四月大歌舞伎・昼の部【歌舞伎座】

直前までチケット確保を粘りましたが…結局出ず、早朝より幕見に並びまして二演目観劇する事ができました。

ひらかな盛衰記【源太勘當】

歌舞伎座での上演は11年振り…だそうで、私は映像も含めて全くの初見で大変面白く観劇しました こんなに面白い演目なのに、上演回数が少ないのはどうしてなんでしょうか?
勘太郎さん@梶原源太は、ほっそりとしていて哀愁が漂う色男ぶり。 夜の部の【毛抜】でも思ったのですが、私の中の勘太郎さんイメージはガッチリ系だったので「物憂げな色男」が合う方だと気づかされたのは今公演の発見でした。
しかし、この演目での一番のお目当ては…はからずも大抜擢となった、芝のぶさん@腰元千鳥☆ 平成中村座などで、その抜擢に応える奮闘は拝見していましたが“歌舞伎座で”という事で期待大で観劇。
まず、腰元ながらも自分の意見をはっきりと口にし、気持ちを態度表すキャラクター設定にビックリ! 海老蔵さん@梶原平次から迫られるもキッパリと断るなど、梶原源太の寵愛を受けているとはいえ…大丈夫なのかしら?とちょっと心配になるほど。 想いを寄せる源太に対しては、声の出し方や目線で愛しい気持ちが溢れてくるようで微笑ましく、平次に対しての拒絶はあからさまでクスッと笑ってしまうほど。 「どうみても女の子だ、芝のぶちゃん!」と心の中で叫びながら「芝のぶ!」ではなく「成駒屋!」とかかる大向うに、ジ~ンときてしまいました 今回の抜擢により、またいろいろな可能性が広がるんじゃないかしら?と、期待が膨らんだ千鳥でした♪
海老蔵さん@梶原平次は、虚勢を張る我がままな駄々っ子ぶりが、愛嬌があって好演。 秀太郎さん@母・延寿は気品と貫禄でピシッと芝居をしめる、さすが!な印象でした。

京鹿子娘道成寺

勘三郎さん@白拍子花子は、ふっくらとして愛らしい印象。 最近、勘三郎さんの女形を拝見する機会が増えている私ですが、愛嬌があってキュートな感じがとても好きなので、これからも立役・女形、両方を拝見できると嬉しいな、と思った次第です。
芝翫さんをはじめとする所化軍団は「さすが襲名公演!」とうなってしまう豪華さで、勘太郎さんの“まいづくし”には、一緒に「うん、うん」と頷いてしまい、決まってニッコリ♪
今回は歌舞伎座では?23年ぶりという【押戻し】が付いていました。 もちろん私は初見! 團十郎さん@大館左馬五が“ザ・荒事”な感じで、まるで錦絵のような美しさと迫力があり、ラスト強烈な印象 そしてラスト、白拍子花子が本当に鐘の下に入ったのも見所でした。

思い出を売る男【自由劇場】

“劇団四季のストレートプレイ”を初観劇。 元々、苦手なジャンルなのですが…危惧した通り、気絶時間が飛び飛びにありまして、ちゃんとした【おぼえ書き】が…実は書けません! 情けない~冷や汗
冒頭、この作品の背景や上演にあたっての想いなどを、劇団四季創立メンバーの日下武史さんが解説。 それから物語が始まる…という趣向。
敗戦直後のうらぶれた街角を舞台セットは素晴らしく造り込んであり、とても趣があり、そのライティングも幻想的な雰囲気で、郷愁を誘うような感じもあり…なんともいえない空間の中で物語は展開されていきます。
セットの転換はなく、背後の壁にいろいろな人物の思い出を、街角で“思い出を売る男”が映し出し、人物たちがその思い出を語る…。 壁に映し出されるシルエットで演じれる様と人物の独白でその人の人生を想像して…という手法で『人の数だけ人生がある』と至極最もなことではありますが、観る側・受け止める側とっては、自分に共通する部分があれば面白い作品だうろな、と私は思いました。
そもそも“思い出を売る男”自身の人物の背景解らず『郷愁を誘うお伽噺』に終始してしまった印象が強く、『この作品で何を観客に伝えたかったのか?』というのが…私には難しかったです。

青い旗キャスト
思い出を売る男:石丸幹二/広告屋:下村尊則/G.I.の青年:田邊真也/乞食:日下武史/黒マスクのジョオ:芝 清道/花売娘:松元美樹/街の女:西田有希(劇団俳優座)/恋人ジェニイ:五東由衣

