日替わりアドリブのやり取りや素に戻って笑いをこらえる表情を観るのが楽しい。 一門の頑張りぶりに時折ウルウルしながら、藤間紫さんのアドリブに驚いたり~。
役者さん個々の感想は長くなるので割愛しますが…この方だけは!
猿弥さん@雅楽平 わがままなお姫さまのお側近くに仕えるお世話係(おじゃる丸&でんボの関係) 「何を演じても器用で上手い方だなぁ」という印象を更に強くしました。 もしかしたら、観客の中には歌舞伎役者さんとは思わなかった方もいらっしゃったのではないかしら?と思えるほど自然。
直美さんとのコンビがとにかくラブリーで、セリフの掛け合いや間が抜群。 見た目も…まるで姉弟みたい! 「私達、飲まず食わずでガリガリなんですぅ~」は客席爆笑でした♪
この二人の宙乗りはある意味スリリング☆ 天井まで上がった直美さんが、まるで鼓を手にした狐忠信のように喜んで体を激しく揺らすものだから、一緒に吊られている猿弥さんと下の客席は大慌て! 可愛い狸の柄の傘を差して…これは岩藤?でも可愛い宙乗りなんだなぁ♪
最後にひと言。 あんなに生き生きした喜昇さん、観たことナイ…

青い旗キャスト
きぬた姫:藤山直美/相馬織部:市川右近/雅楽平:市川猿弥/藤原春秋:市川寿猿/九重:市川春猿/白狐:市川笑也/一富士:市川門之助/分福茶釜:小島慶四郎/お萩:大津嶺子/平九郎:小島秀哉/卯月の方:藤間 紫

ジキル&ハイド【日生劇場】

2001年の日本初演時には、作品賞、男優賞(鹿賀丈史さん)、女優賞(マルシアさん)、演出家賞(山田和也さん)の4冠を獲得し、文化庁芸術祭賞・演劇部門新人賞をマルシアさんが受賞する…という輝かしい実績を残した公演となり、2003年には再演。 そして今年再び…という話題の舞台(開幕前、エマ役の知念里奈さん→鈴木蘭々さんの交替も話題に?)
…とは言え、私は今回が初めての観劇。
何度も映像化されている作品ではありますが、私自身は『自らが開発した薬で二重人格となり破綻して行く男の物語』という漠然としたストーリーしか知らず、結局ラストはどうなるのか?という事を恥ずかしながら知りませんでした。
19世紀のロンドンを舞台に、暗く陰鬱な雰囲気の中展開される物語は『人としてのモラル』『人間の欲望』『社会への順応・協調性』などをテーマとしており【本当に人間らしく生きるとは何なのか?】という事を問いかける作品。
ロンドンの街のどんよりと湿った空気感や、実験室の薬品臭い雰囲気、酒場での退廃的な酒臭い空気、上流階級の見得を張り合う嫌らしさ…など、そのシーンごとの舞台での再現は素晴らしい! 元来、ミュージカル作品に“殺人シーン”なんて殆どナイでしょうから…なんだけど、そのリアルなまでの表現は衝撃的。 特に、ルーシーの血で真っ赤に染まるビスチェと真っ白なシーツは…凄い。
また、照明は今までミュージカルの舞台では観た事がナイような斬新な感じで鮮烈な印象でした。
曲も耳に残るものが多いうえ、アンサンブルにすごく厚みがあって大迫力・大満足。 なんというか…全体的に“大人~”な作品の印象。 ♪事件 事件~ 止まらない~♪ つい歌ってしまいます。

よつばのクローバー 鹿賀丈史さん@ジキル&ハイド
まさにハマリ役。 これは…他のキャスティングが考えられないほどではナイでしょうか?  二つの人格を行ったり来たりする様はゾクゾクとする迫力があり凄い。 『今回はあまり落差をつけない』…というようなコメントをされていましたが、最後にはどちらが本当の人格か?と思わされる恐怖感のようなものが感じられました。 鹿賀さんの歌って、ちゃんとセリフとしてダイレクトに伝わってくるんですね。 大詰めの曲【対決】は、ガーンという衝撃がありました。

よつばのクローバー マルシアさん@ルーシー
スタイルすっごく良くてと~っても色っぽいけど、ベッドの上で手紙を読むシーンなどは切なくて可愛らしい。 演技も素敵でしたが、何よりもこんなにパワフルな歌声の持ち主だったんだ!と驚きました。 初演時は衝撃的なミュージカル・デビューだったのも頷ける熱演。
よつばのクローバー 石川禅さん@アターソン
気のいいジキルの親友風情が良く表現されていました。 立ち振る舞いも英国紳士…なんだけど、ちょっと上流社会にヘキヘキしているような感じも見てとれて。 ソロナンバーが少なくてあの美声があまり堪能できないのが残念でしたが、芝居の上手さを再確認できた感じです(ちょっとエラそうな感想ですね…)。
パンフレットに寄稿されている一路真輝さんの禅さんへのコメントがと~っても素敵! 禅さんのほんわかワールド、カーテンコールのちょっとした仕草や笑顔で見てとれます。
よつばのクローバー 鈴木蘭々さん@エマ
ヴィジュアルは◎ 声も…殆どが裏声だけど綺麗。 だけど、歌を綺麗に歌っている…という印象で、エマという人のセリフ、感情として伝わってこない感じ。 演技も…これは演出でそうなのか?「ジキルをとても愛している」という女性には見えず、特にラストは残念。 でも、マルシアさん@ルーシーとのナンバー【その目に】は迫力があって良かったです。 これからの進化に期待大。

