博多座【2002年公演】観劇記録

博多座での歌舞伎公演に関しては開場当初から、観劇記録を自分のサーバ内に残していたものの、その他の公演記録は、外部の無料WEB日記帳にUPしていたものだから…ある日突然予告も無しにドロン! 突然サービスが利用不可となり、データを救済する手立てもなく消えてしまい呆然自失!(ここでバックアッブの重要性を学ぶ。 分かっちゃいたけどさぁ…)
…という事で、記憶を辿った【博多座2002年公演】観劇記録。
2、6、9月の歌舞伎と3月【新・三国志II】は観劇レポート個別記事にUP済み。

1月・42ND STREET

年明けはこんな感じの明るく楽しい演目がイイな♪ 「少年隊だ!ニッキだ!」 劇中は通路に踊り子さんズラリ居並んでダンス♪で、と〜っても華やか。 タップダンスに感動して、しばらくタップダンス教室なるものを探してみた(挫折)。  この作品作品、なんで再演されナイんだろう? 版権の問題?
涼風真世/錦織一清/前田美波里

4月・赤ひげ

知っているようで…ちゃんと知らない【赤ひげ】を観てみよう、と観劇。  観劇前は「光GENJIだ!大沢樹生だ!」→観劇中は「レツゴーじゅんちゃんだ!!」 骨太な真面目な作品なのに、そんなミーハー目線で感動のしどころもズレてて、北大路さんゴメンなさい。
北大路欣也/野川由美子/大沢樹生/寺田農/生稲晃子/松金よね子/逢坂じゅん/新藤栄作

5月・ラ・マンチャの男

映画も観た事がなく『幸四郎さんのライフワーク』であり、今公演は松たか子さん@アルドンサは初役(確か)、松本紀保さん@アントニア…と娘二人と共演という知識のみで観劇。 終始暗〜い舞台の中で展開される休憩なしの舞台は、集中力を要して観劇後グッタリ。 セットがこれまでの舞台で観たこともナイものばかりで面白く、曲はどれも素敵! 「幸四郎さん以外で観てみたいんだけど…」と思ったけど、それこそ【見果てぬ夢】なんだろうな。
松本幸四郎/佐藤輝/上条恒彦/松たか子/松本紀保

7月・マイ・フェア・ レディ

“大地真央ファッションショー”な舞台でした。 小倉出身の大スター・草刈正雄さんの出演に客席の一角が異様に盛り上がっていたのが印象的(お知り合い御一行様か?) 舞台は華やかなれど、どの方も肝心の歌が…なかなか辛く、耐えていたところに岡幸二郎さん@フレディの【君住む街】ですよ! 一服の清涼剤でした♪
大地真央/草刈正雄/浜畑賢吉/尾藤イサオ/岡幸二郎

8月・宝塚歌劇花組公演:あかねさす紫の花/Cocktail

昨年のヅカ公演に感動して、今年も…と臨んだものの、さっぱり記憶に残っておらず。 しかし、今、出演者を見てみると…めっちゃ豪華だったのね!
春野寿美礼/大鳥れい/瀬奈じゅん

10月・細川たかし特別公演

お芝居は【雪の母恋三度笠】、たかしが股旅姿で奮闘するも…「歌謡ショーの前半のお芝居って得てしてそういうもの、なんだなぁ」と思った次第。 津軽三味線の演奏と大量の雪は圧巻だった! 三味線弾けると超カッコイイなぁ〜♪
岡田茉莉子/奈良富士子/ビートきよし

夏祭浪花鑑【大阪平成中村座】

「大阪でやるんだったら絶対この芝居を!」と勘九郎さんが熱望しての上演となったそうで、その意気込みはド肝を抜いた演出と、それをあます所なく演じ切った役者陣、スタッフに熱意に現れ、観客にビンビン伝わってきて…ラストは小屋全体が揺れるようなスタンディングオベーション。  歌舞伎でこのような体験をしたのは初めてだったので、今後この演目を他の小屋で観た時に何かモノ足りなさを感じるのでは?という一抹の不安もあるような…そんな衝撃的な舞台でした。

