桜姫【シアターコクーン】

初のコクーン歌舞伎観劇でした。 ここ最近、渋谷なんて近づいた事もなかったし、スゴイ雨が降っていて…駅からBunkamuraまで迷いました冷や汗
平場席の一番後ろのお席でしたが、シアターコクーンの小屋自体がどこでも観やすく規模も手頃な素敵な小屋なんですね。 また別の演目でも訪れてみたくなりました。
“コクーン歌舞伎”ならではの舞台美術や演出は、前作までの数作品を映像では観ていましたが、実際にその空間に身を置いて観るとその面白さは「やはり舞台は生で観ないと」と痛感させられる面白さ。
宇野亜喜良さんのイラストのタペストリーや引き幕の使われ方は私的ツボでした(大学時代、彼のタッチを真似したりしてた)。 コンクリートの打ちっぱなしのような舞台空間において、情景のイメージを助長してくれる効果で“イラスト(絵)”の持つパワーみたいなものを再認識
その他、見せ物小屋をイメージした雛壇、上部にあしらわれた欄干。 手法においての本水や宙乗り(宙降り?)、口上、音楽の使われ方…に、いちいち「へぇ~」と興味深く刺激的☆
あさひ7オユキさん@口上役は…ご覧になった方、いかがでしたか? この演目を初めて観る人には親切なナビゲーターのような気もしますが、私的には話しの流れ…というか、舞台に、その世界にグッと入って観ていたのに、現実空間に引き戻されるような“観劇の緊張感・集中力”が途切れる感じが強かったです 朝比奈尚行さん@音楽構成としては好きでした。 特にラストの音楽は印象的~。
役者さんは…
福助さん@桜姫。 私的には、元々色っぽいイメージが強い方なので清楚な赤姫から、色事に堕ちてゆく…という落差が弱く感じられ、“姫言葉と庶民言葉”がちゃんぽんになる部分も笑えなかった。ラスト、権助を刺すシーンでは…酔って寝ている彼にすがって泣く部分は「おっ♪」と新たな解釈に驚き、繰り返し刺すところは彼女の心の葛藤がより鮮明に伝わってきました
ラストの演出についてはいろんな解釈があるでしょうが、私的には…仇討ちを果たし、その男の血を引く子供を殺し、お家の重宝を取り戻して「一件落着~」という、あっけらか~んとした「んなバカな~」という歌舞伎的な部分が好きなので…ん~。
子供を殺したのか?という部分もちょっと解りずらかったし、あの踊りで「何を表現したかったのか?」という部分が難しかったです。
橋之助さん@清玄&権助。 意外にも?清玄の方が好演の印象。 特に毒を飲まされ死ぬシーンは固唾を飲んで見守る感じでした。 このシーンでの鬘や拵えは定番のものより、こちらの方が好みだわ。
弥十郎さん@残月+扇雀さん@長浦。 達者な演技に笑いました。 けど…舞台の進行に従ってクドい印象が強くなりました。 扇雀さんの乳房もあらわな裸は…必要ですか?
勘太郎さん@悪五郎&お十。 悪五郎。 私、勘太郎さんの赤っ面って…初めて拝見したかも。 先月の梅王丸でも思ったけれど、隈を豪快に取った荒事のようなお役でも魅せてくれますね! ユーモアテイストも程よい程度で好演でした
お十は、赤子の扱いが手慣れた感じでオドロキ~。
観劇を終えて思ったことは「筋を知らない人が初めて観て、この舞台はストーリーが把握できたのか?」という事でした
…と言いつつも、なにはともあれ“初のコクーン歌舞伎”観劇。 満喫しました♪

六月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

輝虎配膳

歌舞伎座では33年振りの上演で、梅玉さん@長尾輝虎、秀太郎さん@越路、時蔵さん@お勝はいずれも初役との事。 私はもちろん初観でした。
【歌舞伎の三婆】のひとつといわれる、秀太郎さん@越路(【近江源氏先陣館】微妙、【菅原伝授手習鑑】覚寿に並ぶ)は、気位の高さや内に秘めた心の葛藤などが感じられ目を閉じて座っていても威圧される感じ。
その母を手助けしようと言葉が不自由ながら、琴を弾いて助ける時蔵さん@お勝は健気。
梅玉さん@輝虎は短気な様が滑稽にさえ感じられ、ものすごい枚数を着込んだ上着を何枚も次々と脱ぐ演出がすごく面白かったです。