夢から醒めた夢【四季劇場・秋】

昨年【ユタと不思議な仲間たち】にハマって騒いでいたら…「きっと“夢醒め”も好きな作品だと思うから是非観てみて」と薦められていたので、この度初観劇。

以前テレビ放映された映像やCDで予習?済みだったので、実はなんだか初観劇な気はしなかったのですが、劇場に着いて…この演目の目玉?【ロビーパフォーマンス】を目の当たりにし、よりこの作品の魅力を理解出来たような気がしました。 が、スゴイ人口密度でちょっと怖かった~。 “夢の遊園地”という世界が舞台や客席いっぱいに展開されて、役者さんも大道芸をしたり、ローラーブレードで滑ったり、スロープに乗ったり…と大変だなぁ…と驚かされました。
で、全体的な感想からすると…遊園地での群舞による華やかな舞台に魅せられたのですが、実は期待したほど感動…というか『心に残るものが、ひっかかる何か』がありませんでした。 しかし、あの原作をここまで膨らませた娯楽作品としている事にはやはり驚嘆でした! 脚本・演出、スゴイです。
印象に残ったシーンは、霊界空港での老夫婦の再会の会話。 ココの夫婦の会話は本当に素敵☆ あとラストの泣き所、マコのママの「行かないで」は歌に迫力はあるものの…二人の掛け合いに統一感がなくバラバラな印象で…残念。
吉沢梨絵さん@ピコや、北澤裕輔さん@夢の配達人は今回が初役との事ですが、ニンにあっていて好演でした。

青い旗キャスト
ピコ:吉沢梨絵/マコ:紗乃めぐみ/マコの母:早水小夜子/メソ:有賀光一/デビル:光枝明彦/エンジェル:藤原大輔/ヤクザ:野中万寿夫/暴走族:吉原光夫/部長:田中廣臣/老人:武見龍磨/老婦人:斉藤昭子/夢の配達人:北澤裕輔

四月大歌舞伎・夜の部【歌舞伎座】

【籠釣瓶…】がかかったら配役はどうであろうと絶対遠征する!(前も言ってたセリフだわ)とかねてから心に決めていた上…勘三郎さん@佐野次郎左衛門、玉三郎さん@八ツ橋とくれば飛んでいくわいなぁ~♪ と、今回の遠征のお目当てはコレでした。

毛抜

一年振り?に歌舞伎座へ復帰、ご出演の團十郎さん@粂寺弾正。 「やっぱりこんな豪快で、愛嬌のあるお役はピッタリ」と完全復活を嬉しく、そして愛嬌たっぷりに演じる様をニコニコ拝見した…という感じでした、。
勘太郎さん@民部弟秀太郎時蔵さん@腰元巻絹に迫ってはあしらわれ、客席に向かって「真っ平ごめんくだせい」と謝る様がなんと可愛いらしいんでしょう! 客席からは笑いと、復帰を喜ぶ拍手がおこり、なんとも暖かい雰囲気でした♪
勘太郎さん@民部弟秀太郎は、同性から迫られても納得!な繊細な美形小姓ぶりで意外でした(ヤセた?) 時蔵さん@腰元巻絹の手慣れた?あしらいぶりと品の良い「びびびびび~」にはニッコリ。

十八代目中村勘三郎・襲名披露 口上

成田屋親子が居並んでいたのが、なんだか新鮮 左團次さん、段四郎さん…と市川家がズラリと居並んだ様は壮観でした。 今月から復帰の七之助さん、そして勘太郎さん、勘三郎さん。 皆さんから「勘三郎さん共々息子たちも宜しく」との事。 これから“三郎”が一緒になる…と笑いを取っていた玉三郎さんが印象的。

籠釣瓶花街酔醒

お話的には、なんともやりきれないラストで好きではナイんだけれど、映像で観た時にすごく衝撃を受けた作品なんです。
勘三郎さん@佐野次郎左衛門は、前半いかにも真面目で人の良さそうな、田舎者の朴訥した雰囲気が感じられました。 故に初めて吉原に足を踏み入れた時の、ドキドキやワクワク感がとても伝わって、玉三郎さん@八ツ橋を目の当たりにし、微笑みかけられた時の…雷に打たれたような衝撃ぶりが素晴らしかった!
その後一転して吉原に通いつめ、八ツ橋の馴染みとなる次郎左衛門。 この事を仲間に自慢したくてたまらない様が無邪気に喜んでいて憎めないだけに「おいらん、そりゃあちとそでなかろうぜ」と、大勢の人前で何の前ブレもなく突然八ツ橋から縁切りを言われて動揺する様が、哀れで心底かわいそうになります。 満員の歌舞伎座の客席が水を打ったようにシーン。
ここでの段四郎さん@下男治六魁春さん@九重が良かった 険悪な雰囲気に凍り付いた場をそれぞれに取り繕う様が、そのキャラクターを際立たせ、このシーンが泣けてしまいました。
四か月後、吹っ切れたように八ツ橋の前に姿を現した次郎左衛門。 笑顔で優しく語りかける様が、“狂気のスイッチON”となった時と激しい落差でしたが…まだ“イイ人”の方が勝っているような印象で、妖刀籠釣瓶で八ツ橋を切り殺してしまうまでの“憎悪”を受ける印象が弱かった…かな。 しかし、倒れた八ツ橋のそばで般若のような形相で妖刀籠釣瓶をもって立ちすくす次郎左衛門の体からは憎悪の炎が立ち上っているような感じでした。
玉三郎さん@八ツ橋。 出の“花道での微笑み”のなんと艶やかな事! 色っぽくって、艶っぽくって…自分の魅力を熟知していて「どうすれば異性がなびくか」という事を知っている、計算高い…それでいて惹き付けられずにはいられない…そんな微笑みでした。 あんな微笑みをかけられると…異性でなくてもノックアウトされちゃいますよ 実際、客席のどよめきもスゴかったです☆ 玉三郎さんの“美しさ”だけでない役者としてのすごさをこの微笑みで再確認できた感じでした。
縁切りの場面は、表情を殆ど変えずに次郎左衛門に別れの意を告げ…でも決して彼の目を見ない、という様が“仕方なく縁切りしなくてはならない”という彼女なりの心の葛藤が感じられ、以前私が感じていた“八ツ橋の非情さ”は感じられなかった。 それは、四ヶ月後に再会した時の申し訳なさそうに…合わせる顔がないような…部分でより説得力があり、殺されてしまう彼女の哀れさを感じる事ができました。