長町裏の場

コクーン歌舞伎での演出が踏襲されているそうですが…、私は初見でしたので、蝋燭の灯りだけで照らしだされる勘九郎さん@団七久郎兵衛笹野高史さん@義平次の、この“泥場”は衝撃的でした。 本当の殺人現場を目撃しているような、固唾を飲んで見守るような…そんな感じでした。
この場では見得が13回あるそうで“殺し場の様式美”とでもいうのでしょうか?  祭りの音楽の高鳴りにつれ、髪を振り乱し、白い体には一面の刺青と真っ赤な褌。 その姿が見得を切る度に蝋燭の灯りで暗闇から切り取られ、陰惨な場面 ながらも、色彩美や型に「綺麗…」と思ってしまいます。
特筆すべきは笹野高史さん@義平次でしょう! 臭ってきそうな汚いこしらえに加え、鶏ガラのようにヤセ細った様が、目を異様にギラギラと際立たせ、地獄から這い上がってきた餓鬼…とでもいいましょうか?  笹野さん、という役者さんではなく“金の亡者”の化身が目の前に確かに居ました! スゴイ!

祭りの音楽も最高潮に達した時、舞台奥の幕がサッと降りると暗闇が一瞬にしてまばゆいばかりの明るさ! 「えっ?! 一体何が起こったの?」と目をこらすと、舞台の奥には公園がスッポンポンに見えているではあ~りませんか~~!!(中村座は扇町公園内に建設) 福島天満宮地車講社中のお囃子に合わせて、祭りの衆が舞台や小屋の外いっぱいに踊り出ての演出ド肝を抜く演出。 スゴイ~! ビックリ~!

屋根の場

義平次殺しの追っ手から逃げる勘九郎さん@団七久郎兵衛を橋之助さん@一寸徳兵衛が手助けをしながら、応戦していく立廻り。 ミニチュア版の建物が舞台狭しと並べられ、二人ともさながらガリバーのような感じで次々と見得を切っていく。 その度に黒子さんたちにより建物の配置が変えられたり、はたまた二人の人形までが飛び出して大屋根の上で立廻ったりと息をもつかせない…と、思っていたら!

な、なんですとぉ~! 追っ手から逃げる二人は舞台奥へダッシュすると、またまた幕が切って落され、公園がスッポンポ~ン! 舞台から飛び出した二人は小屋の裏の階段を走り降り、公園に向って一目散に走っていく~! ついに二人は観客の視界から消えました。 すると…小屋全体がやんや、やんやの大騒ぎ! 手拍子の“戻って来いコール”の嵐となりました!
観客総立ちの舞台に戻ってきた二人は…団七と徳兵衛ではなく、勘九郎さんと橋之助さんになっていました。 そこで一気に出演者一同が舞台に出てのカーテンコールへとなだれ込み。 う~ん「ニクよこの!ド根性ガエル!」って感じの演出でした。

法界坊【大阪平成中村座】

平成中村座への遠征の機会をず~っと伺っていたものの、なかなか都合が合わず悔しい思いをで見合わせておりました。 平成13年の【義経千本桜】の試演会の様子を伺っていましたので「今度、小屋が建ったら、何処の地でも遠征して試演会まで観る!」と心に決めていましたので、念願叶ったり!だったんです♪
「小屋自体は“八千代座”みたいな昔の芝居小屋の再現なんだろうなぁ…」と、イメージはできていたんですが、開演前や幕間などにも役者さんが客席や小屋の外までこしらえのまま出てきての楽しい演出には驚かされました♪ 特に【夏祭浪花鑑】なんて、小屋の外で喧嘩が始まって…それが舞台の開幕へと繋がるのでたまりません! “芝居を楽しんでもらおう”という興行側の熱い思いがひしひしと伝わってきましたが…ホントは演じるご本人達が一番楽しんでいるのではナイでしょうか~♪という感じでした。

法界坊

前回の舞台を映像で観てはいたのですが…やっぱり“ライブ”は違う! “笑い”を含めた演出はそのまま踏襲されているのですが、また笑えました。
今回はやはり“二人の怪優”に目が釘付け!  まずお一人目は…亀蔵さん@番頭正八。 前回より更にパワーアップした弾けぶりで、その様子は“エクソシスト状態”と称されていました?!
悪事をとがめられてハッ!と口を閉じるところでは両頬をリスのようにパンパンにふくらませるのですが、漫画キャラのようなお顔で大爆笑! 扇雀さん@おくみさんへの迫りぶりは、もう…常軌を逸しているとしか~。 で、その後に勘九郎さん@法界坊と熱烈な熱いキス! 舞台に上がると人格が変る…という役者さんは数多くいらっしゃるでしょうけど、亀蔵さんはその最たる部類に入るのでは?!
そして…お二人目は笹野高史さん@山崎屋勘十郎。 まずは“中途半端な白塗り”で笑いを取り、側転で身のこなしの軽さで驚かせ、そして“連続カンニングペーパーの場”?!では共演者達をも笑いに引込んで、場内は大爆笑! 毎回、どこかしら意表をついた所にカンペを仕込んでいるらしく、取り上げられても次から次へと出てくる出てくる~。
テレビではあまりコメディタッチのお役で拝見した事がなかったので、驚きでしたが…“54歳”という年齢に一番驚きました?!
あと、芝のぶさん@野分姫は、浮世離れしたおっとりした雰囲気がよく出ていて好演でした♪
法界坊名物?“日本一低い宙乗り”では、上手の一番端のお席だった私の上に勘九郎さん@法界坊&野分姫の霊が垂直に降りて来て…私、スッポリとお着物の中に入ってしまいました!
法界坊と野分姫、二人も殺されてしまうお話なのに…「あ~、笑った、笑った~」という感想で…いいのかしらん?