素襖落

私、冠者の衣装って大好きなんです! 色の美しさ、艶やかさ、大胆な柄でいて、モチーフの細やかな描写や組み合わせ デザインの勉強になります。
歌舞伎の演目には、酩酊してしでかす失敗を笑うものが多いですよね。 これを観るにつけ「お酒って、そんなに美味しいんだ…」と下戸の私は、その浮かれぶりに少しうらやましく思ったりします。
吉右衛門さん@太郎冠者は体躯がよく、普段はドッシリと構えているイメージが強いだけにコミカルな部分が余計に面白く感じました。
富十郎さん@大名歌昇さん@太刀持鈍太郎のラスト追い回しも楽しい、楽しい♪

封印切

染五郎さん@忠兵衛歌舞伎座で初登場とのこと。 美しく、けど可笑し味のある…という風情はとても良く出ていましたし、実際ニンだと思います けど、ちょっと堅い印象が残りました。 関西の方からご覧になって、あの関西弁は○だったのでしょうか?
しかし前半のノーテンキなコミカルな部分と、後半の仁左衛門さん@八右衛門に煽られて激情にかられてしまう部分の落差は◎ 半ベソをかきながら「ココお金があるやないか」と八右衛門と張り合う部分は、子供のようでした。
孝太郎さん@梅川。 しばらくご無沙汰だった忠兵衛が久々に井筒屋に顔を出した時の、弾けたような喜びや、秀太郎さん@おえんの計らいで忍び会う際に、忠兵衛がスネてみせる様に本気で心配する様が“恋する乙女”が全開で微笑ましい♪
だからこそ封印を切ってしまった忠兵衛が彼女をせかして新町を出ようとする際に「そんなに急がなくても…」と言うような、彼の立場に立って物を考えている余裕がナイくらい自分の気持ちに盲目的な所が、腹立たしい感じを覚えさせられました
秀太郎さん@おえん。 絶品ですね! もう観ているだけで安心しきりで、顔がヘラ~ッとなってくる私です。 店の裏で忍び会う二人の間に「バァ」と割って入る時、どうしても一緒に言ってしまうんだなぁ。
仁左衛門さん@八右衛門。 もう言う事はありません。 秀太郎さんと仁左衛門さん…やはりこのお二人が同じ板で並んでいると“上方風情度”が一気に上がる感じでした。

新口村

雪深い村の情景にあって、中比翼の真っ黒な着物が映える梅川と忠兵衛の幕開けは美しい~ 梅川の鴇色と赤の襦袢の色より一層映えて印象的。
染五郎さんって…綺麗ですね。 改めてそう思わされる美しさでして、仁左衛門さん@孫右衛門の姿を家屋から障子を少し開けて覗き見る様に胸を打たれました。 この演出って、私、今回初めて気がつきました。 ホントに、じ~っと見ているんですね。
孝太郎さん@梅川の「自分の為にあなたの息子をこんな目に…」という、孫右衛門に対するすまない気持ちが表情のひとつひとつにこもっています。 目隠しをして我が子と抱き合う孫右衛門の背後から、その目隠しを思い切って取ってしまう、小さな決断の際にキラリと光る強い意志の目つきが大好きでした。
仁左衛門さん@孫右衛門。 またしても何も言う事はありません。 あえて…なら花道の出の細かい演技に泣きました 歌舞伎座の外は真夏日でうだるような暑さの中、孫右衛門の出だけで一気に雪国にワープした感覚でした。
ラストの道行では子供を使っての遠見…って、必ずって訳でもナイんですね。

六月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

今回は…母親が「私を一度歌舞伎座へ連れて行け」と、いつも遠征している私に兼ねてよりスネていたので、親孝行遠征でした。…とは言うものの、私、今月の演目は何故かしら映像でも観たコトがなく、殆ど初見のもので母親そっちのけで大満喫でした。