青い旗キャスト
ヘンリー・ジキル&エドワード・ハイド:鹿賀丈史/ルーシー・ハリス:マルシア/エマ・カルー:鈴木蘭々/ガブリエル・ジョン・アターソン:石川 禅/ダンヴァース・カルー卿:浜畑賢吉

十二月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

弁慶上使

やっぱり何度観ても辛いお話で、観劇後にズーンと気持ちが重たくなって苦手。 朝イチで観るのは…かなりこたえました。
福助さん@おさわは初役との事ですが、福助さんのおさわは母親~女という変化を、特に弁慶がずっと再会を望んでいた娘の父親であるという事が判ってからの女ぶりはちょっと観ていて照れるくらい色っぽかったです。 でも、ここは誰が演じられていても思う事なのですが、そばで娘が死に至るような刺し傷を負って瀕死の状態にあるのに、ウキウキと「あたしあたしよ」みたいな色目使っているのがすっごく嫌なんです。
娘の髪を梳いてあげたり、たしなめたりする様の母親ぶりは微笑ましい母娘愛がみてとれて良かった。
橋之助さん@武蔵坊弁慶
女性と契ったのも大泣きしたのも、生涯にただ一度きりだったという豪快な弁慶が、自分の娘を殺し『三十余年の溜め涙』と泣き崩れるのが見所のこの演目。
私はこの演目の弁慶には愛嬌「無粋で可愛い」と思えるような風情があるのが好みなのですが、終始大きな声で虚勢を張る武者という感じでした。 セリフのリズム…というかトーンというか…一辺倒な印象が強かったような。 娘を殺して泣き崩れる場で、いつも一気に弁慶に気持ちが傾くのですが、…あまり感動がなかったのは、何度も観た中で初めてかも。
新悟くん@腰元しのぶ
「いつの間にかこんなに大きくなって…まぁ」と親戚のおばちゃん状態(福助さんより背が高かっような?)。 多分、声が一番難しい時期かと思うのですが健闘していたかと思います。 純真無垢な可憐な娘風情が、スラッと細いビジュアルに見合っていました。 多分…これからも背が伸びるでしょうから、今回の女形を観れたのは貴重な機会だった…って事になるかも?
芝のぶさん@卿の君 私にとっては一服の清涼剤…という感じで重い演目の中…多少救われました。

猩々

私は【寿猩々】しか観たことがなく、今回のタイプは初めて観劇で、弥十郎さん@酒売りと緑の酒樽、大きな柄杓と道具が印象的でした。
で、最初に断っておきますが…私、前の座席の人の頭で思いっきり舞台中央の部分の視界を遮られて、実は殆ど観えてません 舞台中央で踊ってる事が大半な為、ちゃんとした感想が…書けません 勘太郎&七之助兄弟の二人だけの舞踏って実は…私、初めての観劇だったと思います。
見えた範囲では二人とも酒好きの陽気な妖精って感じが今イチ伝わってこなかったです。 お酒が好き…というか、お酒が美味しくて美味しくて…という、観てて「お酒ってそんなに美味しいんだ」って思えなかった、というか。

三社祭

楽しい舞踏…という印象が私は弱く感じました 総じて勘太郎さんの動きの方がなめらかな印象を持ちました。

盲目物語

谷崎潤一郎の小説が元となっているこの演目は私、映像も含めて今回が初めて観劇。
お市の方に使え従順に慕う盲目の弥市と、お市の方に求婚し拒絶され続ける武将・木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)の二役を同じ役者さんが演じるというのがこの作品の見所のひとつ。 また、お市の方の琴、弥市の三味線の合奏が聴けるのも嬉しい。
勘三郎さん@弥市
玉三郎さん@お市の方を慕いながら従順に仕えているが、どこか艶かしいものを感じたのは何故だろう? 「肌が…肌が…」と言うから? でもそういうセリフを聴きながら、お市の方はナイスバティなんだろうなぁと素直にイメージできるのが玉三郎さんの美しさに納得させられるものがあり困難ではないところが凄いと思ったり。
生涯を通してお市を慕い、その気持ちを最後には娘のお茶々(後に淀君)にスライドさせて告げた挙げ句、激しい拒絶にあってしまう悲しい男の生涯がラスト、とてもよく感じられてせつなくなりました。
勘三郎さん@木下藤吉郎(後に豊臣秀吉)
勝家に嫁いでも最後までお市の方を求め、彼女の絶命後の体を腕に抱き「そなたを得たいが為に戦を起こしたのだ」と家来の前で慟哭する様は…ストーカーめいた狂気を感じゾッとしました。 しかし…その主君の女に対する想いの為に戦を余儀なくされた家来は大迷惑ですよね、全く。
玉三郎さん@お市の方
亡き夫に操を立てながらも、橋之助さん@柴田勝家、勘三郎さん@木下藤吉郎(後に豊臣秀吉)からの求婚に心が揺れ、一方に心惹かれ、一方を激しく拒絶する…と一見、凛とした毅然さがありながら、激しい感情を持ち合わせている女性。
藤吉郎を「あの足軽あがりが!」という言い方がひどく汚らわしいという不快感があり、勝家に嫁ぐ事を藤吉郎に告げる際に冷たい微笑みを浮かべながら「どうだ参ったか」というようなニュアンスで意地悪く言い放つ様に女のいやらしさを感じ、プライドが高さ…だけでない、狡猾さが面白かったです。
七之助さん@お茶々
ついには親の仇である男の側室となり、淀君として生きている女性。 復讐心などは心の奥底には秘めていたのでしょうが、実はこの話の中でこの人が一番したたかで強いのかもしれないですね。 ですから、弥市から想いを告げられて示す激しい拒絶が違和感を私は感じました。