松竹大歌舞伎(巡業・西コース)【宗像ユリックス】

十代目坂東三津五郎襲名披露。 「“襲名”とはこんなにも大変な事なんだ…」と素人ながらに、2年間もかかる披露公演に驚いたのが第一の感想。 今年の2月が大劇場では最後の襲名披露公演という事でその舞台を拝見してから半年以上もの月日が経ったというのに、それ以降もこのように日本全国をまわっていたとは…! ホールの裏では“三津五郎さん@忠信”の巡業バスもお目見え♪

梶原平三誉石切

今年6月に博多座大歌舞伎でかかったばかりで、こんなに間をあけずして同じ演目を違う座組で観る事は初めてだったので『これが歌舞伎の面白さ!』という感じで楽しめた♪
富十郎さん@梶原平三景時は、流れるようなセリフのリズムが素晴らしく、耳に心地よく響いた。 注目の手水鉢の演出は6月の仁左衛門さんと同じく二つに切れた鉢の間から飛んで前に出てくる…というモノで、この演出は珍しいと聞いていたので驚いた。
信二郎さん@大葉三郎景親は失礼ながら意外に立派で、以前は勝手に心配して聞いていた太く低い声もよく出ており、また新たな一面を見せてもらった気がした。
坂東吉弥さん@青貝師六郎太夫は、6月の博多座から数えると4ヶ月間連続でこのお役をされているそうで、驚き! ちょっとおヤセになった事とお着物の襟まわりの色がすっかり変ってしまうほど汗をかいていらっしゃったので、なんだか心配だった。 六郎太夫は…といえば、娘に対する愛情がより深く感じられウルッと来てしまった~。
宗之助さん@梢は“娘さん”という感じ。 父親が二つ胴の一人となった事を知った驚きと「斬られてなかったのね~!」という驚きが薄く、初めてこの演目を観ると何が起こったのか理解するのが難しそう。 吉弥さんとの微笑ましい親子ぶりにはニッコリ♪

口 上

やはり大劇場での口上は拝見する事の出来ないであろう役者さんを見れるのが嬉しい。
し、芝雀さん…綺麗すぎ。

六歌仙容彩・喜撰

「三津五郎さんって踊り上手いっ!」と素人が失礼ながらも改めて思ってしまった。 花道の出は軽快で、とぼけた表情なのに品がある…といった不思議さで観ている側もウキウキと心が弾む軽妙さ♪ お迎え坊主たちの豪華さも見逃せず、どこ観ていいんだか!と忙しい~。
そして芝雀さん@お梶。 手ぬぐいを取ってから…それからはボーッとみとれていたので、冷静に記憶には残っていません!

九月大歌舞伎・夜の部【博多座】

東海道四谷怪談

残念だったのは“お岩さま=恐い”という先入観がある方が多く 「夜の部は恐いから観ない」という声をよく耳にした事。  私も今回初めて舞台を観たのですが…こんなにもお岩様に感情移入して泣けてしまう、 【お岩様という女性の哀しい物語】だったんだ!…と解って驚きました。  だから「恐いから観ない」という声には「なんてもったいない!」って思たんです。  この演目が今後博多座でかかる…という事はもうナイかもしれないくらい貴重な機会 だったそうなので、今回舞台に通って観れた事、とても嬉しかったです。

お岩さまが 血の道の薬として有難くいただく、薬を飲む場面 。 博多座の客席が水を打ったように咳ひとつする人なくシーンと固唾を飲んで見守る様子に鳥肌がたちました! 有難いお薬を一粉たりともこぼさず丁寧に飲み干す様が細かく、その後の悲劇を知っているだけに胸が痛くなりました。 後に、勘九郎さんが「博多座のお客様はね…」と話される時に、この場面で『飲んだらいかんよ!』と客席から声をかかったエピソードをよく披露されてました。 それほどお芝居に入り込んで観てくださるんですよ…と。
薬のせいで手に力が入らず、坊やの羽織りを取り落としてしまう所でズキーン! 泣いてしまったのは、お梅との縁談が決まった伊右衛門が婚礼の金策の為に家財を次々に持ち出す様にすがるお岩さまの演技。 千穐楽では蚊屋を持っていかれて「爪がはがれた…」という所でボロボロ涙が…。
有名な髪梳きの場。 お歯黒を塗る様、 髪を梳く様は恐ろしいのだけれど、“女のプライド”が感じられ、胸が痛くてたまりませんでした。 宅悦の恐ろしがる反応に客席から笑いが起こっていましたが「ココは笑う場面 ではないのでは~」と、毎回腹立たしく思いながら観てました…。 橋之助さん@ 伊右衛門は“これぞ色悪”的な非情なまでのカッコよさ。 「首が飛んでも動いてみせるわ」では、「敵(?)ながらアッパレ!」と思わず言いたくなるくらいキマってました!