盟三五大切

冒頭の川の船上での場。 舞台一面に貼られた川布は圧巻で美しく目を見張りましたが、それ以上に?時蔵さん@お六(芸者小万)と仁左衛門さん@笹野屋三五郎の夫婦のイチャつきぶりに目を見張りました?! だって…三五郎がお六を背後から抱きしめて、堂々と乳揉んでますから! いや、すんまっせん ココまではっきりと露骨な表現って…歌舞伎であまり観たコトなかったから、ですネ。
ま、このようにお互いに惚れ合っている夫婦にあって、金の為のその策略にハマったとはいえ吉右衛門さん@薩摩源五兵衛が時蔵さん@芸者小万に入れあげて身を滅ぼしてゆく様の滑稽さが際立ち、源五兵衛の“人の良さ”が前半は丁寧に描かれているだけに哀れに思えます。
【五大力】→【三五大切】と彫り直すシーンがなんとも色気が。 時蔵さん@小万の彫り終わった後に痛みを押さえるところとか、仁左衛門さん@三五郎に対して「しょうがないねぇ。けど嬉しいよ」というような風情がなんとも。
復讐の鬼と化した吉右衛門さん@源五兵衛は、黒い着物と裏地の赤の色彩が残忍な美しさを放ち、殺した小万に向かって「身どもを鬼には、おのれら二人がいたしたぞよ」と首を斬り落とし帯で包んで持ち歩く様は怖い、けど美しい。 彼は心底、小万に惚れていてこうする事によってようやく想いが遂げられたのでしょうね。 首を眺めて酒を飲む心情は恐ろしいながらも悲哀に満ちている様が強く伝わってきました。
仁左衛門さん@笹野屋三五郎は愛嬌のある悪党ながら凄みも持ち合わせ、時蔵さん@お六(芸者小万)はクールビューティーな部分が、源五兵衛にすまない気持ちを持ちながらも夫一途な女を感じさせ、吉右衛門さん@源五兵衛は無骨な人の良さが出て、それぞれ良く、この豪華な顔合わせと力量にお腹いっぱいになりました。

良寛と子守

富十郎さんの長女・愛子ちゃん初舞台
富十郎さんのお気持ちを思えば「早く舞台で共演を!」というのも解りますが…2歳ですか? もちろん可愛くて目が行きますし、ホンワカな気持ちにさせられましたが…「いかがなものか?」という気持ちが強く残りました。 はるばる福岡から出向いて、高い観劇料を払って、コレですか?という憤りにも似た気持ちがフツフツと湧いてきて…怒り 長男の大ちゃんも出演。
尾上右近さん@子守のおよしの踊りが、私的には救いでした(富十郎さん@良寛は愛子ちゃんが気になって観れてナイです)

教草吉原雀

「夜の部ラストにコレがあって良かった~」と思いました。 華やかで艶やかな舞踏だし、梅玉さん&魁春さん@鳥売りの夫婦歌昇さん@鳥刺しの男…と安心して?舞台を堪能できましたから。
【團子売】とか…こういう夫婦お揃いの拵えで踊る舞踏って好きなんです。 当時の風俗も解りますし楽しいですから打ち出しにピッタリですよね。

六月博多座大歌舞伎・夜の部【博多座】

鳥居前

「かってこれほどまでにフレッシュな四天王を観た事がナイ!」と、四天王ばかり注目して観てしまった!(伊勢三郎は菊市郎さん)
亀治郎さん@義経は…全体の配役の中にあって“見た目のバランス”がよろしくない。今回の座組で位置的には的確なキャスティングなのかもしれないが…静御前が芝雀さんという、上背や年齢からのバランスから言って、他の配役の役者陣と居並ぶと子供のように見えて終始気になった。
團蔵さん@弁慶は、私自身はあまりユーモラスなお役での團蔵さんを拝見した事がないこともあって新鮮。
芝雀さん@静御前は「やっぱりこういうお役だと安心して観れる♪」と昼の部とは違ったワクワク感があった。 木に縛られる姿…なんて綺麗なの!
亀蔵さん@藤太は、予想通りの好演でもう言う事はナイ。
そして…松緑さん@忠信は、キビキビとしていて観ていて気持ちがイイ! いつもはちょっと私、苦手な口跡もスッと耳に響く感じだった。
松緑(佐藤忠信実は狐九郎狐)/亀治郎(源義経)/亀寿(亀井六郎)/松也(片岡八郎)/宗之助(駿河次郎)/亀蔵(早見藤太)/團蔵(武蔵坊弁慶)/芝雀(静御前)

口上

雀右衛門さんが思いのほかお元気で安堵。海老蔵さんに対する愛情が感じられる心意気で千穐楽まで無事に務めらた。
市蔵さん、権十郎さん、男女蔵さんも襲名の挨拶があり、一段とおめでたい雰囲気。(後見には新蔵さん)下手側はズラリと市川家の鉞銀杏が居並んで迫力があった。
恒例の睨みで「ひとつ睨んでご覧にいれまする」という海老蔵さんの言葉に、客席から毎回笑いが起こるのが気になったが、まるで歌舞伎絵のような気迫あふれる睨みには感嘆の声が漏れ聞こえた。
新之助改め海老蔵/幹部俳優