双面水照月

橋之助さん@甚三郎女房おさく。 私、自分の記憶によると…橋之助さんの女形って映像でも観た事がなく、今回が初見でしたので衝撃的でした!
スッポンは人力なのでカクカクカク…と上がってくる様が、なんか“ゼンマイ仕掛けの人形”をイメージさせ、より妖気を醸し出していたような印象を受けました。
今回、衣装の細部まで観る事ができましたが、霊とおくみ、松若のお着物の紋は三人が手にしている“葱籠”なんですね! 細かいなぁ…。
いつもながら小山三さんのソツのない素晴らしい後見に見入ってしまいました。

霊験亀山鉾【国立劇場】

劇場でパンフレットを手にとり、まじまじと読んでいると『~亀山の仇討ち~』と副題があり、“仁左衛門さん三役”“四世・鶴屋南北”作品という事くらいしか予備知識がなく足を運んだので「そういう大筋なのか~」とソコで合点がいったお恥ずかしい次第。 上演は平成元年11月以来だそうだが、その時とは随分違った芝居に仕上がっているらしく、久々にかかるという話題の芝居となり、国立劇場は平日でもかつてないほどの?盛況ぶり。
敵役の水右衛門、それにウリふたつの八郎兵衛、そしてその父ト庵の三役を一人の役者が演じるというのは江戸の初演以来という事。 これは今公演の成功の要因のひとつだと思う♪

序幕

仁左衛門さん@水右衛門、石井一族が次々と仇討ちに挑む“大きな敵”という感がこの序幕での、卑怯なやり口、不敵な笑み、残虐さで印象づけられ、美しい姿がより冷血さを際立たせる。 「ここまで低い、響くようなセリフまわしは初めて聞いたので鳥肌が~!

染五郎さん@源之丞孝太郎さん@お松。 この場での若い夫婦の仲睦まじい様が後半の悲劇をより悲しいモノに見せるように感じた。

二幕目

弥十郎さん@官兵衛。 最近はこのような三枚目のお役で拝見することが多いのだが“ガタイがイイ”だけに、その一途な滑稽さが愛嬌あるものになってハマる♪
秀太郎さん@おりき。 も~う、こういうお役の秀太郎さんって大好き! 「いるよ、いるいる!こんな色と金のプロって感じのオバさん!」って言いたくなる。 失礼ながら…上手いなぁ~。
染五郎さん@源之丞は、妻を残して仇討ちに出掛けたが、その道中の丹波屋で女将のおりきに惚れられるわ、芝雀さん@芸者おつまとは子まで成すは…で、イイご身分?! 二人の間に入ってオロオロ&ニヤニヤする色男ぶりは笑えたが…、ふと「これ3人とも男の人なのよねぇ…」と何故だか一瞬思い出して素になってしまった自分がイヤだった! 遊び人風情のお役の染五郎さんって好きだな。
焼場に通じる街道で「狼が出たゾ~!」 私が歌舞伎の演目で観た動物の中で一番“らしい”動物で、動きもナイス! 石井一族の重宝の【鵜の丸】の巻物は白蛇が守る秘書である為、その巻物をひもとく度に白蛇が現れるのも楽しかった。 木から垂れ下がっている蛇の動き、上手かった~!