今回は“三角屋敷の場”がカットされていた為、勘太郎さんが舞台番鶴吉として舞台袖から登場し、その筋を説明する趣向でした。

勘九郎(女房お岩・小仏小平・佐藤与茂七)/橋之助(民谷伊右衛門)/福助(妹お袖・小平女房お花)/弥十郎(直助権兵衛)/亀蔵(宅悦)/勘太郎(舞台番鶴吉)/七之助(お梅)

九月大歌舞伎・昼の部【博多座】

勘九郎さん&福助さん博多座座初お目見え! 昼は見取り狂言、夜は通し狂言とバラエティー豊かな演目が勢揃い♪ 事前の博多座の広報活動も相当な力の入れようで、多くの人の興味をそそったようです。 その甲斐あってか?連日大盛況で平日の幕見の競争率も高く、盛り上がった公演となりました。  特に昼の部の人気は高く、前売りでB、C席完売! 夜の部も初日開けてから早い段階 でC席は埋まったようです。 公演を観て思ったのは…「中村屋さんは演目の選び方が上手い」って事でしょうか? やはり博多座にはまだまだ歌舞伎ビギナーの観客の方が多い訳で、今公演でデビュー した、という方も沢山いらっしゃったと思います。 そんな劇場の性格を把握して“初心者にも解りやすく楽しめる”…といった演目を 揃えてきた事は今公演成功の大きな要因のひとつだったと思います。 次回、勘九郎さんが博多座に…となる時は、きっと“中村勘三郎”でのお目見えと なるでしょうから“勘九郎、初お目見えにして最後の舞台”だったのでしょう。

鳴 神

私が初めて観た“生歌舞伎”は、この配役によるこの演目でした! 聞けば11年前の橋之助さんが鳴神上人初役での巡業公演の時だったようです(お目見え口上で「今度結婚します」と言っていた♪)  ですので、今回観れる事をことのほか楽しみにしていたんです! 何故かそれ以来一度もこの演目を観る機会がなかったものですし…。 11年の時を経て観た感想は…「こんなに面 白い演目だったんだ!」という驚きでした。 橘太郎さん@黒雲坊勘之丞さん@白雲坊のバランスが取れたユーモラスさにニッコリ。 福助さん@ 雲の絶間姫の匂いたつような美しさの出で観客はまず息をのみ、その後の鳴神上人を誘惑するしたたかさで笑わせる巧さで惹き付けられました。 私自身は後半の「勅命によって騙さなければならなかった」という心苦しい様が印象に残りました。 橋之助さん@ 鳴神上人は、とても清潔なか感じがして、色欲に落ちて行く好色さが薄く思えましたが、謀られた無念に怒り狂う様は“これぞ荒事”のさすがの迫力! 毎度の事ながら、黒御簾の内で奏でられる効果音には驚かされます。 ホント、雷なんだもんな~。
橋之助(鳴神上人)/福助(雲の絶間姫)

三人連獅子

大劇場で演じるのは博多座が初めて!という事でかなり気合いの入った舞台を拝見する事が出来ました。 連獅子自体、博多座でかかるのは初めてだったので“ザ・歌舞伎”というこの演目は幕見でも大変な人気でした。 博多座の舞台って広いと思っていましたが、三人ならんで毛を振ると…窮屈で、体をやや斜にふっての豪快な毛振り!! その迫力と「もうヤメてイイよ~」と思わず心配でつぶやいてしまうほどの回転数に客席からは何度も大きな拍手。 三人で板を踏み鳴らす音の迫力と振動は圧巻~! 谷底につきおとされた子獅子が親の姿を見つけ、喜々としてはいあがってくる躍動的な動きが一番印象的でした!
勘九郎(狂言師後に親獅子の精)/勘太郎・七之助(狂言師後に仔獅子の精)/弥十郎(僧遍念)/亀蔵(僧蓮念)

江戸みやげ・狐狸狐狸ばなし

初めて観ました! 元々は新派のお芝居で歌舞伎としては今回で3回目の上演との事。 お話も全然知らなかったので、全くの素の状態で楽しめました♪ 博多ご当地ネタはもちろん、毎回なにかしらのアドリブが受け、平日でも幕見は連日完売だったようです。
なんといっても、主人公・手拭い屋伊之助が元・女形、という設定が◎ ちょっとした仕種に出るナヨナヨっとした仕種がたまらなくおかしい♪ こういうお役の勘九郎さんってほんとチャーミング! 福助さん@おきわは、個人的には苦手な部分もあったのですが、やはり“抜群のコメディーセンス”はみとめざるおえない好演で客席をわかせました。 むさくるしい橋之助さんや亀蔵さんの女形、初めて観ました! そしてそして…弥十郎さん@又市!! イイ! すっごくイイ! 「あ~、私やっぱり弥十郎さん好きだなぁ♪」と再認識しました(どんな感想じゃ!) ラスト、ピシッとした姿で登場した時、客席がどよめきまして「どんなもんだい!」と何故か私、得意気な気持ちになってました♪
「あれは歌舞伎じゃないよ」という声も聞こえたりしましたが、終演後皆口々に「あ~、面 白かった~」と言って劇場を後にしていましたので、博多座公演としては大成功だったと思います。
勘九郎(手拭い屋伊之助)/福助(おきわ)/橋之助(法印重善)/弥十郎(又市)/亀蔵(おそめ)