保 名

実は…毎回、気絶演目な【保名】。今回は團十郎さん…という自分の中では意外な配役だったので、意識を集中して観劇。
團十郎さん、ヤセられて…儚げな雰囲気がとても似合う美男子風情でビックリ!ま、今や歌舞伎界きってのイイ男と言われている海老蔵パパですから、そりゃそうなんだろうけど、綺麗(ゴメン!意外だった)
つがいで飛ぶ蝶に、恋人を失ってしまって我が身は一人…と嘆く様は痛々しく、哀れみを誘われた。
奴が登場…というタイプのものは今回が初見だったので大変面白かった。
三階客席からの観劇だと舞台セットとか後見の動きとか、見所が多い舞踏なんだ、という事を気づかされた今公演。
鼓では久々に博多座にご出演の望月朴清さん。シブイっ!
團十郎(安倍保名)/権十郎 (奴 与勘平)/市蔵(奴 弥勘平)

助六由縁江戸桜

今公演はこの演目がお目当て!という人が多かった事だろう。「当代一の助六役者」と言われる海老蔵さん@助六。舞台では初めて拝見したが…なるほど、そう言われるのは納得のハマり役。花道の出だけでも観客はうっとりする“役者の華”があり、オーラを感じる。モテモテで、やんちゃで、ケンカ好きで…と多分、作者はまさに当代の海老蔵のような男の子をイメージして書いたのでは、と思われるほど。「粋でいなせな江戸っ子だい」納得!
菊之助さん@揚巻は…私的にはウ~ン…。これは好みの問題なのでご容赦願いたいが、なんか恐かった。「私、助六にゾッコンなの。だから彼を守るわ!」というような惚れてる感が皆無。三浦屋一の売れっ子、という気品・プライドもひときわ豪華な衣装と周りのお付きの多さがそう見せるだけのように思えて残念だった。
菊五郎さん@白酒売新兵衛は、さすが!とうなってしまう達者ぶりで、客席からは大いに笑いが。大変失礼ながら「上手いなぁ~」と何度もうなってしまった!
九州から?の河東節の皆さんも連日入れ替わり立ち替わり奮闘されたご様子で、大いにたのしませてもらった。
襲名披露公演にふさわしい“ザ・歌舞伎”な艶やかな舞台だった。
海老蔵(花川戸助六)/菊之助(三浦屋揚巻)/亀治郎(三浦屋白玉)/家橘(三浦屋女房)/右之助・亀寿・宗之助/松也(傾城)/男女蔵(福山かつぎ)/亀蔵(通人里暁)/市蔵(国侍利金太)/権十郎(朝顔仙平)/段四郎 (くわんぺら門兵衛)/左團次(髭の意休)/田之助(曽我満江)/菊五郎(白酒売新兵衛)/團十郎(口上)

六月博多座大歌舞伎・昼の部【博多座】

十一代目市川海老蔵襲名披露公演! 大劇場では最後となる襲名披露公演で、全国からも多くの海老蔵ファンが博多座にかけつけたのはもちろん、「一度、海老蔵を観てみたい!」と、大河ドラマでお茶の間でもお馴染みとなった海老蔵さんを一目見ようと、今公演で“歌舞伎デビュー”をされた地元の観客も多かったはず!
5/29に行われた船乗り込みでは日曜日と重なったこともあって、過去最高の人出を記録。 公演の盛り上がりが期待できましたが…それを裏切らないものとなり、連日客席が大いに賑わった歌舞伎公演となりました!
「いつもこのくらい博多座歌舞伎公演の客席が賑わってくれたら…」と、今後の動員を祈念せずにはいられません。
初日開ける前に【喜撰】でお梶をされる予定だった雀右衛門さんが体調不良との発表があり、大変心配しましたが【口上】にはご出演、千穐楽まで務められて安堵しました(代役の芝雀さんの奮闘公演!)
また、十蔵改め市蔵さん、正之助改め権十郎さん、男寅改め男女蔵さん、新次改め新蔵さんは、襲名後今回が初めての博多座ご出演でした。

源氏物語

“瀬戸内寂聴・源氏は、私は数年前の【明石の巻】を歌舞伎座で観ているのですが…どうも苦手だったので、その意識がぬぐえず1回のみの観劇となった。
御園座での襲名披露公演でもかかったが、今公演の博多座用にまた團十郎さんの演出がに大幅に変わったとの事も話題だった。