ヤマトタケル【新橋演舞場】

スーパー歌舞伎の原点【ヤマトタケル】ですが…実は私、過去に映像でも観た事がなく、今回が全くの初見でした。 久々の再演となった今公演でしたが、猿之助さんのご出演はなく、脚本&演出を手がけられ、ヤマトタケルとタケヒコの二役を右近さんと段治郎さんのWキャストで演じるという趣向でした。
私は段治郎さん@ヤマトタケル、右近さん@タケヒコで観劇
まず全体を通して強く感じた事は“和風”な印象 【新・三国志】がシリーズで続いた為、“スーパー歌舞伎-中国もの”というイメージがいつしか自分の中で固定されていたようで、「ほぉ…あら~」という、なんとも表現しようのない新鮮な驚きがありました。
段治郎さん@ヤマトタケルは、純粋な心を持つ心優しい若者と、ただひたすらに父親の愛を激しく求めて彷徨う息子の悲哀を併せ持つ主人公を好演☆
しかし、個人的に安心して観れて、段治郎さんの持ち味が発揮されたいたような気がしたのは色悪系の…ヤマトタケルの兄・大碓命。 自分の妻の妹に迫る悪ぶりは、そのセリフではないけれど「良いではないか、良いではないか~」という感じ。 純な部分を演出する為か…ヤマトタケルの高い声のトーンになかなか馴染めなかった私は、大碓命でホッと一息つけた感じでした。
この舞台で特に好きだったシーンは2つ☆
ひとつは第一幕・大五場【熊襲の国】
猿四郎さん@兄タケル猿弥さん@弟タケルが統治するこの国の人々の衣装は“海モチーフ”がふんだんに取り入れてあって、海好きの私にはことごとくツボにハマりでそのデザインセンスに大興奮☆ 珊瑚の模様に海色のスカート…のような侍女の衣装には「あれ、着てみたい!」。
極めつけはタケル兄弟の大袈裟なまでに豪華な衣装 猿弥さんのマントには蟹、猿四郎さんのマントにはタコが巨大に背中にあしらってあって、虚勢を張るところでは魚のモチーフがちりばめられてマントの裾を黒子さんがバーッと持ち上げてぶっかえり“海、海~”って感じ。 荒事の極みのようなデッケェ兄弟はカーテンコールでの、のっしのっし歩きもツボした♪ この演目の中で一番好きなキャラでした。
段治郎さん@踊り女は「デカッ!」とビビるものの、恥じらう表情とか可愛らしくってビックリ! あの色香に惑わされる熊襲兄弟の単純さに笑えました♪
もうひとつは第二幕・第四場【走水の海上】
旅の途中、海路でのヤマトタケルのピンチを救ったのは、春猿さん@弟橘姫。 海の神へ人身御供としてその身を投げるのですが、この時の舞台演出・美術に大感動! 舟を囲んだ波布が荒く動いたかと思えば、畳を海に投げ入れると、その布を繰り出すようにして海面にその畳が広がる(←解ります?)。 これにはスゴイ、スゴイ! そして海に身を投げた姫の上半身がぶっかえって海の模様のお着物になって手を振りながら海底へ消えてゆく。
船上での段治郎さん@ヤマトタケルの取り乱しぶりや、深い悲しみなどの熱演も良く、ここは本当に素晴らしかった!
ただひたすらに父の愛を求め続けた果てには最後までお互いの心が通い合うこともなく、それでいて実は周りの女性を結構不幸にしてしまっているヤマトタケル。 最後は自身の“慢心”から命を落とす事で、観る者に教訓が得られるけれど…全体通して「では、何がこの作品で伝えたかったメッセージなのか? 主題はなんぞや?」という物語の軸の部分が、観劇日を経ても弱い印象私は残りました。
ただ“和的”な衣装やセットなどのビジュアル面や、踊り、音楽など…いわゆる“歌舞伎味”が多く、私は“中国シリーズ”より断然好きでした。
今回Wキャストで頑張る段治郎さんは、踊り女で「デカイっ!」、宙乗りで「デカイっ!」と若干引きながらも、カーテンコールで、メキシコのピラミッドのような所からピンで登場する時は“主役オーラ”を放っていて、その成長ぶりに(←エラそうに~)ジーンとウルウルきてしまいました。
タケヒコでの横ポニーテール姿も観てみたかったな♪(こっちが好きという人も多い)