この演目の最大の見せ場【駿州中島焼場の場】。 本水の雨が降る中、芝雀さん@おつまは水右衛門の一味、仁左衛門さん@八郎兵衛と熱演の立廻り! まさかこんな演出があるとは思いもかけなかったので、芝雀さんファンとしては嬉しい誤算。 しかも八郎兵衛を倒しちゃうし!!
そして…バリバリバリ~! 火にくべられた棺桶を破って仁左衛門さん@水右衛門、登場! ギャーッ、カッコいい~♪ (でも棺桶が乗せられている屋台から降りる時、薪が崩れて仁左様よろめきアッ!)
せっかく頑張ったおつまはアッと言う間に殺されちゃうけど、彼女のお腹を刺しながら石井一族の奪った命の数を笑いながら指折り数える様はゾゾ~。 歌舞伎で…ココまでワルなお役って珍しいのでは? でも“悪の華”という感じで残酷だけどとても綺麗なシーンとして印象深い。

三幕目

源之丞の妻として正式に祝言をさせる…と機屋に尋ねてきた、秀太郎さん@貞林尼を全身で嬉しく迎えいれる孝太郎さん@お松。 傍らには奇病で足腰の立たない息子、清水大希くん@源次郎が居るというのに、少女のようにはしゃぐ姿が愛らしいので、夫が死んだと聞かさせた時の驚きは胸が痛い。
あいかわらず可愛くて演技が達者な大希くんにニッコリ♪
源之丞の…石井家の下部、染五郎さん@袖介と、水右衛門の父、仁左衛門さん@ト庵との対決。 話しの筋の上でとても大事なんだろうけど…この場、何故か弱かった。 染五郎さん、全体を通 して出番が多かったのに、何故だか印象が薄かったのは残念。

大詰

城下では遠くに祭りのお囃子が聞こえてくる賑やかな中、舞台手前では緊迫した仇討ちの場。 この演出には感心した!
この座組での出演は大変珍しい段四郎さん@重臣・頼母。 出番は少ないものの、歌舞伎味がピリッと効いていてとてもしまる感じ。 私自身、舞台でのお元気なお姿を拝見するのは久し振りなので、それだけで嬉しい♪
石井一族の大敵・仁左衛門さん@水右衛門に挑む石井家の人々。 皆の期待を一身に受けた清水大希くん@源次郎が斬りかかる度に急いで自分の身に引き寄せる、孝太郎さん@母・お松の表情がたまらなくヨカッタ! 母としての慈愛はもちろん、夫や姑の気持ちを引き継いだ仇討ちに対する気迫が感じられた。

仮名手本忠臣蔵・夜の部【歌舞伎座】

五・六段目

“山崎街道二つ玉の場”の、信二郎さん@定九郎の色悪ぶり、闇に生える白塗りと口からしたたり足に落ちる流れる赤い血の…色の対比がなんと美しい事!! しかし…短いながらも強烈なお役なのに、印象が薄いのは残念~。 登場した時も「信二郎ここにあり!」的な存在感がナイのは寂しかった。 勘九郎さん@勘平の、人を打ったという驚きと、思わず財布を握りしめて逃げ出す時の、心の葛藤が表情からありありと見てとれて良かった。
家橘さん急病休演の為、代役・上村吉弥さん@母おかや。 「美人なお役で拝見したかったな~」と思いつつも、汗が落ちて膝上の着物の色がすっかり変ってしまうほどの熱演に引込まれた。 「舅殺し!」と勘平をなじり、その後疑いが晴れるが不幸な結果となってしまった悲劇を嘆き悲しむ様は、勘九郎さんの熱演と絡んで印象に残った。

七段目

一力茶屋の仲居や手代の人数にまずは圧倒された! “一発芸”では『天皇賞?で落馬の武豊騎手』『あざらしのタマちゃん&ウタちゃん』ネタも♪ 演技に演技を重ねる吉右衛門さん@由良之助の変りぶりが楽しめる。 特に扇雀さん@力弥が書状をもって尋ねた時のするどい眼光が素敵!
しかし、なんといっても好きだったのは、團十郎さん@平右衛門玉三郎さん@お軽の“兄妹愛”! いきなり斬りかかった兄から逃げてやりとりする花道での会話はなんとも楽しい。 この二人の組み合わせで“かわいい”という印象を受けるとは意外で新鮮♪

十一段目

浅葱幕が切って落されると、舞台に居並ぶ浪士たち。 もうその姿だけで鳥肌ゾゾ~の興奮もの! 季節は巡りめぐって雪が降る銀世界の冬。 着物の黒がキリリと舞台に映えて、討入りの気迫をも表現しているような…♪ 池にかかった橋の上での立ち廻り、池に落ちてしまう演出の工夫…そして池から這い上がってきた時の細かな演技。 勢いのある場面 だけにこういった細かな部分が印象に残った。