第一幕【藤壷の巻】
セットが面白い!菊之助さん@藤壷の寝所に忍んで行く、海老蔵さん@光の君の導線に併せて御殿のセットが回転し、本当に屋敷奥の寝所にようやく辿りついた…という感じで興味深かった。
また、藤壷への思いを遂げた光の君が屋敷に引きこもっている所に、松緑さん@頭中将が尋ねて来た時、ココは雨の情景なのだがその雰囲気がセットなのか?効果音なのか?役者の演技なのか?…しっとりとした湿気を感じる事が出来て面白かった。以前観た時も松緑さんの頭中将は好演だな、と思ったが今回も“気のいいさっぱりとした友達”風情が好きだった。対して鬱々とふける光の君の“気怠い色気”に、エラそうだが「海老蔵さんの成長をみた」という感じを受けた。

今回、とても楽しみにしてたのは…芝雀さん@六条御息所。 ひっそりと耐える美女、というイメージが私の中で強いので「嫉妬に狂った生霊の芝雀さんなんて♪」 【六条御息所邸 寝所】の場では 、芝雀さん@六条御息所が光の君を人目につかぬよう早く帰したがったり、でももっと一緒にいてほしがったり…とプライドの高さが邪魔をしながらも懸命にすがる姿がいじらしかった。対して「私、眠いんです」と年上女のヒステリーを持て余し、あしらう光の君のは面白かった。

第二幕【葵・六条御息所の巻】
【一条大路 車争い】でみせた六条御息所のギリギリとした悔しさは、今後の展開を容易に予感させる気迫充分!ブライドが高い…というのは時として悲劇につながる事もあるんだなと教訓。そして芝雀さんがこ~ゆ~お役の引き出しも…と収穫♪

【宮中 飛香舎】での須田あす美ちゃん@東宮の、なぁ~んと可愛らしいこと!歌舞伎で唯一?苦手なものに子役のセリフまわしがある私。「もっと普通にしゃべらんかい!」といつも思うのだけど…今回は現代語なので自然な子供らしい会話でその無邪気さが、あす美ちゃんの声の可愛さも手伝って際立ち、菊之助さん@藤壷の苦しい胸の内も強く伝わってきたように思えた。 ついホロッともらい泣き…。

【宮中 裏庭】
このセットは、すすき野に幾重にも橋がかけられ、ヴィジュアル的にとても美しく、また光の君と藤壷の距離を表して秀悦だった! ラストは非情にお互いの心情がとても良く出ていたと思う。
数年前に観た時よりも舞台セットの転換などスムーズで観やすくなっている印象は強かったものの、やっぱり暗転が気になり、BGMもウ~ン…で、やっぱり私は苦手な源氏物語だった。

海老蔵(光の君)/松緑(頭中将)/菊之助(藤壷女御)/亀治郎 (葵の上)/芝雀(六条御息所)/田之助 (弘徽殿)/團十郎(桐壷帝)

喜撰

瓢箪のついた桜の枝を手にしての花道の出で…それだけで笑ってしまう。口伝には“女形と立役の間で踊る”とあるそうで、なるほど足はちょっと内股で品が良く、でもユーモラスな感じ♪いつも思うがあの鼻の下のヒゲは反則!ど~しても笑ってしまう。茶汲み女の色香に迷う様子の舞踏…であれは、鼻の下を伸ばしている、と思えば納得の拵えなのだろうか?菊五郎さんの達者な踊りをウキウキと観れる楽しさに溢れた。 余談だが…菊五郎さんの喜撰メイク、チャップリンに似ている!と思った。
そして、雀右衛門さんの代役として芝雀さん@お梶。手ぬぐいを頭にかぶせて顔を隠しての出→取った瞬間の美しさ、は喜撰と同様に見とれてしまったし、安心だった。
喜撰の弟子がズラリと居並ぶ様は「これぞ襲名披露公演」とまた豪華、豪華! ここで特筆すべきは松也くん。 麗しすぎる坊主です。「これなら男色に走る坊主仲間がいても頷けるわ!」と思ったほどの色気ある坊主だった。
昼の部は長~い源氏物語、しかもラストが重いので、打ち出しにこのような楽しい舞踏が付いていてヨカッタ♪
菊五郎(喜撰法師)/芝雀(お梶)…雀右衛門の代役